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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
―ララコバイア編ー
197/1227

4-7 荊棘の誓願と、バイタリテの悲劇。

 ララコバイア王国の国王ヴィルヘルムと、謁見の間に召喚された王族達と、イニャス首相と、ジャック隊長と、フォルティーナが指パチンで召喚したと思われる女性の大海水(セアン)の呪いを解呪した。


 ルーカス第1王子の状態異常石化は、解呪の魔術に反応し発動する解呪返しの状態異常魔法(・・)が原因だ。


 呪いに侵された者を蝕む表の呪いと、その呪いの解呪を試みた者を蝕む裏の呪い。二段仕掛の魔法(・・)による呪い。


 この呪いは、大地石(ソル)祠の守り人(ピンイン)達を侵した継承の呪い【メディウム(巫女)の呪い】に酷似していたが全く別の物だった。


 メディウムの呪いは、自然の力の循環、地属性と闇属性の自然魔素(まりょく)によって術式が組まれていたが、今回の呪いは、水属性と闇属性の自然魔素(まりょく)によって術式が組まれた継承の呪いで【魂の守り人(バイタリテ)の呪い】という初めて見る物だった。


 魔法(・・)による呪い。呪者はヒューム(人間)ではない。ヒューム以上の存在。聖邪獣様や精霊様や神々様という事になる。



 さて問題は、旧トミーサス王国からの旅人だと主張するアイダという名の女性だ。


***********************


 ≪ロイクの神眼による視認情報≫

 ※意図的に視認レベルを下げている※

 ※今は少しだけ視認レベルを上げている※


【名前】アイダ

【性別】女

【年齢】35

【身分】ノマッド(放浪者)


 ≪所属≫

 1.アドベンチャーギルド(冒険者探検家協会)トミーラン支部

 2.等級E


***********************


 ララコバイア王国の王都ラワルトンクに滞在していたのは3日程。僅か3日間の滞在で彼女は大海水(セアン)の呪いに侵されていた。王都の水が口に合ったにしても飲み過ぎだ。


 そして、彼女は、継承の呪い魂の守り人(バイタリテ)の呪いにも侵されていた。凡そ、ネットハルト島通称監獄島に流された人達と同じ呪いだ。島に流された者やその子孫は生涯を島で過ごす。島の外に出る事は許されない。彼女はいったい何処でバイタリテの呪いに侵されたんだろう。彼女曰く、アイダさんの家族は呪われやすい体質なんだそうだ。


 俺は、アイダさんを侵していたバイタリテの呪いも当然解呪した。



 俺が、全員の解呪を終えると、


「エリウス。アイダを看てるね。分かったかね」


「畏まりました。フォルティーナ様」


「わ、私をどうする気ですかぁっ!?」


「アイダ。君はエリウスとここで待ってるね。さて、アランギー、ヴィルヘルム、イニャス、アスピー、マリレナ、ミュー。ついでにロイク。準備が出来たら行くね」


 俺は、ついでですか。


「女神フォルティーナ様。具申させていただきます。旧霊廟バイタリテは封鎖。現在は封印されております」


「おんや。イニャス・フォン・リンプールよ。封印とはオスカー・フォン・フォルヘルルが施した荊棘の誓願【ヴゥーアムシェーヌ】の事ですかなぁ~?はい。先程、陛下に頼まれ、カトラシア王国の建造物を視てまわったのですがぁ~。バイタリテ宮殿に拒まれ読み解いたのですぞぉ~。私の記憶では(ラメール)の祠があったはずなのですが大海水(セアン)の祠へと下位交代し墓地になっておりました。はい」


「問題ないね」


「左様ですなぁ~。はい」


「旧霊廟バイタリテは王家の霊廟として管理されていました。ですが、31年前・・・」


 国王ヴィルヘルムは、瞼を閉じ沈痛な面持ちで語り始めた。


「陛下。ここからは私が」


「イニャス良い。・・・あれは忘れもしない31年前の2月23日。妻ティルアと息子セリムは、旧教の神事に参加する為、霊廟バイタリテに参拝し、魔剣隊の騎士81名、付き人30名、そして旧教の神官5名、巫女19名と共に跡形も無く消滅した。犯人は神事を任されていた旧教の若き大司教で唯一の生存者だった」


 荊棘の誓願【ヴゥーアムシェーヌ】って封印も気になるけど、この話も気になる。おかしな点が多い。


「ヴィルヘルム殿。確認ですが、大司教だった男がたった1人で、100人以上も消滅させたんですか?生存者は大司教だけだったのにどうして犯人だと分かったんですか?」


 跡形も無く消滅って、普通のユマンには無理だと思う。それに目撃が1人もいない。


「旧教より提出された証拠は、犯行を裏付ける物としては十分でした。大司教は火属性の魔術の上級者であり、旧教が禁止していた禁術に手を染めていたのです」


 世界創造神創生教会(旧教・邪教・愚教)が絡んでるのか。旧教が提出した証拠ねぇ~何とも胡散臭い。とはいえ、当時の旧教は絶対的な存在だ。証拠を疑う者はいなかっただろうな。


「旧教ですよね。・・・俺が口出しする事じゃないって分かってるんですけど、何て言うかその証拠凄く胡散臭いです」


「はい。ですが当時は、旧教を疑う者は1人もおりませんでした」


「それでもおかしいと思いませんか?元大司教が火属性に特化した魔術師だったとしても、跡形も残さず全てを燃やし尽くすのは無理だと思いませんか?魔導具や金属とかも残ってなかったんですよね?」


「禁術を用いたそうです」


「どんな禁術だったんですか?」


「分かりません。禁術の研究をまとめた資料は、旧教によって破棄され残っておりません」


 禁術。旧教・・・・・・。なるほどねぇ~。元大司教は蜥蜴の尻尾切りにあった。もしかしたら、利用されただけかも。


「ロイク。ヴィルヘルムは何を言ってるね。急に語り出してどうしたね」


 フォルティーナは、腰に手を当て、御立腹の御様子だ。


「何をって、今の話聞いてましたよね?」


「封印の話はどうしたね。あたしは忙しいね。こういう無駄が嫌いだね」


 無駄って。貴女がそれを言いますか・・・。


「も、申し訳ございません。当時を思い出してしまい。話が支離滅裂になってしまいました」


 ヴィルヘルム殿。複雑な気持ちでしょうに、大人な対応。凄いです。


「謝る必要は無いね。だがだね。次は無いね」


「は、はい。女神フォルティーナ様。感謝致します」


「うんうんだね」


 フォルティーナは、ドヤ顔を決めていた。



「何か違和感ばかりです。悲劇の消滅が原因でバイタリテ宮殿内の自然魔素(まりょく)が乱れ、危険になったから封印した。自然魔素(まりょく)はかなり前から乱れてた事になりませんか?」


「ロイク殿。悲劇が原因ではないと考える根拠はあるのですか?」


大海水(セアン)の祠の湧き水を飲み続ける事で大海水(セアン)の呪いに侵される。大海水(セアン)の祠はバイタリテ宮殿の中にある訳で、その湧き水は随分前からおかしな事になっていた訳ですよね」


大海水(セアン)の呪いが、かなり前から王都を蝕んでいたと?」


 ララコバイア王国の王都ラワルトンクの常識や習慣や倫理や風習を聞く限り、かなり前から呪いが存在していたと考えるべきだ。


「だと思います。湧き水がおかしくなったタイミングと、バイタリテ宮殿内の自然魔素(まりょく)が乱れ出したタイミングは、ほぼ同時一緒だったと思うんですよね」


≪なるほど。


 俺の意見に、カトラ王家の者とイニャス首相とジャック隊長が頷いた。


「極端な話になりますが、宮殿内の自然魔素(まりょく)の乱れが限界に達し、消滅事件が起きたと言われた方が、元大司教が1人で100人以上を消滅させたと言われるより納得がいきます」


「だが、元大司教は自供している」


「父は無実だぁっ!」


 フォルティーナが召喚したアイダさんが叫ぶ様に声を挙げた。


「ん?」


 父?


「父だと?まさか・・・お前は、あのコンラート・ジーメンスの娘なのかぁっ!?」


 国王ヴィルヘルムの表情が、険しく硬い物へと変わり、右の目尻がピクピクと痙攣していた。だが、意外にも声は冷静さを保っていた。


「なるほどだね」


 フォルティーナの視線は、アイダさんを捉え、その表情は意外にも真顔だった。


 へぇ~珍しい事もあるもんだな。


 正直、俺は驚いていた。


「父は、父は無実です。父はやっていません」


「黙れ。大罪人コンラート・ジーメンスの娘よ。これ以上の生き恥を晒すでない」


 イニャス首相は、強い口調でアイダさんを制止した。だが、アイダさんは言葉を続ける。


「私は父や母や妹を捨てた。生まれた国も捨てた。全てを捨て去った。今更生き恥の1つや2つ恥でも何でもない。父は無実です」


 アイダさんは、元大司教の娘って事?神眼で両親や子供や伴侶の名前も視た方が良いのかなぁ~。


「女神フォルティーナ様、神アランギー様、アシュランス王国国王陛下、そしてララコバイア王国国王ヴィルヘルム・カトラ陛下の御前であるぞ。減らず口を言うで無い」


 え、ちょっと、イニャス首相。俺を巻き込まないでください。


 俺はフォルティーナとchefアランギー様の様子を確認する。


 chefアランギー様は静かに聞いていた。特に興味はなさそうだ。


 フォルティーナは、残念な事にやっぱりニヤニヤとほくそ笑んでいた。真顔はもたなかったみたいだ。


「アランギー。あたしには、言ってる意味が分からないね。これは、何だね?」


「ふむふむ。現状と今の話をばぁ~・・・・・・あぁ~・・・・・・端的に言いますとぉ~勘違いという物の類ですなぁっ!はい」


「なるほどだね。勘違いかね」


 勘違いとか、油を注がないでぇ~。


「か、勘違い?・・・父は無実の罪で31年間も。わ、私も、母も妹も・・・」


「無実な訳がなかろう。旧教が提出した証拠が存在する」


「イニャス首相。旧教の証拠は微妙だって、さっきヴィルヘルム殿も認めましたよね?」 


「いや、あ、いやだが当時は・・・」


「そうです。旧教の証拠は捏造です。父は旧教に嵌められた貶められたに違いありません。旧教がどの様な集団なのか今となっては誰もが知っています。父は無実です」


「本人が罪を認めた。自白したのだ。何よりの証拠ではないか」


「そ、それは・・・」


「うんうんだね。話がまとまったところで、サクッと片付けに行くね」


 えっと、こいつ、話聞いてなかったのか?


「そ、そんな女神フォルティーナ様・・・」


「でだね。行くのはさっきのメンバーで問題無いね。後は仮装舞踏会を楽しんでると良いね。ルーカス」


「はっ、はい!」


「お前にも聞きたい事があったね。戻ったら、アイダの呪いについて知ってる事を全て話すね」


「・・・わ、分かりました」


「うんうんだね」


≪パチン


 フォルティーナは、指を鳴らした。



「トミーラン自治区の予算は・・・・・・」


 俺の目の前には、キョロキョロと周囲を確認する男が1人。


「これ・・・あ、ここ、え?」


「プレス卿!!」


 イニャス首相が、キョロキョロと周囲を見回す男へと駆け寄った。


「イニャ。オホン。・・・・、リンプール卿ではないか。ん!へ、陛下ぁっ!!」


 男は、国王ヴィルヘルムに対し臣下の礼をとった。


 臣下の礼をとっている男の名は、


***********************


 ≪ロイクの神眼による視認情報≫

 ※意図的に視認レベルを下げている※

 ※今は少しだけ視認レベルを上げている※


【名前】ルーク・フォン・プレス

【性別】男

【年齢】53

【身分】公爵家当主


 ≪役職≫

 1.財務大臣


 ★警戒レベル3★

【状態】大海水セアンの呪い

 ≪大海水の呪い≫

 年を追う毎に異性への関心が強くなる。

 興奮と満足が比例する様になる。

 ≪原因≫

 1.大海水の祠に不適切な存在が宿る。

 2.大海水の祠に宿りし水の精霊の怒り。

 3.1か2いずれかの状態におかれた

   大海水の祠の水を摂取した。

 4.原因不明。


***********************


 ルーク。財務大臣の様だ。フォン・プレス公爵家の当主って事は、王城警備隊南組隊長ジャックの父親かな?


「フォルティーナ。どうしてルーク財務大臣を召喚したんですか?」


「それはだねぇ~・・・・・・今に分かるね」


 フォルティーナは、ニヤニヤとほくそ笑む。


「で、あそこに浮いてる男の人も、フォルティーナの召喚ですよね?あれ、魂って事は無いですよね?」


 手足を地面へとだらしなく伸ばし、地上1m程の高さに浮かんでいる男性。


 俺は、男性が浮かんでいるバイタリテ宮殿の入り口の前から、フォルティーナへと視線を戻す。


「当然だね」


 ここは、墓地である。深い意味は無い。


***********************


 ≪ロイクの神眼による視認情報≫

 ※意図的に視認レベルを下げている※

 ※今は少しだけ視認レベルを上げている※


【名前】オスカー・フォン・フォルヘルル

【性別】男

【年齢】92

【身分】公爵家前当主

【状態】明識困難


 ★警戒レベル9・停★

【状態】大海水セアンの呪い

 ≪大海水の呪い≫

 年を追う毎に異性への関心が強くなる。

 興奮と満足が比例する様になる。

 ≪原因≫

 1.大海水の祠に不適切な存在が宿る。

 2.大海水の祠に宿りし水の精霊の怒り。

 3.1か2いずれかの状態におかれた

   大海水の祠の水を摂取した。

 4.原因不明。


***********************


 意識障害の状態異常に陥ってるのか。92歳。年齢も年齢だし悪意ある干渉では無さそうだ。


「それで、あの老人をどうするんですか?」


「聞いて無かったのかね?あの男が創造神との盟約荊棘の誓願【ヴゥーアムシェーヌ】を施したね」


 chefアランギー様が言ってた人か。


「意思疎通は無理だって言ってましたよね。・・・実際、あんな感じだし」


「安心するね」


 安心ねぇ~。


「女神フォルティーナ様。霊廟バイタリテの入り口の前にも人が居る様なのですが」


 国王ヴィルヘルムが、イニャス首相とルーク財務大臣を従えて、俺達の前に立った。


「忘れたのかね?」


「忘れたと言いますと・・・はて?」


 フォルティーナは、ニヤニヤとほくそ笑む。実に残念な女神である。


「ヴィルヘルム殿。あそこに浮いてる男性は、オスカー・フォン・フォルヘルルさんです」


「な、御老体!?・・・・・・フォルティーナ様ぁっ!!イニャス、ルーク。御老体を」


「「か、畏まりました」」


 国王ヴィルヘルムの指示を受け、イニャス首相とルーク財務大臣は、オスカー・フォン・フォルヘルルのもとへと駆け寄った。意外な事に俊敏だ。


「陛下。オスカー殿を下ろせません」


 ルーク財務大臣は、俺達に向かって叫ぶ。


「まるで宙に固定されている様です」


 イニャス首相も、俺達に向かって叫ぶ。


「女神フォルティーナ様。何故、御老体を?御老体はあの様な状況にありお役には立てないかと」


「ヴィルヘルム。良いから見てるね」


「まさかとは思いますが、生い先短い老人の命を奪うおつもりなのですか?」


 そういやぁ~、結界って術師が死んだら解けるんだっけ。


「まぁ~、それも1つの手だとは思うね。だがだね。もっと簡単な方法があるね。ロイク。やっておしまいだね」


 だと思ってました・・・。


「で、次は何をやればいいんですか?」


「おんや。陛下。陛下は神授スキル【フリーパス】をお持ちなのですぞぉ~。入口から御邪魔しまぁ~す。で、あ~らびっくりバイタリテ宮殿内に御招たぁ~いですぞぉ~。はい」


「ロイク。中に入ったらだね。ここに集めた者を中に召喚するね。分かったかね」


「中に入ったら皆を召喚ですね。分かりました。それで、召喚のタイミングはどうします?」


「任せるね」


 任せるって・・・。それなら、静かにサクッと終わらせたいから、ギリギリまで1人で進めよ。


「サクッと終わらせたいんで、それじゃぁ~行きますね」


「ロイク殿。バイタリテの封印は世界創造神様に誓願し施された物です。中へは流石に・・・」


「安心するね。あたし(・・・)のロイクに常識は無いね」


 おい。言葉の使い方がおかしいだろう。色々とぉっ!!


ありがとうございました。

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