4-11 正しい神気の使い方と、137人の被害者+。
「ふぅ~。やっ・・・と終わったぁ~・・・・・・」
「お疲れ様です。ロイク様」
アルさんからタオルを受け取り汗を拭う。
≪フワァ
「うんうん良い感じだね。最初からあたしの言った通りにしていれば良かったね」
神授スキル【マテリアル・クリエイト】で完成させた貯水池の中央部。水面の30cm程上に現れたフォルティーナは胸の前で腕を組みながら周囲を見渡している。
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ドヤ顔を決めながら。
今回ばかりは反省しておりますです。はい。
≪スゥ―――
「おんや。陛下。これはなかなか見事な出来栄えですなぁ~」
「うわぁっ」
「如何なされましたかな。はい」
chefアランギー様が後ろから話し掛けて来た。
「あのですねぇ~。何度も言ってますが、後ろから突然話掛けないでください。しかも至近距離で」
「ふむふむ。気配を残し出現する様心掛けていたのですがぁ~。足りませんでしたかな。はい」
足りる足りないの話じゃないんですよぉ~俺の話は・・・。
「ロイク。貯水池にしては水深が凄い事になってるね。前のラメールを水没させたのかね?」
「はい。地上部分と地下部分に仕切りを創造して前みたいな感じにしても地震とか何かの拍子にまた崩落する可能性があるんじゃないかと思い。地下空間ごと貯水池にしちゃいました」
「なるほどなるほどぉ~。どれどれぇ~・・・・・・うほぉ、バイタリテの丘の内側。地中の7割が水瓶ダムですか。はい」
「水はあそこに見える水路の奥に新たに設置した大海水の祠の社の祭壇にお祀りした直径20cmの解呪と浄化のスキルを付与した水神玉から毎秒1t創造する感じで調整してあります。触った感じだと0.5t~1.8t位までなら調整出来ます。抑え過ぎると制御仕切れない感じです」
「ロイク。バイタリテ宮殿に施されたヴゥーアムシェーヌで強化された水の封印を解除したのは何故だね?」
「それはですね。水を入れ替えるにあたり、邪魔な黒く淀んだ汚い水をタブレットに収納して、地下と旧霊廟バイタリテというかバイタリテ宮殿を掃除(浄化の魔法でだけど)してたんですよ。そしたら、タブレットから浄化完了の報告があって、確認したら......
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≪タブレットの報告※簡易まとめ※≫
浄化が完了しました。
①ティルア・カトラの清らかなる魂を留めし核
②ティルア・カトラの想念
③セリム・カトラの清められし魂
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......バイタリテの悲劇の犠牲者だって話の137人と1人の魂の核やら念やらが俺の所有物として整理されてたんですよ」
「おかしいね。ずっと見てたね」
「おんや。私も見ていたはずなのですが、気付きませんでしたぞぉ~。はい」
「創造神のせいだね。毎回、余計な事ばかりするね」
それ、貴女の事ですよね。
池の中央部の水面の10cm上の宙に浮かぶフォルティーナを見やる。結構、離れた場所にいるのに、傍で会話している様に聞こえるのは、神授スキル【レソンネ】スキル【念話】或いは神様独自の神気技の応用だろう。
「ふむふむ。そうですなぁ~。好意的ではない友好的ではない神もいますからなぁ~。思考や行動を無条件に認識されは確かに不利。・・・今後は我々も人間のコミュニケーションを多用するとしましょう。はい」
「人間のコミュニケーションかね。いったい何をするね」
「簡単な事ですぞぉ~。人間は語り合い触れ合い愛し合い争い合い奪い合い殺し合う。実にストイックで分かり安いのです。はい」
「なるほどだね」
後半が微妙に違う様な違わない様な。・・・はっきり否定出来ないのが何とも情けない・・・。って、違う違う。
「それでですね。俺の思考とか行動は今はどうでも良いんです。俺の所有物になってた魂の核が何なのか試しに取り出そうとしたらですね」
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≪神気を核に持つ闇属性の核を解除しますか?【 YES / NO 】取り出したい場合はYESを選択してください。
何だこれ?二択というかこれだと1択だよな。・・・YES。
表示画面のYESに触れた。
≪核内にて一時的に守られていた肉体を解放します。一致する魂の核を結合させますか?【 YES / NO 】取り出し作業を継続する場合はYESを選択してください。
YES。
≪魂と肉体の結合に成功しました。結合完了によりタブレットの保管機能に深刻なエラーが発生しました。エラーの原因となっているヒュームを緊急放出します。
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「それで、出て来たのが、ララコバイア王国のヴィルヘルム殿の奥さんのティルア・カトラさんです」
「何を言ってるね」
「神気を核に持った自然魔素が人間の肉体を保管ですか。ふむふむ興味深い話ですなぁ~」
「それで、全員をタブレットから出しました。中にはバイタリテの悲劇を起こしギルティ―の判決を受けネットハルト島で終身強制労働中の旧教の元大司教コンラート・ジーメンスさんも居ました。監獄島にいるコンラート・ジーメンスさんは誰なんでしょうね」
「ほうぉ~。なるほどなるほど。そうぉ~言う事でしたかぁ~。実に面白いですなぁ~。なるほどぉ~。はい」
「アランギー分かる様に説明するね」
「然らば、ここバイタリテ宮殿は王家の霊廟バイタリテとして31年前に封印されてしまいました。愚かな事にララコバイア王国の王都ラワルトンクや周囲の集落の水の循環を司っていたセアンの祠をも封印してしまった。創造神様とのヴゥーアムシェーヌによりオスカー・フォン・フォルヘルルが施した水の結界による封印によって、神である私達ですら封印内の認識は不可能となり、1柱の亜神の偉業に気付けなかったのです」
「亜神かね。・・・・・・あぁ~あの邪鱓獣の話かね」
「左様ですぞぉ~。彼女はラメールの祠の御神体とその頭上に祀られてしまったセアンの祠の御神体が及ぼすであろう厄災や循環の乱れを抑止する為、亜神獣でありながらセアンの祠つまりバイタリテ宮殿を創造神様より任されていたのでしょう。創造神様の代りとなり宿る為、邪鱓獣からの高位進化し亜神獣となった。聖獣や精霊に亜神とはいえ神の気配を察知する事は難しい。今の私の様に見られ様見せ様としない限り認識される事はありません。ラメールの中精霊もその眷属も低位し邪獣となるまで気付けずにいたのでしょうなぁ~。はい」
「なるほどだね」
「つまり、邪鱓獣様は亜神様として大海水の祠に宿り水の循環を管理していたって事ですか?」
「そうですぞぉ~。ラメールの御神体が闇属性の干渉を受け始めたのが、10万年前の様ですからぁ~。逆算するに凡そ31年前に限界を迎えたのでしょうなぁ~。神気を核にした水属性で何とか抑止していた水属性の優位属性にあたる闇属性の暴走。飽和を超え膨張に膨張を重ねついにはラメールの御神体を闇堕ちさせた。闇堕ちと同時に起こったのが闇属性による目に見えぬ自然魔素自然の力の爆発。セアンの祭壇を訪れていた人間をその衝撃から守る為、セアンの祠を託された元亜神は神気を使い果たしてしまったのでしょう。人間達の肉体を神気を核にした闇属性に守らせたのは咄嗟の判断にしては上々でしたなぁ~。はい」
「そうなんですか?」
「当然だね」
フォルティーナは、ドヤ顔だ。
無視しよう。
「闇属性はヒュームには良く無い属性ですよね?」
「確かに人間にとっては好ましくありませんなぁ~。ですが、闇堕ちした御神体が創造する闇属性を帯びた水から時間の理の中で保護した肉体を守り続ける為にはどうしたら良いでしょうなぁ~。聖属性?いやいやそれとも邪属性ですかなぁ~・・・・・・その通りですぞぉ~。はい」
えっと、まだ何も言ってませんけど・・・。
「人間を隠すなら人間の中。猿を隠すなら猿の群れの中。木を隠すなら森や林の中。水を隠すなら水の中。闇に隠するわ闇その物。時間の理の中、闇属性の水の中で肉体を保護するのであれば優劣干渉の無い同じ闇属性が最も効果的ですぞぉ~。神気の核に闇属性を覆わせ核内で肉体を保護した。素晴らしいですなぁ~。そして人間の念をセアンの御神体の1つを用いて思いの水として留まらせた。闇属性の性質を良く理解した抜け目の無い方法です」
「そうなんですか?」
俺さっきから、そうなんですか?・・・しか言ってない様な気が。ハハハ。
「はい。セアンの呪いは、闇玉によって創造された汚染水が貯水池に集まり、比較的軽く害の少ない弱い弱汚染水が祠の外へと放水された結果だったのでしょうなぁ~。大方バイタリテの呪いも、御神体の頭上に御神体を祀った事が原因だと思わますぞぉ~。まぁ~御神体と言ってもたかだか翡翠の水神玉が3つと、魚神玉の水神玉が2つと、取るに足らないガラス玉の様な物ですがね。はい」
へぇ~。イヤリングの水神玉はぎょじん玉っていうだ。
タブレットからイヤリングを取り出す。
「これ、ぎょじん玉って言うんですか。貴重そうな宝玉ですが貰っちゃって良かったんでしょうか?」
「問題ありませんぞぉ~。今となっては神気の抜け殻ただの魚玉です。プワソン種の成長促進や健康維持位にしか役に立ちませんからなぁ~。はい」
「うお玉?」
「ロイク様。魚の玉で魚玉です。魚の神の玉で魚神玉です」
「あぁぁ―――なるほど」
魚に縁が余りないから直ぐに思い浮かばなかったよ。
「ロイク。聞きたい事があるね。タブレットから取り出した人間はどうしたね」
「皆さん眠ってます」
「そうではないね。何処に居るね」
「あぁ~。それなら、ここは祠で霊廟ですが宮殿です2階や3階には使われていない部屋が沢山あったんで、そこにベッドを出して休ませました。宙に漂う酸素っていう循環でしたっけ、その酸素と闇属性の濃度を少しずつ調整してるんで目覚めた時には外に出ても大丈夫なはずです」
「それでアルがいたのかね」
「はい。フォルティーナ様。ロイク様のお手伝いです」
「アスピーとミューとマリレナは、ラメールの祠の精霊域で呑気にティータイムだね。全く精霊は御気楽な御身分だね」
・・・疲れたね。少し寝て来るね。一緒に寝るかねイッシッシッシィ~。って、帰りましたよね?・・・さっきまで寝てたんじゃないんですか?俺達は徹夜で作業・・・・・・。
「陛下。ラメールは創造神様から新たな御神体を託されたのですよね?はい」
「そうですよ」
あれ?認識出来てないのか?
「ガルネスの御神体よりも創造神様の神気を強く感じる御神体・・・・・・。ふむふむ。創造神様には創造神様のお考えがあるのでしょうなぁ~」
「ガルネスって水煙の聖地大瀑布ガルネスの事ですよね?」
「その通りですぞぉ~。コルト下界の四大属性の中で最後に神授されたのがガルネスの御神体なのですぞぉ~。あぁ~あくまでも大精霊を有する聖地にという話ですぞぉ~。はい」
「へぇ~」
「それで、結界を解除したのは何故だね。説明になってないね」
「簡単な話です。タブレットから出て来たバイタリテの被害者達の肉体は31年もの間、闇属性の中で保管されていました。身体に染み込んだ闇属性の自然魔素の代謝が完了し、闇属性の影響が無くなるまで最低でも半年はかかります」
「それがどうしたね」
「なるほどなるほど」
「闇属性の心得を所持する者であれば、魔術や魔法を使い闇属性の自然魔素を消費したり、体内に止め放出を制限したり出来ます。ですが、心得を所持していない者はその統制が出来ません。俺の神授スキル【転位召喚・極】でこの封印の結界を無視出来るか試した結果。無属性以外の属性を帯びた存在は移動出来ませんでした。通常、心得の無い属性を身体が帯びている事はありません。ですが被害者達は闇属性を帯びてしまっています。彼等をここから解放する為には封印が邪魔だったんです」
「どうしてここで出したね」
「何かなって思ったんですよ。それに、まさか最後の最後でこんな落ちがあるなんて予想出来ません」
「おんや。おかしいですぞぉ~。オスカー・フォン・フォルヘルルはまだ生きておりますぞぉ~。はい」
「どれどれだね。・・・・・・本当だね。ヴゥーアムシェーヌは解除されてるね。なのに生きてるね。ロイク。どうなってるね」
「陛下。これはいったい?」
「創造神様から神授があったんですよ」
「おんやまぁ~」
「また創造神かね。次は何だね」
フォルティーナは、眉を顰める。
露骨に嫌そうな顔するのもどうかと思いますよ。
「神授スキル【エグジスタンスアレウール】です。タブレットでオスカー・フォン・フォルヘルルさんを検索して表示画面から神授スキル【エグジスタンスアレウール】をかけて時間を停止させたのでヴゥーアムシェーヌが解除され時間の理の中に解放されても時の渦波に飲み込まれずに済み。生きてる?・・・停止してるんで生きてるとは言わないかもしれませんね」
「陛下。エグジスタンスアレウールは永久ではありませんぞ。私でも3000年が限度」
「あたしなら20億年は平気だね」
・・・神様だからしょうがないか。
「3000年とか20億年とか停止させてどうするんですか?ちゃんと考えてあります」
「どうするね」
「ふむふむ。はい」
「ロイク様は。創造神様に許可をいただきました」
「「許可?」」
「何の許可だね」
「オスカー・フォン・フォルヘルルの眷属・亜神化です」
アルさんは、目をキラキラと輝かせ力強く言い放った。
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「おかしいね。闇属性の調整をしてるから起きたら外に出られると言っていたね」
・・・おっ。普段は適当に話を聞いてるくせに、気付いたか。
「封印を解除した後で気付いたんです」
自然魔素各属性を放出する石や各属性の事象を創造する玉があるなら、各属性を吸収する石があっても良いんじゃないか。試しに神授スキル【マテリアル・クリエイト】で創造してみたら属性無視自然魔素を吸収する石が完成した。
亜神化の許可。停止のスキルをいただき。停止の許可、結界解除の許可。
創造神様にお願いし、全てを実行し終えた後、20ラフンも無く完成させただけの事である。
「そ、そうかね。ま、まぁ~・・・何だね。頑張ったね。良くやったと思うね」
「陛下。人間生きていれば良い事は必ずありますぞぉ~。はい」
「どうしたんですか急に・・・」
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そんな神眼で俺を見ないでください。
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徹夜明けで昼過ぎまで作業し流石に疲れ果てていたのだろう。目覚めると・・・
―――R4075年9月9日(闇)8:00
眠くて、バイタリテ宮殿で休んだんだっけ。部屋の外が随分と賑やかだけど何かあったのか?
俺は、部屋着のまま部屋の外へ出る。
仮装衣装はchefアランギー様が今後の参考にするからと就寝前に回収して行った。
「ロイク様。おはようございます」
「あぁおはよう。・・・えっと」
誰だ?
「おはようございます。ロイク様」
「おはよう・・・」
えっと、誰だっけ?
≪おはようございます
「あぁ、おはよう・・・」
メイド姿の女性達に次々と朝の挨拶をされる。
≪皆さん。ロイク様がお目覚めになられました。
メイド姿の女性達は早歩きで姿を消した。
なんだったんだ。今のは・・・。
タブレットから衣類を着衣の状態で取り出し着替えを済ませ、1階の貯水池の前に新設した大きなホールへと移動した。
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「あら、ロイク起きたのね。おはよう」
「おはようございます。マルアスピーは寝たんですか?」
「えぇ」
「他の皆は?」
「アルは2階、マリレナは3階。バジリアは大樹の森旧ワワイ大森林域の旧生贄の里にある社。パフちゃんとアリスとサラとテレーズとバルサとメリアとカトリーヌとエルネスティーネとサンドラと可愛いトゥーシェとミューはフィアテル宮殿。フォルティーナと妖艶なトゥーシェは知らないわ。chefアランギーは聖地ね」
「一緒に来た他の人達はどうしまた?」
「お付きの者以外は王都に帰したわ」
「ロイク様」
「どうかしましたか?『えっと』......
神眼を意識しステータスを確認する。
......ティルア殿。あ、えっと宝妃ティルア殿」
「ロイク様。宝妃とは旧教の過ちにより私達が亡くなってしまったと勘違いした前国王カール陛下より贈られた諡です。ロイク様のおかげで息子共々付き人や警護の者まで皆こうして生きております。ティルアとお呼びください」
「分かりました。それではティルア殿とお呼びします」
18歳当時の姿で奥さんが復活。しかも長男は2歳。ヴィルヘルム殿驚くだろうなぁ~。
ありがとうございました。