4-63 聖剣ローランの進化と神授JOB。
「サンドラ。聖剣を見せるね」
「おんや、フォルティーナ様。今は朝食を楽しむ時間ですぞぉ~。はい」
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―――アシュランス王国・王都スカーレット
エルドラドブランシュ宮殿・朝食の間
R4075年09月16日(聖)08:40―――
「サンドラ。聖剣を見せるね」
サンドラさんは、タブレットの共有スペースから聖剣ローランを取り出し、フォルティーナに渡した。
「あれ?」
「どうかしたのかね」
サンドラさんの様子がおかしい。
「そ、それが・・・聖剣ローランが・・・・・・もう一本ありまして・・・いったいこれは?」
「あたしに聞かれても困るね。ロイク、答えるね」
「え?俺っ!?」
普段は何にでも出しゃばる癖に・・・。
≪You've Got Mail.
お!
朝食を済ませ、いつもの様にティータイムを楽しみながら談笑やら情報交換やら馬鹿騒ぎやらまったりしていると、創造神様からメールが届いた。
「創造神様からメールが届いたんでちょっと待ってください」
「そんな物適当で良いね。こっちは忙しいね。急ぐね」
「・・・・・・了解」
思う所は多いが取り合えず笑顔で返事をした。
*↓******タブレット画面******↓*
差出人:Mina-no-KAMIsama
宛先 :Roiku Rulin Charrette
件名 :聖剣ローラン
**↑*****************↑**
件名を確認っと、
*↓******タブレット画面******↓*
指令⑧『神授神具聖剣ローランを取り戻せ!』
達成報酬:聖剣ローランの進化
~Before~
【名称】聖剣ローラン
【種類】神具・武具・大剣
【品位】A2
【素材】神界由来の天然素材
【効果】現世との縁を断ち切る☆3
※【HP】【MND】のみを削る※
四大属性耐性☆2(加算)
聖属性耐性☆5(加算)
邪属性耐性☆5(加算)
光属性耐性☆1(加算)
闇属性耐性☆1(加算)
無属性耐性☆2(加算)
聖属性特化☆3(加算)
全状態異常耐性☆2(加算)
スキル
【スウィート・ナッシング】付与
※聖属性下級魔術レベル1相当※
※回復【HP】40~50※
※消費【MP】17※
メンテナンスフリー
リュニックファタリテ
※所有者のみ効果を引き出せる※
~After~
【名称】聖剣ローラン・W
【種類】神具・武具・双大剣
【品位】A3
【素材】神界由来の天然素材
【効果】現世との縁を断ち切る☆3×2本
※【HP】【MND】のみを削る※
四大属性耐性☆3(加算)
聖属性耐性☆6(加算)
邪属性耐性☆6(加算)
光属性耐性☆2(加算)
闇属性耐性☆2(加算)
無属性耐性☆4(加算)
聖属性特化☆4(加算)
全状態異常耐性☆3(加算)
スキル
【スウィート・ナッシング】付与
※聖属性下級魔術レベル3相当※
※回復【HP】200~250※
※消費【MP】35※
メンテナンスフリー
リュニックファタリテ
※所有者のみ効果を引き出せる※
※オートリカバリー※
**↑*****************↑**
「......みたいですよ」
メールの内容をそのまま伝えた。
「聖剣ローランは大剣の双剣になったのですね。・・・それよりも驚きました。補正効果がそんなに沢山付与されていたのですね」
≪えぇ?
サンドラさん以外、ティータイムを楽しんでいた皆が驚きの声を上げた。
「おんやまぁ~。サンドラ殿は聖剣ローランの価値を知らずに得物にしていたのですかなぁ~。はい」
「神授していただいた際、『この剣には生命力と精神力を削る力がある』『この剣には生命力を回復させるスキル【スウィート・ナッシング】の力がある』『この剣を持つ資格をお前に与える』と・・・」
説明がかなり少ない。少ないと言うよりもこれでは不足していて意味が分からない。
「分かり難いですね」
「創造神らしいね」
「ふむふむ。創造神様が価値を不明瞭なまま無価値の状態で神授するとは考え難いのですがぁ~。ピンと来ませんですぞぉ~。はい」
「今思うと、あの時頭の中に直接聞こえて来た声は、集団神授の夜の時に聞こえて来た創造神様の声とは違っていた様な気がするのです」
「神授の声が違う。不思議な話ですなぁ~。神授は創造神様の御意思御意向。執り行うは創造神様のみのはずなのですぞぉ~。はい」
あれれ、フォルティーナが前にやったあれって神授だよな?
「サンドラ殿は、創造神様の神授を創造神様に成り代わり執り行った神による神託で聖剣ローランを与えられたのかもしれませんですぞぉ~」
「神託ですか」
あぁ~。前に、母さんが言ってた気がする。
「左様ですぞぉ~。因みに聖剣ローランを手にしたのは何時頃の事ですかな?」
「二十代最後の年です。・・・十八年?十九年前になります」
うん?・・・あぁサンドラさんは俺と同じ早生まれで、本当なら四十九歳だったっけ。
「chefアランギー様。神授って誰が代行したとか分かる物なんですか?」
「おんやパトロン殿よ、当然ですぞぉ~。創造神様より託されし神授を神託するは神界に住まう神にとって最上級の誉なのですぞぉ~。終わりの無い存在にとって語り継ぐに十分な一大イベントなのですぞぉ~。はい」
「そうなんですね」
「ただしですなぁ~。記録に残されるのは、公にしても差し支えの無い神授を神託した時のみなのです」
「聖剣ローランは公にしても差し付け無いと思いますけど、違うんですかね?」
「聖剣を秘密裏に授ける必要はありませんですからなぁ~。どれどれ、然らば調べてみましょう。暫しお待ちあれ」
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「ふむふむなるほどなぁ~るほど。コルト下界のリーファ歴四千五十五年五月五日風の日の光の時間十五時五十五ラフン神授委託執行。女神フォルトゥーナ宣」
女神フォルトゥーナねぇ~。・・・フォルトゥーナ!?
「フォルティーナって、フォルティーナの事じゃないですか」
ティータイムを楽しんでいた皆が一斉にフォルティーナへと視線を向ける。
「な、なんだね。そんなに熱い視線で見つめられると照れるね。それにだね。フォルトゥーナはあたしであってあたしではないね。もう忘れたね」
な、そんな都合の良い話があってたまるか。
「聖剣ローランを神授、神託してくださったのはフォルティーナ様だったのですね」
って、あ~れぇ~?サンドラさん怒ってないし。
「神託をかね。う~・・・・・・む覚えて無いね」
「本来は、その一年前のリーファ歴四千五十四年五月五日風の日の光の時間十五時五十五ラフンに神授委託が執行される予定だったようですぞぉ~。はい」
≪えっ!?
フォルティーナは、皆の声などお構いなしだ。美しい所作で神茶が注がれた陶器の湯飲みを口に運び神茶を楽しんでいた。
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「叔母様じゃなかったサンドラ様。サンドラ様が剣聖に転職されたのは私が生まれる前でしたよね?」
「そうですよ」
「剣聖と聖剣ローランは一緒に神授していただいたものとばかり思っていました」
「そうですねぇ~。・・・今から話内容は公にはなっていない事なのでここだけの話にしてください。私の剣聖は父ボードワンから継承したinh・JOBなのです」
「えっ?神授JOBは継承しないのですよね?」
おっとJOBの認識が覆る発言が来ちゃったよぉ~。
「その様に教わり思い込まされているだけなのです」
「インプリンティングされていると?」
「守る為に、その必要があったとも言えますが、この話は次の機会にしましょう。結論から先に話します。神授JOBは継承します。親善武道大会で帝国が優勝し続ける事が出来たのはその為です」
へぇ~。そんな大会があったんだぁ~。
≪パチン
「あぁ~はいはいはいはい思い出したね」
フォルティーナは、意味も無く指を鳴らすと、胸の前で腕を組み、ドヤ顔をキメていた。
勿体ない。実に勿体ない。あの顔さえ無ければ、百点満点中百二十点はかたいのに。
一応、念の為、皆の視線がフォルティーナに集中する。
「結果オーライだね。無事に大剣の双剣に成れたね」
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皆、フォルティーナに関わるのを止め、思い思いに時間を楽しむ事にした様だ。
「面白いですなぁ~。ヒュームは実に面白い事を考える。ふむふむ。・・・・・・しっかしぃ~、これはぁ~」
chefアランギー様は、神託についてまだ調べているのだろうか?
フォルティーナが関わっている可能性が非常に高い内容だと瞬時に理解し誰も質問しない。
「ガルネス神王国、マルメット王国、フェルゼンラール王国に神授JOB所持者が多い理由が分かりましたぞぉ~。はい」
フォルティーナの事じゃない。・・・たぶん。
「どうしてですか?」
「ヴァルオリティア帝国と世界創造神創生教会がせっせと増やし売買し、そこから更にせっせと増やした結果の様ですぞぉ~」
「そ、それって非人道的にですよね?」
「ふ~む。サラ殿よ。ヒュームがヒュームを産む産ませる行為は自然の摂理、万物の理の一つですぞぉ~。人道的か非人道的かを決めるのは当事者であって私ではありません」
「国や宗教が人の意思を無視した行為に及んでいたともなれば、国際的な問題になってもおかしくないと思うのですが」
「発端過程結果は過去ですので幾らでもお教えします。ですが、ヒューム一人一人の気持ちは未来ですので教えたそばから過去のそれとなってしまい意味がありません。それに......」
これって、神様と人とのギャップだ。
「......各国で情報が共有されている時点で国際問題には成らなかった訳ですぞぉ~」
「え?」
サラさんじゃないけど、俺も、え?って思う。もしかしてこれが国家と個人のギャップって奴か。
「サラ。今chefアランギー様が御話になられている事は、次の機会にと私が話さなかった事にも繋がっています」
「守る必要がある・・・」
サラさんは、小さな声で呟いた。
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マルアスピーは、工房ロイスピーの新作の菓子を提供し、感想を求め。パフさんは、それを書き留める。
トゥーシェは、只管、それを口いっぱいに頬張る。
リュシルは、良く分からないがこっちを楽しそうに見てる。
アルさんとバルサさんとエルネスティーネさんは、紙で何かを折りながら、マルアスピーの菓子を食べては感想を口にしている。
マリレナさんとバジリアさんとメリアさんは、三人で資料を眺めながら話しつつ、マルアスピーの菓子を食べては感想を口にしている。
アリスさんとテレーズさんは、サンドラさんとサラさんとchefアランギー様の話に聞き耳を立てつつ、マルアスピーの菓子を食べては感想を口にしている。
ミューさんは帰省中だ。
そして、俺は何となくこの場に居る。
『主殿。おはようございます。メア下界のモーヴェドラゴンの件で報告があります』
エリウスから念話が届いた。
ありがとうございました。