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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーコルト編ー
17/1227

1-9 ドック奴隷商会と、パフ・レイジィー

作成2018年2月14日

***********************

【タイトル】 このKissは、嵐の予感。

【第1章】(仮)このKissは、真実の中。

 1-9 ドック奴隷商会と、パフ・レイジィー

***********************

――― パマリ家より提供された馬車のキャビン


「ロイク。今向かっている所は、奴隷商よね?」


「余り気乗りきないけど、どうしたんですか?」


「人間種達の奴隷の仕組みって、悪い事をした人が奴隷になるのよね?」


「一般的にはそうなんだけどね。実際は家や親の借金の支払いとか、他の人の借金を押し付けられ破産してとか、決闘に負けてとか、王国が管理している奴隷制度なんだけど、非合法な経緯で奴隷になってしまう人も多いらしい」


「ふ~ん。命の売り買い、欲望の売り買いね。人間種らしいと思うけれど・・・国が管理しているのに悪い事が出来るのね」


「でも、犯罪者を管理する奴隷制度は、建国以来、この国を支える貴重な労働力確保に貢献してるんだよ」


「ふ~ん」


「例えば...


***奴隷の簡易説明***


≪奴隷の種類≫

 ・任意合意型(契約)奴隷

 ・刑期服役型(強制)奴隷


【契約奴隷】

 ・専従期間限定(固定)奴隷

 ・完済時解放奴隷


【強制奴隷】

 ・専従奴隷(C・D級(非凶悪)犯罪者。更生目的)

 ・犯罪者奴隷(B・A級(凶悪)犯罪者。終身)

 ・刑執行待機奴隷(S級(極悪)犯罪者。執行まで》


 ・特別奴隷(専従奴隷の貴族階級出身者)

  ※実家や主家にて謹慎するのが普通※


***奴隷の簡易説明おわり***


なんだけど、この任意合意型(契約)奴隷がなかなかグレーなんだよ」


「契約して自ら奴隷になりたいなんて人間種は変わってるわね」


「神様の指示とはいえ、そんな所に行くと思うと何だかね・・・」


「ロイク様。奥様。契約奴隷は悪い話ばかりじゃないんですぜ」


「あっ、御者のおじさん。良い事もあるんですか?」


「そうですぜ。借金や税金の滞納で、D級犯罪が確定して専従奴隷になりかけた奴がいるとしやすぜ。奴隷商に掛け合って、借金や税金を肩代わりして貰い代わりに契約奴隷として登録。肩代わりして貰った金の完済が終わるまでは奴隷ですが、その期間中は税金や衣食住の心配がいらねぇ~。働いている間に技術を磨いたり、完済後にそのまま雇用契約に以降する奴だっている。因みに、私や私の妻もパマリ家に買われた契約奴隷でしたぜ。今は奴隷ではなく正規式に御者として雇われています」


「なるほど・・・」


『救済を目的に奴隷・・・人間種って本当に変わってるわね』


「今、向かってます奴隷商のドックさんの店は、コルト町の奴隷の8割以上を管理する大店です。3年前から商人商家協会(商人ギルド)のコルト支部支部長も商人達に推薦されてやってるんです。人望の厚い信頼のおける人です」


『村とは考え方や価値観がかなり違うみたいね』


 そうみたいですね。


「さぁっ。つきやしたぜ。ここが、コルト町最大の奴隷商ドックさんの店ですぜ」


「ありがとう。御者のおじさん」


「ありがとう。さぁ~行きましょうロイク」


≪ガチャ・・・


「あっ・・・オーナー。侯爵家の馬車で間違い無いです」


「おぉ~そぉかぁっ!今、行く」


「はい」



―――コルト町奴隷商ドックの店の前


「お待たせしました。・・・おや・・・?」


 男は、慌てて外に出て来たのだろう。左右の履物が違う。


「ドックさん。こちらお方は、パマリ侯爵家の大切な御客様で、ロイク・シャレット士爵様と奥様のマルアスピー様です。本日は、主家の命で私が御者として街を案内していました」


「ほうぉ~。パマリ家が他家に馬車とは珍しいですね」


「そ、・・・」


 御者のおじさんは、何かを言おうとした様だが口ごもり沈黙した。


「お忙しい時に、紛らわしい訪問を申し訳ありません。先程もギルドへ伺った際に侯爵家の者と勘違いさせてしまって・・・ハッハッハ」


「あ、いえ・・・寧ろ暇だったのが・・・」


「その右足は黒い革靴で、左足は小さな白いサンダルは、ファッションなのでしょうか?」


 気付いてても聞いたちゃダメだよ・・・


『えっ?どうしてよ?』


 あとで、説明するよ。


「おぉ~ぉっ!あいやいや、これは失礼しました。通りで足が痛い訳だぁ!」


「そうですよね。ハッハッハ・・・」


「ところで、士爵様は、奴隷をお探しなのですか?」


「あっ。俺は士爵ではないので、ロイクで良いです」


「うん?」


 男は、御者のおじさんへ鋭い視線を向けた。


「え、あ、・・・はい。言い間違えました。ですぜ。シャレット士爵家のロイク様と奥様のマルアスピー様ですぜ」


「・・・まぁ~良いでしょう。・・・シャレット家と聞くと、最初に思い浮かぶのは、トミーサス大行進の英雄バイル殿だったもので、君がシャレット士爵だと、この者に紹介され、おかしいと感じていました」


「父を知ってるんですか?」


「バイル殿は、トミーサス大行進の英雄であり、リリスの英雄。コルトの希望。セルフォーラの強奪者。マルアスピーの無責任男・・・・・・・・・他にも聞くかい?」


「何かダメな呼び名が並びそうなので止めておきます」


「ハッハッハ・・・しかし、あのバイル殿の息子さんですか・・・」


「はぁ~あのバイルの息子です・・・」


義理の御父様(おとうさま)は、ロイクよりも有名なのね』


 何やったんだか・・・


『英雄で、希望で、強奪者で、無責任男みたいね・・・』


 トミーサスの大行進の功績で士爵位を叙勲されたのは知ってたんだけどね。


「で、バイル殿の息子さんが・・・えぇ~ロイク殿が奴隷商に何の何の御用でしょうか?」


 神様の指示ですって言えないし・・・理由なんて考えて無かったよ・・・


「先程、バートリー・パマリ次期侯爵夫人にお会いしたのですが、コルト町の奴隷商家の出だとお聞きしたもので、今日の夕食会の際に話に花が咲けばと・・・」


 夕食会の時の話題にこれ?


『何でも良いのよ』


「なるほど。それでは、店を案内致しましょう。家は奴隷を幅広く取り扱っています。試しに奴隷達を見て行かれますか?」


「・・・」


「ロイク、見て行きましょうよ」


 急に元気になったみたいだけど、どうしたんですか?


『自ら進んで奴隷になる人間種を見てみたいのよ』


「それでは、どうぞ」


「ロイク様、奥様。私は店の前でお待ちしています。パマリ侯爵家の大切な御客様です。宜しくお願いしますぜ」


「分かっているよ」


「オーナー。私は商品を準備してきます。全員で良いですか?」


「全員を見るのは無理だと思うぞ。お前の売り込み次第で未来を手に入れられる者がいるかもしれんがな」



 

――― 奴隷商の店の中


「ようこそ、いらっしゃいました。ここが、コルト町の奴隷契約斡旋解放手続所。ドック奴隷商会の応接室兼受付です」


『奴隷を扱うお店なのだから、もっと暗い所を想像していたました』


 侯爵邸の執務室より立派だね・・・


 俺達が通されたドック奴隷商会の応接室は、木を基調とした温もりのある60平方m程の長方形の部屋で、床全面にフカフカの赤い絨毯が敷かれ、等間隔に配置された台の上には高価な壺や彫刻が1つずつ置かれ、壁には鏡と絵画が交互に掛けられ、天井には光魔術が施された魔導具が埋め込まれていて、夜の星空の様な神秘的な空間を演出していた。


「少し暗いと思いますが仕様です。契約が成立しやすいんですよ」


「そういうもんなんですね」


「はい。暗いと良く見えませんか。ハハハ」


『凄いわね・・・良く見もしないで、人を売買するのね』


 そうだね・・・


「あっ!ここは暗いですけど、契約する部屋は明るいのでご安心ください。書類の作成もありますが、容姿や特徴やスキル確認の必要がありますからね」


『ふ~ん』


「それで、ここは、話の種になりそうですか?」


「そうですね・・・侯爵邸の執務室よりも温もりを感じる豪華な応接室と言った話位なら」


「ハッハッハ。執務室は政治や司法や軍事の為の部屋ですから、温もりよりも凛としていた方が良いのでしょう。ここは、商売が目的です。それに、彼等の未来が左右される運命を紡ぐ場所ですから、この位が調度良いと私は考えています。・・・おっと、偉そうに語ってしまいましたね。さて、用途別に奴隷を見て周りますか?それとも、この部屋の中央の台。お立ち台に奴隷を呼び紹介しましょうか?」


「普通は皆さんどちらで契約を進めるんですか?」


「そうですねぇ~。奴隷を必要とする方は、ある程度財力に余裕があります。ですが、仕事に追われ忙しい方が多い様です。直々に契約を進める方は、この部屋で納得するまでゆっくり確認し、その後契約の部屋へ移動される場合が多いですね。代理を立て契約を進める方は、目的の奴隷を短時間で見て周り契約を済ませる場合が多いです」


『人間種って多種多様よね』


「なるほどねぇ~」


「因みに、夕食会までに何かご予定はありますか?」


 神様の予定表だと確か、18:30までに人助けだったよね?


『救援だったかしら・・・』


 現在の時刻は?


≪現在16:43です。


「特に急ぎの用事はありません」


「それでしたら、話の種になるか分かりませんが、家の売り込み方を是非体験してください。勿論、あくまでも体験ですので、契約の必要はありません」


 ドックさんは、机の上に設置された1・2・3・4・5・6のボタンの中から1を押した。


≪ブー


≪バタン


 俺達が座るソファーは中央の台、お立ち台の正面にある。その台の反対側部屋の奥のドアが開くと、奴隷達がお立ち台へと続く木の板の上を歩いて来て台の上に整列した。


「こうやって、応接室の椅子に腰掛けながら、奴隷達を見るのは久しぶりです」


「そうなんですか?」


「今日は偶然。暇だったもので・・・」


「本日は、ドック奴隷商会へおこしいただきまして誠にありがとうございます。気になる奴隷がいましたら胸元にあります番号を担当の者に伝えてください」


「彼等は?」


「彼等は犯罪者奴隷です」


「・・・凶悪犯罪で奴隷になった人も売り買いされるんですか?」


「奴隷と付く物なら何でも扱うのが家の方針です。君達、舌を出してくれ」


 ドックさんの指示に従い奴隷達は舌を出した。彼等の舌には、魔法陣が描かれていた。


「もう良いよ」


「あれは?」


「強制奴隷を見た事が無い様だね」


「村にも、領主家の専従奴隷はいましたが、余り会う機会が無くて・・・」


「強制奴隷達は、通常地区への出入りが原則禁止されていますから、会う機会が少ないですからね」


「舌にあった魔法陣は何ですか?」


「あれこそが、奴隷の証拠です。契約奴隷であれば、契約書に同じような魔法陣を施し誓約し身分カードに状況とオーナーを反映させます。強制奴隷であればあの様に舌に魔法陣を施し誓約を課し身分カードに反映させオーナーが身分カードを所持します」


「誓約ですか?」


「はい。そうです。オーナーの命令に従う誓い、その生命を奪えない誓い、不利益になる行為を行わない誓い、とかですね」


「へぇ~・・・誓約を破るとどうなるのですか?」


 興味があるんですか?


『興味はあるわよ。だって、面白いもの!』


「破る事は難しいです。けして破れない訳では無いのですが、そうですねぇ~・・・後で、好きな物を食べさせてあげます。誰か1人こっちに来なさい」


 ドックさんは、奴隷達に指示を出した。奴隷達は互いに顔色を伺うだけで、誰も名乗りを上げない。


「そうだったね。1番。喋る許可を与える」


「ありがとうございます」


『へぇ~』


 ・・・なるほどね。


「2番どうする?」


 2番は首を横に振った。


「3番。お前は?」


 3番も拒否した様だ。



『15番はどうする?」


 彼もまた首を横に振った。


「おや・・・流石に誰も居ませんでしたね」


「あの・・・何をするつもりだったんですか?」


「破った者がどうなるのか、見ていただいた方が早いと思いまして」


『うんうん。楽しみね・・・』


 マルアスピー様の瞳はキラキラと輝いている。


「いったい、どうなるんですか?」


≪カンカン カンカン


 ドックさんが、6番のボタンを押した様だ。


「はい。オーナー」


「君、誓約違反した時の奴隷の真似してみてよ」


「え?」


「行くよ」


「え?な、何をでしょうか?」


「私の顔を軽くビンタして違反した時の真似するだけです。はいやって・・・」


「え?え?アワアワアワアワ・・・」


「ホラ、早くぅ~・・・解雇されても良いのかな?」


「分かりましたぁ!」


≪バァッ ・・・ チッィ―――ン


「ヘブゥッ」


≪ゴン ボト


 ドック(63)さんは、腰掛けるソファーの背凭れを越え絨毯が敷き詰められた床に転がった。


「イテテテテテ・・・アガアガガガガ軽くって言ったでしょう・・・痛いよぉ!」


「アハハハハ。オーナー」


『ここもお笑い広場ってところだったのね』


「本気でぶっただろう・・・痛いだろうがぁ!」


「ぶたないとクビって言われて仕方なくです」



――― 17:20


「お客様と奴隷達の前で御見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ありませんでした」


「いえ・・・」


『この町は面白い人が本当に多いわよね。立ち寄ってよかったわ・・・ねぇロイク!


 はぁ~


「結局のところ、なんだったんですか?」


「仕方ありません。この手は使いたくありませんでしが、名誉挽回しておきましょう」


「1番と3番。私の前に来なさい」


 顔を見合わせる奴隷2人。


「この2人は、鉱山都市ロイからコルト町にかけて、王道中央街道で悪さを繰り返していた盗賊達の中心だったそうです。王都からコルト町へ移動中の、騎士団に所属し活躍されているジェルマン・パマリ子爵様の一行を襲い返り討ちに合い、コルト町に連行され罪状が確定して、犯罪者奴隷になったばかりです」


「盗賊ですか・・・」


「はい、盗賊です。彼等の部下だった者が、専従奴隷の中に数人いたと思います」


「ふ~ん」


『ねぇ、ロイク。盗賊って何をする人間種なの?』


 盗賊は、小さな集落や旅人を集団で襲って、強盗や強姦や殺人を平気で行う悪い人達の事だよ。


『ふ~ん。人間種達が日常的にやっている事の様に思えるのだけれど・・・』


 似た事をやっている人はいるかもしれないけど、盗賊は悪い人達なんだ。


『そっか』


 奴隷の2人は、ドックさんの前に整列した。


「これは、ペーパーナイフだから殺傷力は無い。3番にこれを貸そう。受け取りなさい。ホラッ」


 3番の番号を付けた奴隷は、渋々ナイフを手に取った。


「1番を刺しなさい」


「え?」


「ロイク殿。大丈夫です。死にはしませんから見ていてください。やりなさい」


 3番は命令に従う制約のせいだろうか、拒絶の表情をしながらも1番の腕にナイフを突き出し刺そうとした。次の瞬間だった。3番は泡を吹き出し床に崩れ落ちた。


「こんな感じです」


「気絶してますよ」


「はい、気絶します」


「頬を叩かせて、気絶の真似をさせようとしたんですか?」


「泡は吹き出せなくても、気絶の真似事位出来ると思ったのですが・・・」


「この人・・・大丈夫なんですか?」


「今位なら、暫くしたら目を覚まします」


「命令されて逆らえずに実行して気絶って何だか切ないですね」


「オーナーやその家族に危害を加えようとすると、この気絶より悲惨な結果が待っています。加えようと悪だくみをするだけでです。凶悪犯罪で奴隷になった犯罪者奴隷は、この制約の魔術による管理の下で安全に運用されています」


『ふ~ん』


≪ブッブー


 ドックさんは、2番のボタンを押す。奴隷達は入って来たドアへと移動し部屋を後にした。


「気絶した3番はどうするんですか?」


≪カンカン カンカン


「邪魔だから運ばせよう」


 6番は、社員を呼ぶ合図みたいだ。


「彼を医務室に運んでくれ。それと、彼は明日の朝までリフレッシュルームに。食事は朝食まで我々と同じ物で構わないよ。夕食は望む物を食べさせてあげてくれ」


 3番は、社員に運ばれて行った。


「さて、ここからが、奴隷商の本領発揮なのです。奴隷商は、刑が確定した奴隷を国に代わり管理していますが、本業は奴隷やオーナーとの契約更新解除斡旋です。でわ」


≪ブー


 ドアが開き板の上を奴隷達がお立ち台へと歩いて来る。



『あらぁ~』


 なんだよ・・・


 マルスピー様はニヤニヤししながら俺を見つめる。


『だってぇ~・・・ホラ・・・薄着の女性がいっぱいだからぁ~・・・乳首だって透けて見えてるしぃ~いつもみたいに見て良いのよっ!』


 あのねぇ~


「彼女達は、契約奴隷です。男性の契約奴隷も居ますが、犯罪者奴隷を見た後ですので、あえて女性だけにしました」


「・・・お気遣いありがとうございます」


「彼女達と商会は、条件が合えば契約を交わします。税金の関係上、奴隷として扱われてしまいますが、この契約は労働専従期間を決め立替え金の完済を目的としています。そして、返済期間中であっても賃金を受け取る権利を彼等は持っています。つまり雇用と余り変わらないと言う事です」


「銀行や商人ギルドからお金を借りた方が、奴隷になるより良くないですか?」


「それも1つの手段ですが、借金だらけの人や、担保の無い人が銀行から投資を受けるのは非常に難しいと思います」


「確かに・・・」


「奴隷商は、そんな彼等の能力や可能性を担保にし資金を立て替えます。家の商会は、健康が1番の条件です。例えば、3番の彼女は、母親が重い病にかかり原因も分からず衰弱。良い医者や魔術師に診せた方が良いと教会に薦められたそうですが、診て貰うにもお金がありませんでした。彼女の父親は彼女が物心つく前に他界。商会に彼女が来たのは2・3日前です。彼女の身の上は別として、彼女の可能性を考慮し契約を交わしました。商会は彼女の母親を、70Km程離れた集落からコルトへ移動させ、コルトの病院に入院させました。商会が立て替えた金額は30万NLです。仮に彼女とロイク殿が契約を交わすとしましょう。本来は立替えた金額は開示しません。ですが、今は30万NLを基準に試算します。ドック奴隷商会は、立替えた金額に約5割です。契約した奴隷達が無事にオーナーと契約を交わすまでの教育費や健康維持費が含まれています」


「それだと、契約が決まらずに商会に居続ける奴隷の値段が上がり続けませんか?」


「条件が合えば契約を交わすというのはその為です。奴隷商はサービス業ではありません。能力や可能性を一応見極めています。それでも、オーナーが見つからない契約奴隷も中にはいます。家の場合は、契約を交わしてから3ヶ月経過してもオーナーが見つからない契約奴隷は、王都で定期的に行われる契約奴隷オークションに出品するようにしています。コルトでは需要が無くても王都や他の地では需要がある場合がありますからね」


「なるほど・・・それでもオーナーが見つからない場合はどうするんですか?」


「そうはなりたくありませんが、オークションでもダメな場合もあります。完全に商会の判断ミスだった事になります。コルトに戻しドック奴隷商会やその関係先で働いて貰います。通常より奴隷期間は長くなってしまいますが、仕方のない事です。ただ、働いている時に運良くオーナーが見つかる場合もありますから・・・後は、彼等や彼女達が契約した際の条件を見直すとかでしょうかね。そして、彼女はまだ商会と契約して日が浅く教育も維持費もほぼかかっていません。本来なら45万NLに税金と手続き費用で、50万NL強ですが、今なら税金も手続き費用も。しかもドック奴隷商会名誉会員カードをお付けして30万NLです。さぁ~どうですか?」


「はぁ~・・・」


「分かったわ。買った!」


 はい?


「お買い上げありがとうございます。っと、言った感じで奴隷商は商売している訳です」


 ビックリした。


『とってもお買い得だと思ったのに残念』


 本気だったんですか?


『当然よ。あの子の魔力』


 ん?


『その瞳は飾りじゃないのよ。神眼なのよ。いい加減諦めて物事をありのまま受け入れてみたらどうですか?マルアスピー村もコルト町も違って見えるわよ』


 それはそのうちって事で。彼女の魔力かぁ~。


 俺は、ON/OFFの切り替えが出来ない【神眼・万物限定】の視認を意図的に意識しない様に努力していた。


 そうだよ。連絡をしてくれって神様に言われてる訳だし、このスキルの使い勝手を神様にお願いしてみるのはありだよ。何を届ければ良いか悩んでいたけどスキル改善に貢献する訳だし問題ないよね・・・


『個人的な願いにも聞こえるけれど・・・フフフッ。見えると困るって、不思議な話ね。理解し合えず争う人間種達の中でも、ロイク。貴方はやっぱり変わっている。だから好きよ・・・フフフッ』


 はいはい。ありがとうございます。俺は人間としては変わってるのかもしれませんね・・・まずは、神眼で彼女を確認してみるか・・・



***3番の情報***


 【名前】パフ・レイジィー【性別】女

 【種族】人間族 【個体レベル】1

 【生年月日】R4059年3月24日

 【年齢】16歳 【血液型】O型

 【身分】王民

 【階級】一般

 【虹彩】シュベーフェル

 【髪色】サンダン

 【髪型】ロング

 【身長】157cm

 【体重】スリム

 【利腕】右


 【B】75【W】56【H】76


 【状態】呪い継承【2/4】

 

 【JOB・本職】未設定


 【JOB・inh】

  BT:【神官(巫女)(メディウム)】レベル1

  ≪父系・inh≫

 【JOB・inh】

  NBT:【商人・書籍屋(リブレリー)】レベル1

  ≪母系・inh≫


 ≪ステータス値≫


 【HP】31

 【MP】156

 【STR】14

 【DEX】51

 【VIT】16

 【AGI】39

 【INT】42

 【MND】46

 【LUK】9


***3番の説明おわり***


「呪い?・・・」


 俺が、『呪い』と口にした時、ドックさんの表情が一瞬変わったのを俺は見逃さなかった。


『【MP】が異常に高いわよね?・・・うん、呪いがどうかしたの?』


 3番の子だけど、呪い継承とかって見えてるから・・・


『あら、本当ね。呪いの継承って何かしら?』


「・・・やはり、トミーサスの英雄バイル殿の息子で、マルアスピーの英雄ロイク殿。コルト大聖堂開かずの悲恋扉を開けし者。領主館も貴族領軍詰所も冒険者探検家協会も慌ただしくしている様子。何か、3番にはあるのですね?」


『この人間種知っていた様ね』


 そうみたいですね。どうしましょう?


『良い事をするだけよ』


 ・・・


「ドックさん。3番のパフって子ですが」


「え?知り合い?・・・いやそんな事はないか・・・どうして名前を?」


「あとで、説明します。今はそれよりも、呪いについて話ます」


「あ~はい」


「彼女は、呪い継承という状態異常にあるようです」


「聞いた事が無いですな」


「はい。俺も聞いた事がありません。ですが、呪いにかかっている事は間違い無い様です」


「なるほど・・・彼女は教会に出入りしていたはずですが、誰も呪いに気付かなかったのでしょうか?」


「俺は16歳の誕生日の日と、今日の2回しか教会に行った事がありませんが、正直なところ教会その物に何か力があるとは思えませんでした。大神官長様や助祭長様は力を隠している様でしたが・・・」


「なるほど。ロイク殿なら彼女をどうしますか?」


「そうですね。詳しく調べない事には何とも」


『買ってしまいましょうよ』


 簡単に言わないでください。俺は奴隷は買いませんから。


『奴隷って言っても、奴隷じゃ無いのでしょう?』


 そうみたいですね・・・


『なら、人助けだと思って買ってしまいましょう!ねぇ~ロイク』


 先に呪い継承を調べます。可視化。検索『状態異常・呪い継承』


≪・・・・・・該当するデータはありません。


 え?


『あら。どうするの?』


 う~ん・・・


「ドックさん。彼女以外は戻して貰って、彼女から直接話を聞いても良いでしょうか?」


「構いませんよ」


≪ブッブー


「3番・・・あ、いや。パフはこっちに来なさい」


 パフ・レイジィーは、お立ち台から降りると、俺達が座るソファーの前で立ち止まり一礼した。


「パフ。こちらの方は、シャレット士爵家のロイク様とマルアスピー様です。この部屋を出るまでの間、発言の自由を許す。御挨拶しなさい」


「はい。オーナー様。パフと申します。ロイク様にマルアスピー様、宜しくお願いします」


「宜しく」


『良い子だと思うわよ。顔立ちはまだ幼いけれど・・・』


 何の話をしてるんですか?


『この子の話よ』


 ・・・


「パフ。ロイク様は、お前に呪い継承という状態異常があると指摘しておられる。本来ならば、聞いた事も無い状態異常の話など戯言と切り捨てるところだが、この方はコルト大聖堂の開かずの扉を易々と開けたお方でな」


「あの、何千年も開かずのままの正門扉をですか?」


「そうだ。しかも今朝だ・・・」


「私に呪いがかけられているのですか?」


「分からん。それを今からロイク様が確かめる。お前が嫌なら断っても良い」


「お願いします」


「と、言う訳だ。良く分からないが、ロイク殿診てやってくれ」


「分かりました」


 とは言ってはみたものの・・・どうしましょう?


『私、見ているから頑張って。ロイク』


 面白がってますよね?


『そんな事無いわよ・・・』


 ・・・


「まず、ステータスを表示する物が合った方が良くないですか?俺が喋ってるだけで嘘の可能性もありますから」


「ロイク殿が嘘を付くとは思えないが・・・彼女が自分の状態を理解出来ないまま話が進むのは問題だろうな!分かった」


≪カンカン カンカン


「オーナーお呼びですか?」


「ステータス表示の魔導具を商人商家協会から借りて来てくれ。高機能の一番良い奴をだぞ」


「かしこまりました」



 現在の時間は?


≪17:43です。


 助けに行って夕食会に出席してって、神様の予定表に合わせるともう時間が無いよぉ~・・・


『フフフッ。神眼を受け入れたら?』


 だから、その話は後でお願いします。



「遅いですね」



「オーナー。借りて来ました。終わったら返してくださいとのことです」


「借りて来たか。了解了解。終わったら返しておいてくれ」


「かしこました」


「パフ。この魔導具の水晶体に手を翳しなさい」


「はい」


≪キュィ―――ン キュィ―――ン


「俺は、魔導具が情報を開示する前に、君の情報を言っていくから・・・【名前】パフ・レイジィー...」


「はい、あってます」


「...【MND】46【LUK】9。こんな感じだけどどうかな?」


「うん。間違い無い様だね。魔導具の表示とも同じだ。ロイク殿は【Évaluation】のSTATUSとSKILL両方を所持しているのかね?」


「そんな感じです」


「あのぉ~・・・私の呪い継承って何なんでしょうか?」


「さっき、俺のスキルで調べたんだけど、良く分からなかったんだよ。試したい事があるんだけど、良いかな?」


「何をするつもりですか?」


「呪いなのは確かですから、強制的に解呪します」


「私、お金払えません」


「・・・ロイク殿。彼女は母親を助ける為に既に・・・」


「お金は要らないですよ。困ってませんから」


「え?でも・・・」


「ロイク殿。解呪はランクEの呪いでも100万NL以上が相場です。これは新手の呪いの可能性もあります。王都の術師なら数千万NLかもしれません。失敗の危険もあります」


「4000年以上も原因不明だった扉を開けた俺ですよ。安心してください」


「確かに、扉は開きましたが・・・」


『どうするの?』


 オペレーションで切り取って、タブレットに保管して、時間がある時に調べようかなって思ったんだけどどう思いますか?


『・・・面白そうね。ロイクの思う様にやってごらんなさいよ』


 それじゃ


「今から、聖属性魔術で解呪をパフさんに施します。眩しだけで特に害はありません。余り凝視すると失明する恐れがありますので発光を確認したら瞼を閉じてください。ドックさんも失明しないように気を付けてください」


「分かりました」


「はい。・・・あの・・・」


「どうかしましたか?」


「お金・・・」


「本当に気にしなくて良いです。困ってませんから・・・聖属性魔術【ベネディクシヨン】発動≫」


 俺は、パフ・レイジィーさんの額の前に手を翳しながら、聖属性魔法レベル8の【サンミュール】という対象に聖属性の結界を張る魔法を発動させた。【ベネディクシヨン】って詠唱の芝居をしながら。


≪パァッ ――――――


「暫く発光が続きます。目だけは気を付けてください」


『フフフッ。聖属性の光で失明なんてありえないわよね・・・』


 さてと、【オペレーション】。パフさんの状態異常の【呪い継承】を切り取って・・・あれ?切り取れない。


『あ・な・た。頑張って!・・・無事に彼女を救う事が出来たらご褒美をあげるわよ』


 良い予感がしない、断っておこう・・・・・・結構です。


『フフフッ』


 俺のステータスの状態異常・・・ダメだ俺は状態異常にならない・・・それなら、ドックさんごめんなさい。闇属性魔法【Gift(ギフト)】発動≫。毒ごめんなさい。


「ゴファッ・・・何だ身体中が痛いぞ・・・それに息苦しく・・・あぁ~」


 【オペレーション】ドックさんの状態異常【毒】を切り取って・・・


「ゴファォッ・・・あぁ~・・・苦しい・・・くないやって、あれ?」


 【毒】をパフさんの状態異常の【呪い継承】に上書きっと、あ、出来た。


「アァゴフォッ ゲフォッ あぁ~ ・・・」


「パフ。お前もかぁ!・・・」


「ガハァッ・・・」


 でもって、この【毒】を切り取って・・・


「ゴフォッ ゴフォッ アァ~ ああれ?何とも無くなりました」


 可視化・【毒】保管


≪・・・スキル発動【毒】を保管しました。


 ふぅ~


『強制的に毒状態にして、それを切り取って、そして貼り付けで上位の状態異常にして、また切り取ったのね。面白いは・・・どうかしたの?』


 2つ気になる点があります。


『何かしら』


 1つは、【呪い継承】という呪いよりも、俺の【毒】の方が上位の状態異常だという事です。


『それがどうかしたの?』


 毒がどうして、呪いより上位なんですか・・・うまく行ったけど納得出来ません。


『仕方が無いわよ。ロイクの魔法は私達精霊よりも強力なのよ。毒って簡単に言ってしまって良い物なのか悩ましい位だわ。薬を飲めば治る様な簡単な毒とは違って、毒の呪い闇の呪い・・・』


 どうしたんですか?


『闇属性についてもう少し貴方が学んでから教えるわ』


 ・・・


『それで、もう1つは何かしら』


 呪い継承の正体が分からないまま上書きして消してしまった事です。


『あぁ~なるほど・・・気にしなくても良いのではないでしょうか?』


 どうしてですか?


『新しい呪いの方法なのでしたら、遅かれ早かれまた遭遇するでしょうし、それに・・・』


 それに?


『再発の心配をしているのでしたら、彼女を傍に置く事を提案します。安心ですね』


 彼女はニタニタと不敵な笑みを浮かべながら、俺を見つめていた。


 ・・・


「あのぉ~目を開けても良いですか?」


「ロイク殿。何がどうなってるのか説明してくれ」


「あ、もう大丈夫ですよ。解呪成功です。ただ、途中で、ドックさんに呪いの一部が転位したみたいで少し焦りました」


「あ、あれは、呪いだったのか・・・突然全身が熱くなり痛みに吐き気に眩暈。暫くすると震えに息苦しさが、あの一瞬だけで死を覚悟しかけた」


 そんなに・・・ごめんなさいドックさん。


『フフフッ』


 笑わないでくださいよ。


「オーナー・・・すみません。私のせいで・・・」


「いや、良いんだ。しかし、君はあの呪いに耐えていたのか・・・ロイク殿。この呪い継承とは結局なんだたのだ?」


「強制的に解呪してしまったので、詳細は分かりません。ただ、再発の可能性を聞かれると現時点では何ともお答え出来ません」


「こんな呪いに耐えながら、親の為に・・・」


 それは、俺の魔法の毒だったんです。ごめんなさい。


「私はこう見えて、駆け出しの奴隷商人だった頃は、非戦闘型にも関わらず身体を張って仕事をクリアし呪いや状態異常に何度もなった。この呪いは私が今まで経験した中でもかなり強力な物なんだと思う。あの一瞬で私から生きる気力を取り除き死を決意させたのだ。私の解呪まで無料という訳にはいかん。彼女は困っていた。そして金が無い。ロイク殿は金に困ってはいないが、世間に疎い。私は金にも困っていない。世間の事もロイク殿よりは詳しい。そして、助けられた。それが解呪中のトバッチリだったとしてもだ」


『う~ん?』


 あれ、呪いじゃなくて毒だったんだけど。言った方が良いかな?


『勝手に納得して話を進めてる訳だし、見ていたら?面白いし』


 ・・・


「そうだな。この呪いの解呪はきっと2・3000万NL以上だろう」


「そ、そんなに高い・・・あ、あ あぁ・・・私・・・」


『親子よね・・・お金を中心にして物事を判断する所なんかそっくりね』


 ドックさんのお金に対する考え方は嫌いじゃありませんが、さっきの次期侯爵夫人の様な意地汚い感じは好きになれないです。


『・・・確かに、少し違うのかもしれないわね・・・人間種は難しいわ』


「こうしよう。ロイク殿」


「え?こうしようって何をでしょうか?」


「ロイク殿は、私が支払うと言っても金を受け取ってくれる気は無いだろう?」


「はい」


 あれ・・・俺のせいだし・・・


「商会=私が持っているパフの契約の権利を譲る。パフは、ロイク殿の為に働けるのだから恩返しと並行しながら、契約期間満了まで契約奴隷として尽くせば良い。ただこれでは、1970万~2970万NL私だけが得している事になってしまう。どうしたものか・・・」


「私は、ロイク様とマルアスピー様のお傍で働きたいです」


「そうか・・・そうしよう。」


≪ジャジャジャジャーン


 あ、5番だ。


「本日は、契約ありがとうございます。あれ?オーナー自ら接客で契約成立ですか?・・・」


「何か、文句でもあるのかな?」


「そういう意味では・・・」


「契約室に、紙と魔導具のペンと、パフ。それと、例の××を2××頼む」


「・・・オーナー。宜しいのですか?」


「あぁ~。この英雄殿なら、問題ないさ」


『面白くなってきたわね』


 嫌な予感しかしないです。


『フフフッ』


「それでは、契約の部屋に移動しましょう。契約は直ぐ終わります」



――― ドック奴隷商会 契約の部屋


「準備が整う前に、簡単に説明します」


「はぁ~・・・」


「ロイク殿、彼女と私を救っていただきありがとうございました。彼女を奴隷だと思わず期間限定で雇ったメイドとでも思ってください」


「さっきの人・・・彼女の契約期間はどの位なのかしら?」


「彼女は、一週間10日の内6日間の労働。1日3食と快適な睡眠と清潔な環境。1日約4800NLの収入計算で彼女に手渡す賃金はそこから800NLだ。一週間の労働で彼女が返済した事になる金額は、24000NL。一ヶ月で72000NL。4ヶ月で、288000NL。この時点で、彼女の手元に手渡し分の金が手付かずで残っている場合57600NLある訳だ。そこから12000NLをロイク殿に渡すと契約書は自動的に効力を失うって訳だ。ただこれは、衣食住の代金を何も差し引かない状態での話で、実際は宿代や食事代や税金が発生するので、約2倍~3倍の期間つまり、彼女のは場合は1年以内に契約満了といったところだろう」


「契約書を勝手に書き換えたりは出来ないのかしら?」


「先程お見せしましたが、誓約の魔術が施されています。許可を得た奴隷商が扱うスキル以外で契約書に手を加える事は奴隷達を危険に晒す事になります」


『なるほどね。うまくできてるわね』


 ・・・凄い食い付きですね・・・


『面白いじゃない』


≪コンコン


「オーナー準備が整いました」


「入りなさい」


≪ガチャ


「失礼します。さぁ~貴方達も入りなさい」


 達も?


「オーナー。契約書類です。私は同席しなくてよろしいのですよね?」


「そうだ。魔導具を商人商家協会に返しておいてくれ」


「かしこまりました。それでは、失礼します」


「ドア、閉めていってよ」


「はい」


≪バタン


「あのぉ~この2人は・・・?」


「お気付きになられましたか」


「目の前に居ますからね」


『プププ』


 気付かない方がおかしいだろう・・・


「改めて紹介させていただきます。こちらの子はパフ。その隣の子がミミ。そして、隣の子がララです」


「・・・そういう意味じゃないです。パフさんだけの話で進んでましたよね?」


「あぁ~・・・パフだけで良いと?」


「はい」


「分かりました。お前達は下がっていなさい」


≪ガチャ


 二人は軽く会釈をすると部屋を後にした。


≪バタン


『あらぁ~・・・』


 どうしたんですか?


『だってぇ~彼女との契約はするってロイクが断言したものだからぁ~』


 あ・・・


「さて、後は、ロイク殿を彼女のオーナーであると身分カードに反映させるだけです。身分カードを出していただけますか?」


「・・・」


『あら?』


「・・・それが、持ってないんです」


「え?身分カードですよ!・・・」


「はい」


「・・・分かりました。今は契約書とパフの身分カードにだけ反映させて、ロイク殿の身分カードには後日反映させるという事にしましょう」


「すみません・・・」


「いえいえ。パフ、身分カードを出して」


「はい。お願いします」


 パフ・レイジィーは、ドックさんに身分カードを差し出した。


「それでは、【エスクラリエーヴ】」


 身分カードが微かに光った。


「見せてください。・・・・・・完了ですね。ロイク殿も確認してください」


「あ、はい・・・」


***パフの身分カードの説明***


【身分】王民【階級】契約奴隷

【雇い主】ロイク・シャレット


***説明おわり*********


「契約書をお渡しします。無くした際は、お近くの奴隷商で簡易契約書になってしまいますが、発行して貰えます。有料です。契約書を作成したり更新した奴隷商ででしたら無料になります。それでは、宜しくお願いします。パフ頑張るんだぞ」


「はい。オーナー」


「オーナーはロイク殿だろう。私はもうオーナーではないのだから、ドックで構わないよ」


「はい。ドックさん」


≪パンパン


「ロイク殿がお帰りだ。馬車を商会の裏にまわす様に御者に伝えなさい」


「はい」



『フフフッ』


「ロイク様。マルアスピー様。頑張りますので、宜しくお願いします」


「宜しくね!パフちゃん」


「はい」


『ホラ、きちんと挨拶なさい』


 ・・・


「宜しくお願いします」


「はい」


『良かったわね』


 何がですか?


『だって、女の子よ・・・それに、無事に助ける事が出来たらご褒美って言ったでしょう?』


 ・・・ 結構です。


『遠慮しなくて良いのよぉ~。夫婦なのだからぁ~』


 ・・・


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