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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
―ララコバイア編ー
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4-49 新迷宮⑥~堅過ぎるunknown~

 弾かれた!


「風属性も通じないみたいです」


「そうみたいですね」


「その様ですね」


「おいロイクぅ―気合が足んねんじゃねぇのかぁっ!」


「今の見てなかったのか。最上級のアニマを一筋の風の刃にまで圧縮して放った結果がこれなんだぞ。気合とかそう言うレベルの話じゃないだろう」


 しっかしまいったなぁ~。地属性も水属性も風属性も通じない。残ってるのは火属性だけなんだけど、迷宮化したとはいえ森の中で火属性を使う訳にもいかないし。う~ん、もし仮にこのunknownが親父曰くボンバーシーコンコンブルなら弱点は間違い無く火属性なんだけどなぁ~。


 神眼Ⅲを意識し目の前に存在する大きなunknownを()つめていると、


「ロイク様。次は私に試させてください」


 サラさんが名乗りを上げた。


 彼女にしては威勢の良いその声に何となく期待しつつも諦め半分で何をするつもりでいるのか確認する。


「ロイク様なら魔力の流れを見ていれば分かると思いますよ」


 サラさんはそう言い残すと、帯剣していたレイピアを直立の姿勢のまま優雅に抜き魔術の詠唱を開始した。


 神眼Ⅲ中の俺の眼には余裕で良く見える。


 右手に握られたレイピアの地面に向けられたポイント(剣先)には風属性の自然魔素(まりょく)が、胸の中央に添えられている左手には水属性の自然魔素(まりょく)が集まり始めている。


 サラさんは、サラさんオリジナルの混合魔術を使うつもりみたいだ。


 サラさんのオリジナルの混合魔術は、【並行魔術(アンサンブル)】と言う一応神授スキルの一つで、今回彼女が発動させようとしいる風属性と水属性二属性の【並行魔術(アンサンブル)】は水と風の二重奏(ダブルリード)と呼ばれる相性の良い組み合わせの一つだ。


 相性が良いと何故分かるのか。それは、俺が自然魔素(まりょく)の追加干渉と並行干渉の実験を繰り返し属性の副産物を知識として大量に習得しているからだ。


 今回のダブルリードは、風属性の強さを調整する事で、水属性の威力を増幅させる。一言で言ってしまえば水を凍らせ氷として事象に干渉する魔術だ。




 少し長めの詠唱が終わると、サラさんは右手に持ったレイピアのポイントを父バイル曰くボンバーシーコンコンブルへと向け、そして、胸の真ん中に添えていた左手をレイピアのポメルに移した。


 サラさんの左手がポメルを完全に包み込むと、


「いっけぇぇぇ―――――ぇぇぇ――――ッ」


 サラさんが力強く叫んだ。


 今日のサラさんは本当に威勢が良い。何かあったのだろうか?って、おっ!今回は少し工夫したみたいだ。


 レイピアのポイントから凍ってしまわない程度に冷却された水が風を纏いならが放水され、ボンバーシーコンコンブルに降り注ぐ。


 水はボンバーシーコンコンブルの全身を隈なく濡らすと瞬時に氷へとその姿を変えた。


 接触の衝撃と風を上手く利用して氷結速度を速めたのか?


 地面と接している部分がどうなっているのか。ここからでは分からないが見た限りではボンバーシーコンコンブルは氷漬けになっている。


「からのぉ―――」


 サラさんは、レイピアを構え直すと、氷漬けになったボンバーシーコンコンブルへと踏み込み一突きした。


 ボンバーシーコンコンブルを覆った氷全体に亀裂が走り氷全体を覆ったその瞬間。氷は粉塵をあげ破砕し四方八方へと飛び散った。


 舞い上がった氷が水へと戻り雨となってボンバーシーコンコンブルに降り注ぐ。


「おっ、虹だ虹!ここってそれなりに光があんのなぁっ!!」


「凍り付かせてから砕けばいけるかなと思ったのですが、ダメでしたね」


 雨と虹をバックに帯剣姿でペロッと舌を出すサラさん。


「サラ。今のは迷いの無いとても美しい突剣技でした。・・・・・・ロイク様。バイル殿。私もこの大きなナマコに一撃試してみても宜しいでしょうか?」


「あん?良いんじゃねぇ―。良い出しっぺが責任取るこれ世間の常識つってなぁ―あぁ―――まっ何でも良いやぁっ!サンドラッチのやりてぇ―様にやりゃぁ―それで良いんでないのぉ―。なぁっ!サラ姫さんよぉ―」


「え、あっ、は、はいそうだと思います」


「はい決定!じゃっ次はサンドラッチだ、はいどぞぉっ!」


 相変わらず適当な男だ。この人は・・・。


「サンドラさん、何か考えがあるんですか?」


「そうですね。再確認しますが転位はエラーだったのですよね?」


「はい」


 神授スキル【転位召喚・極】の転位も召喚も強制的にキャンセル処理され発動しなかった。原因をタブレットに確認したが干渉制限干渉規制に該当するらしい。


「やはりここで試すしかない訳ですね。・・・・・・これが、もしナマコなら弱点は火属性です。ですが森の中でこれだけのサイズの物を燃やすとなると森を破壊してしまう恐れがあり現実的ではありません。王都の東の玄関口にあたる森を焼いたとあれば騒ぎ立てる連中も出て来るでしょう」


「あ”ん?サンドラッチおめぇ―王族だろうがっ!んなもん無礼討ちにしろ無礼討ち」


 ゼルフォーラ王国でそんな事が罷り通るなら親父お前はもう既に何百回と無礼討ちにあってると思うが・・・。


「叔母じゃなかったサンドラ様。火属性の特化攻撃を試されるおつもりですか?」


「練度に一抹の不安はありますが、魔剣聖の力を披露致しましょう」


 サンドラさんは、左腕に装備したアーム型のファルダガパオから剣を一本取り出し正面に構えた。


 サンドラさんは、アームとファルダガパオを加工し一つにした特注品のアームを防御に特化したファルダガパオを左腕に装備している。二千キログラム程収納可能らしい。


 剣が炎に、えっ!?サンドラさんの全身が炎に包まれる。


「えっ?お、叔母様燃えてますよっ!」


「安心なさい。これでも火属性の特化を最大の一つ手前に抑えています。それと叔母様ではありません」


「は・・・はい・・・」


「はぁ―ん。特化で燃え上がるって聞いた事ねぇ―ぞぉっ!」


 親父じゃないが、俺も聞いた事が無い。


 サンドラさんを包む炎の色が赤から青へと変化し、伝わって来る熱に恐怖が見え隠れする。


≪シュ――――― ・・・


 高音が周囲に響き出した瞬間だった。青い恐怖が閃光となってボンバーシーコンコンブルを貫通した。


 速っ!・・・速いが、


「どうやら失敗の様です」


「みたいですね」


 微妙に汗ばんだクールダウン中のサンドラさんが冷静に詳細な状況を説明してくれた。


「なぁっ!なって、あれ俺にもでっきかぁっ!」


「バイル殿。今のは近接戦闘に特化した前衛職の数少ない遠距離攻撃です。使い勝手が悪く弓の英雄殿の本職の攻撃には敵いません」


 待機時間。動かない的。・・・改善の余地はありそうだが。


「頼む。ちょっとだけちょっとだけで良い教えてくれぇっ!頼む・・・頼む。頼む頼む、良し分かったぁっ俺も一肌脱ぐ。だから少しだけ教えてくれぇっ!」


「バイル様。矢では流石に無理だと思いますよ」


 いったいぜんたい何を仕出かす気なんだ。


「サラ姫さん。腰のもん貸してくれ」


「レイピアをですか・・・構いませんが、叔、サンドラ様の剣の様に無くさないでくださいね」


「あのなぁ―。あ・れ・はっ!無くしたんじゃないのよぉ―。うっかり置いて来ちゃったの。置いて来ちゃっただけなのぉ―」


 サンドラさん。・・・もしかして、聖剣でだったら・・・。あっ、でもその剣を探してる訳だから・・・。


 親父とサラさんが楽しそう(・・・・)に話をしている。そう見えるだけかもしれないが話をしているので、本格的にこのunknownをどうするか思案しているとサンドラさんが話し掛けて来た。


 どうやらさっきの一撃で代用の剣が寿命を迎えてしまったらしく、俺が保管しているアシュランス王国軍の剣をこの調査の間だけでも貸して欲しいと言う事だった。


***********************


 レミレリラス(神星石) 20%

 レインボー(神虹石)  60%

 オリハルコン(神金石)  8%

 ヴレミスリル(神銀石) 12%


 神界の四鉱石をバランス良く使った一品だ。


************************


 元はと言えば親父が原因である。


 天球の実験室で比率を研究し、やっとの思いで見つけ出した現時点で最高の剣をタブレットから取り出し、サンドラさんに渡した。


 聖剣は神授の剣な訳だから大丈夫だよね?



≪・・・ ・・・ ・・・


「音がしない!!!こ、これは何て素晴らしい・・・剣なんだ。抵抗が全く感じられない。それどころか風ですら切られた事に気付けていない。ロ、ロ、ロイク様。この剣はぁっ!」


「俺が作った剣ですよ。何かほぼ神具らしくて慎重に扱う様にって創造神様から言われちゃって、作っておいて何ですが困ってたんですよね。ハハハ」

ありがとうございました。

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