1-13 魔獣討伐数と、レベル275?
作成2018年2月21日
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【タイトル】 このKissは、嵐の予感。
【第1章】(仮)このKissは、真実の中。
1-13 魔獣討伐数と、レベル275?
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パマリ侯爵領コルト町の簡易地図
――― 侯爵邸王国軍騎士団事務所
ステファン・パマリ侯爵の次男でゼルフォーラ王国中央騎士団第3師団の団長ジェルマン・パマリ子爵と、奥様で同騎士団所属のマリア・パマリ夫人と、御令嬢のアリス・パマリ。そして、契約奴隷のパフ・レイジィーと、マルアスピー様と俺は、パマリ侯爵領コルトの侯爵邸にある王国軍騎士団事務所の目の前に、俺の神授スキル【フリーパス】と【タブレット】を並行発動させ移動した。
王国軍騎士団事務所に入ると、ジェルマン・パマリ子爵に気付いた兵士の1人が、監察官執務室まで俺達を案内してくれた。
――― 王国軍騎士団事務所の監察官執務室
「中央騎士団第3師団団長ジェルマン・パマリ子爵様。こちらが王都からの書状です」
「軍務大臣のサイン入りか。師団に鳩を送っただけなんだが・・・」
≪ガサガサゴソゴソ
ジェルマン・パマリ子爵は、王都から連絡鳩で届いた軍務大臣からの書状を広げ読み始めた。
・
・
・
「なるほど・・・任務を確認したと王都に連絡鳩を送っておいてくれ」
「承りました」
「それで、軍務大臣閣下からは何と?」
「監察官。2人で話が出来るか?」
「分かりました。お前達、私はジェルマン子爵様と話がある呼ぶまで席を外してくれ」
「はぁっ!」
「マリア。ロイク君達と先に、兄上の所に行っててくれ」
「分かりました」
・・・これだと結局、神様の予定表にあった、貴族領軍私兵詰所と騎士団事務所での2つの予定は熟せなかったって事になるのかな?
『夕食会は中止にならないわよね?』
ジェルマン・パマリ子爵邸の応接間にあったお菓子全部食べちゃってましたよね?
『パフちゃんとお腹を空かせる為に、運動して来たから大丈夫よ』
・・・
「御父様。バイル様の御子息様も、騎士団に用事があると言ってましたが・・・」
「あぁ~そうだったね。・・・ロイク君、監察官は騎士団の団員の不正を取締、規律を正す憲兵隊の隊長を兼ねていてね。階級では、配属されている騎士団の団長と同じか上なんだよ。用事なら彼に頼むと良いよ」
・・・用事って言われてもな~・・・神様の予定表には内容が・・・
『どうするの?』
「英雄殿。団長の様に軍事権限はありませんが、私で力になれる事でしたら何でもやりますぞ」
「それが、貴族領軍私兵隊のアームストロング隊長と一緒に騎士団事務所に来る予定だったので、俺自身は用事の内容が分からないんですよ」
『なるほど・・・フフフッ』
「アームストロング君か・・・そういえば、昼過ぎ頃かな、領軍が南外壁門から出陣したと報告があったきりで帰還したという報告は来ていないな・・・」
「領軍はコルトの南に出陣中なのか?」
「はい、ジェルマン子爵様。規模は約1000人強です。大隊1部隊。中隊3部隊。小隊6部隊。医療部隊1部隊。追加小隊1部隊。領軍の3分の1にあたる兵士が出陣しています」
「はて?魔獣の襲撃の報告は無かったと思うが・・・」
「はい。討伐命令も殲滅命令も王国からは出ていません」
「演習にしては規模が小さいな」
セイズマン・パマリ次期侯爵様に、他言するなと言われているけど、ジェルマン・パマリ子爵様は関係者だし教えても問題ないのかな・・・?
『嘘と正直者と愚か者。神様の予定表の意味が何となくだけれど分かったわ』
どういう事ですか?
『誰かの嘘が誰かに嘘をつかせ、その嘘が周りを巻き込んで、誰かに嘘をつかせる。正直者は嘘を信じて嘘を広める。誰のどの嘘が愚かなのかしらね・・・』
う~ん、嘘は最後には暴かれると思いますが・・・ただ、今、気になる事は、2回目に神様から神授された予定表なんですよね。20:30に貴族領軍私兵詰所の隊長室でアームストロング隊長に会って、その後ここ王国軍騎士団に来る事になっていました。そして、21:40には侯爵邸の執務室。
『今、何時なの?』
ん?えっと、今何時?
≪現在22:27です。
みたいですが、聞こえました?
『日没まで、あと1:33ですか』
「ロイク君。一先ず、軍務大臣の書状について監察官と話たい。兄上や貴族領軍の件については、後でも良いかね?」
「俺は構いません。・・・俺達は部屋の外で待ってます」
「パフさん。マルアスピー行きましょう」
「はい。ロイク様」
「夕食会へはまだ行かないのね」
「もう少し待ってください」
「分かってるわよ・・・」
・
・
・
――― 監察官執務室を出て直ぐの廊下
「マリア・パマリ様とアリス・パマリ様は先に侯爵邸に行かれますか?」
「そうねぇ~・・・どうしましょう」
「先程から、気になっていたのですが、どうして私達の事をフルネームで呼ぶのですか?御父様も御母様も私も同じパマリですよ」
「呼びやすいからでしょうか・・・」
「話をする度に、フルネームで呼ばれていては落ち着きません」
「それもそうね。ロイクさん。私の事は騎士団の仲間が呼ぶ様に、マリアでもマリアさんでもどちらでも構いません呼びやすい方で呼んでください」
「は、はぁ~・・・」
「それなら、私の事も、アリスかアリスさんで良いわ」
「・・・分かりました。それで、御二人はどうするんですか?」
「私は主人を待つわ。一応、中央騎士団第3師団遊撃隊の隊長としては、軍務大臣の書状の内容は気になりますから」
「私も、中央騎士団遊撃隊見習い兵として、待つわ」
ジェルマン・パマリ子爵家は皆騎士団の団員なんだ・・・
『さっきの話の続きなのだけれど、神様から頂いた1回目と2回目の予定表を改めて確認してみませんか?』
もう過ぎちゃってますよ。
『予定通りに動け無かった指示を確認するだけでも何かが見えて来ると思うのよ』
・・・分かりました。
「パフさん」
「はい、ロイク様」
俺は、パフ・レイジィーに小声で話掛ける。
「今から、俺のスキルを使うんだけど、パフさんとマルアスピーと俺にしか見えない物だから気を付けて」
「はい。分かりました」
可視化:版を10倍に拡大:神様から神授された予定表・2つ:確認。
≪・・・認証更新しました。表示します。
『貴族領軍私兵隊の隊長に会う事にはなっていないわね』
そうですね・・・隊長室=アームストロング隊長に会うんだと勘違いしてました。
『ロイクが神様の指示に従い動いたとして、確実に会える人間種は、大聖堂で侯爵第一夫人。正体を隠した誰か。侯爵邸で次期侯爵。ここでは魔獣の事を予定通り教えてます。冒険者探検家協会で獣獅子族に会いました』
神様の予定表で会う予定になっている人には全員に会ってるって事か・・・
『そうなるわね』
まだ会っていないパマリ家の人は、マイラ・パマリ侯爵第二夫人だけで、武具を渡していないのは、この第二夫人とその子息トランプ・パマリと令嬢イザベラ・パマリの3人。
『この人間種には、夕食会で必ず会えると思うわよ』
どうしてですか?
『勘』
勘ですか?
『嘘!武具の話を何処かで耳にしていると思うからよ』
あぁ~なるほど。
『最初の予定表は更新されているみたいだけれど、次の予定表は削除されているだけで更新ではないのね。それに、指令①は達成。サブクエストも70%達成という事になっているわね』
「あのぉ~・・・ロイク様」
パフ・レイジィーは、俺の耳元で囁いた。
「何か、気付いた事でもありましたか?」
「いえ、神様から神授されて、ドック奴隷商会を見学されたのですか?」
「そうなるね」
「あと、大白金貨3000枚って・・・神様が嘘つく訳ないですから、本当って事なんですよね?」
「まだ、確認してないけど、たぶん。それがどうしたの?」
「・・・1枚で、1万NL位の価値が・・・」
・
・
・
「今後、パフさんにも、仕事を手伝って貰う事があると思います。その時は、正当な報酬を支払います。マルアスピー様に聞いたと思うけど」
「マルアスピー様にですか?」
「魔力量の事は聞いてませんか?」
「いえ、何も」
「それなら、宿に戻ったら、話すよ」
「はい」
『フフフッ』
どうしたんですか?
『ロイクとパフちゃんの会話が面白いから・・・』
面白いですか?
『ええ。とっても』
・・・それで、夕食会の時にまだ渡してない3人には渡せるとして、
『神様からの予定表は、侯爵邸に宿泊しなければ、達成度70%のサブクエスト以外、全てクリアした事になるわよね』
何だかパッとしないです。
『貴族領軍私兵隊や王国軍騎士団の事が気になっているのね』
たぶん。そうだと思います。
『でも、人間種達から仕事を奪わないと決めたのでしょう』
そうですね・・・
・
・
・
≪ガチャ
「ロイク君。・・・!皆、待っていてくれたのかい」
「ジェルマン・パマリ子爵様。監察官さん、書状の話はもう良いのですか?」
「はい。英雄殿」
「その件で、ロイク君に1つ頼みがあるのだが、聞いてくれるだろうか?」
・・・なんだろう?
『ここからは、神様の予定表には無い流れになるのかしら』
「何でしょうか?」
「今さっき、部屋から出しておいて何だが、皆、入ってくれ」
「ジェルマン子爵様。英雄殿のお連れの方までですか?」
「あぁ~構わんだろう」
「分かりました」
――― 王国軍騎士団事務所の監察官執務室
・
・
・
「サス山脈の東側に、ドラゴンですか・・・」
「そうだ」
「それで、俺は何をすれば良いのですか?」
「御父様。軍人でも無い民間人をドラゴン退治に同行させるおつもりですか?」
「アリス。ロイク君は、1匹出現しただけで、王国が討伐令を出し、大掛かりな討伐隊が組織される闇炎牙狼を、一瞬たった一撃で数十匹以上倒しているのだよ。おそらく、ここパマリ侯爵領内に滞在している者の中で最強の1人だろう」
『なかなか良い勘をしているわね』
闇炎牙狼は強い魔獣なんですよね?
『人間種にとってはそうだと思いますよ・・・フフフッ』
「英雄なのは分かっています。ですが・・・」
「栄光ある騎士団に民間人が加わる事が許せないか?」
「御父様。私はその様なつもりで言った訳では・・・」
「まぁ良い。既に、王都からは第3師団が出陣し鉱山都市ロイの王国軍駐屯騎士団と合流しているそうだ。周辺の集落からも王国兵が、集結地の王道中央街道ルートフォーとルートトゥーの分岐点。西コルト大平原と大湿地帯の境界に行軍している。私がロイク君に協力して欲しい事は、戦闘ではなく負傷者した兵士を安全な方法で医療部隊まで運ぶ事なんだよ」
「転位魔術でという事ですか」
「そうだ。ロイク君の転位魔術は身体にかかる負荷が全く無い。これであれば、負傷し瀕死の状態の者も問題無く運べるだろう」
『その気になれば、何万人って人間種を同時に移動できるわよね?』
俺に、何させたいんですか・・・
『旦那様を自慢したいだけよ。フフフッ』
・・・ん?・・・・・・あれ?・・・
『どうしたの?』
あぁ~!
「あっ!」
「どうしたんだね」
湿地帯って
「・・・・・・他言するなと言われていたのですが、それが、コルト貴族領軍私兵隊は、コルトの南約12Km地点の湿地帯で魔獣達と戦闘中なんです」
「集結予定地の近くだな。ロイク君。詳しく話て貰えるかな?」
「・・・セイズマン・パマリ次期侯爵様から要らぬ混乱を避けたいからと他言を控える様に言われていたのですが、S級魔獣の金剛石竜子に加え、竜ですよね・・・」
仕方ないよね・・・
『フフフッ』
「分かりました。・・・今日の昼前にセイズマン次期侯爵様に会ったのですが、その際、南の湿地帯に魔獣達が集結している事を報告しました」
「ちょっと待ってください。英雄殿。危険レベル4~5の討伐対象S級魔獣の金剛石竜子の殲滅討伐に貴族領軍私兵隊は出陣したのですか?」
「いえ、それは・・・貴族領軍私兵隊に確認を取ってから俺が倒しました」
「S級を既に倒されているのですか?」
「そうです。ただ、・・・セイズマン・パマリ次期侯爵様からの命令で出撃した貴族領軍私兵隊は、殲滅討伐を必ず達成しろと言われた翡翠石竜子4匹に加え泥地石竜子302匹と地火石竜子18匹闇大石竜子19匹と戦ってるはずなんです。全員に補助魔術を施しましたし、麻痺の状態異常攻撃が厄介な痺れ魔鰻を西コルト川の西岸に移動させたので、大丈夫だと思うのですが・・・」
「ロイク君。ドラゴン討伐の為に集まっている軍の集結予定地の近くに、金剛石竜子・翡翠石竜子・泥地石竜子・地火石竜子・闇大石竜子・痺れ魔鰻。500匹近い魔獣がいて、それを殲滅討伐する為に貴族領軍私兵隊は出撃したと言う事かね?」
「金剛石竜子と痺れ魔鰻の大半は俺が仕留めたので、実際は400匹以下の魔獣達と戦闘状態にあるはずです」
「・・・なるほど」
「ジェルマン子爵様。今の話を納得出来たのですか?」
「納得するしかないだろう。闇炎牙狼の英雄だ・・・」
『ここの人間種達は信用して良いと思いますよ』
信用ですか?
『そうよ。湿地帯の今の状況。ロイクのステータス。人間種達は、現実を受け入れる為に、事実を目で確認する必要があるのでしょう?』
精霊眼や聖獣眼や邪獣眼とかスキル強化が無い人間は確かにそうかもしれないですね。
『タブレットかPTカードでステータスを見せてあげたらどうかしら。この話が直ぐに終わると思いますよ』
夕食会に早く行きたいんですね。
『当然よ。運動の後だもの』
・・・。まずは、これかな。【FORMカード】・PTカード。
俺は、ポケットに手を入れ、PTカードを取り出したふりをした上で、ジェルマン・パマリ子爵へカードを差し出した。
「ジェルマン・パマリ子爵様。PTカードで俺のステータスを確認してみてください」
「・・・ロイク君。ここには魔導具が無い。カード履歴の確認はここでは無理だ」
・・・そうなの?
『あら・・・不便ね』
そうですよねぇ~。
「すみません。今日、PTカードを発行して貰ったばかりで・・・」
「なるほど。PTカード発行以前の討伐は証言による申告数、認証数になる訳か・・・」
「ジェルマン子爵様。各騎士団に試験的に配られた、アカデミーで開発中の魔導具でなら、BIRTHDAYから現在までの討伐数や討伐状況を履歴に起こす事が出来るかもしれません」
「第3師団では見た覚えがないな」
「貴方、その魔導具でしたら、中央騎士団の本部に確か5つ程、納品されたはずですよ」
「本部か・・・」
「御父様。バイル様の御子息様の討伐履歴を確認した上で、例え英雄殿でも危険だと判断した場合は、騎士団に同行する話は白紙。・・・それに、湿地帯の話の見極めも出来ますし、どうでしょうか?」
「アリス。まるで審議官だな・・・」
「疑っている訳ではありません。ですが、見極めに調度良い魔導具があるのでしたら、さっさと話を進める為にも良いと考えました」
「ロイク君。構わんかね?」
「俺は・・・お任せします」
『フフフッ。面白くなって来たわね』
神授スキルでも、PTカードや、魔導具を操作するのは無理だし。諦めます。
≪チャリーン
・
・
・
≪トントン
「入れ」
≪ガチャ
兵士が2人、敬礼し監察官執務室に入って来た。
「監察官様。御用件は何でしょうか?」
「王都から倒した魔獣の数を自動で履歴化する魔導具が届いていただろう。それをここに運んでくれ」
「はぁっ!」
敬礼すると、兵士2人は執務室を後にした。
「ロイク君。王国軍中央指令部に届いたアンカー男爵領の王国軍や領主代行、それに貴族からの報告書は、大臣達や王国中央議会や軍指令部が精査し事実だと認め公文で正式に発表している。改めて確認する様な真似をして本当に申し訳ない」
「いえ。今日作ったカードに前の分が記録されるのでしたら、今後口頭で説明する事が無くなるって訳ですから。寧ろありがたいくらいです」
「いや、本当にすまないね」
『ロイクのタブレットで直ぐに分かる事よね』
そうですね。でも、PTカードで倒した魔獣や状況が分かるなら楽じゃないですか?説明する手間が省けますからね。
『私は魔獣を倒した事が無いのですが、ロイクやパフちゃんとパーティーになって倒した魔獣はどうなってるのかしらね?』
可視化のままだし、タブレットで確認してみますか?
『そうね。お願いするわ』
大樹の森の聖域の精霊樹に宿りし大精霊マルアスピー様の魔獣討伐件数を表示。
≪・・・表示します。
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R4075年06月01日(無)時刻22:50
【マルアスピー・シャレット】
魔獣討伐数 0
内訳
個人での討伐数 0
共闘での討伐数 0
獲得経験値合計 0
指令達成数 0
精霊ポイント 972,766
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『0匹なのね』
そうみたいですね。この精霊ポイントってなんでしょう?
『聞いた事が無いわ・・・』
他の精霊様の情報もあると良いのですが・・・
『そうねぇ~・・・』
・
・
・
≪トントン
「入れ」
≪ガチャ
兵士が4人、敬礼し監察官執務室に入って来た。
「監察官様。魔導具はどちらに置かれますか?」
「重いのかね?」
「1人で持ち歩くには重いと進言します」
「それなら、このテーブルの上に置いてくれ」
「はぁっ!」
2人の兵士が敬礼し部屋を出て行くと、残った2人の兵士は、俺達が囲む様に座るテーブルの上を綺麗に拭き、柔らかそうな黒いシートを敷いた。
「これは?」
「はぁっ!このシートは魔導具の安定動作の為に敷く様にと指示書に書いてありました」
『ねぇ、ロイク。あの黒い布。魔素を弾く効果があるみたいね』
え?
『良く見なさいよ』
今の状態の目だと、魔素の流れは分からないみたい。
『そうなの?』
≪コト トン
「監察官様。設置が終わりまた」
「御苦労。下がって良いぞ」
「はぁっ!」(4人)
4人の兵士は、敬礼すると部屋を後にした。
「監察官。この魔導具はどうやって使うのかね?」
「私も初めて見るもので・・・」
「御父様。指示書をこちらへ」
「あぁ~指示書か・・・監察官。指示書を娘に渡してやってくれ」
「はい」
・
・
・
俺は、アリス・パマリが読む指示書に従い、PTカードを魔導具の中央にある導入口にセットし、右手と左手で魔導具の中央より上に盛り上がる様に突起した魔晶石、水晶体を掴んだ。
『フフフッ』
どうしたんですか?
『あれよあれ・・・胸を鷲掴みにしているみたいに見えるから』
水晶体ですから。胸じゃありませんから。
『そうね。胸は固く無いものね・・・フフフッ』
「両手で魔晶石を掴んだわね?」
「はい」
「天辺の読み込み用の赤いボタンを押すわよ」
「お願いします」
「監察官。この魔導具だが1人で扱え無い様だな」
「そうですね。改善点1ですね」
「そうなるな」
・
・
・
「まだ、かかるのかね?」
「魔晶石が両方とも発光しなくなったら、読み込み用の赤いボタンをもう1度押して読み込みを終了させて、次に隣の入力用の黒いボタンを押すとPTカードが更新されるみたいよ」
「2つとも発光しているから、まだかかるという事か・・・」
・
・
・
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R4075年06月01日(無)時刻23:20
【マルアスピー・シャレット】
魔獣討伐数 0
内訳
個人での討伐数 0
共闘での討伐数 0
獲得経験値合計 0
指令達成数 0
精霊ポイント 972,766
***********************
『ロイクのスキルと比べると随分時間がかかるわね』
俺のは神授スキルですからね。魔導具と一緒に考えたらダメですよ。
・
・
・
「やっと終わったわね。更新を押すわ。魔晶石から手を離して良いそうよ」
「誕生日の日からPTカード発行日までの期間分だから、読み込むのが大変だったんでしょう」
「改良の余地ありよ」
「そうだな。待っている時間で模擬戦闘が可能な位だ」
「改善点としてこれも上げておきます」
「そうしてくれ」
・
・
・
「終わった様よ。正面にある突起の後ろ側に平らに加工された水晶体があって、そこにカードの魔獣討伐情報が浮き出すみたい。黒いボタンを押して更新終了。黄色のボタンを押す」
「お、何か浮かび上がってきたぞ」
「小さくて見難いな」
「はい、ジェルマン子爵様。改善点としてこれも上げておきます」
「うむ」
「御父様も監察官様も、ちょっとどいてください。私が読み上げます」
「ああ、そうだな頼む」
「えぇ・・・はぁ~? ......
***ロイクの魔獣討伐数最新版説明***
【単独討伐】
ジュルム:107匹
地ジュルム:95匹
水ジュルム:4匹
聖ジュルム:1匹
邪ジュルム:19匹
闇ジュルム:2匹
兎耳狼:402匹
大地牙狼:158匹
闇牙狼:195匹
闇炎牙狼:108匹
※討伐対象魔獣:危険度1※
地水大牙狼:101匹
※討伐対象S級魔獣:危険度6※
大地竜・狂暴:2匹
※討伐対象S級魔獣:危険度8※
軍隊魔蟻:4077
軍隊地魔蟻:5244匹
闇蝙蝠:881匹
闇魔蛇:25匹
瘴魔土蜘蛛:22匹
瘴魔土大蜘蛛:3匹
瘴魔闇土蜘蛛:1匹
※討伐対象S級魔獣:危険度4※
森魔鼠:16匹
風魔鳥:7匹
連帯土豚:8匹
痺れ魔鰻:402匹
沼地石竜子:26匹
金剛石竜子:1匹
※討伐対象S級魔獣:危険度4※
【共闘討伐】
なし
【パーティー討伐】:個人配分
大樹髭大陸亀:1匹
※討伐対象S級魔獣:危険度4※
ロイク・シャレット:99.9999999%
バイル・シャレット:0.0000001%以下
***ロイクの魔獣討伐数最新版説明おわり***
......。何、この討伐数は?・・・討伐対象魔獣108匹。S級104匹。古代種1匹。S級の中に大地竜の上位種が2匹・・・」
「魔導具が壊れているという事はありませんよね?」
「今、始めて使いましたから、どうなのでしょう・・・」
「アリス。試しにやってみなさい」
「御父様。分かりました」
・
・
・
ボタンの操作はパフ・レイジィーが担当した。
「私の討伐数は、単独討伐が、ジュルム140匹。草原魔鼠45匹。痺れ魔鰻6匹。沼地石竜子5匹。水石竜子5匹。草原牙狼。9人PT討伐が均等配分が、ジュルム933匹。草原魔鼠623匹。大地怒魔馬28匹。兎耳狼319匹。草原牙狼94匹。闇牙狼2匹。コルトに来る前に騎士団の実践訓練で戦った闇牙狼が履歴にあるようですし、壊れてはいない様です・・・」
「大地怒魔馬と闇牙狼がこの中だと手強い魔獣の様だね」
「騎士団の見習い兵9人でフルパーティーを編成し実戦訓練の際に倒した魔獣です」
「なるほど。因みにアリスのレベルは今幾つかな?」
「私は個体レベル9のはずです。王都を発つ前に、訓練パーティーの皆で確認しました」
『神様からいただいた魔獣の素材の分も討伐数に加算されていましたね』
そうですね。 地水大牙狼ですよね?見た事も無い魔獣ですよ・・・
『あら?ロイク。貴方レベルが上がってるわよ』
え?・・・あ、本当だ。痺れ魔鰻や沼地石竜子や金剛石竜子を倒したから、それで上がったのかもしれないですね。
『個体レベル275。獲得経験値の合計が16,232,958。276まであと200,000・・・私はレベルが無いみたいだし、レベルが何処まで上がるのかロイクで実験できそうね』
・・・個体レベルを隠す方法ってないんですかね?
『隠してどうするのよ』
それもそうですね・・・
「アリスは、レベルが9になったのか。頑張ってる様だね」
「はい。御父様。弓矢を扱い戦闘に参加する者として、御母様が目標です」
「おや、バイル殿ではないのか?」
「バイル様は英雄であり憧れの人です。高過ぎる目標は現実感がありません」
「おや、マリアは通過点に過ぎないか。ハッハッハッハ」
「遊撃部隊の隊長として、弓の技術では、まだまだ負けませんわよ。アリス」
「ハッハッハッハ。まぁ~まずは、卒業して、正式に騎士団に配属されないとな」
「頑張りますわ。ところで、バイル様の御子息様は、レベルは幾つなんですか?」
「俺ですか・・・」
『なるほどね。今の会話の流れで、275と答えたら浮くわよね』
「御父様と御母様はレベルは御幾つなのですか?」
「うーん?私は、37だったはずだが・・・。36だったような気もするな」
「私は個体レベル25よ」
「それで、貴方は?」
「俺は、個体レベルがさっきの戦闘で上がって275です」
「はぁ~????」
「な、何ぃ~・・・」
「に、にひゃ、にひゃくな、なな、じゅうご・・・で、ですか?英雄殿・・・」
「あらま、凄いわね」
「・・・ロイク君。良いかい、王国軍の中ではレベル68が最高だ。各協会の管理内でもレベルは84が最高だったはず・・・」
「ですが、今日、登録した際に274でした。先程の戦闘で275に上がった様なので、冒険者探検家協会の管理情報は更新されているのではないかと・・・」
「・・・ゼルフォーラの最高レベルが84から更新されたと思ったら一気に275か・・・もう笑うしかないなぁっ!ハッハッハッハッハ」
「ジェルマン子爵様。個体レベルが100を超えた者の記録は、ゼルフォーラ王国の文献の中で確認出来ている限り、僅か4人だけです」
「そうだな。私の知っている限りでも、今日で5人だけだ・・・」
『人間種のレベルの上限は幾つなのかしらね。一緒に限界を目指しましょうよ』
ドンドン人間から離れてしまう様で・・・人間を止めてしまう様な感じが・・・
『定義にもよるわよ』
はぁ・・・
「アリス。桁が違い過ぎて想像もつかない話になってしまったが、ロイク君を騎士団に同行させる事に、まだ反対かな?」
「私も・・・・・・私は見習い兵ですが、ロイク様のパーティーで騎士団に同行します」
「お前が来ても足手まといなだけだ」
『あの人間種。ロイクの事、義理の御父様の御子息様とか、義理の御父様の御子息様のロイク様って呼んでいたのに、ロイク様に変ったわね』
英雄って呼ばれるよりは良いですよ。
「ふぅ~ん・・・まっ!私は構わないれどね・・・フフフッ」
「ロイク様。私をロイク様のパーティーに入れてください」
「入れるも何も・・・今現在パーティーに入ってますよね・・・」
「そうではありません。ドラゴン討伐のパーティーに入れてください」
「アリス。困らせるんじゃない」
「御父様・・・邪魔はしません。参加させてください」
「ねぇ~貴方。危なくなったり邪魔な時は、ロイクさんの転位で強制的に離脱。パーティーリーダーや仲間の指示に従う事。これでしたら、超S級とも言われるドラゴン討伐を体験する良い機会ですし、参加させても宜しいのではないでしょうか?」
「御母様!」
「どうしたものか・・・ロイク君。君のパーティー編成は普段どうなっているのかね?」
「村に居た時は、父と2人で狩りをしていました。コルトに来てPTカードを作るまでは、パーティーがどうなっていたのか分からないです」
「あぁ~そうだったね。PTカードを作ったのは今日という話だったね・・・」
「はい」
「そうなると、ロイク君のパーティーは、君とマルアスピーさんとパフさんの3人のパーティーという事になるのかな?」
「そうですね」
「ここに、アリスを加えた場合。1度の転位で戦闘から離脱可能な人数は5人になってしまう。邪魔以前の問題なのだよ」
『ロイクは、パーティーに入ってない人も【フリーパス】【タブレット】【転位召喚】で【転位】に近い事が出来たわよね?』
転位魔術って事にしているので、出来ますが出来ない事で進めようと考えています。
『そうなのね。それに、パーティーの制限が解除されてるのよね?』
制限ですか?
『神授スキルの【FORMカード】は、制限解除だったと記憶していますよ』
そうでしたっけ?
『確認してみましょうよ』
そうですね。スキル確認。神授スキル【FORMカード】。
≪・・・表示します。
***********************
R4075年06月01日(無)時刻24:10
【FORMカード】
①パーティーメンバーの制限解除
②フリーパス効果反映
③世界に存在する全てのカードと互換
④家族カード発行可能(上限99)
⑤開示情報に制限可能
発行済家族カード
#01:マルアスピー・シャレット
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①のパーティーメンバー制限解除って所ですよね?
『そうね・・・って、もう夕食の時間よ。ホラ!ホラ!』
見えてますよ。パーティーメンバーの制限解除の説明を表示
≪・・・表示します。
***********************
R4075年06月01日(無)時刻24:10
【FORMカード】
①パーティーメンバーの制限解除
冒険者探検家協会発行【PTカード】の
パーティーメンバー上限人数9人の制限解除。
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『あら、良かったわね。これで、1度に何人でもパーティーメンバーとして、転位で移動出来るわ』
そうですけど・・・【フリーパス】と同じ位、秘密にしておいた方が良さそうな気がしませんか?
『神授スキルで同時に何人でも転位出来るって嘘をつくって事ね?』
あっ、なるほど。その手がありましたね。それなら、ちょっと実験のふりして、夕食会に行きましょう。
『夕食会に行くのね。さぁ~実験しましょう』
・・・そうですね。
「ジェルマン・パマリ子爵様。転位の件なのですが」
「何かね?」
「もしかすると、俺の神授スキルでの転位は、パーティーメンバー以外の人でも転位出来るかもしれません。PTカードを作る前の時点で、父やマルアスピーや村の人を転位させていました。知らないうちにパーティーメンバーとして機能していたのかもしれませんが、まだPTカードを持っていない時だったので、定かではありません」
「つまり・・・従来の転位魔術と違う可能性がある訳だね」
「はい。ですので、ジェルマン・パマリ子爵様だけを俺のパーティーメンバーから外した状態で、実験してみようと思います。夕食会に呼ばれていますし、マリアさんもアリスさんも居ますから、侯爵邸の執務室に転位しても騒ぎにはならないでしょう。もし実験が成功したなら、ジェルマン・パマリ子爵様も御一緒という事になりますからね」
「なるほど・・・」
「監察官さん。ドラゴン討伐の件はジェルマン・パマリ子爵様と相談した上で決めたいと思います。後ほど、ジェルマン・パマリ子爵様から聞いてください」
「分かりました」
「それでは、ジェルマン・パマリ子爵様をパーティーから外します」
「あぁ~」
「でもって、転位、発動」
【フリーパス】【タブレット】:侯爵邸・執務室・移動≫
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――― 侯爵邸の執務室
「あら?御父様がいませんよ」
「あら、そうね」
「え?あっ?・・・マリア殿にアリスに、ロイク君か?・・・どうやってここに?」
えっと、【召喚転位】:ジェルマン・パマリ子爵様・発動≫
ジェルマン・パマリが俺の目の前に姿を現した。
「あ、御父様が・・・」
「貴方」
「おぉ~・・・お前達だけ消えてしまったので、失敗かと思っていたのだが、パーティーメンバー以外の者は少しだけ遅れて転位する様だね」
「な・・・なぁ・・・ジェ、ジェルマン」
「おぉ~兄上。お元気でしたか?ロイク君の転位魔術の実験をしていたのです。シャレット家とパマリ家の友好を祝う夕食会が催されると聞きました。兄上への挨拶もまだでしたし我々家族も出席しようと思いましてな。兄上、ロイク君の転位魔術には驚きますぞ・・・何とパーティーメンバー以外の者まで一緒に転位出来るのです。若干ラグがあるようですが瞬き数回程度です」
「あぁぁぁ・・・ジェルマン。元気で何よりだ。明るい内に夕食会を済ませる予定で準備していたので、シェフも使用人達も待機しているぞ。ロイク君。御者だけが戻って来た時には驚いたが、話は聞いたよ。まずは、君に無礼を働いた副隊長のエリック・カルゼノイと部下達の代わり謝罪しよう」
「あ、いえ。セイズマン・パマリ次期侯爵様が謝る事ではありません。それに、俺は彼等に失礼な事はされていません」
「そうか、何にせよ・・・エリック・カルゼノイとその部下の、ロイク君への発言は見逃せない。夕食会が中止になってしまうところだったのだからな」
『あら、夕食会が遅れた責任は、あの人間種達になるのね』
そうみたいですね。
『良いの?』
御者のおじさんに対して、彼等が謝罪する機会に繋がるかもしれませんからね。
『ふ~ん』
「さて、もう夜だ。外での夕食会は中止だが、大広間でなら可能だ」
≪チャリーン
≪ガチャ コト コト バタン
「お呼びでしょうか?」
「トッド。ロイク君達が到着した。夕食会のパーティーを始めるぞ。出席者達を大広間に集めろ。料理を運べ、音楽を鳴らせ。私からシャレット家へ贈る目録を準備しておけ」
「かしこまりました」
≪ガチャ コト コト バタン
執事のトッドさんは、部屋を後にした。
「さぁっ。ジェルマンもロイク君も大広間に行くとしよう」
「はい」
「そうですな。兄上」
『美味しい物が沢山出ると良いわよね』
「パフちゃんは、白いモコモコ知ってる?」
「マルアスピー様。白いモコモコですか?」
「そう。白いモコモコ。美味しいのよぉ~・・・メアリーママさんが作ってくれるのよ」
「どんな料理か分かりませんが食べてみたいです」
「出ると良いわね」
「はい」
あれは、俺の母の料理だから、たぶん出ないと思いますよ。
『あら、そうなの・・・残念』
昨日の夜食べたばかりじゃないですか・・・
『美味しい物は別腹なのよ』
使い方が違う気が・・・まぁ~良いか
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そして、夕食会は無事に開催された。
コルトの南12Km地点。湿地帯の泥沼の争いをまだ誰も知らないまま・・・