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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
―ララコバイア編ー
256/1227

4-62 氷鏡の迷宮~第三層~

 闇の迷宮の一つ仮名『氷鏡の迷宮』地下迷宮の第三層へと移動した。


 第三層は、高そうな家具が二十八のエリアに分けられ、用途ごとにズラリとディスプレイされていた。


「あそこだあそこあそこにソファーが置いてあったんだよぉっ!」


 父バイルは、足を踏みいれるや否や、大型の高級家具がズラリと並んだ一角を指差した。


 ・・・ん?


「おめぇー等何処見てんだよぉっ!あそこだって言ってんでしょーがぁー。天井からぶら下ってんでしょー⑪リビングダイニング・ソファー&チェアー・コーナーって」


 コーナー⑪は、俺達が居る場所からでは、⑥のリビングダイニング・収納家具コーナーと⑦のプライベートルーム・収納家具コーナーの大型家具が遮蔽物となり見えない。


「ワードローブが壁になっていてプレートしか見えません。それにここはいったい何なのですか。まるで王都の高級家具屋の店内の様です」


 へぇ~、家具屋の店内ってこんな感じになってるのかぁ~。流石がサラさん王都育ちは違うねぇ~。


「ワードローブだぁー?・・・何だそれっ!?」


「衣類専用のクローゼットの事です」


「あぁ、でっけぇーチェスト(・・・・)の事かぁっ!良いよなぁー夢があってぇー」


 チェスト、夢?・・・あぁ~漢の浪漫の話か。


「夢ですか?」


「おうよサラ姫さん。夢だ夢ぇっ!漢には希望もあんだけどなぁっ!ガッハッハッハッハ」


「そ、そうなのですね・・・?・・・?・・・?」


 サラさん親父の話に正面から向き合ってはダメです。意味なんかないんです。あるけどないんです。噛み合うはずないんです。



・・・・・・・


・・・・



 サラさんは微妙に噛み合っていないまま、父バイルにワードローブとチェストの違いを説明していた。


「あぁーまぁー確かに引き出しの中にも夢と希望があるっちゃぁー・・・ある様なぁー・・・」


「・・・・・・ワードローブが並んでいて見えませんが、チェストもディスプレイされていると思います。説明は実物を見ながらにしましょう」


「そういやぁー、俺のソファーが置いてあった直ぐ後ろはチェストだった様なぁー、たっけー(高価な)木で作られてたなぁっ!それにサンドラッチから借りた剣を立て掛けたんだけどよぉー、強制排出が始まっちまってさぁー大変ってなぁっ!ガッハッハッハッハ」


 今、さり気無く凄い情報が・・・


「せ、聖剣ローランは!私の聖剣ローランは、あのソファーが置いあった場所の後ろの家具に立て掛けてあるのですね。立て掛けたのですね!!!」


 静かに話を聞いていたサンドラさんがついに吼えた。


「だ、だなぁっ!」


「バイル殿、ソファーがあった場所まで案内していただきます。行きましょう。・・・・・・何をしているのです。さぁ行きますよ。バイル殿!!!」


「・・・お、おう」


 サンドラさんは、父バイルの右腕を掴むとグイグイと引っ張りズルズルと引き摺りながら、②キッチン・小物雑貨コーナーと③エプロン&厨房服&クロス・繊維雑貨コーナーに挟まれた通路へと進み、そして姿を消した。


 サラさんと俺は、サンドラさんの勢いに気圧され二人の姿が見えなくなるまで立ち竦んでいた。



「お、追わないと。ロイク様。二人を追わないと」


「ん?」


 魔獣の気配。


「どうかされましたか?」


 左端にある④キッチン・収納家具コーナーの高そうな食器棚の近くに魔獣の気配を感じ、神眼Ⅲを意識し視線を向ける。


 神眼Ⅲではダメか。


「魔獣の気配を感じたんですが、神眼Ⅲでは分かりませんでした。タブレットでフロアーの見取り図と魔獣を検索してみます」


「分かりました。叔母様とバイル様を追い駆けながら」


「追いかける前に、魔獣の気配がしたコーナー④を確認します。いざとなったら【フリーパス】なり【転位召喚・極】でこっちに移動させます」


「はい」



 神授スキル【タブレット】見取り図...... ......サラさんとサンドラさんと親父と俺を青色で表示、魔獣を赤色で表示 ≫


***********************


【天井の高さ】     9.3m

【奥行の長さ】   276.2m

【横幅の長さ】    32.4m


【 延床面積 】  8948.880㎡

【 体 積 】 83224.584㎥


―――――

     第二層への階段

     ↓

 ――― △ ―――――― 手前の壁

    ※←現在地


  ①  ②  ③  ④★


  ⑤  ⑥  ⑦  ⑧


  ⑨  ⑩  ⑪  ⑫


  ⑬  ⑭  ⑮  ⑯★

     ★  ★  ★★

  ⑰  ⑱  ⑲  ⑳★

        ★  ★★

  ㉑  ㉒  ㉓  ㉔★

        ★  ★★

  ㉕  ㉖  ㉗  ㉘

           ★

 ―――――――――――― 奥の壁


 ★=赤色=魔獣


―――――


ダイヤモンド(金剛石)アクセルスクイラル(俊足栗鼠)

 レア度:★★★★★★☆☆☆☆(★6)


 690匹


【全 長】 18~25㎝


【 H P 】   144~160

【 M P 】     10~21

【 STR 】     13~19

【 VIT 】 1,800,000~

【 AGI 】   611,117~

【 MND 】 1,800,000~

【 LUK 】      3~27


 SKILL

 1.時空空間干渉規制制限解除

 2.魔核属性変更

 3.自然再生

 4.自然治癒☆10

 5.アクセル☆3~5

 6.クイック☆3~5


―――


ダイヤモンド(金剛石)バーサークスクイラル(狂栗鼠)


 1匹


【全 長】 6.1㎝


【 H P 】   201,666

【 M P 】       809

【 STR 】    58,411

【 VIT 】 9,140,678

【 AGI 】   997,225

【 MND 】 9,140,678

【 LUK 】     4,638


 SKILL

 1.時空空間干渉規制制限解除

 2.魔核属性変更

 3.自然再生

 4.自然治癒☆10

 5.アクセル☆7

 6.クイック☆5

 7.二段ジャンプ☆3


***********************


 うわ、奥の方が凄い事になってる。サンドラさんが言っていた通り、これってスタンピードかも。


「コーナー④どころの話じゃないです。奥は魔獣だらけです。口で説明するよりも見た方が早いと思います」


 サラさんとサンドラさんと父バイルのMRアイズにタブレットの画面を表示させる。


「ぅお何だこれぇっ!?ゲッ!!!」


 高そうな家具がズラリと並んだ家具の森の中から父バイルの声が聞こえた。


「バイル殿。一度引いて態勢を立て直しましょう」


 サンドラさんの声も聞こえて来た。


「な、何でだよぉっ!折角ここまで来たんだぜぇーめんどくせぇーだろうがぁー」


「私達だけでは危険です。私の手元には聖剣ローランが無いのですよ」


「ロイクの剣持ってるだろうがぁー。ピッカピッカギラギラ輝いてるだけのあんな切れねぇ鈍らよかよっぽどましだろうがぁっ!」


「せ、聖剣ローランを鈍ら呼ばわりするとはぁっ!弓の英雄バイル殿でも言って良い事と悪い事があります。聖剣ローランに謝ってください」


「剣に謝れだぁー?ふ、ふざけるなぁっ!男が頭を下げて良いのは古今東西浮気がばれちまった時だけって決まってんだよぉっ!はぁーん!!!」


 MRアイズに魔獣の情報を表示させたはずなんだが・・・。


「あのぉ~ロイク様。あんなに騒いでいたら魔獣に気付かれてしまいませんか?」


「お互い姿は見えませんが、凡その場所の特定はされたかもしれませんね」


 何やってんだよあの二人は。


「剣士にとって剣とは弓使いにとっての弓と同じ神聖な物です」


「あほかぁーっ!!!弓はなぁー弓だけが良くても意味がねぇーんだよぉー。矢、天候、腕、体調。弓は鞭じゃねぇーつぅーのぉっ!」


「当り前です。弓が鞭なら鞭は何なのですか?それにです。剣も剣のみで戦う訳ではありません。刃、天候、場所、技量、体調、集団なのか個人なのか状況に合わせ戦い方は行く通りもあるのです」


「お、おうそっか。まぁー剣でも弓でも何でも良いんだけどな。よぉーはぁっ!切れねぇーあの聖剣は鈍らだって事で良いじゃねぇーかぁー。なぁー。はい終わりっ!!!」


「ま、また鈍らと・・・・・・。良いですか聖剣ローランは切る剣ではありません」


「あほかぁっ!切れねぇー剣なんか持っててどぉーすんだよぉっ!んなもん捨てちまえっ!」


「聖剣ローランは、相手の生命力、精神力、体力を削り取る剣。叩き付けるか突き刺すかしない限り見て分かる様な傷はつきません」


「おっ!・・・なんだぁー最初から言えよそれぇっ!回復の魔術も付与されてる訳だぁー・・・あぁー、良い剣だなぁっ!おっと良い事思い付いたぜぇー、最初に見つけた奴の物決定ぇー。よっしゃぁー、聖剣ローラン様は俺のもんだぁー。ガッハッハッハッハ」


「ば、バイル殿。そ、そっちは危険です魔獣がぁっ!!!それに聖剣ローランは私以外の者が持っても意味がありません。神授によって私だけが能力を引き出す事が出来るリュニックファタリテ(装備者指定武具)が付与されています」


「なぁっ!それを早く言えよぉー。だったらいらねぇーしぃー。・・・あとはサンドラッチに任せたぁっ!適当にソファーに座ってから取って来ると良いぜぇっ!良かったなぁっ剣が見つかってぇっ!」


「ば、バイル殿大きな声を出さないでください。魔獣に気付かれます」


「そん時ゃぁーそん時だぁっ!そん時考えりゃー良いんだろうがぁー。ガッハッハッハッハ」


 もうとっくに気付かれてますよ。二人共。


 赤い点は、迷う事無く真っ直ぐサンドラさんと父バイルの下を目指していた。



「ロイク様。二人を召喚しますか?」


「親父には即死攻撃があるし。あの二人の近くに聖剣ローランがあるんですよね?だったらいっその事、このフロアーの家具全部タブレットに収納して、見晴らしの良い真っ平な空間にしちゃいますか?」


「それって・・・相手にも丸見えに」


「親父も戦いやすいはずです。弓矢は障害物の無い平地ではほぼ無敵なんです」


「そんな話、聞いた事がありません」


「そうなんですか?簡単な事なんだけどなぁ~。考えてもみてください。近付かれる前に射ってしまえば良いんです」


「そうかもしれませんが、バイル様一人でこの数を相手にするのは無理があるかと・・・」


「様子を見て判断します。と言う事で」



 タブレットの機能を使いフロアー中の高級家具を収納した。


≪カッラ~ン カッ カラ~ンカラ~ン


 金属音が響く。


 ――― △ ―――――― 手前の壁

    ☆☆←サラ&ロイク



          ★★★←魔獣

         ★★


        ☆☆←サンドラ&バイル

   ★★   ★★★★★

     ★★★◎★★★★

 ★★★★  ★★★★★

     ★  ★★★★

  ★★★★★




           ★←速い奴

 ―――――――――――― 奥の壁

  (◎は聖剣ローラン)


「うわぁっ!目の前にいっぺぇー居やがる。ろ、ロイクてめぇー!!!何やってくれてんだよぉっ!」


「わ、私の聖剣ローラン!!!」


 父バイルの怒鳴り声が、サンドラさんの奇声にも似た歓喜の声に掻き消された。


 サンドラさんは、魔獣の中を、床に倒れた聖剣ローラン目掛け一直線に駆け出した。


 サンドラさんと聖剣ローランとの距離約二十二メートル。


「げっ!ば、馬鹿野郎サンドラッチおめぇー何考えてぇっ!!!」


≪シュッ シュッ


 父バイルは、ファルダガパオから弓矢を取り出すと、サンドラさんの援護を開始した。


「あ、あのぉ~何だか凄い事になっていませんか?」


「・・・そうですね。色々とタイミングが悪い方に重なったと言いうか。そんな感じですね」


≪カキーン カッ


 サンドラさんは、俺が貸し出した剣で魔獣を切るのでは無く、薙ぎ払いながら聖剣ローランの下へ走る。


「ロイク様の剣でもノーダメージの様です。ロイク様。早く叔母様を」


 サンドラさんと聖剣ローランとの距離あと十七メートル。


 サンドラさんの気持ちを考えると聖剣を拾ってから召喚したいところなんだが。


「ろ、ロイクゥー!!!転位でも召喚でも転生でも何でも良いぃー早くそっちに俺達を飛ばせぇー!!!」


 父バイルは、弓を射りながら、まともな事を叫んでいる。


「ロイク様。早く。バイル様の弓だけではあの包囲網を・・・」


 そっか?サンドラさん俺の剣で薙ぎ払いながらちゃんと進んでる様に見えるけど・・・。


「ハァーッ」


≪カッキーン ブォオーン ブゥーン カッキーン カッ


 サンドラさんと聖剣ローランとの距離あと十三メートル。


 剣には斧や槍の様な使い方があったんだな。流石は元剣聖現魔剣聖サンドラさんだ。


「ハァーッ」


≪ブォオーン

≪シュッ×五


「何やってんだよぉーっ!!!弓一本でどうにか出来る数じゃねぇー。さばき切れねぇー!!!」


「ロイク様っ!バイル様が・・・矢を五本同時に射ってませんか?」


「親父ってサーカスみたいな事出来たんだな。弓矢と魔獣の解体と革製品の加工位しか出来ないのかと思ってたけど他にもプラスの特技があったんだな。って、あれも弓か」


≪シュッ×五


「お、おいこらぁーっ!聞こえてんぞぉっ!!!あとで覚えてやがれぇー・・・い嫌、許す許すから早くそっちに飛ばしてくれぇ―――!!!」


「ロイク様!」


 サンドラさんと聖剣ローランとの距離あと九メートル。


 サンドラさん急いでください。


「あっ!物凄い速度で向かって来る点が!!!肉眼では確認出来ません。ロイク様。これは?」


 えっと。このスピードはいったい?


 異様に動きの速い魔獣の表示を黄色に切替、ステータスとステータス値を黄色の点の横に表示する。


「「「ダイヤモンド(金剛石)バーサークスクイラル(狂栗鼠)!!!」」」


 サラさんと父バイルと俺はほぼ同時に魔獣の名を口にした。


 サンドラさんとダイヤモンドバーサークスクイラルとの距離百七十メートル。


「親父。六センチメートル位の栗鼠がここのボスなのか?」


「ボスだぁー・・・俺の時はでっけー蚊だったぞぉっ!」


 ボスは他にいるって事か。


「姿が見えて来ました。えっ赤いダイヤモンド?・・・ルビーではないのですよね?じゃなくて叔母様を早く・・・」


 サンドラさんと聖剣ローランとの距離あと四メートル。


 サンドラさんは聖剣ローランへと手を伸ばす。


「サンドラッチ。左二十度やべぇーのが来んぞぉー」


≪パァ―――ン


 今のはスキル【アクセル】ってやつか。


「嘘、あの速度から更に加速するなんて、・・・ロイク様。早く二人を召喚してください!!!」


 サンドラさんとダイヤモンドバーサークスクイラルとの距離十メートル。


 そろそろ限界か。サンドラさん聖剣よりも命の方が大事です。


 サンドラさんと聖剣ローランとの距離あと三十センチメートル。


 サンドラさんの目には聖剣ローランしか映っていない様だ。


「サンドラッチ。今更焦ってどぉーすんだよ身構えろぉー!ロイクが殲滅してから拾えば良いだけだろうがぁーっ!!!」


 あ。・・・そっかその手があったか。


 神授スキル【転位召喚・極】...... ...... ≫


 サンドラさんの姿が聖剣ローランの前から消え、父バイルの姿は魔獣の傍から消え、サラさんと俺の前に現れた。


「うぉ―――。私のせ、はぁっ?・・・」

「ふぅーったくよぉー。一時はどうなるかと思ったぜぇー。サンドラッチ確りしてくれよぉー」


 サンドラさんは、キョロキョロと周囲を見回すと一呼吸おいてから、


「のぉ―――――――――!!!」



 打破の優弓で魔獣を一瞬のうちに殲滅し、大量のダイヤモンドをタブレットに回収し、迷宮の外に強制排出され、名を持たざる歪みの森の迷宮に転位移動した俺達四人を静寂が支配していた。


 沈黙に耐え兼ね静寂を打ち破ったのは父バイルだった。


「サンドラッチ。気持ちは分からねぇーでもねぇー。だがよぉーこれもまた人生だ人生。人生の醍醐味って奴だなぁっ!ガッハッハッハッハ」


「わ、私の聖剣ローランが・・・」


「叔母様。もう一度、迷宮に入って次こそ回収すれば良いではありませんか」


「サラ。・・・サンドラ。サンドラです」


「は、はい」


「はぁっ?サラ姫さん。それマジで言ってんのかぁっ!」


「聖剣ローランを回収するのが今回のクエストだったはずです。それに次は、障害になる家具もスタンピードも起こっていないはずです」


「言い切ったなぁっ!もし違ってたら俺の言う事一つ聞くんだぞぉっ!」


「何故そうなるのですか。元はと言えばバイル様が叔、サンドラ様の聖剣を」


「サラ。その件はもう良いのです。剣士にとって命とも言える剣をこの様な事態に巻き込んでしまったのは私の不徳であり不注意。バイル殿を責めても何の解決にもなりません」


「そうだぞぉーサラサラぁー。命を粗末にするこたぁー良くねぇー事だぁっ!分かんだろうぉー」


 何言ってんだこいつ。


「親父。頼むから少し黙っててくれ。話が進まない」


「な、何で俺にだけ言うんだよぉっ!サラ姫さんが一番話てたじゃねぇーかよぉっ!」


 多い少ないの話じゃないんだが・・・。


「サンドラさん。氷鏡の迷宮仮の第三層にフリーパスで移動しますが行きますよね?」


「は?」


「あっ!マーキング。あれ、でも先程の迷宮は地面も天井も壁も硬くてマーキングが施せないって」


「えぇマーキングを施す事は出来ませんでしたが、第三層に在っても違和感の無い物。冒険者が辿りついたとしても絶対に回収出来ない物を置いて来ました」


「ロイク様の私物をでしょうか?」


「俺に所有権が移ったばかりの、第三層にディスプレイされていたシステムキッチンを一セット置いて来たんで、いつでも飛べますよ」



―――アシュランス王国・王都スカーレット

 エルドラドブランシュ宮殿

    ・三階のリビングダイニングルーム

R4075年09月16日(聖)01:54―――


 聖剣ローランを無事回収したサンドラさんは、サンドラさんと俺の共有スペースに聖剣ローランを収納し、タブレットの家族機能を更新した。


 そして、俺達四人は、俺の神授スキル【フリーパス】で帰宅した。


 リビングダイニングルームでは、フォルティーナとchefアランギー様とアルさんとマリレナさんが真面目な顔で話し合いをしていた。


「おんやパトロン殿よ。無事クエストコンプリートですな。はい」


「終わったのかね。うんうんだね」


「お疲れ様です。ロイク様。バイル様。サラさん、サンドラさん」


「皆さん、お帰りなさい。ロイク様、お疲れのところ申し訳ありませんが、お話があります」


 マリレナさんに促され、ソファーに腰掛ける。


「フォルヘルル島井戸調査チームのパロス達が姿を消しました」


「姿を消した?消したってどういう事ですか?」


「まぁ~落ち着くね。その事で話し合っていたね」


「姿を消したと言っても、消滅したという訳ではありませんですぞぉ~」


「つまり?」



 chefアランギー様の話では、井戸チームは突如発生した闇の迷宮の入口に飲み込まれ、闇の迷宮に迷い込んでしまった可能性が非常に高い。確率九十パーセント以上。


 もしくは、フォルヘルル島の井戸に何らかの力が加わり、神の力をもってしても視る事が感じる事が出来なくなっている。確率九パーセント以下。


 もしくは、偶然繋がってしまった異界や異空に吸い込まれ何処か違う界や域等空間に迷い込んでしまった。確率一パーセント以下。


 死んではいない。


「生きてるってどうして分かるんですか?」


「簡単だね。神界の新たな旅立ち(ボン・ヴォヤージュ)登録役所(とうろくやくしょ)の死亡履歴に名前が無かったね」


「へ、へぇ~・・・」


「でだね。バイルとサラとサンドラはここで、マリレナとメリアに交代だね。詳しくはマリレナが話すね」


 マリレナさんは、右手に持ったソーサーにティーカップを置くと、


「メリアは支度中です。メリアの支度が整うまで私達が話し合って決めた救出の方法を説明しますね」


「私も一緒に探します」


「私は剣聖です。手伝わせてください」


「サラ、君はもう今日は良いね。サンドラもだね」


「「しかし」」


 マリレナさんは、優雅に紅茶を口に運び、成り行きを見守っている。


「パトロン殿。神茶の粗茶ですがどうぞですぞぉ~。はい」


 chefアランギー様が、俺の前に煎れ立ての温かい神茶を置いてくれた。


 粗茶って・・・。神茶に粗茶なんてあるのか?


 カップを口へ運び、神茶を一口含む。


 うん。分からない。


 マリレナさんは、俺を見て笑っていた。


「マリレナさん?」


「フフ。違いが分からないって表情が面白くてつい」


 神界の食べ物や飲み物には香りは有っても味は無いって話だったよな。どうしてこの神茶には味があるんだ?


「神茶はもともと神界の存在ではないからですぞぉ~。はい。因みに違いはというと、ゼロコンマゼロゼロゼロゼロゼロイチ程神茶より時の干渉作用がマイナスになっている。が、正解です」


「なるほど・・・」


 違いは味の次元を超えてる訳か。


「「ロイク様。私達も井戸の調査に連れてってください」」

「ロイクっ!聖剣も見つかったことだしぃー、俺は寝室で夢を貪る事にする。うん、行ってこい!!!」


「そうだったね。言い忘れていたね。バイル」


「あん、何だ、まさか・・・とは思うが、また強制参加とか言わねぇーよなぁー神乳ぃー?」


「創造神がバイルに剣を神授するそうだね」


「よっし俺も行こう。ロイク、さっさと準備しなさい。創造神様からの御指名ですよ。チームの皆が心配じゃねぇーのかよぉっ!」


≪パチン


 フォルティーナのフィンガースナップの音が響く。


 テーブルの上に一本の真っ黒な剣が現れた。


「これが俺の剣かぁっ!?」


「今説明するね。少し待つね。ロイク、サラとサンドラに同行の許可を与えるのかね?」


「同行ってパロスさん達の調査にですよね?」


「当然だね」


「それなんですけど」


 神授スキル【フリーパス】俺、パロスさん...... ......レイディオさん...... ......場所:このリビングダイニングルーム ≫


 井戸チームがリビングダイニングルームに姿を現した。


 俺も一緒にフリーパスで移動したのには理由がある。フリーパスは俺の移動に便乗させ家族眷属隷属の皆を移動させる神授スキルだからだ。


 同じ神授スキル【転位召喚・極】は、俺が一緒に移動する必要は無いが、制限があり何処へでも何処からでも自由に移動という訳にはいかない。


≪ガチャ


「お待たせしました。マリレナ様、フォルティー・・・あれ?」

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