3-51 温泉宿で強化合宿の日⑨のⅢ~2人のトゥーシェ~
リーファ歴4075年8月26日、聖の日。
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フォルティーナの長い長い説明が続く。
長い長い話をまとめると、
悪気スキルは、邪の女神様が神気スキルを基にして創造したスキルで、【DMP】の代わりに【GMP】を用いて発動しない訳が無い。
元々神気スキルだった物を【DMP】を用いて再現しているのが悪気スキル。それを、【GMP】を用いて発動しているのが俺。
本来の姿に近い状態でスキルを発動している事になる訳で、女王様な方のトゥーシェは直感的にこれに気付き、俺の方が上手に扱えると考えた訳だ。
ちなみに、メア下界の悪魔種魍魎種達が忌み嫌う存在≪≪神≫≫のスキル【神気スキル】が【悪気スキル】の基になっている事を、彼等は知らない。
メア下界に宗教は存在しない。【邪神】様を畏怖するのみ。そんな彼等に【邪神】様つまり【邪の女神】様は悪気スキルを神託した。
邪の女神様が彼等に与えた訳だし、考えなくても分かる様な気もしないでもないが・・・。
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「来るぞ」
「オモイダシタネブンブンガサガサと、五月蠅いねぇっ!!」
≪オモイダシタネ ブンブンガサガサ ウルサイネ オモイダシタネ ブンブンガサガサ・・・・・・......
「全く何だね。人の話は静かに聞くねぇっ!!」
≪......・・・オモイダシタネ ブンブンガサガサ ウルサイネ オモイダシタネ ブンブンガサガサ キクネ ウルサイネ
流石だ。・・・司ってる物が違い過ぎる。
「ロイク様。先程と同じアーミーグランドローカストです」
「アル。五月蠅いね。人の話は静かに聞くものだね」
「は・・・はい・・・」
アルさんの視線は、フォルティーナと前方を何度も確認し、最終的に俺を捉えた。
何とかしてください。と、その瞳が語り掛けている事に気付けない俺じゃない。だが俺は追及先を、フォルティーナからアルさんへと替えるだけに留めた。
「ロイク様・・・」
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「後方はフライングリーチの様だが、どうするか?」
「私がやるのじゃぁ~♪」
「トゥーシェ。五月蠅いね。何度言ったら分かるね」
≪オモイダシタネ ブンブンガサガサ ウルサイネ オモイダシタネ ブンブンガサガサ キクネ ウルサイネ ワカルネ・・・
洞窟内をブンブンガサガサ20%フォルティーナ80%。混じりけ20%の女神様の声が鳴音を起こしながら不快に駆け巡る。
「あぁあぁぁぁ―――もう我慢の限界だねぇっ!」
≪パチン
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音が消えた!?
犯人はあいつしかいない。
俺は、フォルティーナへと視線を動かす。
ニヤニヤと小憎たらしい表情を浮かべている。ドヤ顔を決めているつもりの時の顔だ。
フォルティーナは何を勘違いしているのか知らないが、いつもの様に、ニヤニヤヘラヘラと薄ら笑いを浮かべた顔で、全身から自信に満ちたオーラを放っていた。
「・・・・・・・・?」
なっ!?声も出ない・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
フォルティーナは、口をパクパクと動かしている。
司ってるし仕方ないか。
俺は視線を、フォルティーナから皆へと動かした。
マルアスピー、アルさん、マリレナさん、騒がしい方のトゥーシェ、女王様な方のトゥーシェ、ミューさんと、アイコンタクトを取り頷く。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ミューさんが、必死な表情で口を動かしている。
何だろう?
「・・・・?」
ダメだ。
俺はフォルティーナに視線を戻し、
「・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
フォルティーナは、口をパクパクとまだ何か語っている様だ。俺の口の動きを読もうとしてくれない。
「≪『ねぇ、ロイク』→ロイク≫」
「≪『はい何でしょう』→マルアスピー≫」
・・・あ。
「≪『宙の揺らめきが止められたみたい。フォルティーナがまた何かしたみたいね』→ロイク≫」
「≪『はい』→マルアスピー≫」
「≪『フォルティーナ。いったい何のつもりですか?』→フォルティーナ≫」
「≪『おぉおぉだね。うっかりしてたね。響かないのについうっかり喋り続けてしまったね。ハッハッハッハッハだね』→ロイク≫」
「≪『で、これは何のまねですか?』→フォルティーナ≫」
「≪『まぁ~何だね。あれだね。五月蠅いから静かにしたね。これで、静かに話が出来るね』→ロイク≫」
毎度毎度こいつは何なんだ。
「≪『戻してください』→フォルティーナ≫」
「≪『何でだね』→ロイク≫」
「≪『不便だからです』→フォルティーナ≫」
「≪『逆境にあってこそ、修行修練訓練だね。頑張るね』→ロイク≫」
・・・怒るな俺。我慢だ我慢。
「≪『音が無くても戦えます。ですが、気付いてると思いますが、平衡感覚がおかしな事になってます。俺ですら前後左右上下が変な感じ何です。この状態で修行修練訓練だって言うですか?』→フォルティーナ≫」
「≪『安心するね。どんなに背伸びをしても魔獣は魔獣だね。それ以上にはなれないね。それよりあたしの話を聞くね。まだ終わってないね』→ロイク≫」
無視して、皆で対策を考えた方が良さそうだ。
神授スキル【レソンネ】:プリヴェ→エプーズ・除外フォルティーナ≫
「≪『皆、大丈夫ですか?分かってると思いますが、これはフォルティーナが原因です。さっさと元に戻せと言ったんですが修行修練訓練だと馬鹿な事を言ってるので、フォルティーナを除いた皆にレソンネしました。』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」
「≪『フフフッ。フォルティーナはまだ話してるのかしら?』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」
「≪『ずっと、俺にレソンネして来てます』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」
「≪『魔獣が来ないぞ・・・』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」
「≪『平衡感覚がおかしくなってるんで、その影響かもしれません?皆は大丈夫ですか?』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」
「≪『僕は大丈夫だぞ』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」
地の中精霊のミューさんはOKっと、
「≪『私も何ともありません』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」
神獣神鳥の長のアルさんもOK。
「≪『問題ないわ』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」
大精霊で助手精霊のマルアスピーもOKっと、
「≪『問題ないのじゃぁ~』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」
「≪『妾は夢魔前後左右上下理外に住む故夢の中と思えば甚く心地良いぞ。幼き頃の妾よ。そうは思わぬか?』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」
「≪『う~ん。分からんのじゃぁ~』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」
「≪『そうか』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」
悪魔種夢魔族のトゥーシェ2人もOK。
「≪『少し頭がズキズキしてクラクラしていますが問題ありません』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」
風の精霊になったばかりのマリレナさんは、・・・大丈夫じゃない。な・・・。
「≪『マリレナさんは俺の傍にいてください』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」
「≪『・・・はい。ありがとうございます』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」
フォルティーナからのレソンネはまだ続いている。
こちらに向かって来てるであろう魔獣に意識を集中させなくては・・・。
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「≪『来ませんね』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」
「「「「「「≪『≪はい』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」」」」」」
前方の前衛は騒がしい方のトゥーシェ。後方の前衛は女王様な方のトゥーシェ。前方の中衛側衛はミューさん。後方の中衛側衛は俺と俺の右隣に待機するマリレナさん。前方後方両方の後衛はマルアスピーとアルさん。
例のあれは、俺の左隣で喋り続けている。
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「≪『おかしいのじゃぁ~』→嫁’s(フォルティーナのみ除外)≫」
騒がし方のトゥーシェが痺れを切らし騒ぎ始める。
「≪『聞いてるのかね?』→ロイク≫」
「≪『聞いてますよぉ~』→フォルティーナ≫」
この状況では解消も出来ない。
魔獣の動向と、皆とのレソンネ。そして、
俺は、フォルティーナへと視線を一瞬だけ動かし直ぐに後方へと戻す。
こいつ。
「≪『という訳だね。分かったかね。ところで、さっきから何をやってるね』→ロイク≫」
フォルティーナは、俺の正面に立つと、俺の額に左手を当てた。
「≪『熱は無いみたいだね』→ロイク≫」
「≪『何のまねですか?』→フォルティーナ≫」
「≪『熱でもあると思ったね』→ロイク≫」
呆れた表情で俺を見るフォルティーナ。
「・・・」
フォルティーナが口をパクパクと動かし、
≪パチン
「話も終わったしだね。そろそろBOSSの部屋へ移動するね」
はぁっ?
フォルティーナは、俺が後方と位置付けた方へと向かって歩き出した。
「ホラだね。アスピー、アル、マリレナ、ミュー、トゥーシェ何をやってるね。ロイクもついて来るね」
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俺達は、ドアプレートに【今日の強敵】と書かれた部屋の前に移動した。
「ここで、断っておくがだね。あたしのせいではないね」
「何がですか?」
「入れば分かるね」
「この先に、BOSSがいるんですよね?」
「そうなのじゃぁ~。昨日はハイエルフが倒したから今日は私の番なのじゃぁ~」
うん?あぁ~、マリレナさんが1人で倒したのか。
「開けるのじゃぁ~」
≪ドッゴォ―――ン バッダーンドォーンド―――ンド――――――ン
騒がしい方のトゥーシェは、ドアを蹴破り、突撃した。
「フンフンフンフン♪あぁ~・・・・・・・・・・・・・いないのじゃぁ~!!!!!」
まさか、ドアを蹴破った時に一緒に倒しちゃったとか?
「探すのじゃぁ~!!!!」
「さて、コングラチュレーションだね。少し早いがだね。帰還するね」
こいつだな・・・・・・。
「フォルティーナ。俺の瞳を見て答えてください」
「何をだね」
「運と遊びの他に・・・じゃなかった。さっきの音を消した指パチンで魔獣も一緒に消しましたね」
「何の話だね」
「ほう」
俺はタブレットで素材を確認する。
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先程の分の他に・・・
≪倒した魔獣≫
【フライングリーチ】
合計 2088匹
―――
≪フォルティーナ痴女女神様が仕留めた数≫
合計 2088匹
※指パチンで屠った数2088匹※
―――――
【アーミーグランドローカスト】
合計 1261匹
―――
≪フォルティーナ痴女女神様が仕留めた数≫
合計 1261匹
※指パチンで屠った数1261匹※
―――――
【マンティコーコース】
レア度:★★★★★★☆☆☆☆
危険度:★★★★★★★★★☆☆
レベル:1088
迷宮補正:全ステータス値100倍
※今日の強敵※
―――
≪フォルティーナ痴女女神様が仕留めた数≫
合計 1匹
※指パチンで屠った数1匹※
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≪取得素材他≫ 超激レア素材以外換金済
換金
①ハーフゴッドマネー:42677枚
超激レア素材
①魔蛭の極上前翅 4174枚
②魔蛭の極上後翅 4152枚
③古代種の皮 1217枚
頂レア素材
①有頂天の前翅 2枚
②有頂天の後翅 24枚
②古代種の堅硬な皮 44枚
神レア素材
①マンティコーコースの尾 1本
②マンティコーコースの毒 5リットル
魔晶石 無し
核 無し
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何も言うまい。
取り合えず帰還したら、トゥーシェにはケアーが必要そうだ。
ありがとうございました。