4-39 新迷宮①~光の時間のうちに事前調査~
フォルヘルル島の調査は、チーム毎に任せる事になっている。
俺の神授スキル【転位召喚・極】の転位で、皆をそれぞれの場所へと移動させた。帰りは、亜神に成ったばかりのガリバー卿と亜神鱓のミイールさんに任せてある。
俺が担当する事になっている洞窟の中の温泉の調査は、何故八番なのかは分からないが創造神様からの指令⑧と精霊界の地の公王様主催のパーティーを済ませてから、慎重に進める事にした。
因みに、謎が一つ解けた。
フォルティーナとchefアランギー様の長い話をまとめると、転位は転移の上位互換らしい。
響きが同じなのでどっちでも良い。そんなに気にする事でも無い。俺の様に小めんどくさいのはハゲるから程々にしておいた方が頭髪の為なんだそうだ。
髪の毛を犠牲にするつもりは無いが、長い話をまとめた先に更に長いもう一言を貰う事に成功した。
神授の【転送】系スキルは、転送出来ない存在以外を、転送者が認知する者の転送者が認知する所有地内へ、転送移動させる事なんだそうだ。
聞いて無いが教えてくれた。
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≪神授の【転送】系スキル≫
【転送Ⅲ】
【転送Ⅱ】
【転送Ⅰ】
【転送】
【転送・特】
【転送・極】
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≪神授の【転位】系スキル≫
神気を所持する存在が、
空間や時間や次元や界を移動する事を、
神界一般では転位移動と言うそうだ。
同じ次元或いは界内を、
瞬間移動するだけの事を、
神界一般では転移と言うそうだ。
瞬間移動=転移は、神格を持った存在なら
誰でも出来る初歩の初歩、超下位スキル。
スキルとして認識させる必要が無い為、
数十億年前に転位の初期スキルに統合された。
転位転移と言う言い方は数十億年前の
名残りかもしれないそうだ。
手違いで【転移】系スキルが出現しても、
直ぐに上位互換の【転位】系スキルに
統合される様になっているそうだ。
【固定転位】
【限定転位・下位】
【限定転移・中位】
【限定転移・上位】
【転位・下位】
【転位・中位】
【転位・上位】
【優先転位】
≪神授の【召喚】系スキル≫
※召喚は転位の派生スキル※
【召喚Ⅲ】
【召喚Ⅱ】
【召喚Ⅰ】
【召喚】
【召喚・特】
【召喚・極】
≪神授の【転位召喚】系スキル≫
【転位召喚・小】
【転位召喚】
【転位召喚・中】
【転位召喚・大】
【転位召喚・特】
【転位召喚・極】
―――
神授スキル【フリーパス】は、
【転位】【召喚】【転位召喚】とは
全く別の何か。
自称神格位二位の
フォルティーナであっても同じ事は、
出来ないそうだ。
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謎が一つ解け、疑問が幾つか増えた。
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パーティーの件は、マルアスピーに任せる事にした。
大地の聖域に行かずに済むのは、正直有難い。
あ、でもあれだ。地の魔力陣の服従の強制や、古代魔術の【グラァヴァリング】の事には興味があるかも。
そう言えば下級のヴァンパイア達って、黒のローブを纏った人間に召喚されたって自白してるんだったっけ。
黒の同士とか結社だったかな。結局は世界創造神創生教会なんだろうけど彼等は何処で召喚の方法を覚えたんだ?
古代魔術の【グラァヴァリング】も使ってたよな。何処で覚えたんだろう?
精霊界の地の公王様と彼等はどういう繋がりなんだろう。・・・どうせ会う事になるんだ。直接聞く事にしよう。
自白と言えば、リュシルに成る前の女王様な方のトゥーシェは気にしなくて良いと言っていたが、ジョンペーターっていったい誰だろう?
精霊界と魔界。世界創造神創生教会って俺が考えてる以上にヤバい集団なんじゃ。
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魔導具【サーヴァントドア】と【サーヴァントウィンドー】と【光闇時計】は、chefアランギー様に任せたので問題ないだろう。
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新しい貨幣制度は、アシュランスカードがある。混乱は最小限で済むだろう。
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―――ゼルフォーラ王国・国王王国管理地
名を持たざる森・王国中央街道ルート4
R4075年9月15日(風)09:03―――
創造神様からの指令⑧何故か八番目の指令。父バイルがサンドラさんの部屋からこっそり拝借し、闇の迷宮内で紛失させた神具聖剣ローランを取り戻すべく、原因の男こと父バイルと、聖剣ローランの所有者サンドラさんと、サンドラさんの姪で巻き込まれただけのサラさんと、俺は、王国中央街道ルート4の名を持たざる森区間のだいたい中間に、俺の神授スキル【フリーパス】でやって来た。
神授スキル【フリーパス】は本当に便利なスキルだ。何処へでも自由に一瞬で移動出来る。俺を中心にとか俺の家族眷属隷属限定とかって判定が地味に微妙な制約はあるが毎日凄い頻度でお世話になっている。創造神様、本当にありがとうございます。
ただ、この指令は、サンドラさんと俺へですよね?
フォルティーナの横暴でもれなく親父が着いて来たんです。これって良いんですか?
「叔母様。名を持たざる森は迷いの森だと聞いていたのですが、普通の森の様です」
「サラ。私の事はサンドラと呼ぶ様にと言ったはずです。年齢的に余り変わらぬ同じ位の容姿で叔母と呼ばれるのは気になってしょうがない」
「そうですね。気を付ける様にします。叔母様」
「サラ・・・」
「サラ姫さんよぉ―」
「何でしょうか?バイル様」
「サンドラ姫さんとサラ姫さんは叔母と姪なのに似てねぇなぁっ!」
「私は父上と同じ剣聖になる事が出来ましたが父上では無くどちらかと言うと母上似。サラは父上似の兄上とパトリシア殿の娘ですから、似ている所が少ないのかもしれません」
「ふぅ―ん。こまけぇ―こたぁ―どうでも良いんだよぉっ!なぁっ!ロイク」
・・・うん?
「なぁっ!ロイクッ!」
「聞こえてるって、大きい声で名前を呼ばないでくれ恥ずかしいだろうが」
「この二人って似てねぇ―よなぁっ!おめぇ―もそう思うだろうぉ―」
こいつ、何の話してるんだ?・・・って言うか何しに来た。
「親父。その話って今重要か?」
「なぁ―サンドラッチ」
「バイル様。サンドウィッチみたいに呼ばないでください」
・・・どうてもいい事を振っておいて無視?
創造神様・・・。
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「ロイク様。先程、叔、サンドラ様とも話していたのですが、この森、普通の森ですよね?」
「あれ?サラさんは知」
「うおっと。サラ姫さんはこの森のルールを知らねぇ―のかぁ―」
父バイルは、俺の言葉を遮ると、ルート4名を持たざる森区間に幾つかある休憩所の一つ中央サービスエリアの中央に植えられた木に登りながら、サラさんに説明し始めた。
「ルールですか?」
「おうよぉ―。サンドラッチは知ってっと思うがぁ―この森は闇の時間だけ何だよぉっ!」
「闇の時間だけとはどう言う事でしょうか?」
「だからよぉ―。闇の時間だけ迷えるし歪っちまうんだよぉっ―」
「サラ。この森が、歪みの森や迷いの森と呼ばれているのは、光の時間と闇の時間で表情が異なるからです。光の時間はこの様に静かで穏やかな森なのですが、闇の時間になるとこの様子が一変します。静かな事に変わりはないのですが一歩動くだけで迷い込みます」
「一歩動くだけで迷い込む?」
「闇の時間に迷い込み森を抜け出せず、数日後、躯となって光の時間に発見される。それがこの森が持つもう一つの顔なのです」
「恐ろしいですね」
「だなぁっ!動くと歪みに嵌ってさぁ―大変!迷っちまうって寸法だぁ―。人も獣も魔獣も皆仲良くさぁ―大変ってなぁっ!」
ところで、親父の奴はあそこで何をやってるんだろうか?
「親父、そこで何やってんだ」
「はぁっ―!見て分かんだろうがぁっ!」
分からないから聞いたんだが・・・。
「で、何やってんだ?」
「・・・・・・よしっ!今からそっちに行く事にする」
親父の行動に意味は無かった様だ。
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ルート4を隔て南北に広がる名を持たざる森。森そのものが迷宮化したらしい。
北の森から調べる事になった。
俺達四人は中央サービスエリアから北の森へと足を踏み入れた。
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魔獣に遭遇する事も無く約三十ラフン。
「飽きたぁっ!」
「何言ってんだ?」
「何って、だから飽きたってつってんだろうがぁっ―!」
父バイルは、予定通りお荷物になっている。はっきり言って非常に邪魔だ。
「親父、勝手に動き回るなって」
挙句の果てには自由気まま自分勝手に動き始める始末。
「ロイク様。あれを」
サラさんが何かに気が付いた様だ。
体ごと視線を動かし、サラさんが目配せした方を見やる。
「あれって・・・」
あれって何?
「サンドラさん。あれが何か分かりますか?」
「叔、サンドラ様、あれはいったい?」
「ふむ。一度だけ見た事があると思うのですが断言して良いのか悩むところです」
「悩む様な事なのですか?」
「ロイク様。サラ。あれにもう少しだけ近付いても構いませんか?」
「叔・・・あれにですか?」
「何だか分からない物に近付くのはちょっと。・・・俺一人なら問題無いか。サラさんとサンドラさんはここで待っててください」
「「はい」」
良く分からない物に一歩一歩ゆっくり一人で近付く。
神授スキル【神眼Ⅲ】を意識する。
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良く分からない物 ← unknown
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どういう事だ。
俺の神眼って、上位互換のⅢになったんだよな。神界と神域の存在以外はだいたい視認、認識可能だって・・・。
「なぁロイクゥ―」
「何だよ親父」
「何であんなもんが森の中にいんだよぉ―」
「俺が知ってる訳ないだろう。俺に聞くなよ」
「それもそうかぁっ!」
もう少しだけ近付いてみよう。
「なぁロイクゥ―」
気付かれ無い様にゆっく、
「獲物でもいんのかぁ―?」
父バイルは、身を隠す事も無く、楽しそうに俺の右隣りを歩いている。
「ここで何をしてるのかな?」
「何って、見りゃ―わかんだろうがぁ―。サンドラッチが失くした聖剣を探しってんだろうがぁっ!おめぇ―もう忘れちまったのかよぉっ!確りしてくれよぉ―。なぁっ!」
・・・何も言うまい。
「で、で、でぇ―」
「でぇ~でぇ~隣でうるさいんで。静かにしてくれ」
「何でだよぉぅ!」
こいつ本物の・・・。
「うるさいからだって言っただろう」
「そんなこたぁ―どうでも良いんだよぉっ!。でっ!獲物は何処なんだよぉ―。隠しても意味ねぇ―からなぁっ!」
・・・何も言うまい。・・・・・・ん?・・・・・・。
「なんだよぉ―。次はだんまりかぁ―」
・・・さっき。
「あれが森に居る在るのはおかしいって言ってたよな?」
「あれだぁ―。あれってどれよぉ―」
「前方約一キロメートルの場所に見えるだろ。それの事だ」
父バイルは、立ち止まると。右手でボリボリと尻を掻きながら、
「なぁロイク。一つ聞いて良いかぁ―」
急に真面目?・・・尻を掻きながらではあるが・・・。
「あぁ」
「おめぇ―今何してんの?」
「何って、良く分からない前方のあれを調べてる様にしか見えないはずなんだけどな」
「そっかぁっ!なら良いんだぁっ!俺はよぉ―てっきりおめぇ―がボンバーシーコンコンブルをボンバーさせて一人でクレイジーフィーバーすんだと思っちまってたよぉ―!」
気になる所が満載だが今は冷静に対処するとしよう。
「あれって、ナマコなのか?」
「だなぁっ!」
・・・仮に親父の言う通りナマコだとしよう。どうして俺の神眼はunknown何だ?
「ナマコって海の生き物だよな?」
「だなぁっ!」
「ナマコについて他に知ってる事は無いか?」
「そうだなぁ―。刺身だろうぉ―。干物だろぉ―。水で戻して煮たとかってぇ―くれぇ―汁も酒が進んだなぁっ―!」
うん。こいつに聞いたのは。・・・間違いだった。
ありがとうございました。