4-56 新迷宮⑩+3~夕食の間③~
夕食の時間が近付いて来ると、皆が集まり、夕食の間は賑やかになった。
今日は、サラさん、サンドラさん、俺。フォルティーナ、アルさん。マルアスピー、パフさん。父バイル、母メアリー。chefアランギー様。そして、アリスさん、テレーズさん、バルサさん。メリアさん、マリレナさん、バジリアさん。トゥーシェ。カトリーヌさん、リュシル。エルネスティーネさん。いつものメンバーに加えて、エルネスティーネさんの母親ドーラさん、実姉ルーシーさん、実弟イザーク君が参加している。
ミューさんは、ワワイ山脈に帰省中で不参加だ。
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入室と同時に襲い掛かって来る強烈な生臭さは殊の外不評で、トゥーシェはフォルティーナと一緒になって、
「今直ぐ捨てるのじゃぁ~」
「その通りだね」
「早く捨てるのざじゃぁ~」
「今だね」
「捨てるね「捨てるのじゃぁ~」捨てろね「捨てるのじゃぁ~」捨てるね!!!「すてるのじゃぁ~!!!」」
と、連呼していた。・・・連呼するだけで、率先して触ろうとは決してしなかった。
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「ここで食事をするのですか?」
マリレナさんは、【レソンネ】では無く、耳打ちで伝えて来た。
「ロイク様。私、この場所で食事をする自信がありません」
奇遇ですねテレーズさん。俺も全く同じ事を考えていました。
「私もです」
アリスさんは、テレーズさんに便乗した。
「ねぇバルサ」
「何ですか?マルアスピー様」
「貴女確か嗅覚の優れた獅子族よね。平気なのかしら?」
「あぁ、お気遣いありがとうございます。でも、もう平気です。部屋に入った瞬間片頭痛と共に馬鹿になっちゃいました。ヘヘヘ」
「そう、それなら良かったわ」
え?えええぇぇぇ!マルアスピー。それちっとも良くないですよ。
「のう旦那様よ。部屋を替えた方が良いのではないか?」
リュシル正論ありがとうございます。皆と同じで俺だってこんな空間で食事をする気は更々無いんです。
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だが、どうしてだろう。何故だろう。
夕食の間には、俺が悪い。そんな空気が漂っていた。
こう言う時こそ言訳よりも行動が大切だ。
丁寧に一頻説明を済ませてから、chefアランギー様に臭いの元の管理をお願いした。
のだが・・・・・・。誠意ある行動は時と場合によって反感を買う。誠意の御利用は計画的に。
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―――アシュランス王国・王都スカーレット
エルドラドブランシュ宮殿・夕食の間
R4075年09月15日(風)25:45―――
夕食を済ませた俺達は、珈琲を楽しみながら簡易の報告を交え談笑中だ。
「五Aのアジュールラモンターニュ産の豆を炭火焙煎しましたので、本日は神茶では無く珈琲で食後の時間を楽しんでいただきます。はい」
砂糖無しでも感じるほのかな甘さと気持ちの良い酸味は、お子様舌チームにも好評だった。
・・・お子様舌チームにも。
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フォルヘルル島の調査の進展具合は明日の報告会で良いとして、
「マルアスピー。パーティーの件はどうなりました?」
「母に伝えたわ」
微妙に不安だ。
「ミト様、大丈夫でしょうか?」
「分からないわ。でもきっと大丈夫よ。パーティーと聞いてとっても燥いでいたわ。好奇心や興味が続いている間は期待以上で動くと思うの」
ふむ。定期的に確認するしかないか。
そう言えば、マルアスピーの父親っていったい誰何だろう。・・・・・・パーティーで会った時に挨拶すれば良いし今はいいか。
「引き続き宜しくお願いします」
「分かったわ」
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「ロイク様。お願いがあります」
イザーク君が決意の滲んだ真面目な表情で話し掛けて来た。
「俺に出来る事なら良いんだけど」
「ありがとうございます。実は、......」
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イザーク君は、剣を覚えたいらしい。
自身を守る力を身に付けたい。家族を守る力を身に付けたい。大切な人を守る力が欲しい。大切な物を守る力が欲しい。
夢の中で告げられた神授の一つを果たす為にはいったいどうしたら良いのか。
考え抜いた結果導き出した答えが、近接戦闘の剣。
実際、家やこの国には剣の道に精通した人が多い。開示されている情報のみで導き出すのであれば、剣か弓か魔術の三択になってもおかしくない。
イザーク君のステータスを視る限り、イザーク君は母親譲りのマージタイプだ。
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【名前】イザーク・ワーロン
【性別】男 【血液型】A
【種族】ヒューム属ユマン種ユマン族
【生年月日】R4059年5月14日(火)
【年齢】16
【レベル】2
【JOB・cho1】 ―――
未設定
【JOB・cho】 ―――
未設定
【JOB・inh】 戦闘型
エリートマージ・レベル1
【JOB・inh】 戦闘型
マジシャン・レベル10
【JOB・inh】 戦闘型
ファイター・レベル1
【身分】亡トミーサス王国の第3王子
アシュランス王国国王の許嫁の実弟
【称号】亡国の王子
【生命力・体力】64
【魔力量・魔力】77
【物理攻撃力・筋力】18
【応用力・器用さ】21
【物理防御力・筋力】16
【敏捷性・素早さ・筋力】12
【知識知恵・記憶力】22
【魔力干渉力】21
【精神力・状態異常耐性】20
【運】4
※夕食中の為、装備による補填無し※
≪LIFE・SKILL≫
【N/A】
≪SENSE・SKILL≫
【拳の心得】☆1
【短剣の心得】☆1
【杖の心得】☆2
【衣の心得】☆2
【法衣の心得】☆1
【軽鎧の心得】☆1
【小盾の心得】☆1
【STR強化】☆1
【AGI強化】☆1
【危険察知】☆1
【地属性の心得】☆3
【地属性魔術】☆2
【地属性耐性】☆4
【火属性の心得】☆5
【火属性魔術】☆2
【地属性耐性】☆4
【無属性の心得】☆1
【無属性耐性】☆1
≪BIRTHDAY・SKILL≫
※――――――――――――――解錠≫ Go ≪―※
|【悪気変換】 |
| :【MP】を【悪気】に変換する |
※―――――――――――――――――――――※
※≪解錠条件≫ ※
※①悪気スキルを1つ以上ラーニングする ※
※②【MP】の上限が1万を超える ※
※③神或いは亜神の眷属になる ※
※④条件①②③を満たす ※
※――――――――――――――解錠≫ Go ≪―※
|【悪気スキルラーニング】 |
| :体感した悪気スキルを |
| センススキルとして扱う事が出来る |
※―――――――――――――――――――――※
※≪解錠条件≫ ※
※①【MP】の上限が1万を超えた状態で ※
※ 【HP】を1以上減少させる ※
※ 悪気スキルをその身に受ける ※
※②生命の存続が危ぶまれる呪詛を ※
※ 2つ以上その身に受ける ※
※③条件①②を満たす ※
※――――――――――――――解錠≫ Go ≪―※
|【覚醒】 |
| :神授スキル【悪気変換】と |
| 神授スキル【悪気スキルラーニング】の |
| 解錠プログラムが発動する |
※―――――――――――――――――――――※
※≪解錠条件≫ ※
※①コルト下界への干渉が認められている ※
※ 神或いは亜神なら誰でも錠解錠可能 ※
※②条件①を満たしている ※
***********************
剣の心得は、短剣の心得の修練度が二以上になるとセンススキルに付与される。
俺が付与しちゃっても良いけど、成人したての十六歳のイザーク君には、この位自力で達成して欲しい。
何より先に肉体と精神を鍛える必要があるだろう。よし、それなら。
「イザーク君の気持ちは分かりました。魔剣聖のサンドラさんが団長を務めるチュテレール騎士団の見習いとして所属を認めます。あくまでも見習いとしての所属です。演習や任務への参加は認めません。サンドラさん!」
「はぁっ!」
「イザーク君の教育係として何人か候補を選んでください」
「何人か?・・・ですか」
「はい。肉体と精神の強化。短剣の心得と剣の心得と拳の心得の強化。それと地属性の心得と火属性の心得の強化。可能そうなら地属性特化と火属性特化も剣の心得と一緒に覚えて欲しいなと考えています」
「それで私のところですか」
「です」
「ロイク様。僕、私は剣を覚えたいのですが・・・」
「はい。なのでチュテレール騎士団の見習いになる許可を出しました。イザーク君の今のステータスとスキルは教育係になる騎士に渡しておきます。短剣や剣の練習の前に必ず魔術の練習をしてください。伸びる時期に適性の高い魔術を放置するのは勿体無いです。なので貪欲に両方頑張ってください」
「・・・そうですね」
「それと、JOBが未設定のままみたいなんで、騎士団でも警備隊事務所でも教会でも何処でも構いません。JOB・choにJOB・inhのファイターレベル1を転職処理してから、騎士団で練習を始めてください」
「ファイターをですか」
「エリートマージよりは良いと思います。この件は、剣の心得を習得したら次の段階に進めましょう」
「は、はい」
「なぁロイクぅ―。短剣何てナイフ振り回して解体やってりゃぁ―。二くれぇ―直ぐだろう剣の心得だぁ―。んなもん一で良いなら一日やそこらで覚えんだろうがぁっ!」
「えっ?バイル様。それは本当なのですか?」
「あ”っ!?・・・何だおめぇ―。俺を誰だと思ってんだよぉっ!マルアスピー村のバイル嘘つかない。ってなぁっ!ちっとはぁ―巷で有名なんだぞぉっ!」
へぇ~。聞いた事無いけどな。マルアスピー村の巷ねぇ~。
「・・・頑張ってみます」
「おう。任せとけぇっ!」
イザーク君のバースデイスキルに関しては、chefアランギー様やアルさんに相談してからが良いだろう。
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さてと、
「名を持たざる歪みの森の迷宮の闇の時間の調査の事で相談があるんで、フォルティーナとchefアランギー様とトゥーシェとリュシルは残って貰えますか?」
「あたしにかね」
「構いませんですぞぉ~。はい」
「なんなのじゃぁ~。私はこれからゴロゴロするから忙しいのじゃぁ~」
「旦那様よ。あのモーヴェドラゴンの事か」
「親父何処に行く気だ?」
父バイルは、母さんの陰に隠れ、夕食の間を出ようとしていた。
「えっとだなぁ―。楽しそうだったんで、後は若いもんに任せてって言うかぁ―、あぁ―――あれだあれっ!ホラッ・・・あぁ―――もうちょっと何だよぉ―」
「バイル、お前も座るね」
≪パチン
フォルティーナのフィンガースナップの音がいつもよりもずっと綺麗に聞こえた様な気がする。
音と同時に夕食の間のドア付近から父バイルの姿が消え、夕食の間の大きな円卓の父バイルの席に父バイルが腰を下ろした状態で姿を現した。
「ゲッ!」
「逃がさないね」
「やってくれるじゃねぇか神乳」
「ふっ」
「あなた。部屋に戻っていますね」
「お、おう」
「それと、聖剣をサンドラ様に御返しするまでは、寝室とリビングには入れませんからね」
「お、・・・おう」
「それと」
「ま、まだあんのか・・・」
「皆の邪魔をしない。皆を困らせない。分かったわね」
「・・・」
「分かったわね!」
「おう」
「サンドラ様。サラさん。ロイク。無理だけはしないでくださいね。あなた分かったわね」
「お、おう」
「フォルティーナ様。chefアランギー様。宜しくお願いします」
「あたしに任せておけば問題ないね。メアリー、君はお腹の子の事だけを考えていれば良いね」
「パトロン殿の御母上殿よ。ご安心召されよ。何時もの様に就寝前にあれを飲みゆっくりと休まれるがよい。はい」
「ありがとうございます。それでは失礼しますね。・・・あなた分かってるわね」
「・・・お、・・・おう」
ありがとうございました。