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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーコルト編ー
24/1227

1-16 第3師団と、ドラゴン。

作成2018年2月27日

***********************

【タイトル】 このKissは、嵐の予感。

【第1章】(仮)このKissは、真実の中。

 1-16 第3師団と、ドラゴン。

***********************

――― コルト町の南約20Km 分岐点

――― 6月2日 06:20


 俺と、大精霊マルアスピー様と、契約奴隷パフ・レイジィーと、ジェルマン・パマリ子爵様と、マリア・パマリ子爵夫人と、アリス・パマリ子爵令嬢と、数人の子爵家の私兵?は、パマリ侯爵領コルトの南約20Km。王道中央街道のルートフォー(中央街道)とルートトゥー(南街道)の分岐点、ジェルマン・パマリ子爵様が団長を務める王国中央騎士団第3師団との合流地点に居た。


 2つの陽が昇り始める早朝に集合という強行スケジュールだ。昨日の湿地帯の魔獣殲滅をセイズマン・パマリ次期侯爵様に報告し、デザートコーナーからマルアスピーとパフ・レイジィーを引き剥がし、侯爵邸に泊っていくと良いというセイズマン・パマリ次期侯爵様からの申し出を丁重にお断りし、王国軍パマリ領駐屯騎士団事務所に立ち寄り、ドラゴン討伐の為の動きを確認し、ジェルマン・パマリ子爵邸へ移動。軽い打ち合わせの後、陽が昇る前には出立しなければならない事もあり、ジェルマン・パマリ子爵邸に泊めて貰う事になった。


 ドラゴン討伐を目的とした分岐点への集合にも関わらず、女性達の陽が昇る前の朝の支度は、パーティーへ向かう物と寸分たがわぬ程に時間を必要とし、早馬を急がせても日の出に間に合う事は不可能な事態になっていた。時間(時刻)の概念が無い為、『日が昇った頃』『昼飯の前頃』『昼飯の後頃』『夕方頃』『陽が沈んだ頃』と、皆一様に予定が曖昧で適当だからだ。


 早朝、『陽が昇った頃に集合』の場合が最も深刻だ。目印になる陽の動きが確認出来ない為、余程の事が無い限り早朝に集合し合流という無謀な事をする者はこの世界にそう多く無いだろう。


 06:00。2つの陽が顔を出し、朝が訪れた。俺は、子爵邸の朝食の間で、優雅に薫紅茶を飲みながら、少しずつ昇る朝日を楽しむ。そんな贅沢な時間の中に居た。ジェルマン・パマリ子爵様と2人で・・・


「陽が昇ってしまった・・・。早朝陽が昇り始めた頃と連絡鳩で届いた手紙には書いてあった。分岐点まで20Km、早馬で急いだとしても、登り始めた陽が昇り出す前に到着する事は無理だ・・・」


 優雅に紅茶を楽しむ俺とは違い、子爵様は落ち着きが無かった。


「陽が昇るタイミングが正確に分かる魔導具は無いのか?朝に悩まされた先人が沢山居ただろうに・・・誰も陽が昇るタイミングを正確に把握しようとしなかったのか?どうしてだ!」


 時間の概念が無い世界だし、時間に追われて生活している人がほぼ居ないからでしょうね・・・子爵様。昨日、神様からの予定表に従って動いて身を以て理解しました。時間は人を振り回します。時計の仕組みを理解していない状態でもこれですから・・・


「ロイク君。女性陣達はまだなのかね?」


「俺に聞かれても・・・」


「ロイク君。君の能力で、朝のタイミングを正確に知る事は出来ないのかね?」


「出来ますよ」


「流石に、自然相手だ。無理に決まっているか」


 ・・・


「で、出来るのか?」


「えぇ~朝を正確に知る訳では無いのですが、1日を正確に把握出来るので、結果的に朝も正確に把握する事が出来るだけなんですけど・・・これ神授スキルなので、秘密でお願いします」


「ふむ、知っているのは誰と誰かね?」


「両親と、マルアスピーさ・・・と、パフさんと、コルト大聖堂の大神官長様ですね」


「秘密は守る。教えてくれ」


「構いませんが、俺が一緒じゃないと余り意味無いですよ」


「ふむ・・・」



「お待たせしました。さぁ~急ぎましょう貴方・・・って、あら嫌だ。もう陽が昇ってるわ・・・」


「マリア。君の化粧室からも陽は見えただろう・・・?」


「・・・ところで、アリスはまだかしら?私、様子を見て来るわ」


「あぁ~頼んだよ」



「その神授スキル何だが、似た様な事を魔導具では出来ないのかね?」


「そうですね。可能ですが・・・お薦めはしません」


「何故かね?」


「昨日、このスキルに振り回されて、普段の生活がどれだけ心に豊かさを与えているのか痛感しました」


「そんなに、そのスキルは・・・・・・そんなに精神に負担をかけるのかね?」


「使い方でしょうが、一日中意識して動くのは絶対に止めた方が良いです」


「なるほど。私は朝だけを正確に知れたらそれで良いのだが、何とかなら無いかね?」


「結局、1日を全て把握する事になりますから、ジェルマン・パマリ子爵様の使い方次第になってしまいます。あと、他の人には見せたり教えたりしない様に約束していただけるなら試してみます」


「分かった。約束しよう。マリアには教えても良いか?私よりもあいつにこそ、必要だと思ってな」


 なるほど・・・


「マルアスピーの家に俺のスキルに似た魔導具があるので、それを参考に作ってみます」


 あれ?それって、家にあるんだっけ?


『メアリーママさんに見せる為に、ロイクの家に持って行ってから、そのままね』


 そっか


『ところで、もう朝だけれど、まだ出発しなくて平気なのかしら?』


 パフさんと、キャビンで何してるんですか?


『昨日のデザートの作り方をパティシエという人間種から聞いたの。それをまとめているのよ』


 そうなんですね。


『メアリーママさんから教わる予定の食べ物とか、これから出会う食べ物とか、人間種達の文化や歴史が少しずつ私の手元に集まるって訳よ』


 主に、食べ物。その中でも菓子類ですね・・・


『そうね。フフフッ』


 準備が出来たら、キャビンごと俺のスキルで分岐点に移動します。俺達だけ移動して、また戻って来て、キャビンで移動するよりも速いですから。


『分かったわ。アリスって人間種をお嫁さんに貰うの?』


 どうしてそうなるんですか?


『だって、昨日、『嫁にやる』とか、『責任を取って嫁に貰ってくれ』とか言われていたでしょう』


 あれは、言葉の綾ですよ。いちいち本気に取っていたら、人間疲れちゃいますよ。


『嘘をついている様に感じなかったけれど、そうなのね・・・難しいわね人間種は』


 その割には、勘が鋭いですよね?


『フフフッ』



「お待たせしました。御父様。ロイク様」


「あぁ~・・・もう陽が昇り出してから、かなり経ってしまった。伝書鳩を団に飛ばし、私達は少し遅れると連絡してから出発しようと思う」


「起きて支度をし始めた時には、登り出してしまいました。昨日は遅かったので、睡眠不足みたいです」


「ドラゴン退治に同行するのは諦めるかね?」


「いえ、同行します」


「旦那様。伝書鳩ですが、ここからですと、騎士団事務所が一番近い鳩小屋です。使いを出し手紙を運ばせましょうか?」


「そうしてくれ」


「ジェルマン・パマリ子爵様。ちょっと待ってください。俺のスキルで分岐点まで移動しちゃいましょう。騎士団ではない部外者の俺や非戦闘員が一緒の状態で遅れてしまうと、何となく気まずいので・・・」


「そうか、そうしてくれるなら、私は有難い。実を言うと頼もうかと思案はしていたのだが・・・昨日からロイク君には頼みっぱなしだしな。どうかとも考えた訳だ。ハッハッハッハッハ」


「皆さん、準備はOKですね」


「はい」←アリスさん


「えぇ」←マリアさん


「おぉ。それでは頼んだぞ」


 マルアスピー移動します。キャビンごとなので分からないかもしれませんが、外の景色が変わるのでパフさんが驚かない様に移動する事を伝えてください。


『分かったわ』


 【フリーパス】【タブレット】:移動:場所・コルト町の南20Km地点・王道中央街道ルートフォーとルートトゥーの分岐点:対象・俺だけ。発動≫



――― コルト町の南約20Km 分岐点

――― 6月2日 06:19


 ここが、分岐点か。まだ、誰も来てないみたいだな。【転位召喚】:マルアスピー様、パフ・レイジィー、ジェルマン・パマリ子爵様。マリア・パマリさん、アリス・パマリさん、キャビン、と、一応聖馬獣(エリウス)さん。それと、名前知らないから、子爵邸の兵士達を適当に召喚:場所・俺を中心に半径10m以内。発動≫



「転位は本当に早いねぇ~・・・ロイク君」


「御父様。家の見張の者まで来ている様ですよ」


「あら、本当だわ」


「済まないが、ロイク君、この6人以外は、屋敷に戻してくれないかね?」


「分かりました」


 

――― コルト町の南約20Km 分岐点

――― 6月2日 06:20


 そして、今に至る訳なんだけど・・・


「御父様。騎士団はまだの様ですよ」


「そのようだね」


「貴方、私とアリスは朝食がまだでしたから、待っている時間を使って済ませてしまおうと思うのですが、何か食料は持って来ていますか?」


「いや、騎士団と合流するので、持参したのは非常食と水だけだ。護衛の兵士に持たせてある」


「待った方が良さそうね・・・」


「しかし、ロイク君。馬車ごと転位させたのかね・・・いやー流石だねぇ~」


 一応、馬車か・・・


「マリアさん、アリスさん。俺のキャビンに食べ物があります。好きな物を食べてください」


「それと、待っている間、暇ですし、キャビンの中は長旅用に改良してあるので、家の連中と一緒になりますが、もし宜しければ、寛いでくれて構いませんよ」


「騎士団で行動する事が多いから、こう見えて野宿も平気なのよ。でも、有難く使わせていただくわ」


「はい。折角ですから食事も一緒にどうぞ」


「ありがとう」


「御母様。私も御一緒します」


「ロイク様。私も使わせていただきます」


「どうぞ。食事の後、騎士団が到着するまで眠っていても良いですよ。起こしますから」


「な、何で私だけ、食べた後、寝る事になってるのよ」


「睡眠不足だって言っていたので」


「ハッハッハッハッハ。結婚する前から、女を甘やかすと後から大変になるぞ!ロイク君」


「結婚って・・・・・・それはそうと、騎士団は今、どの辺りを進軍中なんでしょうか?」


「・・・そうだねぇ~。近くまでは来ていると思うが」


「ジェルマン様」


「どうした」


「計算していたのですが、英雄ロイク様の魔力量がおかしな事になています」


 ジェルマン・パマリ子爵様に話かけたのは、子爵家に仕える警護の兵士で、上級魔術師の女性だ。仮面を被り黒いマントで全身を覆っている為、どんな人なのかさっぱり分からないが、印象深かったので転位召喚の際の兵士達の中で真っ先に頭に思い浮かんだ人だ。


「ふむ。おかしな事と言うと?」


「はい。英雄ロイク様は、御自身。ジェルマン様。奥様。アリス様。マルアスピー様。パフ様。かなり大きな馬1匹。特大馬車1車両。そして私達を初回11名。コルトの町の子爵邸からここまで転位魔術で移動させています。その後、5名を子爵邸に戻す為、御自身は往復しています」


「そうだね」


「コルトの南外壁門からここまで約20Kmの道則です。子爵邸からですと、約22Km~23Kmあります」


「そうだね」


「人1人を100m転位させるのに、魔力を約10消費します。ここまで運ぶのに、1人に消費する魔力量は、約2200~2300です」


「そうなるね」


「この時点でおかしいのです」


「何がだね?」


「英雄ロイク様は、狩人(ハンター)だと聞きました。しかもJOBを職業設定していない状態だと聞いてます。私達魔術師の魔力量は、宮廷魔術師レベル10で考えた場合、個体レベルが30だとして、装備を考慮しない場合の推測値ですが約2000です」


「ふむ」


「宮廷魔術師に不可能な事を、狩人に可能なのでしょうか?」


「英雄と宮廷魔術師(パレスマージ)を比較しても意味がないだろう」


「ですが、宮廷魔術師レベル10は、魔術師の頂点です。狩人に魔力や魔術で負けるなどあっては世界のルールが・・・」


「それに、彼の個体レベルは275だ。魔力量も我々の想像を超えた物なのだろう。ハッハッハッハ」


「2、275?信じられません」


「私だけでは、騎士団の監察官や他に沢山の者達が見ている。事実として受け止めるしかないさ」


「・・・2、275・・・」


「ロイク君。因みに君の魔力量は幾らなんだい?」


「俺ですか?」


 レベルが上がったり装備が強化されてから、落ち着てい見てないからなぁ~・・・


「正確な数値は分かりませんが、約30万強ですね」


「おぉ~なるほど。その魔力量なら、魔獣1000匹を一瞬で倒せても不思議ではないか」


「さ、さ、30万で・・・ですか・・・だ、大賢者と称えられ、世界中でその名を語られる。マクドナルド・ガリバーは、精霊具と呼ばれる神具にも並ぶ武具を4つ装備し、その魔力量は1万以上だったと言われています」


「彼は、その神具に並ぶ武具を作れる訳だから、マクドナルド?っていう賢者よりも魔力量が高くても納得出来るよ」


「マクドナルド・ガリバー大賢者様です」


「上級魔術師さん。その精霊具というは、どんな武具だったのでしょうか?」


「まさかですが、ジェルマン様も英雄ロイク様も、大賢者様の事をご存知無いのですか?」


「はい、聞いた事もありません」


「私もだ」


「何て事でしょう。・・・良いですか、マクドナルド・ガリバー様は、ゼルフォーラ王国宮廷魔術師の5代前の宮廷魔術師長様であり、王国王立大学学芸院の7代前の学長様です」


「それって、何年位前の話ですか?」


「引退され、廟に移られたのは、R3888年10月12日です」


「結構前の話ですね」


「私が知らないはずだ」


「愛用されていたと言い伝えられている精霊具は、賢者の杖。賢者の衣。賢者の帽子。賢者の石の4つです」


「精霊具なのに、賢者と名がついているのか?」


「はい、ジェルマン様」


「マクドナルド・ガリバー大賢者様は、無属性魔術の転位魔術に優れ、未来を予見し、四大属性の地・水・火・風を操り、宙を歩いたそうです」


「なるほど」


「相対し合う属性を操り、四大属性を自由に使う事がどれだけ難しい事なのか、お分かりでしょうか?」


「火属性の適性を所持する者は、水属性の適性を所持する事は難しいって、属性相関の話だろう?」


「はい。それゆえに、属性を3。属性を4つ適性に所持する者を、王宮は宮廷魔術師として王国内から身分を問わず集めているのです」


「ほう。宮廷魔術師達がその様な体制で組織されているとは知らなかった。騎士団の魔術師よりも宮廷魔術師達に精鋭が多いのにも頷ける。因みに、君は属性を幾つ所持しているのかね?」


「私は、地属性と火属性です」


「なるほど」


「ロイク君は、全ての属性を所持していたね。彼女に属性を所持するコツとかなんか教えてやったらどうだね」


「コツですか?」


「全属性?とは、四大属性を全て所持しているという事ですか?」


 コツって言われても、俺自身良く分かって無いのに・・・


「何て言いますか、俺は、地属性・水属性・火属性・風属性・聖属性・邪属性・光属性・闇属性・無属性を一応扱えるんだけど、光属性は発光位しかやった事が無いから全部って言って良いのか分からないです」


「・・・英雄ロイク様は、聖属性の賢者(サンサージュ)様なのですか?」


「サンサージュ?って何ですか?」


「全属性を無効化すると言われる聖属性を所持している者を、聖属性の賢者(サンサージュ)と言います」


「そうなんですか?・・・それなら、ジェルマン・パマリ子爵様に昨日受け取っていただいた指輪は、聖属性の回復魔術【天使の輪】が扱える様にスキル付与してあるので、ジェルマン・パマリ子爵様も聖属性の賢者(サンサージュ)って事ですね」


「おぉ~、私も賢者か。騎士であり賢者とはなかなか豪勢だな」


「今、今・・・聖属性の回復魔術を付加した指輪と聞こえたのですが・・・」


「あぁ~確かに昨日、聖属性の回復魔術レベル2までだが扱える様になる指輪を貰ったぞ。ほら、右手の人差し指にある白く光っている指輪があるだろう」


「近くで拝見しても宜しいでしょうか?」


「あぁ構わんが、君何だか怖いぞ・・・」


「失礼します」


 上級魔術師の女性は、ジェルマン・パマリ子爵様の右手を掴み指輪を凝視しながら、たまに触っては感激している様だった。


「何て凄い魔力でしょう・・・英雄ロイク様の自作なのですよね?・・・この指輪には他にも力がある様に感じるのですが・・・?」


「あぁ~、この指輪はねぇ~、こっちの左手の人差し指に付けた指輪と対になっていて、両方装備しないと効果が無い仕様でね。2つ装備すると、確か・・・【HP(体力値)】の最大値が300%になって、【MP(魔力量)】の最大値が200%になって、【STR(物理攻撃力)】の最大値が+100で、状態異常耐性が100%UPして、地属性と水属性と火属性と風属性と邪属性と闇属性の耐性値が50%UPして、レベル2の聖属性回復魔術【天使の輪】が使える様になるだったかな」


「な、な・・・神具級の武具ではありませんか」


「先程、彼は神具級の武具を作れると言わなかったかな?」


「確かに、お聞きしましたが・・・」


「この事は余り人に言わないでいただけますか?静かに旅をして、故郷に戻って、大樹の森で普段通りの生活を送りたいので」


「英雄ロイク様は、それだけの力を持ちながら、猟師の様な生活を送りたいと仰るのですか?」


「コルトに来て分かりました。ごちゃごちゃした人間関係は俺には不向きだと」


「ロイク君の能力は非常に惜しいが、彼の人生は彼の物だ。君の人生が君の物であるようにね」


「そうですが・・・英雄ロイク様を故郷に留めておくなど王国の損失でしか無い様な気がします」


「俺は、転位もありますから、呼ばれれば、王宮でもジェルマン・パマリ子爵邸でも、いつでも直ぐに行けます。何処に住んで居ても余り差は無いと思いますよ」


「それもそうだな。ハッハッハッハッハ」


「そこが既に、静かに生活したい者の話ではなくなってる様な気もしますが・・・」



――― コルト町の南約20Km 分岐点

――― 6月2日 06:55


 上級魔術師の彼女との話が終わり、彼女は警備兵達の元へ戻った。


「しかし、騎士団の皆さん遅いですね」


「あぁ~」


「見渡す限り平地の草原・・・まだ見えないとなると、もう少しかかりそうですね」


「そうだね」



――― 分岐点から西へ36Km地点

――― 6月2日 04:50


 時間を少し戻して、俺達が居る分岐点から、王都方面へ西へ36Km地点。街道から南へ2Km、サス山脈の手前に広がるサス森林の手前にキャンプを張った王国中央騎士団第3師団と鉱山都市ロイの駐屯騎士団は、04:10に突如、嵐風竜(ミストラルドラゴン)2匹と竜の下位種亜種の飛竜(フライングドラゴン)19匹の群れから襲撃を受け40ラフンの激戦の末に壊滅。命ある者達は散り散りになり敗走していた。



――― コルト町の南約20Km 分岐点

――― 6月2日 09:00


 そんな事とは露知らず、俺達は待ち続けた。


「ジェルマン・パマリ子爵様。陽が昇ってからかなり経ちました。昇ってから慌てて向かって来たとして、斥候なら40Kmは進めてるんじゃないでしょうか?」


 陽が昇ってから3時間。駈足なら1時間で20Km位は進めるとして、流石に先頭部隊は到着していておかしくない。


「朝の集合は難しいと言っても、限度という物が・・・これは、何かあったと考えるべきだろうね」


「そうなりますよね・・・」


「あぁ~」


「という事で、ロイク君。頼むよ」


「分かりました」


 【タブレット】起動:可視化・ジェルマン・パマリ。今回限定:場所・ここから西20Kmの地点を中心に半径30Km。王国中央騎士団第3師団と鉱山都市ロイ駐屯騎士団を表示≫


≪WELCOME ≪可愛い女の子の声≫


≪・・・認証更新しました。表示しました。


「えっと・・・」


「昨日の様に大きく出来ないかね?」


「あ、そうですね」


 表示:設定・10倍に拡大。今回限り。


≪・・・認証更新しました。


「ロイク君。どう言う事かな?騎士団が見当たらない様だが・・・」


「ここから、西20Kmの地点を中心に半径30Kmを表示しているんですが、俺達や旅人を表示してみましょうか?」


「あぁ~頼むよ」


 表示:俺達を青色。旅人を黄色。騎士団を赤色。


≪・・・表示しました。


「あれ?」


「どうしたんだね」


「はい、青は、ここに居る俺達です」


「その様だね」


「黄色は、旅人です」


「赤は、騎士団なのですが・・・」


「うん?今、黄色の点が消えた様な気がするんだが・・・」


「どの辺りですか?」


「ここだ」


 ジェルマン・パマリ子爵様は、ここから西へ36Km程の地点を指差した。


「あっ・・・今、消えましたよね」


「あぁ~」


「魔獣を黒で表示」


「街道から街道の南側にかけて、魔獣が20匹程居る様だね」


「旅人が魔獣に殺されてるって事じゃないですか。助けに行かないと!」


「ロイク君。我々の任務はドラゴン討伐の為に集合し、隊を編成し直し、出陣する事なんだよ」


「ですが・・・」


「ルートフォーのその辺りの治安維持の義務を負っているのは、チューナー伯爵家だ。集落は無いがチューナー伯爵家の貴族領地だからね」


「集落の無い貴族領の領主様は、街道の治安はどうやって維持しているんですか?」


「そうだねぇ~冒険者探検家協会(アドベンチャーギルド)に依頼を出したり、ロイやコルトの貴族領軍へ討伐の要請を出したり、王都へ周辺領に駐屯している騎士団や王国兵の出兵要請をしたりが通常かな」


「俺は騎士団ではないので、要請が無くても遭遇したとして魔獣を倒しても問題ありませんよね?」


「・・・」


「表示:魔獣の詳細情報」


≪・・・表示しました。


***********************

 R4075年06月02日(地)時刻09:08


 王国中央街道:サス山脈北部地方・中央


 ≪魔獣詳細情報≫


 【嵐風竜(ミストラルドラゴン)】雄:1匹

  レア度:★★★★★★☆☆☆☆

  危険度:★★★★★★★★☆☆(繁殖期)

  レベル:94

  (つが)い補正:全ステータス値1.5倍


 【嵐風竜(ミストラルドラゴン)】雌:1匹

  レア度:★★★★★★☆☆☆☆

  危険度:★★★★★★★☆☆☆(繁殖期)

  レベル:88

  (つが)い補正:全ステータス値1.5倍


 【飛竜(フライングドラゴン)】雄:1匹

  レア度:★★★★☆☆☆☆☆☆

  危険度:★★★★★★★☆☆☆(繁殖期)

  レベル:73

  後宮(ハーレム)補正:全ステータス値5倍


 【飛竜(フライングドラゴン)】雄:18匹

  レア度:★★★★☆☆☆☆☆☆

  危険度:★★★★☆☆☆☆☆☆(繁殖期)

  レベル:41~65


***********************


「な、なんだと!・・・・・・もしや・・・ロイク君。騎士団では無く、第3師団団員で頼む」


「分かりました。表示:王国中央騎士団第3師団団員を青色。鉱山都市ロイ駐屯騎士団を緑色。旅人を赤色で表示。表示中の魔獣は詳細情報のまま黒色で表示」


≪・・・・・・表示しました。


「・・・まさかとは思ったが・・・青が第3師団なのだね・・・・・・」


「はい」


「半径30Km圏内に、青が幾つあるか教えてくれ・・・」


「分かりました。青色の数を表示」


≪・・・表示しました。


「あぁ~・・・」


≪ドン


 王国中央騎士団第3師団団長ジェルマン・パマリ子爵様は、地面に膝から崩れ落ちた。


「たった、7人だけなのか・・・・・・駐屯騎士団は無事なのか?」


 血の気が引き青褪めながらも他の騎士団の団員達の心配までしている様だ。


「緑の数を表示」


「49人か・・・」


「森の中に居るみたいですが、第3師団も駐屯騎士団も3Km程離れている様ですね」


「助けに行っても問題ありませんよね?」


「・・・そうだな。騎士団は壊滅。既に任務は失敗している」


『ねぇ~・・・思うに、今、ロイクが倒してしまえば、任務は成功した事になるのではないのですか?』


 え?


『ホラ、私達は騎士団に頼まれて討伐に参加しているでしょう。仮にロイクが倒して、倒した権利が私達にあったとしても、騎士団が協力を依頼した私達が討伐した訳なのだから、騎士団は任務を失態した事にはならいのではないかしら?』


 報告の仕方でしょうね。


『それなら、そこは上手にって感じかしらね。フフフッ』


「ジェルマン・パマリ子爵様。まだ任務は失敗していません」


「だが、第3師団6900人以上。ロイ駐屯騎士団約3800人以上が既に戦死し、何とか生き残った者達は森の中に56人。ここに居る私とマリアと兵士6人の8人を加えても、討伐隊は64人。民間人にも被害が出ている状態なのだよ・・・」


「俺が倒します。どのみち野放しにしておく訳にも行きませんし、鉱山都市ロイに向かう為には通る場所ですから。それに、部下や駐屯騎士団の団員を見殺しにする気は無いのでしょう?」


「当然だ。だが、(ドラゴン)が21匹・・・騎士団が1師団で何とか出来る数ではないぞ」


「俺なら、何ともなると思います」


「空を飛ぶ(ドラゴン)21匹を相手にだよ・・・」


「そうですね。幸い俺は宙に浮けます。(ドラゴン)の上位種を2匹倒した事もありますから。普通の(ドラゴン)や下位種の亜種位大丈夫ですよ」


闇炎牙狼(オプスキュリテ)10匹と話が違うんだよ」


「そうですね。(ウルフ)(ドラゴン)ではかなり違いますね。ですが、放置して被害を出し続けるのは知ってしまった以上気分が悪いのでやるだけの事はやってみます」


「そうか・・・止はしない。だが、私も連れて行ってくれ」


「連れて行くも何も、皆で行くつもりです。ここに皆さんを残しても良いですが、馬も馬車も無い状態で、もう来る事の無い騎士団を8人で待っていても仕方ないですからね。助かった団員とキャンプの状況を確認して、第3師団を再編する事を考えましょう。後、亡くなった団員達の名誉を守りましょう」


「あ・・・あぁ~・・・有難う。皆感謝してくれるだろう。ありがとう・・・」


「という事で、今日も、ジェルマン・パマリ子爵様は証言者です。皆を集めて事情を説明してから、ドラゴンを狩りに行きましょう」



――― 壊滅したキャンプ地 上空20m


「酷いな・・・」


「貴方。第3師団のキャンプの後なのですね・・・」


「あぁ~第3師団とロイ駐屯騎士団があった場所だ」


「我々、全員が証言者になろう。ゼルフォーラ王国中央騎士団第3師団と王国軍ブオミル侯爵領鉱山都市ロイ駐屯騎士団の無念を晴らしてくれ」


「先程も言いましたが、皆さんにはかなり強力な結界を張ってあります。上位種の(ドラゴン)でも破れなかった結界です」


 嘘だけど・・・


『フフフッ』


「万が一、【嵐風竜(ミストラルドラゴン)】に襲われても、冷静にお願いします。俺が直ぐに助けに来ます。マルアスピーが居る所へなら魔力を発動しなくても転位する事が出来ますので」


「分かった。我々はここから全てを見ているよ」


「それじゃ、マルアスピー皆を頼んだよ」


『えぇ~。結界もありますし、お喋りでもして待っていますね』


 はい。



 俺は、キャンプの残骸の中央に降り立つと、風属性の嵐風竜(ミストラルドラゴン)下位種亜種の飛竜(フライングドラゴン)にとっては優位属性の火属性で高さ100m程の炎の柱を出現させた。



 来たか。


 最初に飛来したのは、飛竜(フライングドラゴン)2匹。


 急降下しながら、俺目掛け体当たりするつもりらしい。風属性に対して優位属性の地属性で壁を作り1匹目の体当たりを防ぎ、2匹目の背中に飛び乗った。


 俺を地面へ落そうと暴れ飛び回る飛竜(フライングドラゴン)。岩の壁に突撃し突き刺さった脚を外そうと必死もがく飛竜(フライングドラゴン)


≪ドォ―――ン グギャァー 


 俺は、地属性でもう1つ壁を作り、2枚の壁で飛竜(フライングドラゴン)をプレスする。


 岩の壁が重なり1枚の壁になった上に俺は飛び移ると、飛竜(フライングドラゴン)は両翼を強く激しく動かし、竜巻状の風を4つ飛ばして来た。竜巻状の風は俺の目の前で1つになると、上昇する風に舞い上げられたキャンプの残骸や岩や石、砂がぶつかり合いバチバチと音を出し、竜巻状の風の中に無数の雷を発生させながら俺を飲み込んだ。


 なるほど。風属性の竜巻にはこんな使い方があるのか・・・雷もそうだけど、この岩にぶつかっただけで普通なら死んじゃうよ。それに、この竜巻の中心は空気が薄いみたいだね。これより大きな風で吹き飛ばしちゃった方が早いか・・・これって、威力としてはどの位の物なんだろう?


『その風は魔力ではなく自然現象みたいよ。力任せに竜巻を発生させて4つの竜巻を1つにした様ね。器用に左翼だけで発生させて威力を増幅させるなんて、下等な飛竜(フライングドラゴン)にしては良くやったわね』


 つまり、威力は分からないって事ですか?


『魔力は感じられないけれど、規模で言うのなら、人間種達の最高クラス位かしらね』


 つまり、精霊魔法で1以下って事ですよね?


『そうね。ロイクなら、1の10%程でも、この竜巻の数倍でしょうけど・・・』


 なるほど。加減します。


『その方が良いでしょうね。地形が変わってしまったら大変。フフフッ』


 神授スキル【マテリアル・クリエイト】自然魔素・清澄風属性:121中の1・その1の5%:俺を中心に半径2mの竜巻・半径20mまで外へ拡大:時間・5ラフン 発動≫


 俺を中心に竜巻が発生し、俺を覆っていた竜巻を内側から飲み。20m、30m、50m、100m、300、400m手前まで拡大し消滅した。


 あれ?1の5%位にしたのに・・・


『ロイク・・・貴方ねぇ~・・・同じ回転の竜巻を取り込んでしまったら、威力は純粋に増幅するわよね?上位の発動で魔素として飲み込んで飛竜(フライングドラゴン)の力任せ攻撃を利用したのだから』


 それは考えていませんでした。


≪ドゴォ――――――ン


 ん?・・・後方から嵐風竜(ミストラルドラゴン)が、口から【恨みの風(ランキュヌヴァン)】を吐き俺に攻撃した様だが、恨みの風(ランキュヌヴァン)はオートサンミュールによって弾かれる。オートサンミュールは、聖属性魔法サンミュールの常時発動俺専用の結界だ。サンミュールと異なる点は、敵意や悪意や殺意が無い物なら通す事と、時間制限が無い事だ。


≪ドゴォ ゴォゴォゴォ ゴゴゴゴッ ゴォ―――ン


 番いで10数発の恨みの風(ランキュヌヴァン)を打ち込んで来る嵐風竜(ミストラルドラゴン)。だが、攻撃は全て弾かれ無駄に終わる。


 まだ、飛竜(フライングドラゴン)が17匹も居るし、この2匹と遊んでる時間は無いな。【マテリアル・クリエイト】自然魔素・清澄地属性132中の1:形状・矢一文字・長さ70cm:場所・俺の周囲360度:本数40本。発動≫


 俺の周りに一文字状の矢が40本出現する。


 次は加減が必要っと・・・【マテリアル・クリエイト】自然魔素・清澄風属性121中の1・その1の1%:状態:圧縮した空気の塊:場所・矢一文字の矢筈から1cm後方:魔力の再注入により前方へ破裂:個数40個。発動≫


 まずは1本ずつ、嵐風竜(ミストラルドラゴン)の口へ・・・破裂2つ・・・


≪バァッンバァッン


≪ヒュゥ――― バァン ヒュルルルルル――― ブシュッブシュッ シュゥ―――――――― キラン


 嵐風竜(ミストラルドラゴン)を貫通し空の彼方まで飛んで行き消えた・・・山とか街にぶつからなくて良かった・・・


『そうね・・・フフフッ』


 可視化:飛竜(フライングドラゴン)


≪・・・神眼モード発動中。スキルの重複を回避しました。


 うん?もしかして、自分の目で探せって事?俺は周りを見渡す。俺が倒した(ドラゴン)は既にタブレットが回収を終えている。お、北に17匹居るのか、それなら【転位召喚】:対象・飛竜(フライングドラゴン)17匹:俺から3Km程北に離れた場所から、俺の目の前。発動≫



 出現と同時に、順次破裂っと・・・



 何か、思っていたよりも弱いや。


『ロイクが、強過ぎるのよ』


 そうなんですかね?


『私達を、召喚転位で呼んで貰えるかしら』


 そうですね。【召喚転位】:対象・マルアスピー様。パフ・レイジィー。ジェルマン・パマリ子爵様。マリア・パマリさん。アリス・パマリさん。兵士6名。キャビン。聖馬獣(エリウス)さん。



――― キャンプ地だった場所

――― 06月02日 09:30


「昨日は夜の殲滅だったので、凄さがいまいち良く分からなかったのだが、今なら、断言出来る。ロイク君。君は間違いなく英雄だ。既に上位種の(ドラゴン)を討伐している者に言うのもおかしいが、竜殺し(ドラゴンキラー)の英雄だよ」


「ロイク様・・・」


「ロイクさん。騎士団の仲間の無念を晴らしてくれてありがとう」


「仲間で、思い出しました」


「何をだね」


「えっとですね・・・」


 【転位召喚】:範囲・俺を中心に半径10Km:対象・王国中央騎士団第3師団団員。鉱山都市ロイ駐屯騎士団団員。ドラゴン討伐に参加した王国軍兵士。



――― キャンプ地だった場所

――― 06月02日 09:50


 ジェルマン・パマリ子爵様とマリアさんと警備兵6人と助かった団員達は、報告確認を済ませた後、キャンプ地の残骸の確認を開始した。助かった56人とジェルマン・パマリ子爵様達8人で、約1万人のキャンプ地の残骸を見て周には無理がある。


 そこで、ドラゴン討伐の指揮官ジェルマン・パマリ子爵様から討伐隊の物品を俺に預ける命令を出して貰い。所有物としてタブレットに収納。再利用可能な物だけを王都に到着し次第騎士団に返す事にした。 


 俺は上空200mまで移動すると、タブレットを構えシャッターを切り、皆の元へ戻る。


「一瞬で消えた・・・」


「御父様。まるで、何事も無かったかの様に、静かな朝です・・・」


「そうだな。だが、ここで1万人近い騎士団の団員達が、(ドラゴン)21匹に襲われ戦死した」


「はい」


「アリス。戦いには死の影が常に付き纏うもの。正規団員になると仲間が死ぬ瞬間を目の辺りにする機会もあります」


「はい・・・」


 アリス・パマリは、全てが終わった今になって恐怖を実感したのだろう。


『震えていたわね』


 そうですね。沢山の人がさっきまで戦っていた場所。沢山の人が戦死した場所。そして(ドラゴン)。漠然としていた感覚が繋がったんでしょうね。


『ロイクは平気なの?』


 俺ですか?


『そう。私の胸で泣いても良いのよ。フフフッ』


 泣きませんよ。何て言うか、今回はどう動いたとしても、助ける事が出来なかったと、冷静に理解出来てるんです。昨日の湿地帯の後で(ドラゴン)を、この場所を中心に探したとして、キャンプもまだ無かったここで見つける事は出来なかったでしょう。俺達が夢の中に居た頃に彼等は襲われ、奮戦虚しく敗れた。助かった団員の方達からジェルマン・パマリ子爵様が詳細を聞き報告書を作成すると思うので、詳細は後でゆっくり聞く事にします。


『ふ~ん。何だろう・・・』


 どうしました。


『フフフッ。・・・何でも無いわ』



「我々、第3師団と、ロイ駐屯騎士団は、王国軍からの任務を達成。これより鉱山都市ロイへ帰還する。犠牲者の追悼は、王都に戻り次第、合同で執り行う事とする。現時点で両騎士団は壊滅状態にありその機能を停止しているが、第3師団団長として、ロイク・シャレット殿に王国中央騎士団第3師団名誉団長の呼称を贈る。是非、受け取ってくれ」


「はい・・・」


「一路、鉱山都市ロイへ」


「はぁっ」(一応大勢)


「ロイク君。済まないが、頼む・・・」


 ん?ああぁ!


「分かりました」


 【フリーパス】【タブレット】:表示・ゼルフォーラ王国ブオミル侯爵領鉱山都市ロイを中心に10Km:えっと・・・街の西の城壁から200m位離れた草原の中で良いかな・・・発動≫



――― 鉱山都市ロイ 西の城壁から200m

――― 6月2日 10:14


 おっ意外に丈の高い草が生い茂る草原なのか、調度いいや・・・


 【転位召喚】:対象・王国中央騎士団第3師団団員。鉱山都市ロイ駐屯騎士団団員。ドラゴン討伐に参加した王国軍兵士。俺のパーティーメンバー。これで召喚出来たら良いんだけど・・・発動≫



「相変わらず、滑らかな転位だね。それでここはどの辺りだね?」


「ジェルマン・パマリ子爵様。ここは、鉱山都市ロイの西の出入管理の門から西へ200mだけ進んだ草原。草むらの中です」


「そうか。ありがとう。・・・それでは、駐屯騎士団を先頭に凱旋するとしよう」


「はぁっ!」



 R4075年6月2日:ゼルフォーラ王国軍の歴史に、21匹の(ドラゴン)に立ち向かい王国を護った勇者として、王国中央騎士団第3師団6711名、王国軍ブオミル領鉱山都市ロイ駐屯騎士団3051名の名が刻まれた。


 そして同日、アンカー男爵領マルアスピーの英雄は、【21匹の(ヴァンティアンユヌ)竜殺し(ドラゴンキラー)】の英雄ロイク、【全属性の賢者(ヌフサンサージュ)】のロイクとして、その名が知れ渡る事となった。

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