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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
―ララコバイア編ー
287/1227

4-90 精霊王様と孫娘と孫娘の娘とたまに大精霊様と俺。

―――プリフェスト下界ミッテタルグルント

  ブランルーゴリア宮殿・謁見の間

R4075年9月20日(樹)15:30―――


 工房ロイスピーミッテタルグルント支店の三階オーナーズエリアに展開する結界を修復し、コルト下界の大精霊で地の精霊ロロノクック様を強制召喚し、紆余曲折を経て精霊王様に謁見するところまでやって来た。


「精霊王陛下の御出座しにございます」


 ゆっくりとした足音が玉座へと響く。


「ね。俺達ってここにただ立ってて良いの?」


 マルアスピーに耳打ちする。


「疲れたのならあそこにある椅子を使うと良いわ」


 マルアスピーは、小さな声でヒソヒソ話ながら、謁見の間の隅に積まれた木造りの椅子を指差した。


「あぁ~・・・」


 えっと、そうじゃなくて謁見の作法とか礼法とか・・・ね。色々重要な事とかあるのかなぁ~って・・・。


「う~ん、どうかしたのかな?謁見の間で愛を囁き合う何て仲良しだね君達は」


 玉座へと足音が響く中、真後ろに突然大きな気配が一つ現れ話し掛けて来た。


 慌てて振り向くと、成人したてヒュームの年の頃なら十六歳。若干華奢でひ弱そうに見えるがそこはかとなく高貴さと利発さを感じさせる背中に大きな翼を付けた少年が立っていた。


「えあぁ!?」


 ロロノクック様は目を見開き勢い良く盛大に素っ頓狂な声を上げた。


「気持ち悪い声出さないでって言ったばかりよね。いったいここを何処だと思ってるのよ。恥ずかしいじゃないの。ねぇ~ロイクさん♪」


「え、あ、ああぁすまん」


 って、だから何故に俺にふるんですか?・・・って、ロロノクック様。謝り慣れしてませんか?


「プッ、ハッハッハッハッハ。良いよ良いよ今の感じとっても良いよ。八ハッハッハッハッハ」


 少年は白い歯を輝かせ爆笑している。


 実に楽しそうだ。楽しそうにしている分には構わないのだが、それにしてもこの少年はいったい。全く気付かなかった。近付いて来る気配は無かったよな。・・・そうなると転位移動系の何かか?


「ねぇロイク」


「・・・」


「ねぇロイク」


 ん?


「あ、はい、何でしょう?」


「どうかしたのかしら?」


 マルアスピーはいつも通りみたいだ。このくらいの事で感情を大きく動かす訳がない。少しは驚いたのだろうか?


「どうやって後ろにって考えてました。姿を現すまで気配一つ感じなかったんで正直かなり驚いてます」


「そう。そうね」


 反応はいまいちだが同意はしてくれたみたいだ。


「本当に驚いたのかな、本当はちっとも驚いてないんじゃないの?・・・・・・チェ残念だなぁ~。あぁ~失敗かぁ~・・・あっ!僕に会った事が無い(・・)にこれって通じる訳ないよね。無いじゃん。あああぁぁぁ―――やちゃったなぁ~。ミトもマルアスピーも反応面白く無いし。面白いのロロノクックだけじゃん。よし決めたぁっ!そうだよ。この手があったよ。これならミトとマルアスピーもきっと驚くぞぉ~。アッハッハッハッハッハッハッハッハ。うん。良い感じだ。ハッハッハッハ」


 少年は、勢い良く喋り続け時に哄笑し謁見の間を暫しの間支配した。



「へ、陛下っ!!!」

「御爺様!!!!!」

「精霊王様!!!!」


 陛下?御爺様、精霊王様?え?この翼の少年、精霊王様なの?


 神授スキル【神眼Ⅲ】を意識し少年をチラ()する。


「やぁ久しぶり。元気そうだねロロノクック。プっハッハッハ。ごめんごめん、プッ、いやぁ~しっかし笑った笑った」


「は、はい」


「それで、どうしてたんだい。最近見かけた覚えがないけど」


 最近、最近ねぇ~。王様歴二百億年以上みたいだし四千年位はつい最近って感じなのか。


「あ、はい」


「・・・事情は後程聞くとしよう。・・・さて、やぁミト。元気だったかい?」


 事情を聞いたら呆れるんだろうなぁ~。諸事情あって引き籠ってました。何て笑えない。


「えぇ。御爺様も元気そうで良かったわ」


「相変わらずだね。ミトは」


「精霊そんなに変わったらそれ他精霊よ。私は私いつまで経っても変わらないわ」


 ユマンの男は二、三日会わないだけで刮目しろなんて言うけど・・・精霊様って寿命とかどうなってるんだろう?マルアスピーで四・・・何だ視線を感じ・・・何か痛いんだが・・・!!!


「マルアスピーさんやどうかしましたか?」


「えぇ、たった今ロイクからとっても嫌なオーラを感じたわ」


「へっ?・・・お、俺は俺のままいつもの俺・・・です・・・よ」


「そうね。良かったわ」


 何か瞳が怖い。よ。


 見つめ合いながら小さな声で言葉を交わす。


 ユマン(人族)そんなに変わらない。変わり易いユマン(人族)は信用出来ない。流され易いユマン(人族)は悪人ばかり。偉大なるヒューム(人間属)の先人の誰かがこんな言葉を残してる。はっ!!!あぁ―――なるほどね。精霊様も同じなんだ。そうだよ精霊様もユマンも余り極力変わらないって事で良いじゃないか。そうだよ。・・・そういう事にしておこう。


「ハッハッハッハッハ。うんうん。そうだね。ミトはいつまで経ってもミトのままだ。うん。それで良い」


「そうよ。フフフフ」


 ・・・そう、ですよね。



「マルアスピー。ミトがここに居るって事はそういう事で良いのかな?」


「そうね」


 早っ!今ので分かり合えちゃった系ですかぁっ!!!


「そうか。今日は再就任の挨拶も兼ねてる訳か」


 精霊王様からマルアスピーへと視線を動かしチラ()する。


 頷いてるしあってるみたいだ。って言うか、何なんだ?ここ謁見の間だよね?精霊様って王様に対してこんな感じでフレンドリーなのか?


「今更だけど、やぁ」


 少年、精霊王様が溢れんばかりの笑顔で話掛けて来た。


 やぁ、に、はぁ~いとかやぁはまずいよな。何せ相手は精霊様の王様。その辺の道端に転がる石ころ風情が


「ねぇ君聞こえてるよね?」


 気軽に声なんかぁあ!?


「難しい顔をしているね。何か考え事かい?」


「お」


 いかん。気軽に声なんか掛けちゃまずい。だが、無視するのはもっとまずいんじゃなかろうか。


「お?」


 お?・・・おって何だ?・・・お?お?お?おって最初は俺か!!!おおおおおおお、


「お、おお日柄も良く。本日はお日柄も良く」


「お日柄かい?う~ん、ミッテタルグルントはいつも(・・・)こんな感じだよ・・・・・・このままだと見えないよね」


 精霊王様は謁見の間を見回すと、右手を頭上に伸ばし手の平を天井に向けた。


 すると、


 おおお!


 ドーム状の天井が消え無色透明になったと思いきや、雲二晴れ渡る澄みきった青い空が頭上に広がった。


いつも(・・・)通りだね」


 精霊王様はウンウンと頷くと空から俺へと視線を移した。


「・・・」


 こういう時はどうしたら良いんだ?


「・・・」


「・・・」


 俺から話し掛けるのはやっぱり不敬だよな?


「・・・」


「・・・」


 見つめ合う。精霊王様と俺。


「ねぇロイク。いったい何をやってるのかしら?ヒソヒソヒソ」


「はい、何でしょうって、何をやってるも何も何をどうしたら良いのか分からないから困ってるんですよ。ヒソヒソヒソ」


「どうすればも何も、自己紹介はどうしたのよ。アナタは子供ではないのだから一人で自己紹介くらい出来るのではなくて。ヒソヒソヒソ」


「相手は精霊王様ですよ。俺から話し掛けたりとかまずいんじゃ。ヒソヒソヒソ」


「オホン。仲睦まじく愛を囁き合う姿を見続けるのもやぶさかではないと言いたいところなんだけど。目の前で愛し合われるより話し掛けられる方が僕としては嬉しいかな」



「俺、私はロイク・ルーリン・シャレット。コルト下界コルト界の管理者です。創造神様に任されたばかりの若輩者ですが以後お見知りおきを」

「以後お見知りおきをってハッハッハッハッハ君面白いね。ハッハッハッハ面白いよ。ハッハッハ」


「は、はぁ~・・・」


「僕、君の事、気に入ったよ」


「あ、ありがとうございます」


 素直に喜んで良いんだよな?


「自己紹介も済んだ事だし、視ても良いかな?」


 見る?


「いったい何をでしょうか?」


「君の、異下界の管理者殿のステータスさ」


 俺が本物かどうか確認したいって事だよな?視たいなら勝手に視れば良いのに。俺もさっき勝手に、あっ!もしかしてステータスって視るのに許可がいる?


「どうぞ。・・・あのぉ~精霊王様。俺さっきですね。許可も取らずに精霊王様のステータス視ちゃいました」


「へぇ~え~僕のステータスをねぇ~。つまり精霊の眼よりも優れた眼を君は異下界の管理者殿は持ってるって事だよね。どれどれ楽しみだなぁ~。他精霊じゃなかった他人のステータスを覗くだけなのにワクワクするよ。あれ?僕。君に自己紹介したかい?」


「い、いえ」


「そっか。忘れてたよ。・・・そうだね。そうだよね。今更だけど」


 少年はウィンクすると背中の翼を広げ浮かび上がり俺達を飛び越え玉座へと移動し腰掛けた。


「異下界の管理者殿よ。精霊が住まう世界プリフェストへようこそ。精霊を代表し歓迎するよ。僕はアピロレイ・フル・ルーゴリア。この世界この下界の管理者であり一応ここの王様って事になってる」



・・・・・・・


・・・・



「三回もですか?」


「そう。三回もだよ。異下界の管理者殿は神々に愛されているようだね。さてと次こそ視させて貰うよ」


「えぇどうぞ」


「ぁうん?え、ぅはぁっ!!!き、君、その神気はいったい。それに精霊気?感じない、あれ?・・・・・・でも、有り得ない次元の精霊気を、え?えええぇぇぇ―――ぇぇえええ凄いとか一周回って通り越してズルいよ」


 ズルいとか言われてもなぁ~。そういえばさっきもロロノクック様が精霊王様と同じ様な反応してたな。ズルいとは言って無かったけど。


「これって最早必要ない次元だよね。神授神託天啓啓示御言葉や形式が多少異なるだけで僕が承った御言葉は君に全面協力するようにって。・・・僕が力貸す必要ある?」


 ・・・創造神様。どんな神授をされたんですか?挨拶に来ただけなのに碌な挨拶もしないままドンドン話が見えなくなってます。


「ロロノクック。ミト。マルアスピー。君達は異下界の管理者殿の世界えっとコルトの循環を任された精霊だったよね」


「はい」

「そうなっちゃったわね」

「そうね」


「下界の管理者が神。反則だと僕は思う」


 何言ってんだこの(・・)は。ここは正しておく必要がありそうだ。誤解したままってのは良くない。


「私はしがない地の大精霊です。創造神様の御意向御意思に私如きが意見するなど。どうか御容赦ください」

「私に聞かれても困るわぁ~。だってねぇ~成り立て出来立てホヤホヤの大精霊だしぃ~。ねぇ~ロイクさん♪」


 硬派と軟派。この父からこの娘がどうやって・・・。


 ロロノクック様からミト様へ、ミト様からマルアスピーへ、マルアスピーから精霊王様へ。

 視線を動かし顔やその雰囲気を何となく確認する。


 ミト様とマルアスピーは容姿も声もとっても良く似ている。今更だな。


「マルアスピーはどうだい。下界の管理者が神様って、コルトずるくない?」


「何がかしら?」


「だって神だよ神様。管理者って普通僕みたいにパッとしないのがやるものなんだよ」


 パッとしないって、精霊王様がそれ言っちゃったら、それこそ・・・。


「確かにそうかもしれないわね」


 って、マルアスピー!?本人目の前ですよ。せ、精霊王様を目の前に何言っちゃってくれてるんですかぁっ!!!


「少し前、メア下界の管理者を視る機会に恵まれたのだけれど」


「メア下界か。亜下界とはいえ管理者は管理者だね」


「その管理者は精霊王様と比ぶべくもないおこがましい存在でした」


 お、おぅ・・・精霊王様に続きここには居ないメアの王様までいっちゃいましたか。


「メア下界の管理者殿はそんな感じなんだね」


「そうね」


「でもどうしてそれが肯定に繋がるのかな?」


「同じ匂いを感じたわ」


「匂い?」


「えぇ」


 ここに来て、マルアスピーの秘技会話が成立しないが・・・。


「そうか。・・・この件については終わりだ。終わり。今日はもう良い。時に異下界の管理者殿いや管理神様」

 俺、神様じゃないし。

「精霊王様。一つ宜しいでしょうか?」


「・・・ど、どうぞ。異下界の管理者管理神様」


 盛大に勘違いされちゃってるし・・・。


「えっとですね。俺ってたまに間違われる事があるんですけど、人間、ヒューム(人間属)ユマン(人族)です。見たまま容姿そのまま何の変哲も無く人間なんで宜しくお願いします」


「・・・その様な体でという事でしょうか?」


「体とかそう言うんじゃなくてですね」


「な、なるほど。そう言う事でしたか。分かりました。学ばせていただきます」


 は?えっとどう言う事?


「精霊王様」


「マルアスピー。良かった。どうかしたのかな?」


 精霊王様は、マルアスピーに呼ばれ一瞬だが確かにホッとした様な表情を見せた。


 良かった?


「chefアランギーから言葉を預かって来たのだけれど良いかしら?」


「神アランギー様からの御言葉ですか。神アランギー様はいったい何と?・・・また神様関連かぁ~ブツブツブツブツ」


 今、凄く嫌そうな顔を、・・・気のせいだよな。

ありがとうございました。

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