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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
―ララコバイア編ー
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4-51 新迷宮⑧~意思疎通とunknown~

 父バイルの要望。


「地属性と水属性と火属性と風属性の回復魔術をセンススキルに張り付けてくれっ!」


 は、


「サンドラさんの聖剣ローランを回収したら考える」


 と、言う事にした。


「絶対だぞぉっ!・・・おいおめぇ―等何やってだよぉ―。気合入れて探せぇっ!聖剣ローラン様をいったい何だと思ってやがんだ。たっくよぉ―」


 ・・・お前がな。


「・・・」

「・・・」


 何か言いたげなサラさんとサンドラさんと視線が合ってしまい。取り合えず小さく頷いた。



―――ゼルフォーラ王国・国王王国管理地

 名を持たざる歪みの森の迷宮・unknownの前

R4075年09月15日(風)19:30―――


「で、どうすんのよこれぇ―」


 父バイルは、たぶんボンバーシーコンコンブルをペチペチ叩くのに飽きたのだろう。鼻穴を穿りながら、たぶんナマコの胴体に腰掛けている。


「・・・やっと意味が分かりました。西海国境防衛軍が使用するモルスコードだったのですね」


「え?」


 サンドラさんは、親父の耳障りな退屈凌ぎの遊びを軍の何かだとまだ思っていた?・・・???軍のモルスコードって何?


「叔、サンドラ様。バイル様のあれに意味があったの・・・ですか?」


「間違いありません。先程の『ペチ・ペチ・ペチ・ペッチィーン・ペッチィーン・ペッチィーン・ペチ・ペチ・ペチ』『ペチ・ペッチィーン・ペチ・ペチ』『ペッチィーン・ペチ・ペチ・ペチ・ペッチィーン・ペッチィーン』で確証しました」


「意味は何なのですか?」


 俺も気になる。ただ叩いていたとしか思えないが意味があるのなら一応知っておきたい。


「簡単です。『ペチ・ペチ・ペチ・ペッチィーン・ペッチィーン・ペッチィーン・ペチ・ペチ・ペチ』は、救助援軍を要請する。『ペチ・ペッチィーン・ペチ・ペチ』敵目標を捕捉した。『ペッチィーン・ペチ・ペチ・ペチ・ペッチィーン・ペッチィーン』は、危険速やかに撤退しろ。です」


「三つも意味があったのですか!」


 へぇ~。狩人のマルクフラグ(目印布・目印旗)が布の色と結び方や結ぶ場所や物で仲間に状況を伝えるみたいに、音の長短や強弱で状況を伝える方法があるのか。・・・でもこれって敵にも聞かれちゃわないか?軍が使ってるんだよな?


「サンドラさん。音を出したら、討伐対象の魔獣とか盗賊とかに気付かれちゃうと思うんですが」


「そうですね。バイル殿の様に大きな音を出し発信したのであれば聞かれてしまいますね。ですが、モルスコードはゼルフォーラ王国の海軍が独自に開発した魔導具の一つで、送信先と受信先を予め設定し使用します。開発当初の目的は同じ部隊にいながら違う場所で戦う兵士達の連携だったそうです」


「連携ですか?」


 サラさん。俺としては兵士の連携の話より、ネットハルト島の鉱山で見た昔の魔導具の超下位互換だと容易に想像出来るゼルフォーラ王国の海軍が開発した近代の魔導具の方に興味があります。


「そうです。連携です。サラ、海軍の任務の多くは何処で行われますか?」


「非常時に備えての船上陸上訓練。海上河川警備。アシュランス王国は橋の警備も海軍の仕事です。海軍は海という印象を持っていたのですが、実際は意外に陸での任務が多いのですよね」


「そ、・・・・・・そう・・・ですね。日々の訓練や警備も確かに大切な任務です。・・・では、海軍の戦闘の多くは何処で行われますか?」


「海上ですね」


「そうです。海上です。海上では千人二千人が列を組み進軍する事は出来ません」


「海の上ですからね」


「大小用途様々な船に乗り隊を組みます」


「はい」


「その際、船間で迅速な連絡を取る為に開発されたのが魔導具【モルスコード】...... ......です」


 要するに、夜間や悪天候時の使用に不便で、解読され裏をかかれる事の多かった手旗信号を止めてモルスコードを採用した。って、事か。で、親父のあれは・・・、


「サンドラさんは親父のあれを魔導具のモルスコードだと?」


「間違いありません。平常時に緊急時に備えるは美徳です」


 へぇ~・・・・・・。



「おっ、白髪か!()いなぁ―って思ってたらやっぱりだぜぇ―。フゥ―ッ」


 父バイルは、鼻毛を抜くと宙へと吹き飛ばした。


 皆が見てる前でやるなよ。汚いなぁ~。


「バイル様。レディーの前でその様な事は宜しく無いですよ」


「その通りです。バイル殿、身だしなみは一人の時に整える物です。レディーの前で恥ずかしくないのですか?」


 羞恥心を、羞恥心の欠片を一つでも持ち合わせているとお思いですか?親父にそんな素晴らしい物ある訳ないじゃないですか。


「レディーだぁ―?どこにんなもんいんだよぉ―。・・・おっ、もう一本抜けた。フゥ―ッ!」



 何の進展も無いまま、時間だけが無駄に経過する。そんな時だった。


≪グワァン


「「「え!」」」


 サラさんとサンドラさんと俺は、あまりに突然の出来事に「えっ」としか言葉が出なかった。


「オットットットッ。揺らすな馬鹿!危ねぇ―だろうがぁっ!人差し指が半分も入っちまったじゃねかよぉっ!」


 穿ってるからだろうが。って、それどころじゃないだろう。


「あ・・・えっと、あ、あれ」


 サラさんは俺の腕を掴み、たぶんナマコへと目配せした。


「ロイク様!」


 サンドラさんは、たぶんナマコを凝視したまま俺の名前を呼んだ。


「ですね。・・・親父。そこから降りた方が良いと思うぞ」


 サラさんとサンドラさんに声を掛けてから、父バイルに念の為伝えた。


「バイル様・・・」


「バイル殿、私もその方が良いと思います・・・けど・・・」


「あん?」


「いやだから、親父が腰掛けてるたぶんナマコが動いてるんだが、どうしたい?」


「はぁ―んっ?ボンバーシーコンコンブルが動い・・・てるよぉ―。・・・・・・ハァ―」


 父バイルは、大きな溜息を漏らし項垂れた。


「いったい、どうされたのでしょうか?」


「分かりません」


 親父の行動の根拠理由意味をサラさんに質問されたが俺に分かる訳が無い。


「バイル殿。前進したと思うのですが!」


「ば、馬鹿野郎。でけぇ―声出すんじゃねぇ―よぉっ!」


 父バイルは、声の音量を少しずつ下げながらサンドラさんを怒鳴りつけた。


「急にどうされたのでしょうか?」


「さぁ~」


 親父の行動の根拠理由意味をサラさんに質問されたが俺に聞かれても困る。


「いいかおめぇ―等。こいつがどうしてボンバーシーコンコンブルってなめぇ―なのか分かっかぁっ?」


「分かりません」


「私としては大き過ぎて本当にナマコなのかすら怪しいと思っているのですが」


「それ、親父が勝手にたぶんボンバーシーコンコンブルって言ってるだけで、たぶんナマコなんだよな?」


「だ・か・らぁって、オット・・・シィー、シィー、シィーだ馬鹿野郎」


 父バイルは、口の前に人差し指を立てると、喋るな静かにしろと合図を送って来た。


 喋るな?一人で騒いでるの親父だろう?


「「いったい何がしたいのでしょう?」」


 サラさんとサンドラさんが小声で話し掛けて来た。


「さぁ~、サッパリ分かりません。飽きてまた何か変な遊びでも始めたとかかもしれないです」


「さっきのあれみたいにですか?」


「あれ?サラ、さっきのあれとは何ですか?」


「ペチペチ叩いていましたよね。あれの事です」


「モルスコードは遊びではありません。西海国境防衛軍が開発した高度な通信魔導具ですよ。サラ」


「バイル様は、リリスやサンガスやコルトで活躍されていたのですよね?」


「トミーサスの英雄ですからね」


「何故、南海国境防衛軍では無く、西海国境防衛軍なのでしょうか?」


「・・・何故でしょうね。・・・ロイク様。サーフィスやリッツにバイル殿が住んでいた事はありませんか?」


 サンドラさんが詰め寄りながら問い掛けて来る。


「無いと思いますよ。マルアスピー村の外って言ったら大樹の森かコルトの町位だったと思います」


「では、あれは本当に遊びだったのですか?」


「えぇ、遊びです。断言出来ます。あれは遊びでした」


「ホラ、叔母・・・サンドラ様。ロイク様も遊びだと言ってますよ」


「おいこらっロイクっ!てめぇ―、サンドラッチとは遊びだったのかぁっ!遊び遊びって、コソコソコソコソ羨まし過ぎんぞこらぁっ!!!」


「「「はぁ?」」」


「って、ゆぅ―か!・・・てめぇ―ら薄情過ぎんだろうぉ―。おっと、シィ―、シィー、シィーだこの馬鹿野郎」


 いったい何がやりたいんだ。


「ロイク様。本当にバイル様はいったい何をされているのでしょうか?」


「ロイク様。バイル殿は先程から何を?意味が良く分からないのですが」


 う~む。


「そうですねぇ~。俺も良く分からないです」


「な、なんでだよぉっ!!!!って」


 何でって、当たり前だろう。寧ろどうして分かると思えるんだよ。


「やべっ!」


≪ゴゴゴゴゴゴゴ ピカッ

ありがとうございました。

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