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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
―ララコバイア編ー
261/1227

4-66 メアの王

 メア王国の王都ミルトン。


 高さ六十六メートル、厚さ十三メートル、全長約三百六十七キロメートルの城壁を外壁に持つ王国領の首都。


 都市の人口一億三千万人。


 市街地の面積約五千三百五平方キロメートル。


 その中央に聳え立つ六層の結界に護られた高さ約百九十九メートルの王城ジブリール城。


 メア全土を統べる始まりの王サザーランド・ボナ・サザーランドの居城ジブリール城。


 その最上階に建立された無十楽(ムトラク)礼拝堂。


 真紅色のすりガラスに覆われたドーム型の天井。クラッククリスタルの窓ガラスが取り付けられた八方位の出窓。悪気(あっき)を含んだブーゼミスリルの床と壁。


 延床面積約三万六千平方メートルの巨大な礼拝堂には柱が一本も立っていない。



 ロザリークロード様は、気絶したドラゴンを左手に持ち、トゥーシェがゲートと呼んだ魔力陣の中へ入っていた。


「まさか、こんなかたちで魔界に行く事になるなんてな」


 皆の移動を見届け一番最後に魔力陣の中へと踏み込んだ。



≪カツ


 一歩踏み込んだだけなのに随分と響く床だ。念の為、調べておくかな。


 神授スキル【神眼Ⅲ】を意識する。


 情報量が多くて頭が痛くなるけど仕方がない。戻るまではこの眼で行くか。


 ブーゼミスリル?


 悪気を飽和寸前ギリギリまで吸収させたミスリル。事象を反射し強度を保つ。悪気を取り込み自己修復(成長)し状態を保つ。横滑り防止。振動増幅。


 ミスリルと悪気でこんな事が出来るのか。へぇ~。


 周囲を見渡す。


 北東の方角にあるこの出窓が魔力陣と繋がってるって考えて良いんだよな。しっかしぃ~広いなここ。


「トゥーシェ。この出窓と魔力陣は固定されてるんですか?」


「違うのじゃぁ~、私がゲートを無十楽のツヴァイに設定しただけなのじゃぁ~」


 設定しただけって事は。


「それって、他の場所とも繋げられるって事ですか?」


「ゲートがあれば何でも出来るのじゃぁ~」


「ゲートってロザリークロード様が宙に描いた魔力陣の事であってますよね?それとツヴァ」


「ゲートはゲート、魔力陣は魔力陣。似て非なる術だと教わったのじゃぁ~」


 質問の途中だったんだけど、まっ良いか。


「旦那様よ。ゲートは邪属性の純正魔術故、月属性の(さく)属性上級儀式魔術を応用した魔力陣とは別物。知らなかったのか?」


 儀式魔術?


「おいっ!!!」


「はひぃー、竜神様」


「これはお前で良いのか」


「これ?」


「ホレッ」


 ロザリークロード様は、気絶したドラゴン、エレオス・グラブードン・ザゲヴァドルバを、時空牢獄から解放されたジャンガヴァード・バジャ・ギャヴォググへと放り投げた。


「え?」


≪ズドゴォ―――ングゲェドドドォスゥ―――ン スーンスーンスーンスーンスーンスーン


 げっ!って、鼓膜がぁっ!


 慌てて耳を押さえる。


 天井から床から壁からあらゆる方向から襲って来る音の渦。


「邪属性の純正か久々に、・・・響くのぉ~」


「邪神竜、お前は静かに出来ないのかね」


 ロザリークロード様とフォルティーナは平気らしい。何食わぬ顔で平然と音の渦の中に立っている。



「我が使徒ロイクよ。邪属性の純正魔術とは」


「あ、はい」


 音の渦が消え静寂が戻ると、ロザリークロード様は、気絶したドラゴンと気絶したドラゴンに圧し潰されジタバタともがくドラゴンの傍へと歩を進めながら話し始めた。


「神気を核にする邪属性の事だ。我が主様によって創造されしこの世界では邪属性の魔素こそが純正であり至高なのであろう」


 へぇ~。良く分からないけど、へぇ~。


「うんうんだね」


「我が使徒ロイクは、我が主様の御名を・・・・・・知っていて当然であったな。その通りだ」


 えっと、何が?その通りって、え?


「ここには我が主様の神気の残り香が漂っておる」


 えっと、純正とか邪属性の話は何処(いずこ)へ?


「うんうんだね。悔しいが確かにあれの良い香りがするね」


 ・・・・・・ダメだ。全く意味が分からない。


「何をやってるね。ロイク、君には神鼻が無いね。嗅ぎ分けられる訳が無いね」


 嗅ぎ分けるつもりなんてないんですが・・・。


「我の冥護が馴染むまで後数日は必要だ。焦る必要は無いぞ」


「は、はぁ~・・・」


 話が全く見えないぞぉ~。


「旦那様よ。伝える機会が無かった故、今更からも知れぬが良いか?」


「どうかしましたか?」


「無十楽礼拝堂は、数億年の長きに渡り受け継がれて来た絶対神様の神殿の一つで、床や壁に一定以上の衝撃を与えると音が響く構造故、無音の所作を貫き祈りを捧げ省みるだけにした方が良いと伝えられている。あの残響の渦を今一度味わう事になろうとは、不意を突かれたとはいえ、未だ耳が馬鹿になっておる。旦那様は平気か?」


 音の渦の正体は残響音だったのか。・・・床や壁の素材として使われてるブーゼミスリルには振動増幅の効果があるみたいだし、構造と素材であの現象を引き起こしてるって事になるのか?


 音の発信源を特定するのが難しい場所って訳か。


「そうなのじゃぁ~」


 騒がしい方のトゥーシェが、今日は妙に静かだと思ったら、そう言う事だったのか。なるほどね。


「もう一人の妾も妾も学習を済ませてある故、過ちは二度と繰り返さぬと決めておる」


「そうなのじゃぁ~」


 だと思いました。


「おいっ!?」


 エリウスは、強い口調で声を上げるや否や、もがくドラゴンへと飛び掛かった。


「グゲェッ」


「なっ、エリウス?」

「なんだね。エリウス」


「貴様。今、スキルを行使しようとしたな」


「え、エレオスにつぶ、潰され・・・」


「神馬。我の行動を見て学ばなかったのか。ここは残響が酷い。注意せぬかこの愚か者が」


「も、申し訳ございません。このドラゴン種が不審な動きを見せた為、つい大きな声を出してしまいました」


「エリウス。声よりも床や壁への衝撃の方を気にして貰えると有難いです」


「はぁっ!主殿」


「のぉ~、先程からお前は何をやっておる。我の視界の隅でジタバタと目障りだ」


「えっ?・・・ドラゴンにドラゴンを放り投げたのロザリークロード様ですよ」


 あの音の原因作りましたよね?


「同族なのであろう。ちゃんと受け止めぬか。この愚か者めが」


「も、申し・・・訳ご・・・ござ・・・びばぜむぅ~」


 ジタバタともがきながらも謝罪の言葉を口にするジャンガヴァード・バジャ・ギャヴォググは、ブルブルと震えていた。


「エリウス様。落ち着き無く見えますがそれは固着反応不振とは違う故気にする必要はありません。旦那様もそうは思わぬか?」


 こ、固着反応。固着、固着、・・・どんな反応?


「全身を微震させ落ち着き無く視線を動かす行動が固着反応ですか?」


「そこのトカゲは飛べるだけの虚弱な種族。意味も無く震え戯言(ザレゴト)を嗜む。挙動不審は本能や習性の類だと爺やに教わった。おぉ!そうじゃそうじゃ。折角、城に戻ったのじゃ、皆に爺やを紹介しよう。もう一人の妾よ。あれ(・・)の準備は可能か?」

「任せておくのじゃぁ~」


 えっと、何か完結しちゃったみたいだけど、結局のところ何がどうなったんだ?


 ほくそ笑む、トゥーシェとリュシル。


 う~ん。あれは、良く無い方の微笑みだ。


「トゥーシェ、罰が欲しくなったら言うね。遠慮は不要だね」


 フォルティーナは、ニヤニヤと残念な表情でフィンガースナップを不発させた。


 意味も分からずに便乗する気の様だ。


「ま、まだ何もやってないのじゃぁ~。スーフー、スーフー。・・・お、お前からも何か言うのじゃぁ~」


 トゥーシェは、既にカールのかかった髪を指でクルクルと巻きながら、サイレントホイッスル(無音の口笛)を吹き鳴らし、視線が合ったのか、リュシルに助けを求めた。


「あのぉ~、宜しいでしょうか。リュシル殿、トゥーシェ殿、フォルティーナ様」


「何がだね?」


「おおお良いタイミングなのじゃ馬。とっても宜しいのじゃぁ~」


「そうであったな。久々の帰郷に興奮し脱線させてしまった。もう一人の妾よ、爺やへの挨拶はトカゲを片付けてからにするが良いか」


「ビリビリ以外なら何でも良いのじゃぁ~」


≪ギギギギギギィ~――― ギギィギギギギィギギギィギギギィ ギィーイ ギィ


「何だ!?」


 駆け抜ける高音と地を這う低音が重なり合い音の渦が再び礼拝堂に残響する。


 鼓膜が。


「またかね」


「我が主様にしては遊び心溢れる神殿ではあるな」


 えっと。やっぱりこの二人(・・)は平気みたいだ。


「こんなにうるさい神殿は初めてだね。ありえないね」


 フォルティーナの顔をチラ二度見する。


 どうやら本気で言ってる様だ。自分の神殿(カジノ)の事は・・・今は触れないでおこう。


 音の発信源を探し、キョロキョロと周囲を見渡す。



「あの扉が開いた音だね」


 音の発信源を最初に見つけたのはフォルティーナだった。


 礼拝堂に四つある両開きの扉の一つ。西の出窓と南西の出窓の間にある扉が、全開状態で開け放たれていた。


 皆の視線が開け放たれた扉に集中する。


「主殿っ!何かがいますっ!!!」


 敵意は無いみたいだ。


 状況を正しく見極める為、エリウスとアイコンタクトを取る。


 そして、周囲を把握しながら、トゥーシェ、リュシル、フォルティーナ、ジタバタともがくドラゴン、床に転がってるドラゴン、床に転がってるドラゴンの左腕に腰掛けるロザリークロード様へと順に視線を動かす。


 いつ動いたんだ。って。


「ロザリークロード様。それ」


「我の眼前を挨拶もせず横切ろうとした愚か者だ」


 ロザリークロード様は左手で、筋骨隆々、チョビ髭、リーゼント、ホワイト&レッドのストライプシルクシャツ、ゴールドのサスペンダー、ワインレッドのピチピチレザーパンツ、裸足。見るからに怪しい不審な大男の首根っこを後ろから掴み持ち上げていた。


 ドラゴンの時もでしたが、幼女でそれは、絵的に、きつい・・・ですよ。


「御祖父様ではないか」

「おっ、おジジ王なのじゃぁ~」


 御祖父様!?それって。


「なんだこの愚か者は主等の知り合いか。躾がなっておらんようだ。どれ我が」


「ろ、ロザリークロード様。待った。絶対待った。絶対にダメです」


「我が使徒ロイクよ。何を慌てておるのだ」


「その(・・)。たぶんこの国の王様です」


「ほう」


「なるほどだね。トゥーシェがダメダメな理由が分かってしまったね。これは由々しき問題だね。うんうんだね」


「あ、あのぉ~、ドラゴンの件はいったい」


「神馬は黙っておれ」

「うるさいね」


「は、はい。も、申し訳ありません」


「トゥーシェ~~~、た、助け、あ、ウェ―――!?トゥ、トゥ、トゥーシェがふ二人も、もも!?な、な、な」

「黙れ」


≪ドゴッ


「なブヘェッ!い、痛いでは無いか、何をするのじゃ。儂この国の王様だぞ。一番偉いんだぞ」


 あっ!・・・あれ?きいてない?ロザリークロード様に殴られたのに平気って、って言うか何かキモイ。


「黙れ」


≪ドッォゴォーン


「ブベヒッ!!!や、止めんか。儂を怒らせ」


≪ドゥッ


「ゲブッ」


≪あっ!

ありがとうございました。

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