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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーコルト編ー
19/1227

1-11 コルト大聖堂と、追放精霊ミト様。

作成2018年2月17日

***********************

【タイトル】 このKissは、嵐の予感。

【第1章】(仮)このKissは、真実の中。

 1-11 コルト大聖堂と、追放精霊ミト様。

***********************

――― コルト町から南へ12km程の湿地帯


 俺は、コルト町から南に12Km程離れた湿地帯にいる。湿地帯では、コルト貴族領軍私兵隊本隊と魔獣達が一進一退の攻防を繰り広げていた。


 金剛石竜子(ダイヤモンドリザード)の頭上5mに【フリーパス】で出現した俺は、貴族領軍私兵隊と魔獣達の注意を独占した。


「魔獣との戦闘に集中しろ」


「はぁっ!」


「魔獣に集中しろ!」


「おぉ~魔獣に集中しろ」


「士爵殿っ!」


 少し離れた場所から、1人の男が大声で話掛けて来た。


「士爵殿は、宙に浮く事も出来たのですか?」


 貴族領軍私兵隊の隊長アームストロングさんだ。


「おっ!魔獣も貴族領軍も沢山重なっていて、隊長を見つけるの難しいと思っていたんですが、意外にあっさり発見出来て良かったです」


「あぁ~・・・宙に浮いている人間を見つけるのは、そう難しくないですからな。ワッハッハッハ。それで、どうしてこんなところまで?」


 あ、逆か・・・俺が発見されたのか・・・


「・・・セイズマン・パマリ様が殲滅討伐命令を出し出陣した兵士達の戻りが遅いと気にしているそうで、副隊長に、出陣した本隊と参謀で参加したジョージ様の救援を、命令したそうなんです」


「セイズマン様がですか?・・・我々は魔獣を発見し、戦闘に入って僅かしか経っていません」


「副隊長の何とかって人の話でです。その人ですが30人程の兵士でこちらに向かっています。まだそんなに経っていないので、合流はもう少し後になると思います」


「それを、わざわざ伝えに来てくれたのですか?」


「いえ、ある依頼を1つ受けまして・・・」


「殲滅討伐への協力ですか?」


「俺の下に居る魔獣が見えますか?」


「良く見えないな・・・」


 入り乱れての戦闘中では流石に見えないか。


「全軍20m北へ移動。隊を整え負傷した兵は、西に設置した医療テントへ移動しろ。自力で動けない者は班の者が協力しろ」


「はぁっ!」


「全軍。北へ20m移動。隊列A!」


「はぁっ!」(大勢)


 おぉ~。統率がこんなに取れているのに、混戦になってたんだ・・・。救助も指令の1つだったから・・・


「隊長!医療テントへの移動はしなくて良いですよ。怪我をした人は仲間と一緒に、そのまま北へ移動してください。治しちゃいますから」


「士爵殿・・・」


「大丈夫ですよ。俺の回復魔法で、麻痺や出血を先に治癒します。歩けるようになったら、全軍で北に移動してください」


「わ、分かりました。・・・良く聞け。宙に浮いている者が見えるな」


「はぁっ!」(大勢)


「あの方は、1人で闇炎牙狼(オプスキュリテ)を数十匹以上倒し、1000匹もの魔獣を一瞬で殲滅した。マルアスピーの英雄ロイク士爵殿だ。今から、状態異常の回復魔術を我々に使ってくれるそうだ。タイミングを見て合図を出す。北へ20m全力で移動し隊列を整えろ。分かったな」


「はぁっ!」


「分かったな!聞こえた各隊の部隊長は、隣接する部隊の部隊長へ正確に伝えろ!」


「はぁっ!」(大勢)


 入り乱れての戦闘状態にも関わらず、貴族領軍私兵隊の伝令伝達は迅速かつ正確だった。


「序でに、倒しちゃったらまずいですよね?」


「士爵殿っ!我々は、『魔獣を殲滅しコルト町の安全を確保しろ。翡翠石竜子(ジェッドリザード)を必ず倒せ』と、セイズマン様より命令されています」


 ・・・つまり、倒して良いって事?


「分かりました。まずは、回復させますね。聖属性魔術【ベネディクシヨン】レベル3(状態異常回復)発動≫。聖属性魔術【ベネディクシヨン】レベル2(傷跡治癒)発動≫。聖属性魔術【ベネディクシヨン】レベル1(【HP】回復)発動≫」


 精霊聖属性魔法【ベネディクシヨン】レベル452中制御1以下:範囲俺を中心に1Km:対象コルト貴族領軍私兵隊隊員・発光柔らかい光3回・発動≫ ←本当はこっちを発動


 柔らかな光が3回発光した。


「凄い・・・」


「カードを見てみろよ・・・体力が全回復してるぞ」


「状態異常も異常無しになってるぞ」


「隊長」


「隊長、北へ20の号令を」


「す・・・ご・・・・・・あ・・・・・・あっ?・・・お、全軍北へ20m全速力で移動。隊列を組み直せぇ~」


「はぁっ!」(大勢)


「全軍、北へ20m全力前進。隊列を整えろぉ~!」


「はぁっ!」(大勢)


 兵士達は、魔獣達と小競り合いを繰り返しながらも、北へ20m移動しあっという間に隊を整え直した。魔獣達は比較的知能の高い石竜子(リザード)種ということもあり、闇雲に襲っては来ない。距離を取り様子を伺っている。痺れ魔鰻(マグネアンギーユ)だけは状況を理解出来ず隊を整えた兵士達へ突撃し次々と仕留めらていた。


「状態異常の痺れ攻撃も後方が安定していると問題無い様ですね」


「隊列が正常であれば、前衛部隊が麻痺したとしても瞬時に後方が回復水(ポーション)・麻痺を使い対応で可能です」


「隊長。あの方が今朝の話の【転位】の士爵様ですか?」


「そうだ。ここまで凄いとは想像していなかったがな」


「報告します。大隊(本隊)の480名。中隊3部隊80名×3。小隊6部隊40名×6。西の平地に陣取った医療部隊40名。総勢1000名。口頭確認のみですが、死者18名です」


「隊長。我々も北へ移動しましょう」


「そうか・・・士爵殿が来なかったらと考えるだけでぞっとするな・・・我々も北へ20m移動するぞぉ続けぇ~!」


「はぁっ!」


 アームストロング隊長と周りの兵士達60人程も全速力で移動し、隊列を整え直した部隊に合流した。



 魔術師の法衣を装備した男が部隊の後衛から前衛に待機するアームストロング隊長へ近付き話をしている様だ。



――― ロイクから見た 北へ45m程の地点


「はい、湿地の中で麻痺と失血。250名~300名は戦死していたかもしれません」


「しかし、この広範囲と一瞬で我々を回復させた魔術はいったい?」


「今朝の救援の話を知っているな。索敵探索の能力も凄い物だったが、1度に9人もの人間を10Km以上も転位させた・・・ここから北の輓獣広場15Kmだったのかもしれない」


「1人で転位した場合約150Kmも、1回で移動出来る魔力ですか・・・」


「あぁ~。英雄と呼ばれる者達は皆ずば抜けた力があるのだろうか?」


「魔力量の桁が既に・・・」



――― 南へ45m程の地点


 俺は、貴族領軍私兵隊が北20m移動し隊列を整えたのを確認してから、精霊聖属性魔法【テルールパンセ】レベル452中制御2を発動してから、アームストロング隊長の元へ移動した。



「アームストロング隊長。今朝ぶりですね」


「いやぁ~士爵殿。助かりました。敵の動きが止まった様に見えますが・・・」


「はい。聖属性なので長時間は無理だと思いますが、魔獣達を恐怖状態にし動きを止めました」


「闇属性の魔術に似た様な物がありますが、ここまで広範囲に影響を与える事は・・・」


「隊長。こちらの魔術師の方は?」


「士爵殿。こいつは、私兵隊魔術部隊隊長のワイ。さっきまで俺の傍に居た・・・あそこにいる俺とお揃いの甲冑を着て指揮している奴が、私兵隊大隊部部隊長のゼットです」


「ワイ隊長。宜しくお願いします」


「士爵様。もの凄い魔術ですね。宙を飛び、広範囲の状態回復、治癒、体力回復。そして魔獣の足止め複数人での転位・・・」


「そうですね・・・ハッハッハ・・・」


 話題を変えないと・・・ 


「あっそうだ。兵士を魔獣に近付けないでください。俺の聖属性への恐怖状態で止まっているだけなので、注意が兵士に移った瞬間攻撃されると思います」


「分かった!・・・ゼット。兵士を魔獣に近づけるな」


「はぁっ!全軍、警戒態勢のまま休憩」


「はぁっ!」(大勢)


 警戒態勢のまま休憩って、兵士って大変なんだなぁ~。


「それと、助けに来るのが少し遅かったみたいで、申し訳ありません」


「士爵殿。どうした当然」


「それが・・・亡くなった兵士が7人いるようで・・・」


「・・・士爵殿のせいではありません。彼等は戦って死んだのです」


「隊長。18人だと報告がありましたが、7人であってるのでしょうか?」


「俺の警戒索敵探索のスキルでは7人でした。他の人は気絶しているだけの様でしたので、西の医療部隊のテントの前に、死者7人と気絶者29人を【転位】で移動せました」


「この短時間にですか?」


「隊長・・・凄いとしか言いようがありません」


「あぁ~まさに神の業だな」



「それでですね。俺が受けた依頼は、金剛石竜子(ダイヤモンドリザード)の討伐なんです」


金剛石竜子(ダイヤモンドリザード)だと!」


「はい。一応ですが、闇炎牙狼(オプスキュリテ)の危険度が1だとすると、金剛石竜子(ダイヤモンドリザード)の危険度は5です。翡翠石竜子(ジェッドリザード)が4匹いますから、闇炎牙狼(オプスキュリテ)1・2匹分の危険といった感じでしょうか」


「隊長。金剛石竜子(ダイヤモンドリザード)は、属性での攻撃が一切効かないと言われる危険(レア)魔獣です。防御力も非常に高く、我々では例え3000人居たとしても倒す事は不可能だと思われます」


「分かっている・・・」


「俺が全部狩ってしまうと困るんですよね?」


「あぁ~・・・セイズマン様より翡翠石竜子(ジェッドリザード)4匹は必ず倒せと命令されている」


「隊長。翡翠を回収しろという命令にしか聞こえません」


「ワイ魔術部隊隊長。兵士達に聞こえるぞ」


「すみません」


「う~ん。皆さんの仕事を奪ってしまっては、こちらも後味が悪いですし・・・金剛石竜子(ダイヤモンドリザード)と、状態異常攻撃で厄介な痺れ魔鰻(マグネアンギーユ)の残りだけ、コルト川の東岸に移動させて俺が倒しちゃいましょうか?」


「そんな事が出来るのか?」


「手っ取り早く殲滅した方が早いですが、あっちに移動して倒して戻って来るだけなので、そんなに違いは無いと思います」


「いや、その殲滅の早さではなく、魔獣達を東岸に移動させるという事の方なんだが・・・」


「強制的に何とか出来るスキルがあるので大丈夫です。ただ、もう1つ依頼がありまして、皆さんを救出する事になっているので、これ以上は1人も死なない様にする必要があります」


「・・・そればかりは、約束したくても・・・」


「それも考えました。といっても、先程上空で思い付いただけでして・・・ただ、後から少し生活に支障が出ましてですね。でも、朝には通常の状態に戻るので人体に害はありません。その何て言いますか・・・村で使った時は次の日に数人から文句が・・・ハッハッハ」


 〇×〇×〇×が出来ないって・・・苦情が数件あったんだよね・・・


「死の危険が無いと伝えてしまっては、部隊の士気の維持がどうなるか分かりません。私とワイだけが知っている状態でもお願い出来ますか?」


「良かったです。これで、安心して対岸に行けます。それでは、聖属性魔術【サンミュール】発動≫」


 精霊聖属性魔法【サンミュール】452中制御1以下:対象・貴族領軍私兵隊隊員:範囲・俺を中心に半径1Km。


「終わりました。皆さんの周りに聖属性の結界を張りました。俺が出来る最低の状態なので、たぶん明日の朝には結界は消えると思います」


「士爵殿。何も変わっていない様に感じます。」


「隊長・・・魔術師の私ですら、魔力を感じません」


「聖属性は、聖属性の心得を所持した者にしか感じ取れない属性のはずですから、そのせいだと思います」


 確か、前にマルアスピー様がそんな事を言ってた様な・・・


「隊長。確かに、そんな文献を以前読んだ事があります」


「・・・まぁ~。従来通り戦っていれば、誰かが気付くだろう・・・経験の少ない新兵達の誰かが先にな」


 あぁ~なるほどね。


「それでは、残りの痺れ魔鰻(マグネアンギーユ)金剛石竜子(ダイヤモンドリザード)を連れコルト川の東岸に移動し殲滅後、こちらに戻ってきます」


「ロイク士爵様・・・挨拶感覚で凄い事を」


 アームストロング隊長のせいで、士爵だって完全に勘違いされちゃってるよ。


「士爵殿。宜しく頼みます」


 ・・・んん・・・。可視化:魔獣の痺れ魔鰻(マグネアンギーユ)金剛石竜子(ダイヤモンドリザード)を選択。


≪表示上の魔獣赤の中から痺れ魔鰻(マグネアンギーユ)金剛石竜子(ダイヤモンドリザード)を選択しました。


「俺が消えると、魔獣達が動き出します。気を付けてください」


「分かった。ゼット!士爵殿が空気の中に消えると魔獣達が動き始めるそうだ。戦闘態勢の指示を出せ」


「はぁっ!全軍、戦闘態勢だぁ!」


「はぁっ!」(大勢)


「それでは、先に俺が移動します。その後、痺れ魔鰻(マグネアンギーユ)金剛石竜子(ダイヤモンドリザード)だけ目の前から消えると思いますが、俺が【転位】させただけなので安心してください」


 【フリーパス】:【タブレット】:コルト川東岸のこの辺りで良いか・・・移動≫


「消えた」


「凄過ぎて、何が起きているのか・・・」


「魔獣が動きだしたぞぉ~」


「うぉ~」


 そして、戦闘が再開した。



――― コルト川東岸


 さてと【転位召喚】:対象【タブレット】選択魔獣:発動≫



――― コルト川西岸


「おい、痺れ魔鰻(マグネアンギーユ)が居なくなったぞ・・・」


「何が起きてるんだ?」


「隊長・・・」


「あぁ~士爵殿に間違い無いと思うが・・・」


「これは、転位なのか?まるで召喚ではないか・・・」



――― コルト川東岸


 痺れ魔鰻(マグネアンギーユ)って、状態異常の麻痺攻撃が得意な訳だから、俺にとってはただの鰻なんだよな・・・食料として確保しておきたいから


≪ドーン


 ん?


 俺は上空5mの地点に浮きながら思案していた。そんな俺に金剛石竜子(ダイヤモンドリザード)は水属性で生成した槍を投げ攻撃して来た。属性攻撃も今の俺には当然効かない。通常の水属性耐性レベル10が、精霊水属性耐性レベル1の半分位の耐性値だとして、俺の耐性値は精霊水属性耐性レベル180。


 先に、金剛石竜子(ダイヤモンドリザード)を倒す必要がありそうだな。


 可視化・武具・武器・【打破の優弓】取り出し。


≪・・・打破の優弓を装備状態にしました。


 俺は、神具【打破の優弓】を金剛石竜子(ダイヤモンドリザード)に向け構える。


 これって、神気の無属性だから、属性攻撃が効かない魔獣にも効果があるはず・・・たぶんだけど。堅いって書いてあったけど、一発射ってみるか・・・狙いを定め、弦を弾く。


≪ゴォォォォ~~~~~~ ピィ―――ン


 金剛石竜子(ダイヤモンドリザード)も俺も何が起こったのか理解出来ないまま戦闘は終わった。



≪指令①達成。congratulation!素材を回収します。


 指令の時は、回収の報告があるのか・・・打破の優弓を収納。


≪・・・打破の優弓を装備解除しました。武具・武器に保管しました。


 残るは鰻なんだけど、どうしよう?衝撃で昇天させた方が食用には向いてるだろうから・・・精霊風属性魔法【アニマ】レベル121中制御1以下:発動≫


 俺は、宙から湿地帯へ向け空気の塊を高速で落下させてみた。可視化:仕留めた魔獣の素材を回収。


≪・・・回収しました。


 視認出来る範囲の痺れ魔鰻(マグネアンギーユ)が消えたし倒せたって事で良いのかな?さて、解体処理後、魔鰻の食肉は加工、蒲焼で白焼きとタレ、ふっくら柔らか目。


≪・・・加工・食料の予約を確認しました。



――― コルト川 西岸


「隊長。対岸から途轍もなく大きな音が2回。しかも1度目の音の際には非常に強い衝撃を伴いました」


「ワイ魔術部隊隊長。魔力を感じたか?」


「いえ。1度目の衝撃音の際に属性魔力は一切感じませんでした。2度目の衝撃音の際には、極めて強力な風属性の魔力を感じました。ですが、1度目の衝撃と比べると10~100倍以上弱い物だったと推測出来ます」


「属性を感じなかった1度目の攻撃の方が10~100倍も威力が高いという事か・・・どんな戦い方をしたらこうなるんだ・・・」


「・・・想像もつきません」



――― コルト川 東岸


 さてと、終わったし、西岸の様子を見に行くか。その前に、現在の時間は?


≪現在19:26です。


 間に合ったみたいだ。救出は、どうやれば良いんだろう・・・【フリーパス】発動≫



――― コルト川 西岸


「アームストロング隊長。戻りました」


「うわぁ!」


「どうしたんですか?」


「あ、いや何。突然後ろから話かけられたもので・・・」


「士爵殿。もう倒されたのですか?」


「加減が分からなくて、金剛石竜子(ダイヤモンドリザード)相手に少し強過ぎる攻撃をした様なんですが、傷も殆ど無く倒せたので良かったです。魔鰻も沢山倒せたので、マルアスピー村ではポピュラーなら食べ方で蒲焼という物を後でお渡します。家族で食べてください」


「士爵様。アームストロング隊長は独身でして・・・」


「ワイ魔術部隊隊長。貴重な情報を士爵殿に伝えてくれてどうもありがとう!」


「・・・あ、いえ、・・・どういたしまして・・・」


「隊長。慌ただしくて申し訳ないのですが、次は大聖堂に用事がありまして、行かなくてはなりません。救出の依頼を達成してしまいたいのですが、今直ぐ殲滅とか出来そうですか?」


「・・・いや・・・士爵殿。士爵殿が対岸に行かれてからまだ戦闘らしい戦闘をしていません」


「・・・なるほど」


 可視化:転位召喚:時間履歴表示


≪・・・表示しました。


 なるほどね。19:21か・・・5ラフンかかってなかったのか。次の予定まで、20ラフン切ってるから・・・


「隊長。結界の他に、【HP】【VIT】【MND】の最大値が一時的に2倍になる魔術を施してから戻ります」


「良く分からないが、この際プラスになる物であれば何でもお願い致します。問題無いな?ワイ魔術部隊隊長」


「は、はい。もう何が何やら良く分かっておりませんが、問題無いと思われます」


 精霊聖属性魔法【ベネディクシヨン】452中制御1以下:通常レベル5と6:範囲・俺を中心に半径1Km:対象・コルト貴族領軍私兵隊隊員:発動≫


 【マテリアル・クリエイト】と各属性魔法の練習をしないと微妙にダメそうだな・・・


「隊長。皆さんに施しておきました。PTカードを見れば、体力値が倍になっている事が分かると思います。それで何ですが、参謀で参加しているはずのジョージ・パマリ様はどちらに?姿が見えない様なんですが・・・」


「侯爵邸だと思われます」


「え?」


「殲滅討伐部隊が帰還した後に合流し、いつもの様に参謀として成果を報告すると思います」


「・・・参謀として殲滅討伐に参加している体な訳ですか・・・聞いておいて良かったです」


「そうなります」


 村のマルフォイ様と同じか・・・


「それでは、これで俺はコルト町に戻ります。副隊長率いる30人程の小隊が、うまく行けば合流すると思います。ただ、あっちには結界も2倍の魔術も施していませんので、無理な戦い方は避ける様にお願いします・・・」


 人を身分で判断している様な部隊だから、命令に従って動くかは不明だな。救出の指令は、後から戦闘に参加する人まで範囲に入ってるとは思えないけど・・・。指令①の別件は7人亡くなってしまった時点で、たぶん失敗だよね。


 アームストロング隊長と、ワイ魔術部隊部隊長は、互いに顔を見合わせながら、


「・・・彼等が到着する前に殲滅しておきたいところなんだがね」


「そうしたいのはやまやまですが・・・はぁ~・・・」


 あの副隊長。あんなだしな。


「健闘を祈ります」


「士爵殿。ありがとうございました。セイズマン様の命令を確実に達成できると思うだけで気が楽になりました」


「はい。それでは、失礼します。【転位】発動≫」


 【フリーパス】:【タブレット】:コルト町の大聖堂≫



――― コルト町 大聖堂


 現在の時間は?


≪現在19:32です。


≪ギギギィー


「こんにちは」


 俺は、正門扉を開け、大聖堂の大講堂に入った。


 神様の予定表だと、19:40だから、少し早いけど遅刻するよりは良いよね・・・?


≪トコ トコ トコ トコ トコ トコ


 4人掛けの木の椅子が横に4つ縦に30列。其々の椅子は人が擦れ違える事が出来る程度の間隔で配置れている。俺は中央通路を抜け正面の祭壇前まで進んだ。


 さっき来た時は、落ち着いて講堂を見られなかったから気付かなかったけど、これって、聖属性が何となく充ちてる空間?建物に聖属性で結界が張られていた痕跡が・・・


『あら!』


 ビックリした。突然、どうしたんですか?


『大聖堂の結界に気付いたみたいね。神眼なら私の、精霊の瞳よりもはっきり見えるのではなくて?』


 気付いていたんですか?


『当然よ。私は大樹の精霊よ。聖属性にはび・ん・か・ん。なのよぉ~』


 結界の痕跡は、大聖堂全体に施されていた様なんですが、雑というか・・・一応聖属性に満ちた場所に、聖属性の結界を張っても意味無いですよね?


『意味が無いとも言い切れないわよ。内側の自然の力、自然魔素の聖属性だけを、外側に漏れ出さない様にするのを目的にしているのならね』


 大樹の森の聖域の精霊樹の結界や、俺が扱う結界とは少し違うんですね。


『そうね』


 4000年位前にいったい何があったんだろう・・・?


『そんなに知りたいのなら、本人に聞くのが1番ね』


 本人って!・・・大ゼルフォーラ王国時代の王様か大樹の森の聖域の精霊樹に宿りし精霊で前任の大精霊ミト様ですよね・・・流石に亡くなった人から聞けないですよ。


『あら?私の母精霊は自由なだけで健在ですよ』


 そうなんですか?


『はい。私達が精霊樹の精域を後にして、村に行った日。つまり夫婦になった日に祝福しに来たのか分かりませんが突然帰って来ました』


 お母さんが帰って来ているのに、精域を留守にしてるんですか?


『留守?・・・大丈夫よ頻繁に戻ってるもの』


 俺、挨拶した方が良いですよね?


『そうねぇ~・・・そのうちで良いのではないかしら』


 そうなんですか?マルアスピー様のお母さん何ですよね?・・・


『そうね。人間種風に言うのなら、私のお母さんね。フフフッ』



 マルアスピー様が言うんですから、挨拶は今度にするとしても、この大聖堂って何の意味があるんでしょうか?創造神様を描いた浮彫細工(レリーフ)に祭壇。天井に描かれた絵。神気を感じる物が1つもありませんよ。ただ聖属性を何となく感じるだけの建物じゃないですか・・・


『人間種の信仰って本当に変わっているわよね。自分達で建てた物を大聖堂と大袈裟に呼んで無理矢理創造神様への信仰の場所の1つにしているのだから』


 ここより、聖域の傍や、マルアスピー村の方が遥かに、神気も聖属性も強くて霊験あらたかな気がします。


『それは当然よ。聖域の精霊樹は精霊が管理しているけれど、創造神様より精霊王様がお預かりしている創造の地。始まりの地なのですから。それに、あの村は、信仰の村。人間種達の集落としては聖域に最も近い場所にあるのですから』



≪ガチャ トコ トコ バタン トコ トコ


「おや?これはこれは、シャレット御夫妻・・・おや?奥様は御一緒では無い様ですね」


「大神官長様。今朝はありがとうございました。気になる事がありましたので、俺1人で来ました」


「ほう。英雄殿の瞳には何が見えましたかな?」


「英雄は止めてください。ロイクでお願いします」


「フォッフォッフォッ。うんうん」


 大神官長様は、立派に蓄えられた髭を触りながら、頷いていている。


「ロイク君。君は、8年前のレーグル・リットを覚えていますか?」


「レーグル・リット?」


「16歳を迎えた日。教会を訪れたはずです」


「はい」


「成人の通過儀礼を行った結果、BIRTHDAY・SKILLと呼ばれる能力を、創造神様より神授される者がおる。この通過儀礼の事を、世界創造神創生教会(そうせいきょうかい)では掟の(レーグル)儀式(リット)と呼んでおる。このレーグル・リットは、16歳を迎えた日だけに起こる訳ではない。ロイク君。君の様に最初のレーグル・リットによって神授していただいた能力が一定の条件を満たす事で、二度目のレーグル・リット。即ち誓いの(ジュレ)儀式(リット)により新たな能力を神授される場合がある」


「レーグル・リットに、ジュレ・リットですか・・・」


「そうじゃ。・・・8年前のあの日。私は初めて自らの【Évaluation(イヴァリュエイション)】で認識不可能な能力に遭遇しました。今朝、お会いした時には、直ぐに気付けませんでしたが、その少年はロイク君あなたです」


「はぁ~・・・」


「私は、自らの未熟さを悟り能力を磨き続けました。ですが、結果はまたも認識不可能でした・・・」


「はぁ~・・・」


「そして、ロイク君。君の奥様の能力もまた、私には認識不可能でした」


 これって、神様の能力を開示するとかしないとかの設定の話だよね・・・確か、さっきの更新で・・・


「大神官長様。もう1度集中して、俺のスキルを【Évaluation(イヴァリュエイション)】していただけませんか?」


「もう1度か?」


「お願いします」


「分かった。【Évaluation(イヴァリュエイション)SKILL(スキル)】」


 大神官長様はスキルを発動した。


「どうですか?」


「不思議じゃ・・・今朝は分からなかったはずの君の能力が認識できておる」


「大神官長様は御自分のスキルは何処まで把握していますか?」


「把握とは?」


「はい、俺の神授スキルは大神官長様にはどの様に見えていますか?」


「【修練の心得】【Évaluation(イヴァリュエイション)STATUS(ステータス)】【Évaluation(イヴァリュエイション)SKILL(スキル)】【inves(アンヴィス)tigation(ティガシオン)】と認識出来ておるが・・・」


「【Évaluation(イヴァリュエイション)SKILL(スキル)】レベル5を所持している大神官長様ならお気付きになられると思いますが、俺のスキルのレベルは分かりませんよね?」


「ふむ。それは、私が未熟なゆえ」


「ですが、【Évaluation(イヴァリュエイション)SKILL(スキル)】のレベルは5が上限ですよね?」


「確かに5が上限だが・・・それが?」


「俺の瞳には、大神官長様の神授スキルは、【Évaluation(イヴァリュエイション)SKILL(スキル)】レベル5の他にもう1つ見えています」


「な、なんと、それは本当ですか?」


「はい」


 本当に見えて無いんだ。非表示になってるスキルって本人にも見えないのかな?・・・誰かにスキルを停止させられたとか?


「私が神授していただいていた能力は何なのですか?」


「【zunge(ツンゲ) reparieren(レパリーレン)】というスキルです。壊れた物を直したり修繕する言葉の魔術みたいです。時間制限があるようで、30ラフン以内の物に限られる様です」


「・・・すまん。ロイク君の話している言葉の意味が理解出来ん」


 これって、ON/OFFの切り替え、勝手にONして良いのかな?


『神様が意図してロイクにくれたスキル。神様が意図して会わせてくれた人間種。神様の思惑が偶然1つに重なり合うとは思えないわよね・・・フフフッ』


 なるほど・・・って、こっちの会話覗かないでくださいよ。


『違うわよ。ロイクが私に全部・・・』


 えぇっ、そうなんですか?・・・今迄ずっとですか?


『えぇずっとよ』


 ・・・


『常に話かけられている感じ』


 ・・・レソンネも何とかしないといけませんね。


『どうして?』


 どうしてって・・・だって・・・そりゃぁ~・・・


「ロイク君・・・ロイク君・・・ロイク君!」



「は、はい。すみません、考え事をしていました」


「【zunge(ツンゲ) reparieren(レパリーレン)】ですか、その能力は私が未熟なゆえに条件を満たせず扱う事が出来ないという事でしょうか?」


 う~ん。【オペレーション】でONにしても問題ないよね・・・


「ちょっと良いですか?」


「はい・・・」


 【オペレーション】発動≫。あれ、神眼と並行してるみたいオートってこういう意味だったのか・・・大神官長様のバースデイ・スキルのツンゲレパリーレンをONに切り替えて、隠蔽を削除。


***大神官長様のスキル説明***


≪BIRTHDAY・SKILL≫


Évaluation(イヴァリュエイション)SKILL(スキル)】レベル5

zunge(ツンゲ) reparieren(レパリーレン)】レベル1


≪SENSE・SKILL≫


【短剣の心得】レベル6

【剣の心得】レベル1

【弓の心得】レベル3

【杖の心得】レベル10

【衣の心得】レベル10

【法衣の心得】レベル10


【説法】レベル10

【威風】レベル3

【浄化の清水】レベル4

【癒しの風】レベル3

【回復の風】レベル3

【加工・分解】レベル1

【加工・融合】レベル1


【水属性の心得】レベル6

【水属性魔術耐性】レベル6


【風属性の心得】レベル4

【風属性魔術耐性】レベル4


≪LIFE・SKILL≫


【火属性の心得】レベル3

【火属性魔術耐性】レベル3


【警戒】レベル3


***大神官長様のスキル説明おわり***


 これで、どうかな?


「もう1度、御自分のスキルを確認してください」


「はい・・・」



「・・・・・・な・・・な、に、を・・・したのですか?能力が・・・」


「認識出来ない状態になっていた【zunge(ツンゲ) reparieren(レパリーレン)】を認識出来る様にして、能力が停止状態だったので扱える状態に変更しました」


「どういう事なのですか?ロイク君の神授能力にはその様な物は無かったはず・・・」



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