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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ー1ヶ月間の軌跡ー・ーアンデット編ー
170/1227

3-36 スタンピード・アンデットの日⑨~スキルの代償は寿命~

リーファ(R)歴4075年8月15日、風の日の夜。

リーファ(R)歴4075年8月16日、聖の日の朝。

 俺は、寝室のベッドに横になりながら、眷属達のステータスやスキルを確認していた。


≪トントントン


 うん?


≪ロイク様。入っても宜しいでしょうか?


 アルさんか。


「どうぞ」



 ベッドに横になりながら話を聞く俺と、ベッドの横で俺を見下ろしながら話をするアルさん。


 入院患者と見舞客の様な状態なのは、アルさんに直ぐ終わるからそのままで良いと言われたからだ。


 俺は、夢と希望を凝視しながら、アルさんの話を聞いていた。


 凝視・・・凝視・・・。



「マルアスピーさんはどちらに?」


「マルアスピーなら、工房ロイスピーの研究室です」


「あぁなるほど。コーチ(輓獣車)の中で商品開発が進まないわと話していましたから・・・」


「研究室から台とか材料とかを移動し要望には応えたんですけどね」


「勝手が違うらしいですよ」


「そういうもんなんですかね」


「らしいですよ」


 良いアイデアが浮かんだとか言ってたし、たまには環境を変えてみるのもありかなって思ってたんだけどなぁ~。・・・って、マルアスピーの話をしに来た訳じゃないよな?


「ところで、こんな時間にどうしたんですか?」


「はい・・・。明日はアンデットの殲滅作戦最終日です」


「そうですね。初日よりも2日目の今日の方が捗りませんでしたが、予定通り明日で終わると思います」


「明日伝えても良かったのですが、初日と2日目の様子から始める前に時間が無さそうでしたので」



「感じた事ですか?」


「はい。相手がアンデットであるにも関わらず緊張感に欠けています」


「緊張感ですか」


「はい。カトリーヌさんやロイク様の支援によって、歯や爪による脅威が無くなり、ほぼ全ての攻撃を無効化した状態での浄化昇天です」


「ですね」


「適度な緊張感は集中力を高め、その存在の能力を高めるそうです」


「緊張感がですか?」


「はい」


 考えた事が無かった。緊張が集中力を高めるのか・・・。試してみる価値はありそうだ。よし。


「明日の殲滅戦では、サンミュール(聖属性の結界)を張ってないふりをして様子を見る事にします」


「フフッ」


 アルさんは、優しく微笑む。


「どうしたんですか?」


「結局、結界は張るのですね」


「アンデットになられたら困ります」


「アンデットになってしまった個体には間に合いませんが、アンデット化途中の個体にでしたら、中級のベネディクシヨン(解呪)(レベル)4か同じく中級のノートルダム(聖母の繭)☆4を施す事で、アンデット化を無効化出来ます。ロイク様の場合は、ステータスの状態をアンデット化の呪い状態から正常に書き換える事で無効化する事も可能だと思います」


「そうなんですか!」


 アンデット化って状態異常だったんだ。・・・へぇ~、知らなかった。


「アンデットは、・・・この場合は、アンデット種ですか。彼等は闇の存在ですが、噛み付いたり引掻いたりする行為は地属性です。行為により出血する様な傷を負う事で傷口から地属性と闇属性の呪いが体内に侵入します」


「アンデット化って、石化の呪いと同じ地と闇の属性による呪いなんですか」


「はい。ですので、無地水火風属性の回復魔術では治せませし、コルト下界の回復薬でも通常は治せません」


「状態異常ではなく呪い。呪いなら回復魔術や回復薬で解呪出来なくて当然ですね」


「はい」



「それと、サラさんの御父様なのですが・・・」


「バルタザール王子がどうかしたんですか?」


「神界にのみ存在するはずの神聖なる騎士に転職されました。神格を与えるつもりでしたら問題ないとは思うのですが・・・」


 サクレシュヴァリエ(神聖騎士)の事だよな?・・・神格を与えれば問題ないとかって言われても、転職させたの俺じゃ無いし・・・。


「何か問題でも?」


ロイーナ(理外の民)にはなりましたが、寿命が延びた訳ではありませんし・・・身体に良くないかと」


 サクレシュヴァリエって身体に良くないJOBなのか?


「寿命とか健康面に問題が?」


「はい。殲滅の際に多様していたスキルが、神気スキルだったものですから気になりまして・・・」


「神気スキル?・・・サンシュヴァリエ(聖騎士)のスキルを、サクレシュヴァリエとして扱っていただけだったと思ったんですが」


「思い出してみてください」


 ふむ。



――ー アンデット殲滅戦2日目の回想


「嘆きのアルビートル!!!」


 バルタザール王子は、サンシュヴァリエのスキルの名を叫びながら、大剣を両手で振り上げ頭上に翳した。


 大剣の切っ先に宙から一筋の光が流れるや否や、360度全ての角度へ無数の閃光が広がり、バルタザール王子を中心に周囲20mを瞬く間に呑み込んだ。



 光が飛散した跡には、アンデットの姿は無く、バルタザール王子だけが立っていた。



――ー ロイクの寝室


 多用してたスキルって、サンシュヴァリエのスキル【嘆きのアルビートル】の事だよなぁ~。


「あれは、凄いスキルですよね」


「あのスキルは、コルト下界に存在する聖なる騎士のスキルとして発動してはいましたが、神界にのみ存在するはずの神聖なる騎士が扱った事で、神気スキル【最後の晩餐】として発動していました」


「サンシュヴァリエもサクレシュヴァリエも無属性のスキルが多いとは思っていましたが・・・」


 まさか、神気スキルだったとは・・・。通りで凄い威力なはずだ。


「神気スキルは、核に属性を持たせない限り、極めて無属性に近い存在ですからね」


「凄いはずです」


「えぇ。凄いのは、神界に存在する神格を持った者の技だからです。ですが、サラさんの御父様は、コルト下界の存在であり神格を持たざる者です」


「あぁ――ー・・・・・・。なるほどぉ~」


 これは問題だわぁ~。身体、寿命。つまり心臓に負担が・・・。


 俺は、アルさんの愛と希望へと視線を動かした。


「ロイク様!?」


「心臓を・・・ですね」


「心臓はどちらかというと真ん中ですよ」


 ・・・そうですね。


 愛と希望から顔へと視線を動かし弁明したが無駄だった様だ。



「神気スキルは何を消費して発動しますか?」


【GMP】(神気)です」


「神気を持たざる者は?」


「・・・えっと、発動しないかな?」


「正解です。本来なら発動しません。ですが、サラさんの御父様のケースでは可能です」


「でしょうね。殲滅戦で10回以上は見たと思います」


 何故、発動してるのかは知りませんけど。


「創造神様の眷属のロイク様は、通常時はコルト下界の人間属です」


 通常時って、生まれも育ちもマルアスピー村です。


「まぁ~、そのつもりですけど」


「姿形だけでならそうです」


 姿形だけ?


「えっと、どういう事でしょう」


「そういう事です」


 え?・・・そういう事って、どういう事だ?


「一応、人間属のロイク様は、神格を持っていませんが存在には高い神気を秘めています」


 一応って、それに高いって言うなら。


「マルアスピーは俺より高いですよ」


「マルアスピーさんは、精霊です。一応、人間属ではありません」


 一応じゃなくて人じゃないし。寧ろマルアスピーには一応って要らないですよね。


「それで、結局のところバルタザール王子が神気スキルを使えたのは何故ですか?」


「はい。高い神気を持ったロイク様の人間属の眷属は神気を持っていません。ですが、神授スキル【眷属隷属の主】の効果で、ロイク様は眷属全員のステータスやスキルを強化し常に補助している状態にあります」


「補正によって強化されてるのは確認したけど、補助はした覚えがないです」


「オートですからね」


 あぁ~・・・オートなんですね。


「サラさんの御父様が聖なる騎士のスキル【嘆きのアルビートル】を、神界の神聖なる騎士として発動する際に、聖なる騎士のスキル【嘆きのアルビートル】は、神気スキル【最後の晩餐】として発動しています」


「はい。それはさっきも聞きました」


「当然の事ですが、サラさんの御父様の【GMP】(神気)では発動の為に必要な【GMP】は不足しています」


「不足というか、ゼロですからね」


「そこで、ロイク様の補助を受け、サラさんの御父様は、不足分を寿命と肉体に宿る精神力と自然魔素(まりょく)を引き換えにして、神気スキル【最後の晩餐】を発動しています」


 それ、補助って言わないような・・・。


「寿命を代償にする補助ですか。それって、止められないんですか?」


「JOBやスキルのパッシブ効果を止める事は出来ますか?」


「出来ないです」


「ですので、身体に良くないと・・・」


 身体に良くないって言うか、これって問題は寿命だよなぁ~。


「アルさん、バルタザール王子が、今日の殲滅戦でどれだけ寿命を縮めたか分かりますか?」


「コーチから視ていた限り、ロイク様は、1度目の発動時に、【MP】が0になり気絶しかけたサラさんの御父様の【MP】を1に留まらせ、精神力を代償として【GMP】に変換しようとしていました。【MND】は低下こそしますが短い時間で減ったりはしませんので、【MND】に目を付けたのは正解だと思います」


 正解って・・・。オートだし。


「1回で【MP】が0になる位ですよ。10回以上もどうやって発動を?」


「存在として存在し続ける為に、存在と同時に与えられた生命エネルギーを、必要な【GMP】を得る為に代用したからです」


「生命エネルギーが寿命って事ですか?」


「はい。【MP】なら約1億6900万程で、【MND】なら約5万6000程。寿命なら、そうですねぇ~・・・」


「1億6900万に、5万6000?・・・それ人には絶対無理じゃないですか!」


「はい。神気スキルですし、そうだと思います」


 あっ・・・。そうですね・・・。


「それで、寿命だとどうなるんですか?」


「寿命の場合は、・・・発動の度に異なっていました」


「異なっていた?」


「はい。1度目の発動では、アンデットを299体浄化昇天させていました」


 数えてたのか。凄いな。


「光に包まれたと思ったら、アンデットだけ消滅って凄い状況でした」


「神気には属性が存在しない為、対象となったアンデット以外には無害な事も素晴らしいです。神気スキルには自然に優しい物が多いのです」


 人の寿命を奪うのに?・・・あっ!自然にとっては人が最も優しさを欠いた存在って事か。・・・う~ん。今は哲学はいいや。


「計算が終わりました」


 計算してたのか・・・。


「わざわざ済みません」


「いえいえ、1度目の299体の時には、【MP】4386【MND】742と、寿命が3887日です」


「はぁ~?3887日もですかぁっ!」


「はい。コルト下界の理ですと、約10年分でしょうか」


 約10年も・・・あれ?10回以上発動したのに、生きてるのは何故だ?


「アルさん。その後の代償はどうなってましたか?」


「2度目は、204体で、【MP】0【MND】742と、寿命が2652日です。約7年分です。3度目は......


 バルタザール王子は、寿命を縮めに縮め・・・。


......13度目は、317体、【MP】0【MND】742と、寿命が4121日です。約10年と半年です」


「えっと・・・。バルタザール王子は・・・」


 俺は、神眼を意識し自分のステータスから眷属バルタザールを確認した。


「R4016年1月28日生まれの59歳で、今日縮めた寿命は47359日で、約121年と3ヶ月分・・・えっ?・・・。アルさん。バルタザール王子って寿命180歳以上ですか?」


「普通の人間属の人ですよ。長くても100歳前後ではないかと・・・」


「でも、今59歳で、減った寿命が121年ですよ」


「サラさんの御祖父様は87歳ですが剣聖として現役ですよね。きっと長生きの家系なんですよ」


「長生きの家系って・・・」


 無理あるだろう。長いからって180歳以上?


「それに」


「それに?」


「サラさんの御父様は、ロイーナの1500分の1ですよね。ですから、生きてるのではないかと・・・」


「あれって、時間の流れが1500分の1になるから、実質寿命が1500倍になる様な物で、実際は寿命が延びたんじゃ無くて、寿命を迎える速度が1500分の1になっただけですよ」


「あと10時間の寿命だとしても、500日は生きられますね」


「そうなるかな」


 うん?いやいや待て待て。寿命が180年以上だったとして・・・って、それがありないからぁっ!


「あと、1時間の寿命だとしても、コルト下界でしたら、50日間は大丈夫ですよ」


「いや、そういう問題じゃないから・・・」



 気が付くと朝だった。


 隣には何故かアルさんが寝ていた。


 ・・・パールホワイト色のネグリジェのままかっ!


「うぅぅぅぅん」


 起きたみたいだけど、どうしたんだ?


 アルさんは、俺の顔を見つめたまま止まっている。


「アルさん?」


「・・・ここ・・・・・・」


 アルさんは、俺の顔を見つめたまま微睡んでいる。


「ここは、俺の寝室です」


「眩しい・・・です」


「カーテンを少しだけ開けて寝てるんです」


「・・・これ」


「俺のベッドです」



≪ガチャ


「あら。御邪魔かしら」


「マルアスピー。おはようございます。徹夜だったんですか?」


「えぇ」


「マルアスピーさん。おはようございます。話込んでしまって気付いたら寝ちゃってました」


「そう」


 マルアスピーが、工房ロイスピーの研究室から帰って来た。


「マルアスピー。口の横に何か付いてるけど、何ですかそれ?」


「チョコね」


 チョコですか・・・。冷静に言われても困るんだけどなぁ~。


≪グゥー


「あっ!何かチョコって聞いたらお腹が」


「ロイク様。私もです」


「そう。頑張ったのね。良かったわ」


「頑張った?」


「えぇ」


「あぁ、新商品の開発の事ですね。お疲れ様です」


「そうね。1つ完成したの。チョコの御菓子よ」


 口元から察するに、そうだと思いました。


「ねぇロイク」


「はい。何でしょう」


「殲滅戦が始まるまで眠っても良いかしら」


「構いませんよ」


 マルアスピーは、アルさんが寝ている反対側からベッドに入ると横になった。


「俺、起きようと思ってたところ何で、広く使って・・・って、もう寝ちゃってるし」


「余程、疲れていたのですね。・・・ロイク様?何を?」


「え?・・・・・・」


 つい癖で、目覚めの浪漫を追及してしまった。


「・・・えっと・・・これは・・・・・・えっと、日課。そう日課です。朝の儀式みたいな感じです」


「そんな儀式が・・・儀式でしたら私にもお願いします」


「えっ!?・・・あっ!・・・はい」



 俺がバレバレな嘘をついた翌日の早朝から、アルさんは儀式に参加する様になりました。


***********************


【名前】アル・R・ルーリン・シャレット

【性別】女 

【種族】

 神獣種神鳥類大白鳥種化現人間属人種人族

【レベル】3000

【生年月日】――――年12月25日(風)

【年齢】2074 【血液型】B

【身分】神鳥の長の1柱 【階級】五級神

【使命】―――ー

【眷属隷属先】

 ロイク・ルーリン・シャレットの眷属

【虹彩】フェニックス・レッド色

 ※RGB値:RED228・GREEN0・BLUE43※

【髪色】ユニコーン色&シルバー色

 ※RGB値:RED245・GREEN244・BLUE249※

 ※RGB値:RED192・GREEN192・BLUE192※

【髪型】ニュアンスロング(ウェヴ強め)

【身長】164cm 【体重】――――

【体系】セェンシュアル 【利腕】両利き

【B】95 【W】57 【H】85

【状態】正常


【JOB・cho1】(本職本業):神授

 非戦闘型(NBT)・JOB【シャントゥール】レベル10 


 ≪称号≫


【眷属・嫁】

 ※世界創造神公認※

 ※ロイク・ルーリン・シャレットの嫁※


 ≪眷属隷属≫


 神界・神域・精霊界・精霊域・各下界・

 魔界・悪魔域・魍魎域・等の鳥類

 ※建前上は同列の神鳥の長と共有※


***********************


――ー余談


 ≪5大神鳥・神鳥の長・5柱≫

 ①オェングス(大白鳥)種の長

 ※鳥全般を眷属にする※

 ②フェニックス(瑞鳥)種の長

 ※主に不死類を眷属にする※

 ③オワゾーブルー(雉鳩)種の長

 ※主に小型中型類を眷属にする※

 ④ラパース(鷹鷲)種の長

 ※主に猛禽類を眷属にする※

 ⑤シュエット()種の長

 ※主に夜行性類を眷属にする※


 ※聖梟獣サビィ―は、5大神鳥の眷属でり

  シュエット種に属し、⑤の眷属でもある※

ありがとうございました。

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