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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
―ララコバイア編ー
258/1227

4-63 モーヴェドラゴン④

―――地下(ちか)0階(レイカイ)

 メア下界のウェードカルンドーナ竜王国の

 リッター(騎士爵)モーヴェドラゴン(悪竜族)の目の前

R4075年9月16日(聖)09:39―――


 神授スキル【フリーパス】で移動し、エリウスと合流した。


 別件で用事があったからだ。


「おはようございます。主殿。確認したい事とはいったいどの様な事で・・・え?フォルティーナ様。リュシル殿。トゥーシェ殿も御一緒でしたか。本日も......」


 エリウスは、話の流れで俺だけが来ると考えていたのだろう。まさかのフォルティーナ登場に慌てながらも略式の挨拶を始めた。


 神界の社交辞令朝一の挨拶は長いから、こっちは放置で良いよな。



 エリウスが挨拶をしている間に、ドラゴンのステータスを再確認しておくか。


 神授スキル【神眼Ⅲ】を意識し視線をドラゴンへと動かす。


 邪神竜ことロザリークロード様がユマン()族の少女の姿に化現し、時空牢獄の内側でドラゴンことジャンガヴァード・バジャ・ギャオググの右腕に腰掛け話をしていた。


 エリウスの陰になっていて気付かなかった。・・・挨拶した方が良いよな。


「何処へ行くね」


「何処って、あっちで話してるみたいなんで加わろうかなって・・・」


 会話する二人(・・・)へと近付こうと踏み出した瞬間。エリウスから挨拶を受けていたはずのフォルティーナが俺を呼び止めた。


「終わったね」


「終わった?」


「だから終わったね」 


 エリウスの口上はまだ半分も終わっていない。現にまだ挨拶を続けている。・・・が、気にしてはいけない。長くなるだけだ。


「朝一の神様同士の挨拶が終わったなら調度良かったです。エリウスさっきの話なんですが」


「...... ......あっ、はい。主殿」


 エリウスは、フォルティーナへの挨拶を中断し返事した。


「昨日、闇の迷宮か......

「まだ、終わってないね」


......ら戻っ・・・えっと、何がですか?」


 フォルティーナに、エリウスと俺の会話が今正に始まろうとするその瞬間出鼻を折られた。


「だからだね。まだ、終わってないね。エリウス続けるね」


「畏まりました。...... ......」


 気にしてはいけない。長にしたら負けだ。長くなるだけなのだから。


 エリウスは、神様同士の朝一の挨拶の残り半分を続けている。


 挨拶しに行こう。


 踏み出した瞬間。


「やっぱり、終わったね」


 呼び止められた。


 ・・・さいでっか。



―――30ラフン経過


 自由なフォルティーナに振り回され時間を無駄にしてしまった。


 フォルティーナの神気スキル【無駄話】【本筋脱線】は時間の理に干渉する。ユマン()に与えられた一生寿命時間は長く無い。そんな長く無い限られた貴重な貴重な時間をジリジリと確実に奪う力を全身で受け止めながら俺は思考していた。


 こいつは、どうして、何故ついて来たんだろうか?どうせ邪魔にしかならない。邪魔しかしない。ついて来なくて良いのに。・・・と。


「おっ!」


 ロザリークロード様は、俺達に気付くと、小さく愛らしい手を振りながこっちへ向かって駆け、・・・俺達の目の前に立っていた。


 刹那。


 風の塊が俺達を襲い後方へと吹き抜けた。


 今のって、風の衝撃波?・・・自然の力の循環自然魔素(まりょく)に干渉したのか?・・・ただ速く動いただけにしか見えなかった。


「なんだ来ておったのなら挨拶くらいしても良いであろうに、我の使徒と我の間柄に遠慮は要らぬ。分かったか。・・・どうしたのだ。沈黙は肯定と言うが返事くらいしたらどうだ」


「邪神竜。今のはロイクだったから良かったね。そこいらのヒュームなら消えて無くなってたね」


「この姿は身軽過ぎていかん。我とした事が加減するのを忘れておったわ。ワッハッハッハッハ」


「気を付けるね。ハッハッハッハ」


 今、フォルティーナのやつおかしな事を口にしなかったか。


「だが言い過ぎはいかんぞ遊びの女神。この程度で消滅だと、そんなか弱き存在を創造神が創造する訳がなかろう。まぁ~何はともあれ、相変わらずふざけておるようで何よりだ。まずは、挨拶を......」


 神界の社交辞令朝一の挨拶は長い。



 長い。



「うんうんだね。ここは創造神が試しに創造した世界だね。神界では無いね。挨拶はもう良いね」


 略式かぁ~。・・・思う事は非常に多い。が、決して口にはしない。してはいけない。


 さてさて、これは神様同士の挨拶が終わったって事で良いんだよな?


「おはようございます。ロザリークロード様。一瞬で目の前に移動されたので、驚きで言葉を失っていました。今の衝撃って風属性ですよね?」


「そうか。そうかもしれんな。我はスピードオブライトの三分の一で移動出来る。それなりに速い。祝福を与えし我が使徒が気にする必要はないぞ」


 ・・・えっと、そういう意味じゃぁ~。それでも、


「あ、ありがとうございます」


 お礼の言葉は忘れない。


「うむ」


「でだね。どうして邪神竜、お前が居るね」


「遊びの女神。お主忘れたのか?ドラゴンの事はドラゴンが解決するね。あたしは知らないね。昨日我にそう言い残したであろう」


「・・・・・・・・・そうだったね。まさに名言だね。あぁ~。あたしの言葉だったとは才能が怖いね。うんうんだね」


 気にしない。気にしない。気にしなぁ~い。



 風の衝撃波に関しては、ロザリークロード様に後でお聞きしよう。


 フォルティーナに関しては、ロザリークロード様にお任せしよう。


 ホント、事がすんなり進んだ事が無い気がするよ。さてと、


「エリウス」


「はっ!」


「実はですね。昨日で」

「ファンダンショコラの途中だったのじゃぁ~。まだ六つしか食べてなかったのじゃぁ~。いったいどうしてくれるのじゃぁ~」


 フォルティーナが片付いたと思ったら、次はトゥーシェ・・・貴女で・す・・か。


「もう一人の妾よ。それでは五個だとは思わぬのか。指で数を伝えるは純真無垢な幼子故許される。大人がやるは耳に心盛大な自爆じゃ。旦那様もそうは思わぬか」


 ・・・右手に菓子。・・・口いっぱいに頬張ってる菓子。口の周りにはチョコ、今回の菓子ではショコラって言うらしい。チョコもショコラも同じ素材から出来ているらしいのだが、今はそんな事どちらでも良い。指で数を数えるとか以前の問題だ。


 勝手について来ただけのフォルティーナが、どうしてトゥーシェを勝手に連れて来る。リュシルに同行を頼んだ時点で分かるだろう。


「おい(にん)げ、ロイク。一ダースで良い。戻ったら私が食べるはずだったフォンダンショコラをよこすのじゃぁ~」


 トゥーシェは、ビクビクとフォルティーナの顔色を伺いながら、俺を指差し菓子を要求した。


 こいつ、俺には相変わらず強気だな。・・・無視して話を進めたいところではあるが、トゥーシェに無視は一番やってはいけない。適当に約束して流してしまおう。


 己の望み通りになるか。フォルティーナから罰を与えられるか。落としどころがこの二つしか存在しないのがトゥーシェだ。・・・・・・傍で永遠と騒がれる。勘弁して欲しい。


 正直に気持ちを伝える。


「分かりました。戻ったら十二個渡すんで今は静かにしてて貰えますか?」


「はっ?はぁ~っ!?・・・はははぁ~のはぁ~なのじゃぁ~。何を言っておるのじゃぁ~。ファンダンショコラはケーキとか言う究極の菓子ではあるが限りなくパンの親戚なのじゃぁ~。十三いや違う十五個が一ダースなのじゃぁ~」


 要求を素直に飲み過ぎた?・・・数を増やして来やがった。


「一ダースって十二個ですよ」


 笑顔で間違いを指摘する俺。


「旦那様よ。もう一人の妾はメア下界のアインスダズン。パン屋や菓子屋のイチダース(1dozen)の話をしておる故、十三個でも十四個でも十五個でも間違いではない。寧ろ十二個が間違い。不誠実であり接客としては最低に思われる。リピーターを増やしたいのであれば損して特を取れ。薄利多売が商売の基本だとは思わぬか」


 俺、商人じゃないし。ここコルト下界だし。


「その手があったね。ロイクゥ~~~。あたしもアインスダズンを希望するね」


「ずるいのじゃぁ~」


「何がだね」


「腐れ女神だけずるいのじゃぁ~」


「あたしは腐ってないね。お前はだまってこれでも喰ってると良いね」


 フォルティーナは、夢と希望、漢の浪漫の谷からフォンダンショコラを一つ取り出すと、フォンダンショコラを森の奥へと放り投げた。


「お前は良い女神だったのじゃぁ~―――――。忘れていたのじゃぁ~――――」


 トゥーシェは、フォンダンショコラを追い森の中へと姿を消した。


 本当に邪魔する気しかない様だな。この二人(・・・)は。って、アインスダズンは一ダースの事で良いんだよな。・・・思考していると、


「でだね。ロイク」


 フォルティーナに、力強く腕を掴まれた


「なんですか?・・・痛いんですけど・・・」


「当然だね」


 当然って・・・。


「俺、忙しいんですけど」


「知ってるね。。あたしは君の一言が欲しいね」


「は?」


「アインスダズンで良いかね?」


「何がです?」


「良いかね?」


「だから、何の話してるんですか?」


「主殿。主殿」


 エリウスが小声で話掛けて来た。


「エリウス。ちょっと待ってください。今終わらせます」


「ドラゴンは確かに重要案件ですが、主殿にとって御家族との件こそが最重要案件です。ですので助言致します」


「何をコソコソと話てるね。ハゲるね」


「助言ですか?」


「そうです」


「なるほどだね。生温いロイクに助言かね。素晴らしいねエリウス、君は出来る馬だと以前から常々思う様に心掛けようかと思っていたね」


 それって・・・。


「フォルティーナ様が良いかねと必要以上に迫り強いて来る時には、『良いとも』と適当に返答しておくと良いそうです」


 エリウスは、俺と同じ様にフォルティーナの話を無視し話を続けた。


「うんうんだね。うん?」


 流石のフォルティーナも気付いてしまった様だ。だがここも無視して話を進めよう。


「エリウス。それって誰が」


「トストフィアンセのティーパーティーの席で、トゥーシェ殿から教わりました。マルアスピー様も他の皆様も頷いておられましたので間違いないと思います」


 なるほどぉ~。フォルティーナが皆にどう思われてるのか良く分かる話だ。


「トゥ・・・トゥーシェあいつめぇ~。あたしの菓子を貰うだけ貰っておいてこれかね。飼い犬に泥を塗られるとはこう言う事だったのかね」


 フォンダンショコラを投げたの駄女神様でしたよね?


「フォルティーナ。それ、飼い犬に手を噛まれると、顔に泥を塗るが混ざってます。それにどっちも使い方としては間違ってますよ」


「何を言ってるね」


「何をってだか」

「あたしの面目は丸潰れだね。地に落ちたね。裏切られたね」


 ら、・・・相変わらず人の話を最後まで聞いてくれないわ。内容は微妙だわ。


「一つだけ確認しますが、フォルティーナってトゥーシェの事、信用してますか?」


「プ~ッ!!!ハッハッハッハ・・・有り得ないね。あれに信用信頼真実は無縁だね。プゥ~、プップッだね」


 だったら裏切られても噛まれたうちには入らない。何よりも、フォルティーナは最初から地べただった。俺には、始めから全てを地面に盛大にぶちまけた痛い(・・)だった。これ以上落ちようが無いのだから汚される心配は不要だ。


「安心して良いと思いますよ。フォルティーナが思ってる程、落ちてませんから」


「プップッ・・・何がだね?」



 ロザリークロード様とエリウスから報告を聞く前に、別件を済ませる事にした。


 別件。それは、モーヴェドラゴンことジャンガヴァード・バジャ・ギャオググに直接確認する必要がある。ジャンガヴァードの部下かもしれないモーヴェドラゴンを、フォルヘルル島の井戸調査チームが発見し拘束し放置した可能性があるからだ。


 放置する状況は俺が神授スキル【フリーパス】でチームを移動させてしまったからだ。


 異なる次元界域の間を転位移動や召喚移動する事は出来ないが、フリーパスなら抵抗無くすんなり移動出来る。


 フリーパスの適用範囲は、俺と俺の家族眷属隷属。そして準隷属。


 準隷属は、アシュランス王国の公衆奉仕者で公僕(公務員)に支給される制服作業着武具に神授スキル【マテリアル・クリエイト】で施した付与の一効果で称号『公僕』が創造神様のきまぐれによって、着衣時或いは装備時のみ俺の眷属隷属『準隷属』として認識されてしまう不具合によって存在する事となってしまった。俺の隷属の下位に当たる身分だ。


 俺が施した効果は、至ってシンプル。


***********************


 ≪アシュランス王国の公僕に支給される武具≫

  ※性能上、制服と作業着も武具扱い※


 制服、作業着、武具(主にランクエンブレム)


【付与】

 ①【HP】 200%UP

 ②【VIT】  50%UP

 ③【MND】  30%UP

 ④【LUK】  20%UP(何故かUP)

 ⑤スキル【健康】☆1付与

  ※所持者は☆+1※

 ⑥スキル【集中】☆1付与

  ※所持者は☆+1※

 ⑦スキル【睡魔耐性・極】

  ※ほぼ睡魔に襲われない※

 ⑧スキル【混乱耐性・極】

  ※ほぼ混乱錯乱しない※

 ⑨スキル【失神耐性・極】

  ※ほぼ癲癇失神しない※

 ⑩スキル【傀儡耐性・極】

  ※ほぼ傀儡されない※

 ⑪スキル【憑依耐性・極】

  ※ほぼ憑依されない※

 ⑫自己修復

 ⑬自己帰還

 ⑭永久不燃

 ⑮スキル【火属性耐性】☆1付与

  ※所持者は☆+1※

 ⑯【リュニックファタリテ(装備者指定武具)

 ⑰称号『公僕』付与

  ※アシュランス王国の公衆奉仕者※


***********************


 公務を円滑に行える様に工夫したつもりだったのだが・・・。


 結果的に、タブレットは俺の眷属隷属の効果範囲内として彼等を認識。つまり、フリーパスの効果範囲内。


 寝室のベッドで横になりながらタブレットの画面を見ていたらマルアスピーが最初に気が付いた。


「ねぇロイク」


「はい、何でしょう」


「この準隷属っていったい何かしら?」


「準隷属?」


 マルアスピーが指し示した場所を見る。


 何だ?


「何ですかねこれ・・・」


 画面を下方へスライド。次ページへ、そして下方へ、そして次ページへ、また下方へ、また次ページへ、またまたまたまた・・・・・・



 数十ページ見て諦める。


「検索、俺の準隷属の人数」


≪・・・・・・不定。正確な該当者数の検索は不可能です。


「どう言う事かしら?」


「さぁ~?・・・えっと、検索、俺の準隷属の凡その人数」


≪・・・・・・不定。称号『公僕』を所持する存在に神授されし称号『準隷属』の該当者は称号『公僕』を所持する存在と同数です。


「宮仕え全員が準隷属って事になるのかしら?」


「そうみたいですね。創造神様からは何もなかったんですけど・・・」


「それで準隷属は隷属と何が違うのかしら?」


 タブレットで調べた結果は、


***********************


 ≪称号『公僕』に神授される称号『準隷属』≫


【付与】

 ①ロイクの準隷属として認識される。

 ②取得経験値30%UP

 ③スキル【自然治癒効率上昇】☆2付与

  ※通称『聖なる涙』※

  ※1カウン()で【HP】が2回復する※

 ④スキル【自然魔素吸収効率上昇】☆1付与

  ※通称『聖なる吐息』※

  ※30カウンで【MP】が1回復する※

 ⑤スキル【即死無効】付与

  ※即死しない※


***********************



「今から闇の迷宮に移動します。ジャンガヴァード・バジャ・ギャオググさんにも同行して貰います」


「コルト下界は光の時間であろう?」


「ロザリークロード様。光の時間でも闇の迷宮自体は存在しています。出入口が存在しないだけなんですよ」


「ほう。出入口が存在しない異次元異空に今から移動する訳だな。面白そうだ。・・・うむ。我に感謝するが良い」


 ロザリークロード様は、腕を組みながら頷いている。


 同行する気満々って感じだな。


「と言う訳で、ジャンガヴァード・バジャ・ギャオググさんの部下かもしれないドラゴンを確認しに行きましょう」


「ぶ、部下だと!?」


 神授スキル【フリーパス】...... ...... 発動≫

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