4-64 モーヴェドラゴン⑤
フォルヘルル島で発見した無人の地下都市へ通じる三つの井戸。
この井戸を調査する為に派遣されたパロス・キクラデア子爵率いる調査チームは、井戸の中に突如発生した闇の迷宮の入口に吸い込まれ闇の迷宮の中に迷い込んでしまった。
闇の迷宮の入口が発生したのは、ラメール化した硫黄を回収した深さ五百メートルの井戸を二十メートル程潜った辺りだ。
地表で井戸の周囲を調査していたメンバーも井戸の底で無人の地下都市の郊外を調査していたメンバーも闇の迷宮の入口から離れた場所で調査していたにも関わらず闇の迷宮の中に迷い込んでしまった。
それは、闇の迷宮の入口が強い吸引力を持っていたからだ。
調査チームは、出口を求め闇の迷宮の中を彷徨い歩き、瀕死状態の大きなドラゴン種に遭遇した。
どう見てもエインシェントスピーシーズではない瀕死のドラゴン種。だが、瀕死のドラゴン種はユマン族の言葉を話した。
瀕死の有無に関わらずドラゴン種はドラゴン種だ。目の前で力無く地面に蹲っているのは最悪エインシェントスピーシーズのドラゴン種だ。
調査チームは、ドラゴン種から救助保護を求められたが、ドラゴン種の弱々しくも尊大な口調と焦点の定まらない鬼気迫った眼光に、身の危険を感じ安全確保を最優先した。
パロスさんの指示で、調査用の強化ロープと魔導具『イタイのイタイのトンデけ』で瀕死状態のドラゴン種を拘束した。
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強化ロープは、俺が神授スキル【マテリアル・クリエイト】で創造したスキルを三つも付与した便利なロープだ。
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≪アシュランス王国の支給品・強化ロープ≫
【固定スキル】
①命綱Ⅱ
②伸縮Ⅱ
※通常時持ち運びに便利な10cm※
※最長2Km※
③発光Ⅱ
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欠点は、存在が二つ以上接触していないと、スキルが機能しない事くらいだと思う。つまり一人では扱えない。
イタイのイタイのトンデけは、俺の趣味が花咲大量生産する事に成功した護符の魔導具だ。
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≪魔導具『イタイのイタイのトンデけ』≫
【効果】
①貼り付けると強度が増す
※衝撃を吸収し壊れ難くなる※
②浸透システム
※解除対策※
③独立循環システム
※魔晶石が不要、半永久的に機能※
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ただし残念な事に欠点が一つだけ存在する。
それは、護符よりも表面積の小さな物に対して機能しない作動しない事だ。・・・巻くのはOK、包むのはNG。
改良の余地はまだまだある。
欠点は確かに存在するがこの魔導具、想像以上の優れ魔導具として産声を上げたのも事実。
武具、装飾品や衣類や日用品や美術品に、家の戸や窓や柱や床や壁や天井や屋根や煙突に、城や町の城壁や門の各所に、街道の砦や橋や道の各所に、絨毯や獣車の各所等々に革命を齎した。
希望小売価格は一枚驚きの八百NLだったのだが、連合国家フィリー加盟国から一斉に苦言が届き、一枚一千万NLに変更した程の大人気魔導具だ。
仕方が無かったとは言え本当に良いのだろうか。ちょっとだけ疑問だ。何故なら、イタイのイタイのトンデけ同士だと相殺してしまう・・・。
因みに、命名はお菓子大好き食っちゃ寝ぇ~のトゥーシェだ。マルアスピーの清き一票で可決した。
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調査チームは、イタイのイタイのトンデけを巻き付け強化した強化ロープで、ドラゴン種を縛り上げ応急処置を施しているところを、俺の神授スキル【フリーパス】でエルドラドブランシュ宮殿に移動してしまった。
「危険回避の為、止血のみを行う予定でしたので、問題ありません。迷宮より救助していただき心より感謝致します」
パロスさんから報告を受け、チーム全員からもお礼を言われた。
言葉を話すエインシェントに見えないドラゴン種か。・・・念の為、明日、確認しておいた方が良いかな。・・・瀕死状態で治療途中。まっ、ドラゴン種だし大丈夫だろう。
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―――闇の迷宮の一つ
名はまだ無い・第一層らしい
R4075年09月16日(聖)10:42―――
「エッ!エレオスッ!!!あぁ~お前程の竜がその様な姿で果てようとはぁ―――」
ジャンガヴァード・バジャ・ギャヴォググは、目の前のドラゴン種を見るや否や大声で叫び涙を流している。
当たりか。強化された強化ロープで縛り上げられ、応急処置の途中で放置されたドラゴン種は、メア下界のモーヴェドラゴンで間違い無いみたいだ。
「こ、ここから出していただけないでしょうか」
「う~ん?そこから出て何とする」
「竜神様。この者は我の部下。ウェードカルンドーナの名誉あるサブリッター。せめて我の手で亡骸を」
「竜神如き下級神と一緒にするでない。我はお前の神、絶対神、邪の女神様が眷属、邪神竜ロザリークロード。邪の女神様が眷属ロイク・ルーリン・シャレットを使徒とする神ぞ。だがその愚行赦す。我が種族は情に厚く涙もろく光り輝く珍しい物力強き者を好む。性には抗えぬ」
「ヴィスズのイヤ、使徒様。信じていただきたい。我は友の亡骸を・・・」
泣きながら訴えられても困るんだけど。
「ロイク。あのドラゴンはいったい何を言ってるね。煩いね」
俺の左少し前縛られたドラゴン種側に立つフォルティーナは、大きな涙と大量の鼻水を垂れ流すジャンガヴァードを、ドン引きしながらチラ見し、その後は何事も無かったかの様に宙を指でなぞり何かに没頭していた。
タブレットの画面の操作?
「なぁ~人、ロイク。うるさくて食欲が無くなるのじゃぁ~何とかするのじゃぁ~」
「旦那様よ。あのトカゲに悪気を一だけで良い故与えてやってはくれないだろうか」
「それは構わないんですが、手っ取り早く」
「楽にして差し上げることこそ真の武人。流石は主殿です。ドラゴン種は古来より力を求め力へ挑み力に屈する高尚なる存在です。生き恥を晒さず」
「いやいや違うからエリウス。とどめを刺してどうすんですか」
「・・・死にかけのドラゴン種ですよ」
ようは、このドラゴン種を回復させれば良いだけな訳だから。簡単な話じゃないか。
「拘束を解きます」
「使徒様。感謝致します。・・・エレオス」
タブレットに強化ロープを収納。でもって、神気スキル【時空牢獄】で瀕死のドラゴン種を保護緊急隔離。序に、悪気を一だけ回復。っと。
「お、おい。エレオスに何をしたぁっ!あっ、いったい何をしたのでありますか」
「強化ロープを解いて、時空牢獄に保護して、悪気を一だけですが回復させた。それだけです」
「悪気を!・・・まだ、まだ生きてるのだな!ですか?」
「時空牢獄は、存在する物を存在しない壁が通さな代わりに、結構融通がききましてですねぇ~。中に居る限りは悪気欠乏症に陥らずに済みます。家の結界の応用なんですけどね。あっ!それとですが、家の調査チームがロープで拘束したおかげでここに移動してこれたんで、家の調査チームに感謝してくださいよ」
縛り上げた者に感謝しろって流石に無理かもしれないが事実は事実だし。
「・・・それで、エレオスは助かるのか、ですか?」
神授スキル【神眼Ⅲ】で、地面に転がるドラゴン種を視認する。
なるほどぉ~。って、あれちゃんと視られる。
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≪ステータス≫
【名前】エレオス
・グラブードン・ザゲヴァドルバ
【レベル】291
【種族】モーヴェドラゴン
【年齢】908
【身分】竜魔帝国軍副師団長
≪ステータス値≫
【HP】 7/42000119
【MP】 ――/9315762
【悪気】 1/24
【STR】 110804
【DEX】 81331
【VIT】 176777
【AGI】 97551
【INT】 8964
【WIS】 3792
【MND】 86996
【LUK】 671
≪スキル≫
①ブレス of ダーティ
※汚穢属性の息を吐く※
②ブレス of イービルファイア
※邪炎属性の息を吐く※
③ブレス of ヒーリング
※【HP】が回復する※
④噛み付き
※鋭い牙で攻撃※
⑤薙ぎ払い
※太い尻尾で攻撃※
⑥体当たり
※全身で攻撃※
⑦吹き飛ばし
※翼で風を起こし攻撃※
⑧飛行
※空を飛んで移動※
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「エレオス・グラブードン・ザゲヴァドルバさんってのが本名な訳か。ジャンガヴァード・バジャ・ギャヴォググさんと同じで発音が難しいですね。魔界メア下界の人って皆こんな感じなんですかね」
「旦那様よ、それは偏見か。濁音ばかりで刺々しく優美さを欠いた名はトカゲの専売特許故、訂正して貰えぬか」
へぇ~。まっ、取り合えず。
「名前の件は置いといて、リュシル。メア下界の人には、悪気を使った汚穢属性が回復とか治癒になるんですよね?」
「その通りだが何をする気か?」
「時空牢獄の中に入れたんで悪気欠乏症で死ぬ事は無くなりましたが、【HP】が七しかないんで放っておいたら危険かなって」
「【HP】が七。まだ七あるのですね。お願い致します。使徒様。このギャオググはどうなっても構いません部下のエレオスの命をエレオスを助けてください。お願いします。お願いします」
「おいトカゲ。お前達はもともと虚弱な種族ではなかったのか。放っておいたところで数千年後には勝手に死ぬであろう。旦那様に嘆願するとは何様のつもりか」
「何卒、何卒、お願い致します」
「なっ!トカゲ」
「リュシル」
「なんじゃ今妾は・・・お、旦那様」
「もともと回復させるつもりだったんで、その話はここまでにしませんか?」
「・・・旦那様の優しさに感謝するが良いぞ。トカゲ。妾の言葉の意味が分かるか?」
「はっ、ははぁ~。ドリーム様ぁ~」
ジャンガヴァード・バジャ・ギャヴォググは、地面に額を擦り付ける勢いで頭を下げ平伏した。
あれれ、俺へのお礼は?って、別に良いけどね。二人いた方が都合が良いと思ったから回復させるだけだし。
「それでいったいどうするのじゃ。旦那様には悪気はあるがメアの属性は無い故、汚穢は施せぬと思うのだが、違うか?」
「うん?人げ、ロイク。お前、悪気が使えるのか?私と一緒なのじゃぁ~凄いのじゃぁ~」
ト、トゥーシェ・・・今、寝てましたよね?立ったまま寝てましたよね?急に静かになった。って、今は関係ない。
「こっちで言う所の邪属性と呪いを応用して傷を癒す心象を明確にしさえすればマテリアル・クリエイトで何とかなるような気がするんですよね。まぁ~ものは試しで」
神授スキル【マテリアル・クリエイト】メア下界の汚穢属性・邪属性、・・・取り合えず呪い一式思い付く限りイメージ・・・...... ......でもってこれで傷を癒す感じ ≫
エレオス・グラブードン・ザゲヴァドルバさんに手を翳す。
「ま、待ってください。まずは我に我にぃ~~~っ」
焦げ茶色の様な黄ばんだ群青色の様な良く分からない光がエレオスを包み込む。
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「ん!?」
表現するのが困難な色の光が消えると、エレオスは瞼を開き静かに立ち上がった。
勿論、時空牢獄の中で。
「な、何だこれは・・・壁?」
≪・・・
エレオスは、自身の周囲を手当たり次第?尻尾も使いそれなりの力で叩き付け暴れ出す。
時空牢獄に壁は存在しない。壁は存在しないが通り抜ける事は出来ない。壁が存在しない以上叩いても音は鳴らない。虚しく空を切る音だけが闇の迷宮に木霊する。
あっ!目が合った。
「!?・・・下、下賤なヴィスズが何故ここに。まさかぁっ!こ、これは虫けらお前達の仕業かー。聞きしに勝る下劣さぶり。まさに卑怯そのもの。あ!?た、隊長!!!」
気付くのに時間かかり過ぎだろう。
「エレオス・・・」
ジャンガヴァード・バジャ・ギャヴォググは。哀れな何かを見守るか弱き子羊が如く、小さく静かに優しくエレオスの名を呼んだ。
「そ、そこで何をされているのですか?・・・この虫けら共を!・・・・・・早くここから出してください」
エレオスは時空牢獄の中で暴れている。
「う、うむ・・・」
「何を・・・ま、まさか隊長も下劣で卑怯なヴィスズの罠に・・・・・・おい虫けら今ならまだ許してやる。今直ぐこの卑怯極まりない下等で下劣な罠を解除しろ。それとそこの雌共を食料としてよこせ。今直ぐだぁっ!!!・・・グズグズするなウェードカルンドーナを敵に回した事を後悔させてやる。そ、そうだ虫けらお前は最後だ最後に殺してやる。罪を下等なヴィスズである己を呪うが良い」
支離滅裂だな。どうやらこのドラゴン種は、暴れながら興奮するタイプらしい。
「エレオス・・・」
「さぁ~隊長も」
「言ってる事が滅茶苦茶過ぎて意味が良く分からないんですが、要するにエレオス・グラブードン・ザゲヴァドルバさん貴方とジャンガヴァード・バジャ・ギャヴォググさんを解放し食料を提供しろって事ですよね。でもって、俺は結局最後に殺される訳ですよね?」
「下等な虫けらにしては賢いではないか。グワァッハッハッハッハッハ」
「ギャヴォググ。我の耳がおかしくなった様だ。あれの話の何処に笑いがあったのだ。答えよ」
ロザリークロード様は、ジャンガヴァードの前足?腕に腰掛け、エレオスに冷ややかな視線を向けていた。
「・・・」
ギャヴォググは、返答に困り沈黙したままだ。
「答えぬか」
「う、は、はっ!笑える所はありませんでしたぁっ!」
「ではあれは何だ」
「あ、あ・・・あれは・・・・・・」
「あれは?」
「あ、あ、あ、・・・え、エレオス説明しろぉっ!」
あっ、丸投げした。
「隊長?・・・あぁ~あ~あ~はいはい、下賤なヴィスズの雌ガキと主従交換のプレイですかぁ~・・・カァ―――隊長も好きっすねぇ~」
「エレオス・・・も、もう良い、黙れ」
「気にする必要はないですよ。我も趣味でヴィスズの番を何組か飼育しているのですが、新鮮なガキを取り上げぇ・・・おっと話が脱線しましたね。隊長っ!本国に帰還したらペルヴィスゼナン駆除の先発隊に推薦してください」
「だ、黙れ!・・・こ、こちらの御方をどなたと心得る。こちらの御方は我等がメアの絶対神が眷属神竜神様であらせられる。頭が高ぁ~い」
「はっ!?・・・ブッ!主従プレイからまさかの神様プレイですかぁっ!グワァッハッハッハッハッハッハッハッハ」
こいつ、ダメなパターンの奴だ。
「エレオス。お前はまだ未熟で感知の能力や生存に於ける本能勘が発達しきっておらん。気付けずに無礼を働いてしまう事も多々あるだろう。だが、この場でそれは絶対に許されぬ。今直ぐ懺悔し赦しを請うのだ」
「ほうぉ~面白いのぉ~」
「えっ!?」
ロザリークロード様は、エレオスの前足?腕に腰掛けいた。
「我に懺悔を慈悲を望むとはのぉ~」
「い、・・・いつの間に・・・」
げっ。ロザリークロード様、エレオスを殺しちゃったりなんかしないよなぁ~。
「あっ、また間違えたね。あたしのせいじゃないね。レスポンス、そうだねレスポンスが悪いね」
・・・こ、こいつはさっきから俺の隣でいったい何をやっているのだろうか?
「フォルティーナ。さっきから何をやってるんですか?」
「うるさいね。見れば猿にでも分かる簡単な事だね。タブレットにインストールしたゲームアプリで遊んでるね」
「はっ?」
「おっふ、二、二回押してないね。何でだね!・・・三日前にサービスが開始したばかりのゲームでボンバーシーコンコンブル・ストレージオーガナイズと言うアプリゲームをやってるね」
そう言う事を聞いてる訳じゃないんだが。
「で?」
「これはだね。課金したポイントやログインボーナスで得たポイントを使ってボンバーシーコンコンブルを配置して、倉庫整理を阻止するゲームでだね。神界初のウィンドーオブトルゥーシステムを採用しているね」
「それで?」
「このタブレットの場合はだね。表示中のリアル迷宮がゲームのステージになってだね。初回ログインボーナスで貰ったポイント一万二千ポイントを使ってぇ~四匹配置したね」
ん?・・・まさか!
「その四匹は何処に配置したんですか?」
「気になるかね」
「ええ。とっても」
「迷宮になったばかりの森の中に一匹。正方形の部屋のドアの前に三匹だね。あたしの素晴らし智謀と卓越した指捌きで阻止に成功してクリア報酬を三万ポイントも貰ったね。ウハウハだね」
・・・まさかな。うん・・・まさかな。
「今はだね。その壁の向こう側に間違って二匹と、地上二階に移動して直ぐの部屋に一匹配置したね」
へぇ~・・・。まさかな。
「地上二階は倉庫整理人が一人しかいないね。楽勝でクリア報酬ゲットだぜぇ~だね」
・・・まさかな。
「第一層にいる倉庫整理人ってもしかして、八人だったりします?」
「いてもいなくてもどうでも良い気にする必要の無い倉庫整理人が一人現場復帰して八人に増えたばかりだね。あぁ~こっちはクリアするのは難しいかもしれないね。残念だね」
「どうしてまた?」
「難易度が高過ぎるね。倉庫整理人の構成が酷すぎるね。SLGが一人、SGが一人、Gが一人、SLRが一人、URが二人、Rが二人もいるね」
「はぁ?」
「そこからかね。はぁ~・・・分かったね。良いかね。SLGはスーパーレジェンドゴッド。SLはスーパーレジェンド。GGはゴールデンゴッド。SGはシルバーゴッド。BGはブロンズゴッド。Gはノーマルのゴッド。HGはハーフゴッド。SLRはスーパーレジェンドレア。LRはレジェンドレア。URはアルティメットレア。SSRはダブルスーパーレア。SRはスーパーレア。HRはハイレア。Rはレア。Hはハイ。Nはノーマル。分かったかね」
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「か、体がう、動かん」
「我が座っておるからのぉ~。貴様如きでは当然だ」
「グッ」
「さてさて、我が使徒の善意慈悲優しさで貴様は生かされた訳なのだがどうしたいのだ」
「卑怯で下賤なヴィスズがぁっ!」
エレオスは、声を振り絞り罵声をロザリークロード様に浴びせる。
「貴様には教育が足りんようだ。どれ我が自ら指導してやろう。感謝するが良いぞ」
≪ドゴォッ
鈍く重い音が迷宮に響く。
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「グッガァッ・・・ガァ―――――ア~―――――ダァ、ハァ~・・・あ、あ、あ」
何が起こったのか理解出来なかったのだろう。エレオスから聞こえて来た苦痛の声は迷宮に響いた鈍く重い音よりもかなり遅れてから響いた。
「安心せい。我は本来右腕を椅子代わりに使うが今日は左腕にした。それにだ体力も留め置いた貴様は大袈裟な奴よのぉ~。それでも我が種族のおのこか。我の耳傍で騒々しい~、黙れっ!!!」
ロザリークロード様の可愛らしい怒号が迷宮内に響き渡る。
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「でだね。このアプリの前にドゥ―シャーより愛を込めて~風の教会編~という3Dポリゴンアニメショーンが可愛いアプリにはまって二十万ゴッドマネーも注ぎ込んだね。初回で主役級の転生と謎の魔剣が出たのに騙されたね。後で攻略サイトを見たら主役級にはLRとLとURがあったね。あたしがゲットしたのはLRで最高だったね。でもだね。これには罠があったね。サービス開始から三十分間は必ずLRが出るね。あっ、三十分って言うのはだねコルトの三十ラフンの事だね。そんなことはどうでも良いね。今は、その後からはゴミしか出なかった事が問題だね。ロイク聞いてくれだね。涙無しでは語れぬ話だね。二十万ゴッドマネーも使ったのにだね。出たのは浴衣だ手ぬぐいだ下駄だ腕時計だステータスの上限解放だ成長促進だ家内安全だ子孫繁栄だ職業伝説のドゥ―シャーだチュートリアル用人格だリセットだアップロードだどうでも良いものばかりだったね。一週間くらいで飽きて放置してしまったね。だがしかしだね。あたしはアカウントは消さない主義だね」
「えっと、フォルティーナ。さっきのゲームとか気にはなるんですけど、今はあっちをどうにかしませんか?・・・ロザリークロード様が切れちゃいそうなんですけど」
「何を言ってるね。あんなドラゴンよりあたしのゴッドマネーの方が大切だね。お金は大事だね」
ありがとうございました。