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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ー1ヶ月の軌跡ー・-強化合宿編ー
176/1227

3-42 温泉宿で強化合宿の日②~カトラリーは2本の棒~

リーファ(R)歴4075年8月21日、無の日。

「カトリーヌさん!」


「はい。□○×△##ブラスト ≫」


 ロックドラゴン(岩石竜)に、風属性上級魔術【ブラスト】が命中した。


「まだです」


「はい。□○×△##ブラスト ≫」


 4発目の風属性上級魔術【ブラスト】が命中した。


主殿(あるじどの)よ。上級魔術でこいつ(・・・)を倒すのは難しいのではないでしょうか」



 眷属神のエリウスと眷属許嫁のカテリーナと俺は、創造神様からいただいた強化プログラムの内容に従い、古代竜の巣窟で修練修行訓練を開始した。


 古代竜の巣窟の中は、栄光の世界と同じコルト下界とは別の空間。神授スキル【タブレット】の地図機能や地図に付帯する検索機能は機能しない。


 センス(Sense)スキル(Skill)【警戒】 ≫


 OK。


 センス(Sense)スキル(Skill)【探索】 ≫


 OK。


 【索敵】【罠感知】【空間把握】 ≫


 OK!


 日頃、タブレットの便利な機能に依存し、使う機会がほとんど無くなったスキルを久々に発動させ、古代竜の巣窟へと踏み込んだ。


 幅約5m、高さ3m、全長約6Km。岩肌向き出しの長い一本道を抜けると、そこは、途轍もなく広い真っ白な漆喰塗りの空間だった。 


「ロイク様。長ぁ~い道の次は広ぉ~い空間ですね」


「主殿よ。この空間は八角形の様です」


 俺は、天井を見上げる。


「高っ!白さが眩しいですねぇ~」


 天井の高さは、約1Kmってところか。そして、一本道の正面角にある扉との距離も約1Kmってところだな。


 俺は、周囲を見回し状況を確認する。


 エリウスの言う通り、八角形の空間の様だ。一本道の正面角に扉が1つ。8面それぞれの壁に扉が3つずつ。


「八角形で間違い無いみたいです。正面の扉までの距離は約1Km。天井の高さも約1Km。8面の壁には3つずつ扉がある様なので、この空間には正面角の扉と合わせて25個の扉があります」


 タブレットの機能が一部使え無くても、俺の神眼やエリウスの神獣眼はスキルであり身体能力。言わば身体の一部。正面1Km先の扉位なら認識可能だ。


「如何致しましょう?」


「ロイク様。一本道を背に右側の扉には【#地下】。左側の扉には【#闇下】と書いてあります」


「カトリーヌさんには、もう少し詳しく説明した方が良さそうですね。まず向かって正面角の扉には【#無】と書かれています。正面角の扉の右側の扉には【#光上】、その隣は【#光中】【#光下】。次の面の扉には【#火上】【#火中】【#火下】。次の面の扉には【#邪上】【#邪中】【#邪下】。次の面の扉には【#地上】【#地中】【#地下】。で、一本道。正面角の扉の左側の扉には【#風上】【#風中】【#風下】で、順に#【#聖上】【#聖中】【#聖下】【#水上】【#水中】【#水下】【#闇上】【#闇中】【#闇下】」


「四大属性と非四大属性と無属性の部屋と言う事でしょうか?」


「たぶんそうだと思います」



 俺達は、一番近い【#地下】と【#闇下】どちらの扉の先に進むか話合い、【#地下】の扉の先に進む事にした。


 そして、エインシェント(古代)スピーシーズ()のロックドラゴンと遭遇したのである。


 ロックドラゴンは、『内なる存在を預かりし存在』だと名乗った。


***********************


 ≪古代種岩石竜の情報≫ By:ロイクの神眼


【HP】597,366 / 665,644

【MP】124,003 / 126,150


 Special・Skill


【古代竜の血】レベル1

 :消費【MP】1

 ①【HP】回復・全 ②状態異常回復・中

 ③3ラフン()間、攻撃力防御力2倍

【古代竜・地竜の逆鱗】レベル1

 :消費【MP】0

 :1カウン()間に【HP】を100消費

 ①1時間、攻撃力100倍

 ②1時間、防御力100分の1倍

【古代竜・地竜の覇気】レベル1

 :消費【MP】0

 ①地属性無効


***********************



「体内の【MP】を効率良く風属性に変換出来ていないだけです」


 俺は、ロックドラゴンを易々と抑え込むエリウスに答えた。


 魔術による攻撃が苦手なカトリーヌさんの強化合宿での目標は、魔術や古代魔術の攻撃や連携に慣れる事だ。


 ロックドラゴンに対し優位属性にあたる風属性の上級魔術【ブラスト】を4発命中させ、削った【HP】は68,278。後、約36回打ち込めば倒せる計算だ。だが、そう簡単にはいかないだろう。


 スペシャルスキルねぇ~。また厄介なスキルを所持してるなぁ~。


 う~ん。・・・倒しきる前に回復されるのが落ちだよな。でも、強化合宿の目的は修練修行訓練だし、エリウスには悪いけど、もう暫くロックドラゴンに抱き着いてて貰うしかないかな。


「カトリーヌさん。ブラストを続けてください。威力が今のままで同じなら後36発で倒せます」


「36発ですかぁっ!・・・分かりました」


 カトリーヌさんは、少し考えてから、決意交じりの返事をした。


「【MP】の余剰消費量に意識を集中させて、自然魔素(まりょく)が暴発するギリギリまで消費する【MP】を高めてからブラストですよ」


「はい。・・・・・・□○×△##・・・ブラスト ≫」


 エリウスが抑えている為、5発目の風属性上級魔術【ブラスト】も命中した。


「エリウス。申し訳ないんだけど、後たぶん35発位打ち込むと思うから、抑えててください」


「はぁっ!畏まりました。ヒヒィーン」



「□○×△##・・・ブラスト ≫


 33発目の風属性上級魔術【ブラスト】が命中した時だった。ロックドラゴンが小さな咆哮をあげた。


≪ギャガァグワァ―――ヲ


 俺は、神眼を意識し、ロックドラゴンのステータスを視る。


「あっ、【HP】が、665,644(満タン)に回復しちゃいました」


「ロイク様。このまま続けますか?」


「主殿よ。どうされますか?」


「そうですねぇ~」


 カトリーヌさんの【MP】は・・・。


***********************


【名前】カトリーヌ・R・ルーリン・シャレット

 ※正式には、カトリーヌ・ミュレー※

【性別】女 

【種族】ヒューム(人間)フェアリー(妖精)シルフィ(妖精)

【レベル】502

【生年月日】R3798年1月29日(闇)

【年齢】277 【血液型】B

【身分】アシュランス王国ククイム州

    州都ククイム市の執政官

【階級】ククイム伯

【使命】―――ー

【眷属隷属先】

 ロイク・ルーリン・シャレットの眷属

【虹彩】オータム・アズァ色

 ※RGB値:RED20・GREEN67・BLUE132※

【髪色】ミント色

 ※RGB値:RED0・GREEN98・BLUE82※

【髪型】ロング

【身長】152cm 【体重】――――

【体系】スレンダー 【利腕】右利き

【B】81 【W】55 【H】80

【状態】正常


【JOB・cho1】(本職本業):神授

 戦闘型(BT)・JOB

 【アクトリスヌエクラン(銀幕の女優)】レベル10

 ※【アクトリス(女優)】レベル10を統合     ※

  補足:【JOB・cho2(前職)


【JOB・inh】:父系

 準戦闘型(LBT)・JOB【メディウム】(神官巫女)レベル10


【JOB・inh】:母系

 準戦闘型・JOB【エリートヒーラー】(上級治療士)レベル10 

 ※【ヒーラー】レベル10を統合      ※


【JOB・inh】:母系

 戦闘型・JOB【マジシャン】(魔術師)レベル10


 ≪称号≫


【眷属・許嫁】

 ※世界創造神公認※

 ※ロイク・ルーリン・シャレットの許嫁※


【HP】 32,942 / 32,942 

【MP】 31,500 / 34,272

【STR】32,844 【DEX】33,208

【VIT】32,928 【AGI】33,124

【INT】33,397 【MND】33,614

【LUK】 4,725

【BONUS】5,741


***********************


 31500か。・・・消費【MP】約84で、削ってる【HP】は約17000。レベル10のブラストは1発73~149【MP】を消費するはずだから・・・。


 これなら、大は小を兼ねるで、消費【MP】150からの最上級魔術【アニマ】の方が良いのか?・・・あっ!でも、同時に2~3発放てるならアニマじゃなくても良いのか。


「主殿ぉっ!」


 カトリーヌさんのステータスを確認していると、俺を大声で呼ぶエリウスの声が聞こえた。


「主殿。こいつ、突然力が強く」


≪ギギギギギギギ


 あっ。


「エリウス。そのロックドラゴンですが、【HP】を回復させる古代竜の血ってスペシャルスキルを所持してる様なんですが、それ発動すると攻撃力と防御力が3ラフン()間2倍に成るらしいです」


ドラゴン()種の攻撃力が2倍ですかぁっ!これはまた厄介なスキルを持ってますねぇ~」


 エリウスには、スペシャルスキルが()えていない様だ。神獣になりたてだからか?


≪グギギギギギギギミシミシミシ


 体長20m強のロックドラゴンVS体長2m弱のエリウス。エリウスの顔からは、先程まで見せていた余裕の表情が消えていた。


「抑えられそうですかぁっ!?」


「ギリギリですが可能です」


 2倍でギリギリ。・・・古代竜・地竜の逆鱗ってスペシャルスキルを使われたら、修練修行訓練どころじゃなくなりそうだ。


 最悪、使われたら俺が倒しちゃうとして、・・・まずはカトリーヌさんだな。


「カトリーヌさん。ブラストを2~3発同時に打ち込むか、倍以上の速度で連射出来ませんか?」


「事象行為の重複は無理ですが、2倍速の速射であれば何とかなると思います」


 カテリーナさんは、攻撃を再開した。



 これ、駄目なパターンだ・・・・・・。



「なぁ~若々女将ぃ~この棒は何なのじゃぁ~?」


 強化合宿参加者達は、温泉宿の夕食専用の大広間『大地の間』に集まり、畳の上に敷かれた座布団に座りながら、畳の上に直置きされた膳という脚のある独特な形状のトレーを前に悪戦苦闘していた。


 独特な形状のトレーの上に並べられた小さな器には少量ずつ料理が盛られていて、カトラリーは何と2本の棒(・・・・・・)


 若々女将曰く。2本の棒(・・・・)御箸(おはし)といい、神界の食事には欠かせないカトラリーで、食事を楽しむだけでは無く、脳を活性化させ集中力を高め、自然魔素(まりょく)の変換効率や統制制御の質を高める効果がある。


 らしい・・・のだが・・・。


「あぁあぁあぁ~~~なのじゃぁ~。イライラするのじゃぁ~」


「トゥーシェうるさいね。創造神が御箸を神授する事の意味が分かるかね」


「何なのじゃぁ~」


「凄いって事だね」


「・・・あぁぁぁぁぁなのじゃぁ~」


 トゥーシェは、キレた。



 若々女将曰く。膳の上に置かれた御箸は、創造神様より神授していただいた御箸で、その名は【漆・(うるし)八角名入れ(はちかくないれ)創神箸(そうしんばし)】。


 この御箸、有難くも非常に迷惑な創神具で、創造神様の御力により修練修行訓練を補助する効果が殊の外沢山(嫌がらせの様に)付与されていた。



「頭が良いのじゃぁ~」


 騒がしい方のトゥーシェは、料理を御箸で刺して食べる作戦に打って出た。


「ギャハッハッハッハなのじゃぁ~。あーうむ・・・あっ?」


 口に入れたはずの料理が、小さな器の中に現れた。


「あぁぁぁぁぁ――ーなのじゃぁ~」



 何度繰り返しても料理は小さな器の中に現れた。



「ンガァァァ~~~ナノジャァ~」


≪ブチブチブチブチィッ!!!


 トゥーシェは、更にブチキレた。



 若々女将曰く。料理を御箸で刺したり、器に口を付け直接口に運ぶ事は、叶わないそうだ。


 ぶっちゃけ、食事くらいはストレス無く、美味しい物を楽しく食べさせて欲しい。


 魔獣相手にすら見せた事の無い鬼気迫った表情で、料理を口に運ぶ強化合宿参加者達。


 悶々とした空気の中、強化合宿初日の全行程が・・・・・・終了した。



 余談1。


「上手に食べますね」


「当たり前だね。億単位で使い続けてるね。足の指でも食べれるね」


 それ、刺したり口を直接付けて食べるより駄目だろ。御箸を足の指で持って料理を食べる・・・・・・究極に難しいとは思うが。


「ロイクには無理ね」


「ですね。利き手でも難しいのに、足の指でだなんてありえません」


「その前に、ロイクは股関節が硬わ。口まで御箸を運べるかしらね。フフフッ」


 断言出来る。確実に無理だ。


***********************


 ≪強化合宿初日の夕食の献立≫


 1.白米の御飯

 2.豆腐と三つ葉の御吸い物

 3.小茄子の御漬物

 4.里芋、人参、椎茸、きぬさやの煮込み物

 5.黒豆の甘露煮


***********************


 肉や魚は無し。



 余談2。


「エリス何処に行くんですか?」


「エリス。何処に行くね」


「用事を思い出しまして・・・」


 エリウスは、御箸を膳の上に置くと、静かに座布団から立ち上がり、徐に和襖へと向かった。


 そして、フォルティーナと俺の声を無視し、大地の間を後にした。


「マナーがなってないね。食事の途中で席を立つのは余り好ましく無いね。トイレは食事の前に済ませるね。全くだね」


「フォルティーナの口からマナーって言葉を聞く日が来るって思っていませんでした」


「失敬なぁっ!だね」


「そうね」


「アスピー。君もかね」


 エリウスめぇ~。・・・これ、御箸が嫌で逃げたよな。絶対。



 暫くして、エリウスが戻って来た。


 顔色が悪いみたいだけどうしたんだ?本当にトイレだったのか?・・・あれぇ~確か、神様神獣様精霊様聖者獣様とか竜種って状態異常は無効じゃなかったっけ?


「エリウス。顔色が優れませんが、大丈夫ですか?」


「主殿よ・・・」


「エリウス。口元に草が付いてるね」


 エリウスは慌てて口元を拭った。


「嘘だね」


 あぁあぁ~なるほどね。


「エリウス。御箸が嫌で外に草を食べに行きましたね」


「ヒヒィーン。お許しください。主殿、フォルティーナ様ぁ~。温泉宿からは出ていません。敷地内でしたぁ~。もう決して絶対に庭の草は食べません。お約束致しますぅ~~~」


「その方が賢明だね。うんうんだね」


 元々聖馬獣つまり馬だったエリウスは、騒がしい方のトゥーシェと夜遅くまで大地の間に残り、2人仲良く御箸と激しいバトルを繰り広げました。



 神界の食べ物には味が存在しない。存在するのは鼻孔をくすぐる芳しい香りや食欲を刺激する美味しそうな匂いだけ。


 それが例え草であってもまた然り。

ありがとうございました。

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