4-76 水柱。
バタバタバタバタバタバタ
≪ハァッ、ハァ~、ハァッ、ララコバイア王国より緊急の転送書簡が届きました。ハァッ、大至急陛下に御取次をお願いします。
≪落ち着かれよ。これより先はサミットの間です。
≪申し訳ございせん。で、ですが緊急の書簡です。大至急御取次ぎを。
≪書簡を確認します。
≪異常は見受けられなかったのですが・・・印が・・・。
≪書簡を確認します。
≪こ、こちらです。
≪これはララコバイア王国からの書簡に間違いありませんか?
≪はい。ララコバイア王国のアウフマーレライ城より送られて、緊急転送で届いた書簡に間違いありません。
≪そうですか。国印すらありませんが、正式な書簡なのですね。
≪は、はい。王印も国印も無く手続き上不備な状態ではありますが、ネットワーク網に異常はありませんでした。
・
・
・
「陛下。何やら廊下が騒がしいですなぁ~。・・・・・・どうやらララコバイア王国で面白い事が起こっている様ですぞぉ~。おや!・・・ふむふむふむ」
神眼Ⅲで視認不可能な人間って、そんな事がありえるのか?はっ、もしかしてターンビット王国の国王は干渉規制対象なのか?
「陛下。・・・・・・う~む。仕方ありませんねぇ~。私が代わりに対応致しましょう。然らば、・・・入ってます!!!・・・・・・と言うのは、可愛い冗談ですぞぉ~。近衛兵、通して良いですぞぉ~。はい」
≪えっ?・・・フゥファニー公爵閣下?いったいいつ入室を
「通して良いですぞぉ~」
≪・・・御意。通って良し。
≪はぁっ!
ガチャ
「失礼致します。ララコバイア王国より緊急の転送書簡が届きましたので御持ち致しました。こちらがその緊急書簡です」
「我が国から緊急の書簡が送られて来たのか?・・・通信兵。私はララコバイア王国のヴィルヘルムだ。答えてくれ」
「えっ?あっ・・・も、申し訳ございません。印も無く。宛は我が国になっておりますのでお渡しする事は出来ません」
「いやそうでは無く、・・・その書簡は我が国からの物に間違いないのか確認したいだけだ」
「なるほどなるほどなぁ~るほど。陛下。・・・・・・・・・あぁ~私が代わりに受け取りましょう」
「はぁっ!」
「うん?おやおや王印も国印もありませんねぇ~。ふむふむふむ、この緊急書簡ですがっ、マイン・フォン・サーフィスからですぞぉ~。はい」
「印が無い?・・・王印は王である私がここに居りますので、はい。で、ですが、は?かっ、開封もしていないのに内容がお分かりになられるのですかぁっ!?」
他の人のは視えるみたいだし、やっぱりそうなのかぁ~?
「国王代理である前にこれでも神ですからなぁ~。陛下・・・・・・返信は不要の様ですので、貴殿はもう下がって良いですぞぉ~。陛下には私が責任を持ってお渡ししましょう。はい」
「はぁっ!」
ガチャ
「神アランギー様・・・我が国の軍務大臣が国印を捺し忘れる程の事態、軍を動かさねばならぬ事態が」
「お渡ししましょう。読んで構いませんですぞぉ~」
「宜しいのですか?まずはロイク、アシュランス王に目を通して」
「何やら別の事で頭がいっぱいの様ですし問題ありませんですぞぉ~。はい」
・
・
・
・
・
「陛下」
「≪『陛下』→ロイク≫」
うん!あっ、はい。どうかしましたか。じゃなかった。
「≪『どうかしましたか?』→chefアランギー様≫」
「≪『ターンビットに関しては執務室に戻り次第改めてが宜しいでしょう。それよりも今はフォルヘルル島の方が重要ですぞぉ~。何やら面白い事になっている様ですぞぉ~。はい』→ロイク≫」
フォルヘルル島で面白い事?
「≪『えっと何かあったんですか?』→chefアランギー様≫」
「≪『はい。島中の井戸という井戸から水柱が立っています』→ロイク≫」
「水柱が立った?」
はぁ~?・・・井戸ですよね?って、つい大きな声を出してしまった。
「「「「水柱が立った?」」」」
俺の声に、イヴァン国王、クロージャ国王、ターンビット王国の国王、ヴィルトレイ国王が、声を揃え反応した。
「何か、ララコバイア王国のフォルヘルル島で井戸から水柱が立ってるらしんです」
「なっ!?・・・アシュランス王も神アランギー様と同じ様に読まずして手紙の」
「ヴィルヘルム。それは違いますですぞぉ~。私は神。陛下に教えたのは何を隠そう私です。はい」
「神アランギー様は、神様ですからな。・・・そ、そうですよね・・・」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
・
―――ララコバイア王国・フォルヘルル島
島から200m程離れた海の上空300m
R4075年09月17日(邪)17:20―――
「何か凄い事になってますね」
「実に面白い事になっていますなぁ~。はい」
「何だ。何なんだこれは?・・・島の至る所から噴水の様に水が噴き出しておる」
「ほぉ~。昼飯を食ってる時に感じた悪気はこれであったか。長生きはしてみるものじゃな」
メア王国の国王サザーランド・ボナ・サザーランドは、腕を胸の前で組み両手を脇に挟み頷いている。
「悪気?」
ヴィルヘルム国王は、島の水柱から俺へと視線を動かす。
悪気ってコルト下界には存在しないから説明しても分からないだろうなぁ~。
「月属性が荒らされ決壊した様じゃな。悪気が属性に影響を与える程の干渉をのぉ~。フワッハッハッハッハッハッハ。確かだ。確かに面白い事になっておるわ」
月属性って確か朔属性こっちの無属性と盈属性こっちの地属性が一つになった属性だったけ?
・
・
・
会議室にイヴァン国王とクロージャ国王とターンビット王国の国王とヴィルトレイ国王を残し、ヴィルヘルム国王とメア王国の国王サザーランド・ボナ・サザーランドとchefアランギー様と俺は、chefアランギー様の指パッチンでララコバイア王国のフォルヘルル島へと移動した。
島から二百メートル程離れた海の上三百メートルから見下ろしている。
島中の井戸から水が噴き出し、高さ百メートルから二百メートルの水柱が立ち上がり、あちらこちらに虹が架かっていた。
メア王国の国王サザーランド・ボナ・サザーランドの言う通り僅かにではあるが確かに悪気を感じる。地属性の循環を感じない。滞っている感じと言った方が正しいのか?
「おんや、どうやら完全に水没してしまった様ですぞぉ~。はい」
「神アランギー様。水没とはいったいどういう事でしょうか。私の目には井戸から水が噴き出している様にしか見えません」
水没ってまさかぁっ!
「過去を知るにはお手頃な物件だったのですが実に残念です。まぁ~初めから無かったと思えばぁ~それ程残念でも無いですな。はい」
あっ!それよりもぉっ!!
「調査チーム」
「は、問題ありませんですぞぉ~。先程、まとめて元邪の女神の大神殿に強制転位移動しましたですぞぉ~」
「え!?水没し」
「ても元は神殿。腐っても神は神。腐っても神殿は神殿。腐っても宗教は宗教。腐っても王家は王家。問題ありませんですぞぉ~。はい」
いや、あぁ~・・・腐られても困るものばかりで何て言ったら良いのか言葉に悩みます。って、問題あるとかないとかじゃなくて。
「どうして水没した神殿に移動させたんですか?」
「それはですなぁ~、今から水柱の原因となっている湯浴みの祭壇を回収しに行くからです。その為に、ヴィルヘルムとサザーランドを連れて来たのですぞぉ~」
「私をですか?」
「儂?」
chefアランギー様に名指しされ、二人は顔を見合わせている。
「うん?悪気が強くなった」
メア王国の国王サザーランド・ボナ・サザーランドは、ヴィルヘルム国王から視線を外すと、島の中央付近に立ち上る水柱を凝視する。
「悪気がですか?」
「古の世界の王よ。お主の眼を飾りか節穴かぁっ!!!良く見るが良い。この虚けが」
尊大を通り越してただの口の悪い個性的な装いの悪魔。家の国の弟国になったんじゃなかったのか?
思考を並行させながら視線を中央付近の水柱へと移す。
「あっ」
「おやおやおや」
「悪気故の闇。闇故の呪とは古風な事よのぉ~」
おっと。
水柱の色が決して飲んではいけないと直感させる色。漆黒色へと少しずつ変化していく。
これって普通に闇属性。この悪気は。
「「呼び水」」
「ですぞぉ~。おんや。陛下もお気付きに」
「えぇ、なんとか」
chefアランギー様。イヤ、陛下って俺の事を呼んでいたし、ここはまだフゥファニー卿と呼ぶべきだろう。それにしても、井戸に関する資料を偶然とは言え読んでおいて良かった。雑学も偶には役に立つんだな。
「神アランギー様。いったい何が起こっているのでしょうか。アシュランス王よ。頼む。我がララコバイアでいったい何が起こっているのか教えてくれ」
「神アランギー様よ。古の世界の王よ。何故、力無き者を王とした。この者はメアのヴィスズ以下獣下以下ではないか。これでは国を護れる訳がなかろう」
焦りのヴィルヘルム国王と怒りのメア王国の国王サザーランド・ボナ・サザーランド。・・・二人同時に質問するの止めて貰えませんかね。
「えっとですね。ヴィルヘルム国王」
「力無き王等の一人よ。貴様の問いには儂が答えてしんぜよう」
って、・・・もう全部任せてしまって良いですかね。って言うかお任せします。
「う、ふむむ。お、お願いします。メアの王よ」
「聞くが良い。この水柱は」
ありがとうございました。