4-47 新迷宮⑤+2~モーヴェドラゴン③~
≪パチン
地下0階創生の地の巨大な森に、フォルティーナのフィンガースナップの音が響く。
悪竜族のジャンガヴァード・パジャ・ギャヴォググは、フォルティーナの強制気付けによって再び意識を取り戻した。
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「ん?」
知らぬ間に眠っていた様だ。
しかし、まさかベルヴィスゼナンの辺境にこの様な・・・・・・な!何が起こった?
我は我が竜眼を疑った。
眠る前は我の体よりも大きな巨樹が群生する深き面妖な森だった。だが、目覚めると巨樹は更に大きく成長し倍以上の大きさになっていた。
幻覚?
我は咄嗟に自身のステータスを確認する。
どうやら、状態異常には陥ってはいない様だ。であるならばだ。これはいったい。・・・・・・ははぁ~ん。なるほどな。分かったぞ。これはさっき見つけた下賤なヴィスズ共の卑劣な罠に違いない。聞きしに勝る・・・勝る。あぁ~・・・ん?さっき見つけたヴィスズ?我はヴィスズなど知らん。何の事だ?
我はもう一度自身のステータスを確認する。
やはり異常は無い様だ。ん!?・・・何だこの臭いは。
我の鼻腔を擽る微かな悪気。
・・・・・・下賤なヴィスズの臭い!・・・に、しては強く洗練されている様な気がする。
我は鼻で大きく息を吸い込む。
上級にしては脆弱で薄い。だが、中級にこの様な悪気を持った種族はいないはずだ。心当たりが無い。この悪気は・・・悪気!ん!?ま、待て。悪気を感じてる。ま、まさか。
「グガァ―――――――――ガァッ!!!」
我は能力の発動を確認する為、ローア・オブ・ブロークンハートを行使した。
力強い咆哮が深き面妖な森に響き渡る。
発動した。フッ、下賤なヴィスズの罠など所詮はこの程度という事か。フッハッハッハッハ。ハッ!・・・そう言えば、さっきも同じ様な・・・・・・いやいや、あれは・・・・・・そうだ、我は今さっき目覚めたばかり。夢だ。現実と夢を混同してしまうとは相当疲れている様だ。
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夢では確か我の眼下にヴァンパイアの隷属の下級種共が。
我は首を動かし顔ごと視線を眼下に足元へと動かした。
そうそう。こんな感じで十三人いたな。夢で・・・は、あへ?
我は我が竜眼を疑った。
あ、あれは夢。夢のはず・・・じゃ。と・・・・・・と、言う事は、も、も、もしかして、我の後ろには、・・・ま、まさかとは思うが。あの夢のまま夢と同じなら。わ我の我の後、後ろには、ド、ド。ドリ。
我の体が我の制御を離れプルプルブルブルと震え出す。
ま、待て。我はいったい何に怯えていると言うのだ。ええい動け動かぬか我の首。
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我は必死の思いで首を動かし、後方を確認した。
おっ、おお居られる。お、お終わった。我の人生は終わった。間違い無くおおお居られる。
・・・ハッハッハッハッハ。そうかこれも夢だ。夢に決まっている。夢ならば頼む早く覚めてくれ。覚めろ覚めろ覚めろ覚めろぉ~。
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ハァ~ハァ~ハァ~ハァ~・・・ダ、ダメだ。意識は確りしていると言うのに一向に覚める気配が無い。
ナナナイトメアをルーシッドドリーミングしてしまうとは、我の想像力もさもありなん我ながらが恐ろしいな。我の豊過ぎる才能が怖い。ハッハッハッハっハッハッハッハッハ。
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頼む。夢であってくれ。
「起きた様なのじゃぁ~。おいトカゲっ!私の命令を無視するとはお前なかなか良い心掛けなのじゃぁ~。ギャッハッハッハッハッハ・・・・・・ハッ!?」
は、話掛けられた!
「トカゲ。一度しか聞かぬ故、言葉を選び答えるが良い。良いか?」
「それじゃ。それ。それを言いたかったのじゃぁ~。おいトカゲ。屠られたいかぁっ!!!・・・つ、罪を認め。私の命令に服従するのじゃ。さすれば一度だけ聞いてやっても良いのじゃぁ~」
命令・・・命令?・・・命令・・・・・・罪?・・・つ・み?・・・・・・や、や闇のじょ女王様はいったいな、何を仰られて・・・。闇の女王様!はっ?
「トゥーシェよ。トカゲに罪が有ろうが無かろうがどうでも良い事であろう。今は、このトカゲが旦那様にとって有益な情報を持ち得ているかが問題じゃ。そうではないか?」
「人間ロイクはどうでも良いのじゃぁ~。私も色々一杯沢山聞きたい事があるのじゃぁ~」
「ふむ。そうであるならば、殺してしまってはトゥーシェ。主の願いは叶わぬぞ。そうは思わぬか?」
「そ・・・そぉ~なのじゃぁ~。殺してしまっては聞けないのじゃぁ~。おいトカゲ。屠られる前に全て言うのじゃっ!!!分かったかなのじゃぁ~」
え?・・・あ、はっ!???・・・よ、夜・・・ゆ、やや闇の女王様が、ふ・た・り御二人もおらおら居られる?
「のぉ~トゥーシェ。このトカゲなのじゃが小ぶりとはいえ所詮モーヴェドラゴン虚弱な上に憶病な種族じゃ。妾としてはもう少し優しく接してやっても良いのではないか。と・・・そうは思わぬか?」
「おぉ~このトカゲ。メアの下級種か久しぶりに見たのじゃぁ~。忘れていたのじゃぁ~。う~ん。・・・・・・・・・確かになのじゃ、下級種は死に易いから加減しろと誰かが言っていたのじゃぁ~」
あっれええぇぇええぇぇええぇぇ・・・・・・。間違い無い間違い無く御二人も居られる。こ、これは、もしや・・・本物のナイトメア。
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残念だが事態は非情に不味い状況だと言える。ナイトメア様御一人でも極めてナイトメアだと言うのに、こ、この状況は絶望的なまでにカタストロフィ。御二人はド、ド、ドリーム様。まさに最悪だ。
「トカゲは下級種では無く中級種ではあるが確かに死に易い種じゃ。声を掛けられただけで絶命した軟弱者もおったそうだぞ。知っていたか?」
「声でトカゲが死ぬのか。見てみたいのじゃぁ~。試してみるのじゃぁ~。・・・フッ・・・!おい!トッ!・カッ!・ゲェ~~~!!!・・・・・・おかしいのじゃ。生きておるのじゃぁ~。撫でたら潰れたと爺が笑いながら・・・フッ・・・」
殴られる!?
「トゥーシェ。妾の話を忘れたのか?」
「触らない。触るつもりはないのじゃぁ~」
我は瞼を閉じ最悪の事態に備える。
・・・
殴られずに済んだのか?・・・視線が合うのを避ける為、このまま瞑ってお
「おっまた気絶したのじゃぁ~。命令通り一思いにっ!」
くのは止めておこう。
慌てて瞼を開いたが、時既に遅く最悪の事態が我に迫って来ていた。ど、どっちを選んでも同じなのであれば。それならばいっその事、・・・・・・痛くない方で・・・。
我は我を手放す決意を瞬時に決心し、再び瞼を閉じた。
「トゥーシェ。止めるのじゃ。願いが叶わなくなるぞ。良いのか?」
・・・。???闇の女王様が、闇の女王様を静止してくれたのか?いったいな、何が起こってるのだ。・・・ど、どうしてここにドリーム様がぁっ!?御二人も居られるのだ。違う・・・こ、・・・こ、この様な辺境にドリーム様が居られる訳が無い。き、きっとこれは夢。そうだナイトメアだ。・・・やはり夢であったか。
「でも、不思議なのじゃ、おかしいのじゃぁ。私は最初に優しく言ったのじゃ~」
「あれがか?主は確かこう申しておったと思ったが。違ったか?」
あ・・・はっ!ゆ、夢の続き・・・・・・思い出したぞ。夢の続きは確かこうだ!
「『死にたいか?・・・死にたくなれば全て話すのじゃぁ~ギャッハッハッハッハ。おっと言い忘れたのじゃぁ~』・・・」
夢はここで、
「気絶したら殺すのじゃぁ~。私の命令は絶対なのじゃぁ~。グゥッハッハッハッハッノハッ」
あれ?終わっ・・・て・・・。って、どうやら。
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我は静かに己を手放す事にした。
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あっ、また気絶した。
「ロイク様。トゥーシェさんとリュシルさんを、そのドラゴンから離した方が良いと思います」
「そうみたいですね」
ありがとうございました。