4-65 モーヴェドラゴン⑥
「種族への愛有ればこその躾じゃ。感謝するが良いぞ」
≪ドゴォッ バキッ
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生命力四千二百万百十九が、ロザリークロード様の一撃で二へと減少し、エレオス・グラブードン・ザゲヴァドルバは再び瀕死の状態に陥り意識を手放した。
神授スキル【マテリアル・クリエイト】仮想汚穢属性...... ......傷を癒す感じ ≫
【HP】が全回復し、エレオス・グラブードン・ザゲヴァドルバは目を覚ます。
「も、もう止め、御赦し」
≪ドゴォッ バキッ
再び意識を手放す。エレオス・グラブードン・ザゲヴァドルバ。
「躾が足りんようじゃ。感謝するが良いぞ」
「何をやってるね。意識を失う前に言わないでどうするね」
「うむ。うっかりしておった。我が使徒ロイクよ。もう一度だ」
「了解しました」
これいつまで続けるつもりなんだろう。
神授スキル【マテリアル・クリエイト】仮想汚穢属性...... ......傷を癒す感じ ≫
【HP】が全回復し、エレオス・グラブードン・ザゲヴァドルバは目を覚ます。
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「躾が足りんようじゃ。感謝するが良いぞ」
「お、御赦し」
≪ドゴォッ バキッ
「を...... ......グガァッ」
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―――13ラフン経過
「飽きたぞ。どうやらこれは類まれなる愚か者の様じゃ。目を覚ます度に同じ事しか口にせん。緩し緩しとマゾか何かか全く気持ちの悪いおのこじゃ。ドラゴンソウルは何処へいってしまったのだ。使えんソウルなどあっても意味などなかろうに」
「全くだね。最近の存在はなってないね。軟弱だね。いつからドラゴン種はナマコ種の下位になったね。嘆かわしいね」
ん?今何と!
「フォルティーナ。今ナマコ種って聞こえた気がしたんですが」
「その通りだね。あたしの飼育牧場兼鉱山農場に不法侵入した愚かな存在がいたね」
「それで?」
「運を司るあたしは持ってる女だね。ポイントが沢山あったね。あたしの物を奪う存在は泥棒だね」
「フォルティーナのって言うか、人の物を盗んだら泥棒ですね」
「あたしは正義だね。道徳や倫理や風紀や風俗や習慣には寛容な女神だね」
へぇ~。
「それで?」
「ポイントを五百使って、下から二番目に強いジェネラルシーコンコンブルを一匹配置して生死は問わない好きな様にやっておしまいと指令を出したね」
下から二番目なのにジェネラルなんだ。ナマコにも階位ねぇ~、ボンバーシーコンコンブルは何番目くらいなんだろう?
「あたしの采配は見事な物だったね。一つ上のロイヤルシーコンコンブルにしなくてよかったね」
「どうしてですか?」
つうか、ジェネラルの上はもうロイヤルか。
「ロイヤルシーコンコンブルを配置していたらだね。そこで意識を失っているドラゴンはロイクが回復させる前に死んでたね。ジェネラルシーコンコンブルをギリギリのところで撃退しこの様だね。あたしの物を取ろうとするからこうなるね。いつからドラゴンは手癖の悪い種族に成り下がったね。親の顔を見てみたいね」
「遊びの女神よ。我が思うのにこれが腐ってるだけかもしれぬ。我が主様に見放されしメアの我の同種とは言えここまで愚かになれるとは思えぬのだ。これがゴミなだけだと我は思うのだ」
「なるほどだね。邪神竜の言い分にも一理あるね。分かったね。ここはメアの事はメアで解決するね。リュシル。あれはゴミかね。正直に答えるね」
「あれとは、モーヴェドラゴンのことか?」
「当然だね」
「空飛ぶトカゲはモーヴェドラゴンかファフニールだったはず。ゴミとは種族が違うとは思うのだが、どうであろうか。もう一人の妾よ。あれはゴミか?」
「ゴミでも何でも良いのじゃ~、早く帰りたいのじゃ~」
「邪神竜。生物なら燃えるゴミ。鉱物やプラは再生ゴミ。その他はその他のゴミに分別するね」
「ふむ。これは何ゴミだ?」
ゴミの話になってるし。
「竜神様。エレオスは誇り高きモーヴェドラゴン。ゴミではありません」
「何を言ってるね。お前と同じメアの存在がゴミだと言ったね。現実を受け止めるね。それが生きると言う事だね」
「竜神様。あちらの神はいったい何を言っておられるのでしょうか?」
「神使徒それに連なる者の話をお前は聞いていなかったのか。・・・愚かなだけであったな。お前にも分かる様に話してやろう。感謝するが良いぞ。お前達メア下界のモーヴェドラゴンはメア下界ではゴミ種族として認識されているそうだ。そこにおる我が使徒ロイクがトストフィアンセ二人が承認である」
「そ、それは、ドリーム様方から見たらの話であって」
「見苦しいぞ。お前も一応は我が種族であろう。例えゴミ種族と呼ばれようともゴミソウルを忘れるでない。例え雀の涙程度ほんの僅かばかりの誇りであってもドラゴン種族としてのソウルを忘れるでない。そこで我は最大限の優しさを示す事とする」
げっ!
エリウスの話が脳裏を過る。
「ちょっと待ってください。ロザリークロード様。とどめを刺すのはダメです」
「ダメだと。なぜじゃ意味が分からぬ」
ロザリークロード様は、振り上げた腕を静かに下げた。
「聞きたい事が沢山あるからです」
「あれがおれば事足りるであろう。これは居ても居なくても良いレベルである事は明白。メアではゴミ種族かもしれぬが我が種族の末席の末端に連なるのドラゴン種族だ。生き恥を晒さずに済む機会を与えてやりたいと思うは当然であろう」
う~ん。どうしたら良いのだろう。
「旦那様はあのドラゴンから何を聞き出したいのか?」
ナイスアシストです。リュシル。
「メア下界ではダンジョンと呼ばれているコルト下界で言うところの迷宮を攻略したら強制排出でコルト下界の闇の迷宮に転位移動したって事しか分かっていません」
「主殿。その件なのですが、この件が済次第報告するつもりでした」
「続けてください」
「はぁっ!まだ確かめてはいませんが彼が目にした真実です。竜眼が記憶した強制排出の転送術式はこの世界の物ではありません。ロザリークロード様が確認しております」
「どんな術式だったんですか?」
「あれの眼にあった強制転位の術式を知りたいのか。ふむ、展開してやろう。感謝するが良いぞ」
俺の目の前の宙に、半径一メートル程の魔力陣が現れた。
地面とか物にじゃなく宙にですか。これっていったいどうやるんだろう。
神授スキル【神眼Ⅲ】を意識し宙に描かれた魔力陣を視認する。
ダメだ。メア下界の物ってしか分からないや。
「うわぁ~懐かしいのじゃぁ~。このゲートを通って良く遊びに出かけたのじゃぁ~」
「このゲートをですか?って、何やってるんですか」
「ここをこうして、これをあーして、こっちをこうやるのじゃ~」
トゥーシェは、宙に描かれた魔力陣の前に立つとスライドパズルの要領で模様を動かしている。
「フォルティーナ。リュシル。ロザリークロード様。トゥーシェが何をやってるか分かりますか?」
「うんうんだね。発動タイマーのカウントを0にしようとしてるだけだね」
「ほう双子の悪魔種の片割れは喰うのが得意なだけの艶めかしい体を持った童ではなかったのだな。器用なものだ」
ロザリークロード様。トゥーシェの事、心は子供、体は大人って思ってたのか。あ~あってるか。
「主殿。カウントがゼロになります」
≪カチ
リュシルがゼロと口にするとほぼ同時に魔力陣から小さく音が聞こえた。
≪スゥ――――
魔力陣が三層に立体化し真ん中の層の魔力陣が右回りに回転を始める。
中央の魔力陣から光が溢れ出し球体が出現する。球体はゆっくりと拡大を続け、三層に立体化した魔力陣を内側にすると、拡大を止めた。
「何が起こってるか説明出来る人居ますか?」
視線を、起きてるドラゴン。エリウス。ロザリークロード様。リュシル。トゥーシェ。床に転がってるドラゴン。一応フォルティーナへと動かし、ロザリークロード様へと戻し固定した。
「我の移動に術式は不要。何かは分かるが何が起こっておるかは我にも分からぬ」
「そろそろOKなのじゃ~」
「トゥーシェ?」
「おい人、ロイク。真っ直ぐ見ろ城が見えるのじゃぁ~」
城?
トゥーシェの顔の横に顔を動かし魔力陣を見る。
「大理石の壁が見えますね」
「祖父サザーランドの居城ジブリール城ではないか」
「サザーランドの居城って、それメア下界の魔王の城って事ですよね?」
「無十楽礼拝堂なのじゃぁ~」
「城、礼拝堂どっちですか?」
「旦那様よ。無十楽礼拝堂はジブリール城の中にある礼拝堂故、城でも礼拝堂でもどちらでも良いとは思わぬか」
「よしなのじゃぁ~」
え?
トゥーシェは、魔力陣の中へ、
「よしなのじゃぁ~じゃない、あっ」
入ってしまった。
「何をやってるのじゃぁ~。私の城に招待するのじゃぁ~。皆来るのじゃぁ~」
楽しそうに手招きしてるし。
「どうしますか?」
リュシル。ロザリークロード様。エリウス。起きてるドラゴン。床に転がってるドラゴン。一応フォルティーナへと視線を動かし、無言の意思を何となく確認する。
「面白そうだね。今だね。今しかないね。はい、決定だね」
「うむ。我もメアには行った事が無い。どれ物見遊山物見遊山。我が使徒よ行くぞ着いて参るが良いぞ」
「えっと、・・・・・・了解・・・しました」
「これを晒しておくは我の美学に反するのぉ~。どれ持って行くか」
ありがとうございました。