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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
―ララコバイア編ー
215/1227

4-23 フォルヘルル島、調査一日目③~巨大な魔力陣と術式~

―――ララコバイア王国・フォルヘルル領

 フォルヘルル島・西ドュン村の玉切り場

R4075年9月13日(水)16:30―――


 西ドュン村のアキゴ村長と東ドュン村のコルゴ村長と領主のサルディー魔務大臣。そして前領主で眷属のオスカーさんを西ドュン村の玉切り場に残し、エリウスと俺は創造神様の神殿の跡地だと語り継がれている瓦礫の山廃墟を宙から見下ろしていた。


 廃墟の上空100mから見渡すフォルヘルル島。中央に聳え立つ標高2019mの活火山ヘルティオが壁となり島の南側全体を視認する事は出来ない。


 が、今のところ南側全体を確認する必要は無さそうだ。何故なら、


「エリウス。これって魔力陣ですよね?」


「はい、ここは半壊し不完全な状態で機能を維持し続けている巨大な魔力陣の1部7時の位置に施された術式を雑な処理によって封じ込めた場所の様です」


「埋めたって言う白濁した熱水が湧き出す亀裂ってあれですよね?亀裂と一緒に井戸まで潰しちゃってるみたいですが、それであれですかね?」


 西ドュン村の南東約3.14Kmの地点にある廃墟。その廃墟から直線距離にして約5Km程離れた場所にある東ドュン村の南西約3.14Kmの地点に広がる森を覆う漆黒の霧。


 漆黒の霧に覆われた森と埋め立てられた亀裂と潰された井戸を神眼で凝視しながら質問した。


「あれは運用闇属性の霧で間違いありませんか?」


 エリウスは、俺の質問を質問で返して来た。


「ちょっと待ってください」


 いつも以上に神眼を意識し漆黒の霧を視認する。



 地属性と火属性の自然魔素(まりょく)供給が多過ぎる。これじゃ負荷で動作がおかしくなって当然だ。


「エリウス。あの漆黒の霧は運用闇属性で間違いありません。・・・霧の中に洞穴が見えますよね?」


「はい」


「その中にこの下の廃墟の床に施された術式と同じ術式が施された漆黒色の熱湯の池がぁ~・・・ん―、ちょっと温度が高過ぎますがこれって天然の露天風呂だよな」


「えっと、この下の術式と同じ物が露天風呂の床に施されているのですか?」


「そうみたいです」


「下の術式を描ける程の露天風呂ですか。また随分と広い露天風呂ですね」


「ただ、術式のキャパが限界×3って感じで完全にオーバーしてるみたいで、変換しきれなかった地属性と火属性の自然魔素(まりょく)がどういう訳か闇属性に変換され池?露天風呂?どっちでも良いか。取り合えず熱湯や島の周囲の海に漏れ出し溶け込んじゃってるみたいで、温泉に浸かるのは普通なら無理かな」


「主殿は入っても問題なさそうですね」


「えぇ。有難い事にそうみたいです」


 流石に、入りはしませんが・・・。



「すると、あの漆黒の霧の正体は温泉の湯気ですか?」


「闇属性の自然魔素(まりょく)を帯びた湯煙ってところなんで湯気で正解だと思います」


「下より危険ではありませんか?」


「どうでしょうね。闇属性の湯煙が飛散しないで濃いまま漂ってるならそうかもしれません。ですが、コルゴ村長は何も言ってなかったし、たぶん留まってる事の方が珍しいのかも」


「風雨で飛散したとしてもあれだけの闇属性の自然魔素(まりょく)量です。島の生態系に影響を及ぼしかねません。いえ、既に影響が出ているかもしれません」


「影響は無い。とは言い切れませんが問題無いとは言い切れると思いますよ」


「主殿。それはどうい事でしょうか?」


「術式を1つずつじゃなくて魔力陣全体で捉えると分かると思います。あと、島よりも島の周囲の海の方が状況としてはかなり深刻だと思うんですが、エリウスはどう考えますか?」


「魔力陣全体と海ですか・・・」


「そうです」


「・・・私は元々聖馬獣。馬です。水や海とは縁遠い存在です」


「馬って草原とか平野ってイメージでしたが、宙とか空ってイメージも最近定着して来てて、水中とか水底もそろそろありかなって」


「主殿。私の中でそれは最早馬ではありません」



 エリウスと俺は状況の整理に努めた。


***********************


 ≪巨大な魔力陣≫


 【魔力陣】直径約12Km

  各術式は中心部から6Km離れた位置に存在。

  ※中心部を含めた6割7割が水没

  ※地上に残された6つの術式のみが

   不安定な状態で機能を維持し

   稼働し続けていた。(過去形)


 【7時の位置に施された術式】直径約88m

  西ドュン村から南東へ約3.14Kmの

  廃墟の床に1つ存在。


 【5時の位置に施された術式】直径約88m

  東ドュン村から南西へ約3.14Kmの

  洞穴の中の池の底に1つ存在。


 【6時の位置に施された術式】直径約108m

  島の中央に聳え立つ活火山ヘルティオの

  北側の麓に1つ存在。


 【4時の位置に施された術式】直径約1m

  東ドュン村の中央の池の底に5つ存在。


 【8時の位置に施された術式】直径約1m

  西ドュン村の中央の池の底に5つ存在。

  ※亀裂を塞がれ井戸を潰された為、

   余剰自然魔素(余ったまりょく)を臨時変換出来ず、

   他術式へ送り出している。


―――


 【中心部の南3kmの位置に施された術式】

  5時と7時の位置に存在する術式と

  同じ術式が1つ存在していた。(過去形)

  ※他術式とは異なり特殊な位置に存在。

  ※大噴火の際に溶岩流に飲み込まれ

   術式としての機能を失った様だ。

  ※現在は水属性の自然魔素(まりょく)を水に変換せず

   自然魔素(まりょく)のまま放出している。


―――


***********************


「7時の術式は地属性と火属性の自然魔素(まりょく)を水属性の自然魔素(まりょく)に変換し8時の術式へと送り出す為に施されていた」


 エリウスは、廃墟の床に施された術式から、西ドュン村の中央の池へと視線を動かした。


「7時の術式は他にも、水属性の自然魔素(まりょく)に変換しきれなかった地属性の自然魔素(まりょく)を鉱産資源に、火属性の自然魔素(まりょく)を温泉資源に臨時変換する素晴らしい機能が組み込まれているみたいです。5時の術式も同様です」


「主殿。アキゴ殿の話では......



 廃墟の床(術式の外側)に入った亀裂は12年前の2月頃に突然出現した。当初は50cm程の亀裂だったが少しずつ大きくなり最終的には3m程の亀裂になった。


 強烈な異臭を放ち熱水が噴き出し始めたのは亀裂が出現してから3日目の事だった。熱水が噴き出すと廃墟周辺の草木は瞬く間に枯れた。(熱湯に負けただけだと俺は思う)


 強烈な異臭は酷い時には何日も村を覆い村人を苦しめ村人の健康を害し村人から笑顔を奪った。幼い子供や老いた親を持つ村人の中には耐え兼ね村を島を捨てる者まで現れた。


 事態を重くみたアキゴ村長と村の幹部達は9年前の4月頃元凶の亀裂を塞ぐ事を決意し行動を開始した。そして、4年前の1月頃偶然島を訪れた魔剣隊の隊員の協力を得て塞ぐ事に成功。この時、魔剣隊の隊員の助言を受け廃墟にあった枯れ井戸を3つ全て潰した。



......この時、協力した魔剣隊の隊員は名も名乗らず島を後にした。4年前の1月頃に王都ラワルトンクを離れた魔剣隊の隊員は居ないはずだとサルディー殿は話していました」


「あの亀裂を地属性の魔術で無理矢理塞ぎ、井戸を潰すように言ったのは魔剣隊の隊員を名乗り名を名乗ら無いまま姿を消した正体不明のユマン()族」


「鉱産資源や温泉資源に臨時変換されるはずだった余剰自然魔素(まりょく)は行き場を失い、2年前の2月23日水の日。6時の術式の地活火山ヘルティオを大噴火へと導いてしまった。6時の術式は大噴火後も機能を失う事無く稼働し続けている」


「ですね。噴火の原因としては有力候補です」


「そして、5時の術式が放出している闇属性の自然魔素(まりょく)も、7時の術式が送り出した余剰自然魔素(まりょく)が原因」


「はい。さっき話した通りです」



「4時と8時の術式が闇属性を放出する可能性は」


「かなり高い」


「中心部の南3Kmの位置にあった術式は大噴火の際に機能を停止し送り込まれた自然魔素(まりょく)をそのまま放出する出口になっている」


「現状では5時と7時の術式から水属性の自然魔素(まりょく)だけを受け取っています」


「水属性の自然魔素(まりょく)だけを流す優先回路が魔力陣には施されていたのかもしれません」


「優先回路?」


「はい。流れる属性や向きを限定する事で運用効率や発動効果を高める方法です」


「・・・エリウスって、実は魔力陣に詳しかったりしますか?」


「私の知識は、ビエールから得た物です。ビエールはマルアスピー様の母君ミト様から魔法や魔術、魔術陣や魔法陣や魔導陣を教わったそうです」


「へぇ~、そうなんですね」


 ミト様って、魔力陣に詳しかったのか。・・・・・・機会があったら色々教えて貰いたいかも。



・・・・・・・・・・


・・・・・・・


・・・・




 エリウスと俺は地上へと降り立ち、アキゴ村長とコルゴ村長とサルディー魔務大臣。そしてオスカーさんと合流し、玉切り場から1番近い潰れた井戸へと移動した。


「ロイク様。記録によりますとこの井戸は私の祖父が掘らせた物らしいのです」


「はい?父上。その様な記録私は知りませんぞ」


「そうであろうな。お前は迫り来る溶岩流の中、調度品や美術品、宝石や金銀財宝金目の物だけを屋敷より持ち出し王都へと移したのであったな。であれば、その価値に気付けなかった。必要としなかった。知らなくても無理はない。お前にとってはそれだけの物でしかなかったのだ」


「もしや・・・あのゴミ!!!・・・遥か昔。大昔の夢物語大法螺を記した古書文献。解読不能な得体の知れない魔術陣が描かれた古典魔術書。用途が不明にも関わらず貴重な物だと代々受け継がれて来た動かぬ骨董魔導具。文献は子供の殴り書き、魔術書は擬きか何かで、魔導具に至っては我楽多。迷う必要などありません。何の役にも立たぬゴミを抱える腕があるのなら生きる上で役に立つ価値ある物を1つでも多く抱え持ち出し後世に残す。それこそが当主に課せられた義務であり果たすべき責任です。良いですか父上そもそも」


「ああぁぁ―――。すまんがサルディー少し黙っていてくれないか。私はロイク様に話があるのだ。お前の戯言に構っている余裕はないのだよ」


「ざ、戯言とは然り、私は」


「それで、ロイク様。この井戸ですが」


 どうやら、オスカーさんは、息子サルディー魔務大臣を無視して話を進める事にしたみたいだ。しかし、この親子どうにか出来ないかな?


「廃墟の奥。山手側の井戸が2つとも枯れた為急遽掘ったそうなのです」


「さっき当主になる前にここに来た時は、水は湧いていなかったって言ってませんでしたか?」


「はい。急遽掘ったこの井戸ですが、完成から僅か2日で枯れたそうなのです」


「あらら」


「井戸は3つとも水が枯れただの危険な深い穴になってしまいました。ですが潰すのは縁起が悪いという言い伝えから板を張り蓋をしそのまま放置したそうなのですがぁ―――。あぁ~本当に潰してしまった様ですな」


 井戸って潰すと縁起が悪いのか。知らなかった。



 潰れた井戸を囲んでの井戸端報告を済ませた俺は、アキゴ村長とコルゴ村長とサルディー魔務大臣を神授スキル【転位召喚・極】の転位で東ドュン村の領主の臨時の館へ移動させた。


 そして、海の事なら魚類が1番と言う事で、【眷属・亜神】として新たに俺の眷属仲間に加わった亜神鱓様名前はまだ無いを神授スキル【転位召喚・極】でフォルヘルル島へと召喚した。


「亜神鱓様は、島の周囲の海の底を調べてください」


「闇属性が至る所から漏れ出している様ですが。そこを調べれば良いのでしょうか?」


「はい。28箇所あるんで、闇属性の自然魔素(まりょく)が特に濃いポイントを重点的にお願いします」


「分かりました。それでは、最初のポイントへはロイク様の転位でお願いします」


「了解しました」


 神授スキル【タブレット】検索・濃い闇属性の自然魔素(まりょく)が湧くフォルヘルル島の周囲の海底......



......神授スキル【転位召喚・極】転位:対象・亜神鱓......

 ......タブレットの表示画面に付けた印の1番目 ≫



「さぁ~。海は亜神鱓様に任せて、陸は俺達で何とかしましょう」


「畏まりました」


「ロイク様。ただのユマン()でしかない私がお役に立てる事は無いと存じますが・・・」


「オスカーさんは四大属性と光属性と無属性の魔術が扱えますよね?」


「はい。一応扱えますが、私が得意とする魔術は地属性でして、対局の風属性は使い物になる次元ではありません」


「問題ありません。今は地属性があればそれで十分です。なので、まずはこの井戸を俺がやっちゃいます。エリウスもオスカーさんも良く見ててください。廃墟の裏の井戸を1つずつ任せますからねぇ~」


 分かり易く見せる為にはぁ~・・・。


 潰れた井戸に手を翳し、



 井戸を埋める瓦礫を宙へと浮き上がらせる。


「あのぉ~ロイク様。これはいったいどの様な魔術なのでしょうか?」


自然魔素(まりょく)の動きを視れば分かると思いますが、これは地属性の自然魔素(まりょく)を利用して、井戸を潰した地属性に属する有機物に干渉し有機物だけを井戸から引き抜いただけです」


「地中を隆起させる感じでしょうか?」


「主殿。地属性の自然魔素(まりょく)で物は宙に浮かばないと思うのですが・・・」


「えっ?浮きますよ。ホラ」


 井戸から引き抜いた瓦礫を左手の人差し指で指し示す。


「あ、えっと・・・常識の範囲でお願い致します・・・」

ありがとうございました。

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