3-32 スタンピード・アンデットの日⑤~神授は嵐の予感~
リーファ歴4075年8月14日、火の日。
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会話の中に気になるワードが幾つかあったが、最優先はアンデットの殲滅。俺達は、サラさんにフル支援を施した。
そして、上空10mへと移動し殲滅の様子を確認。
サラさんは、フォルティーナの神具【モントルアプレ】に付与された聖属性の回復治癒下級魔術【天使の輪】を、木の枝からアンデットに施していた。
「回復魔術は、アンデットにとって有効な攻撃手段だったのですね」
「そ、そうみたいですね。この様な使い方があったなんて・・・」
カトリーヌさんとメリアさんは、驚嘆しながらも冷静に分析している様だった。
「もしかしてですが、清澄属性じゃなくても各属性の回復治癒魔術や魔法を施せば、アンデットに関しては浄化昇天出来るとか・・・」
「「その可能性は高いです」」
メリアさんとカトリーヌさん2人の声が重なった。
「俺は清澄属性なんで、どの属性で攻撃しても回復させても浄化昇天させてしまうので、実験は2人にお願いします」
「「はい」」
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結果は......
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≪アンデットに対する回復魔術の効果≫
①フォルティーナの神具【モントルアプレ】
※俺の神授スキルによって強化された神具※
神授スキル聖属性下級魔術【天使の輪】
※【MP】消費25で【HP】回復100。固定※
※アンデットに対しては、回復500※
【天使の輪】の効果
①アンデット化したエルフ族
→ 1回で浄化昇天
②アンデット化したそんまさる
→ 4回から10回以上で浄化昇天
③アンデット化したその他
→ 1回から24回で浄化昇天
※アンデット化したハイオルムは、
→ 24回目にして浄化昇天※
【各属性の回復治癒魔術】の効果
①地属性 威力=効果は100%
②水属性 威力=効果は100%
③火属性 威力=効果は300%
④風属性 威力=効果は100%
⑤聖属性 威力=効果は500%
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......予想通りだった。タブレットによると、光属性の威力は火属性と同じ300%になるそうだ。
「「ロイク様・・・」」
メリアさんとカトリーヌさんの視線が俺に集まる。
「どうかしましたか?」
「「実験しなくても、タブレットで全て・・・」」
「あっ!!」
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その後、グレードアップした神授スキル【レソンネ】で、今回の殲滅戦に参加している【モントルアプレ】を所持する良き理解者皆に、モントルアプレの念話機能にアクセスして、浄化昇天の画期的な方法を緊急連絡した。
【MP】の消費を考慮すると、俺の家族や眷属以外は、回復魔術や魔法の連発は難しいかもしれない。
そんな時だった。工房ロイスピーの【MP】回復商品を応援組の皆さんに配ってみてはどうだろうか。と、閃いた。
・・・・・・マルアスピーの事は言えないなと、思った瞬間でした。
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メリアさんとカトリーヌさんと俺は、アリスさんと合流した。
「創神具【クロワールの弓】に付与されている神授スキル【シールド】と火属性特化のコンボですか」
「えぇそうよ。私って、魔術や特化攻撃が苦手でしょう。的との距離によっては火属性を付加しても意味が無いのよねぇ~」
「それで、矢の周囲をシールドで覆ってから射ってたんですか」
このやり方なら、射抜くまでの短い時間であれば、自然の力の循環から矢を遮断出来る。確かにそれなら、付加された火属性は他の属性から干渉を受けず矢に留まっていられるのか。
「今はまだ300mが限界ってところね」
「えっ?・・・アリスさん。まさかですけど、風の防御壁で覆ったまま300mも矢を飛ばせるのですか?」
「風属性を300mも離れた場所で維持出来るのですかぁっ!?」
メリアさんとカトリーヌさんは、驚きの余り声を張り上げた。
「そうなのよ。300mを越えた辺りで、シールドが消えて火属性の付加もそのまま消えちゃうのよ」
どうやら凄い事をやっている自覚がアリスさんにはない様だ。
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「アリスさんは、人間離れしたとても凄い事をやっているのですが、・・・【MP】を風属性の自然魔素に変換し神授スキルシールドを300mも離れた場所に飛ばす事が出来るのでしたら、【MP】を火属性の自然魔素に変換し矢に付加して20m以内のアンデットを射抜く位簡単に出来ると思うのですが・・・」
メリアさんの言う通りだと思う。
「それが、矢に火属性を付加すると、射抜く前に付加が消えてしまったり、矢が燃え尽きてしまったり、力の下限がどうも上手くいかないのよ」
俺と同じ現象が起こってるのか。アリスさんは、強くなり過ぎて【MP】の変換や統制が前みたいに上手くいって無いんだ。
付加その物ではなく、付加を維持させる為に、付加以外のスキルを修練したのかぁっ!・・・特化による付加が苦手だからって、修練の仕方を微妙に間違ってないか?念の為に確認しておくか。
「特化の修練もやってるんですよね?」
「最近は、離れた場所でもシールドを維持出来る様に、集中力を高める訓練ばかりやってるわね」
・・・やっぱりかぁっ!
「弓使いの性ありんすなぁ~」
「性ですか?」
メリアさんは、クーランデール・アルクヴァン様に聞き返した。
「弓矢は近距離ござりんせん。中、遠距離ありんす。弓使いの多くは魔術も弓矢同様だんす」
「中距離遠距離の魔術攻撃が得意な人が多いって事でしょうか?」
「あれ?・・・今、その弓から声が聞こえた様な・・・」
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驚くアリスさんにも、クーランデール・アルクヴァン様を紹介しました。
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その後、チームアシュのバルタザール王子とリックさん他と合流し状況を確認。工房ロイスピーの【MP】回復商品を無料で提供。
次に、チームランスのジェルマン侯爵とロレスさん他と合流し状況を確認。工房ロイスピーの【MP】回復商品を無料で提供。序に皆を巨樹の木の枝へと運んだ。
「ロイク君。ここからだと私には攻撃の手段がないのだが・・・」
確か、ジェルマン侯爵は、創神具【ホーリーリング】の付与スキル【天使の輪】と、神具【モントルアプレ】の付与スキル【天使の輪】同じスキルを所持していたはず。
「指輪は装備してますか?」
「外出する際には常に装備しているよ」
「フォルティーナのモントルアプレも持ってますよね?」
「ファルダガパオの中だがね」
「それなら、ここから天使の輪で浄化昇天をお願いします。【MP】が少なくなったら、工房ロイスピーの商品を使ってください」
「団長ぉ~!」
「どうぉ~かしたぁのかぁっ~!」
「このぉ~。チョコの菓子凄いです。【MP】が全回しました」
「また、凄い物を開発したんだね」
「まだまだ改良中です」
「ほ、本当だぁっ!これは凄い・・・チョコ菓子を食べて【MP】が8割まで回復する何て・・・」
ロレスさんにも気に入って貰えた様だ。
「ゼルフォーラ王国の元中央騎士団第3師団の皆さんは軍人とは思えない位に個々の能力が高いですよね?」
「2匹のミストラルドラゴンと19匹のフライングドラゴンの前では無力だったがね・・・」
「あっ・・・」
「ロイク君が気にする事はないよ」
それでも、流石に気になります・・・。
≪You've Got Mail
「ん!?」
創造神様からメールが届いたみたいだ。
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差出人:Mina-no-KAMIsama
宛先 :Roiku Rulin Charrette
件名 :聖騎士
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「どうしたんだい」
「創造神様から神授が届きました」
「なんとぉっ!・・・それで?」
「今、確認します」
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アンデット族の対処頑張ってるみたいだね。
殲滅作戦が終わったらで構わないから、
今回の原因を調査してみると良いよ。
さて、本題に入るとしよう。
アンデット殲滅戦に参加したロイーナと
ロイクに協力的な者達に機会を与えよう。
今から選定した者に新たなJOBを神授します。
神授JOBに転職した者は、自動的にロイクの
眷属になる事を快諾したって事にするから。
たまには、メールして欲しいな。by.創造神
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俺は、メールを確認した。・・・自動的に眷属になる事を快諾した事になるってどういう事だ?
「ロイク君。どうしたんだね?」
「・・・あ、はい。えっとですね。創造神様から今日の殲滅戦に応援として参加してくれた皆さんに神授があるそうです」
「何と。創造神様より神授をいただけるとぉっ!」
「団長。も、もし、もし、もしかして、私も創造神様より直接神授をいただけるのでしょうか・・・」
ロレスさんの表情は、喜びと緊張とが入り混じり、口元がやや引き攣っていた。
「騎士ロレス。落ち着きなさい」
「は、はぁっ~・・・・・・。えっ!?・・・そ、創、創造神様の御声がぁっ!」
「あぁ~私にも聞こえる」
ジェルマン侯爵がロレスさんを落ち着かせていると、アンデット殲滅戦の最中にも関わらず、創造神様からの神授が始まった。
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そして、神授は終わった。
俺は神眼を意識して、ジェルマン侯爵とロレスさんのステータスを確認していた。
「ジェルマン侯爵は、JOBがシュヴァリエからサンシュヴァリエになってます。ロレスさんは、JOBがエリートマージからグランマージになってます。・・・マージなので魔術師系のJOBなのは分かるんですがグランマージってどんなJOBなんですか?」
「創造神様の御話では、マジシャンの上位職エリートマージ。エリートマージの上位職パレスマージは役職的な印象が強いとの結論に至ったそうで、JOBパレスマージはJOBグランマージに置き換える事にしたそうです」
「ロレスさんは、神授JOBの1つ下のJOB旧パレスマージって事ですか?」
「はい。アシュランス王ロイク陛下に忠誠を誓い眷属として忠義を尽くし、来る日を無事乗り越えた暁には、神授JOBグレートマージを神授していただけるそうです」
自動的に眷属とか書いてたけど・・・
「アシュランス王ロイク陛下。私もサンシュヴァリエとして、忠誠を誓います」
これって、良いのかな?
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ゼルフォーラ王国とアシュランス王国間で問題になりそうな眷属の件は、1日目の殲滅作戦の後、エルドラドブランシュ宮に戻ってから慎重に協議する事になった。
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俺達は、チームワゴンのサンドラ王女とマリアさんとマクドナルド卿と合流した。
「ロイク様。創造神様から神授をいただきました」
「サンドラさんは、神授JOB剣聖ですよね」
「はい。先程いただきました神授により神授JOB魔剣聖となりました」
魔剣だけど剣聖?・・・魔だけど聖なの?
「どういったJOB何ですか?」
「剣聖の時には、聖属性の剣聖技のみでしたが、魔剣聖は剣聖技の他に無地水火風属性の魔剣技を扱えるそうです」
「属性の付加とは違うんですか?」
「違うそうです」
そうなんだ・・・。
「魔術や付加ではなく、スキルその物って事なんですかね」
「そうかもしれません。・・・それと、創造神様からはもう1つ神授をいただきました。女神フォルティーナ様の計画通り進める必要は無いそうです。来る日を無事に乗り越えた後、一月の間は私を非公認の状態にしてくれるそうです」
「それって」
「はい。その間に、人としての子をとの・・・事です・・・」
嫁や許嫁としては非公認だけど、小作りは公認って!・・・創造神様何かが間違ってるおかしいと思うのですが、俺の気のせいですよね!?
「≪『気にしない。気にしない』→ロイク≫」
あれ?・・・何か聞こえた様な・・・。
「ロイクさん。私は神授JOB弓聖になったみたいよ。それと、ロイクさんの眷属にもなったみたいなの。これから宜しくね」
「やっぱりマリアさんもですか。ジェルマン侯爵も俺の眷属になってしまったらしくて・・・」
「眷属って、言葉の意味通りの家族とは違うのよね?」
「はい。俺としては、ジェルマン侯爵もマリアさんも家族だと思ってるんですが、直の家来とか従者とかそんな感じらしいです」
「あらま。主人と私は、娘の家来にもなったのね」
「それも説明すると長くなる感じでして・・・」
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そして、1日目のアンデット殲滅戦は光の時間から闇に時間へと切り替わる15ラフン前に終了した。つまり、23時45ラフンだ。
ありがとうございました。