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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ー1ヶ月間の軌跡ー・ーアンデット編ー
156/1227

3-22 素材確認と飛行実験の日②~キスのベクトル~

リーファ(R)歴4075年8月5日、風の日。


「実に見事な安定飛行でしたぞ。サラ殿よ。はい」


「す、凄いです。人が・・・。私が・・・、宙を浮きながら移動してしまいました。し、しかも、自分自身の自然魔素(まりょく)でですぅっ!」


 サラさんは、かなり興奮しているみたいだ。


「絨毯が宙に浮く何て、わ、私夢を見ているみたいですぅっ!」


「おんや。絨毯だけではありませんぞ。はい。基本的に自然魔素(まりょく)【MP】量の条件さえ克服すれば、ここコルト下界で宙に浮けない存在は存在しませんぞ。はい」


「そうなのですか?」


「あぁ~・・・。元々浮いている物や地面を浮かばせる事は難しいでしょうなぁ~。はい。ハッハッハッハッハ」


 アランギー様は、サラさん以上に御機嫌なはずだ。実験を始める前に渡した神純度(純度100%)レミレリラス(神星石)の包丁12点セットを受け取った際、俺に対し臣下の礼をとり「生涯料理の眷属神としてお仕えしますぞぉ~。はい」と、言葉はいつもの調子だったが、その言葉は感極まり涙を流しながで聞き取り難いものだった。


「絨毯で商品化を進めるとした場合ですがぁ~。大きい分、改善点が山積しておりますなぁ~。はい」


「そうなんですよね。高度と速度の調整と落下時や停止時の衝撃吸収。衝突の回避。【MP】切れの際に緊急着地する自然魔素をどうやって組み込むかとか・・・」


「ロイク様。私、海の上で空の散歩をしてきます」



 俺は、アランギー様とサラさんと3人で、エルドラドブランシュ(王宮であり俺の家)のプライベートビーチに、アランギー様と約束した実験を行う為に来ていた。


 繊細な【MP】消費、自然魔素(まりょく)のコントロールが必要な実験である。サラさんを誘ったのは言うまでも無い。



「あっ!サラさん。それ水の上は浮かばなぁっ」


≪バシャ―――ン


「い・・・です・・・よ」


「おんや。水も滴る良い王女(おんな)ですな。はい」


「は、早く言ってくださいっ!もう、濡れてしまったではないですかぁ~」


 ワンピースが身体に張り付くサラさんはちょっと・・・何と言うか。凄かった・・・。


 凝視・・・凝視・・・。


≪パンパン


 アランギー様が、両手を右耳の横で打ち鳴らすと、海水に濡れ身体に張り付き、艶めかしい身体のライン浪漫溢れる夢や希望や可愛いお尻を鮮明に映し出していたワンピースが・・・・・・乾き・・・肌に張り付かないワンピースに戻ってしまった。


 凝視・・・。


「あっ」


「chefアランギー様。ありがとうございます」


 サラさんと視線が合う。


「ロイク様。今、あ、と聞こえたのですがぁ~フフフフフゥ~」


 サラさんは、怒ってはいないようだ。良かった。



「パトロン殿よ。改善点が1つ増えましたなぁ~。はい」


「そうですね。水溜りとか川とか海とかも考える必要がありそうです」


「水深30cm以内の水面の上空は飛行可能にしましょう。はい」


「30cmですか?・・・ロイク様。どうして、海の上を飛べる様に創造しなかったのですか?」


「川とか湖とか海とか城や宮殿の堀の上空を飛行移動出来るのは警備防犯上問題があるだろうって、chefアランギー様とさっき話し合った時にまとまりまして」


「あぁ~なるほど。そうですわね。・・・・・・でも実際は、海の上でも飛行は可能という事ですよね?」


「おんや。その通りですぞ。はい。自然魔素【MP】さえ条件を満たしていればの話ですが。ただ、私が考えていた以上に【MP】の消費が多い様ですからなぁ~。・・・・・・名案が1つ・・・良い解決策を見つけましたぞ。ロイスピー商品をがぶ飲みしながら飛行移動するのです。はい」


 それって、解決策って言えない気がしますが・・・。


「そこまでして飛行移動しますかね?」


「パトロン殿よ。先程のサラ殿の優雅な一時を見て思いませんでしたかな?良いですか。古来より人は宙を飛ぶ鳥やドラゴン()種を見て、飛行移動する事に憧れを抱き、何人かはその憧れを現実の物にして来ました。ですが、多くの存在は叶わぬ夢と諦めて来たはずなのです。はい」


「まぁ~確かに、宙というか空を自由に飛べたら良いなって思った事が無いかと言われたら。ありますが・・・」


「ずばり、その通りですぞ。はい。先程からの飛行データを私なりに計算したところ、自然魔素【MP】消費の効率と、販売価格を考えますにぃ~・・・。それとですなぁ~。アシュランスカードに免許システム。空飛ぶシリーズにカードをセットするシステム。2つのシステムを準備しましょう。はい」


「アシュランスカードに拘りますね」


「当然ですぞぉ~。これにより、うっかりの【MP】切れによる墜落を防止出来ます。アシュランスカードに蓄積されている【MP】が300を切ってる時には飛行移動出来ない様にするだけで、あ~ら不思議。意外や意外です。墜落と衝突と緊急停止の際の衝撃を回避する何かが自動発動何て感じは如何でしょうかなぁ~。はい」


「なるほど」


「免許システムは、工房ロイスピーが経営する空飛ぶシリーズの為の【運転技術試験場】で、簡単な技術を学び、簡単な試験を受け、見事試験に合格した者のアシュランスカードに、該当する空飛ぶシリーズを記憶させ許可を与える付与を施す感じで如何でしょう。はい。ロイスピーが責任を持って管理するべきでしょうなぁ~。箒や板や棒や絨毯の採寸に応じた許可を与える事で、【MP】が不足した存在が誤って操縦する事を未然に防ぐ事が可能かと・・・」


「chefアランギー様。箒や板や棒も空飛ぶシリーズとして、ロイスピーで売り出すご予定なのでしょうか?」


「おんや。サラ殿よ。良い質問ですなぁ~。私としては絨毯だけでも良いと考えているのですが、ついラインナップの充実を考えてしまうと、他にもあった方が良いのではないかと考えてしまう訳です。はい」


「取り合えず、今は絨毯を商品化する事で話を進めませんか?」


「そうですなぁ~。それが宜しいでしょうなぁ~。はい」


「私も、絨毯で世界の反響を見てからの方が良いと思います」


「おんや。世界ですかぁっ!・・・う~ん。お金の臭いがプンプンしますぞぉ~。はい」


 神様とか精霊様って、実は結構お金とか金目の物が好きですよね・・・。



「それでは、先程からの実験データを基に今後の方針を決めましょう。まずはですなぁ~。サラ殿が先程座っていた絨毯からです。採寸は200cm×200cmで、1人から6人が同時に座り移動する事が可能です......


***********************


 ≪空飛ぶ絨毯の実験結果≫ 協力者:サラ王女


【絨毯の採寸】 200cm×200cm

【高度】          30cm

【飛行時間】        12ラフン()

【飛行距離】       330m

【消費MP】        200

【移動速度】      1.65Km/h


【絨毯の採寸】 200cm×200cm

【高度】          60cm

【飛行時間】        12ラフン()

【飛行距離】       330m

【消費MP】        220

【移動速度】      1.65Km/h


【絨毯の採寸】 200cm×200cm

【高度】          90cm

【飛行時間】        12ラフン()

【飛行距離】       330m

【消費MP】        240

【移動速度】      1.65Km/h



【絨毯の採寸】 200cm×200cm

【高度】         480cm

【飛行時間】        12ラフン()

【飛行距離】         8Km

【消費MP】      12000

【移動速度】        40Km/h


―――


【絨毯の採寸】   60cm×60cm

【高度】          30cm

【飛行時間】        12ラフン()

【飛行距離】       330m

【移動速度】      1.65Km/h

【消費MP】         18


【飛行距離】         4Km

【移動速度】        20Km/h

【消費MP】        216


【飛行距離】         8Km

【移動速度】        40Km/h

【消費MP】        432


―――


【絨毯の採寸】   60cm×60cm

【高度】          60cm

【飛行時間】        12ラフン()

【飛行距離】       330m

【移動速度】      1.65Km/h

【消費MP】         20


【飛行距離】         4Km

【移動速度】        20Km/h

【消費MP】        240


【飛行距離】         8Km

【移動速度】        40Km/h

【消費MP】        480


―――



【絨毯の採寸】  120cm×60cm

【高度】         300cm

【飛行時間】        12ラフン()

【飛行距離】         8Km

【移動速度】        40Km/h

【消費MP】       1728


―――



【絨毯の採寸】 400cm×400cm

【高度】         720cm

【飛行時間】        12ラフン()

【飛行距離】         8Km

【移動速度】        40Km/h

【消費MP】      63360  


***********************


......と、こんな感じです。絨毯の採寸が400cm×400cm。高度300cm

。1時間40Kmの速度で飛行移動する際に必要な自然魔素【MP】は、ざっと182400です。尚、1人でも2人でも3人でも消費する【MP】に変化は見られませんでしたぞ。はい」


「1時間で18万もですか・・・」


「おんや。御安心くだされ。はい。60cm×60cm。高度300cm。1時間40Kmの速度で飛行移動するのであれば、消費する【MP】は、4320です。パトロン殿の家族や眷属達であれば余裕で飛行移動が可能ですぞ。はい」


「思ったんですが、採寸60×60と120×60と200×200を工房ロイスピー新作魔導具【空飛ぶ絨毯】として通常販売して、それ以上の採寸は受注生産とかで良いんじゃないかと・・・。400×400は高度30で1時間40Kmの速度で飛行移動したとして、消費する【MP】が96000です。俺か俺の周りに居る一部の存在にしかこれは扱いきれません。販売しても意味が無いと思うんですが」


「パトロン殿に同意します」


「ロイク様。低い高度を高速で飛行移動するのは危ないと思うのですが」


「それ俺も最初に考えたんですよ。なので、さっき試作した絨毯には、次の制限を付与してあります。299cmより低い高度での飛行移動の際は、前方10mに人や物が存在する場合、移動速度が徐行(5Km)に減速し、更に2m手前で停止。因みに、300cmより高い高度での飛行移動には制限はありませんよ」



 実験は、2つの陽が沈み闇の時間になるまで続きました。



 ディナーは、プライベートビーチに家族を集め、空飛ぶ絨毯の上で楽しむ事になった。


「うわぁ~。本当に浮いてます」


 パフさんは、絨毯から身を乗り出し、600cm下の地面を見下ろしている。


「この空飛ぶ絨毯の小さいサイズを工房ロイスピーの新作魔導具として売り出す事にしました」


≪パチパチパチパチ


 家族や眷属達が賑やかに拍手してくれた。


≪パンパン


 アランギー様の『パンパン』を合図に、妖精のお仕事の妖精達が、400×400の絨毯の上に設置したテーブルに料理を並べる。


「如何ですかな。パトロン殿よ。360度遮る物が1つも存在しない宙に絨毯を敷き屋外でありながら恰もリビングルームの様に寛ぎながらディナーを楽しむ。素晴らしいですなぁ~。はい」


「敷くって言うか浮いてるんですけどね」


「ここからが至高ですぞ。はい」


≪パンパン


 絨毯がゆっくりと動き始める。


「chefアランギー様。微かに動いている様ですが、何をされたのですか?」


「サラ殿よ。1時間に360度回転する様にしました。料理と共に動く景色を楽しんでいただければと思います。はい」


 景色を楽しむねぇ~・・・。こんな時間に・・・?


 ディナーを堪能した後は、思い思いに空飛ぶ絨毯で楽しんだ。家族や眷属達の表情を見る限り、新作魔導具【空飛ぶ絨毯】シリーズは売れる。アランギー様と俺はそう確信した。



 寝室に移動し、ベッドに横になりながら、タブレットを操作している。成功・大成功・超成功・神成功の発生状況を確認する事にしたからだ。


(みんな)、楽しそうだったわ。宙に浮く事の何が楽しいのか分からないのだけれど、笑顔は見ていて気持ちが良かったです」


「笑顔ですか」


「えぇ」


 タブレットの画面から視線を外し、右隣に横になっているマルアスピーへ少しだけ顔を動かし視線を移す。


 マルアスピーは、タブレットの画面が気になっていた様で、唇が触れてしまいそうな程ピッタリと俺に寄り添っていた。


 タブレットの画面に集中していたせいだろう。腕に柔らかな愛と希望を今頃になって感じる。


 ・・・集中。・・・集中。


「あら?フフフッ」


 マルアスピーは、優しく微笑みながら、今より少しだけ強く腕に抱き着いた。


 俺の全神経が右腕へと集中する。研ぎ澄まされる感覚。今なら神様の声すら聞こえそうだ・・・・・・。あっ!


『おんや。パトロンロイク殿よ。何か用事ですかな。はい』


 フラグが・・・。


 済みません。空飛ぶ絨毯の事を思案していたら、間違って念話が通じてしまったみたいです。


『おんやぁ~。そうですか。私とした事がお楽しみ中のパトロン殿に無粋でしたなぁっ。はい。それでは、ボンヌレーヴ。はい』


 ・・・・・・。神様には何が何処まで見えてるんだ?


「どうかしたの」


「chefアランギー様とちょっと話を。ハハハ」


「そう。空飛ぶ絨毯の話ね」


「はい」


 嘘では無いよね・・・。



「それにしても、飛行移動での競争は盛り上がりましたね」


「そうね。以前に1度だけ見た事があるのだけれど、ヒューム(人間)属が決闘や交渉の際に行う。騎馬のレースに良く似ていたわ」


「馬上闘士決闘や乗馬競馬交渉ですね」


「呼び方は分からないわ。でも、きっとそれね」


「貴族同士や国同士の争いを回避する為に始まったらしいですよ」


「そうなのね。でも、おかしいわ」


「何がですか?」


「殺し合いが減って無いわ」


「敗者は決闘や交渉の結果に不満を持ちます。争いを回避する為に始まったかもしれませんが、今では王侯貴族の嗜みの1つでしかないんです。御伽噺で語られる馬上闘士決闘や乗馬競馬交渉は、確か【乗馬】【競馬】【闘馬】【美馬】って、娯楽に・・・・・・。あっ!そうですよ。娯楽です。マルアスピーがさっき言ったレースです」



 程無くして、アシュランス王国中で絨毯手(じゅうたんしゅ)達による競絨毯(けいじゅうたん)レースがブームになる。絨毯を操縦する絨毯手は工房ロイスピーの広報課に所属する社員として、競絨毯レースはアシュランス王国の政府直轄の機関【ARA(エーアールエー)】が管理運営する事になる。


 まだ先の話になってしまうが、競絨毯レースは国際大会が開催されるまでになる。工房ロイスピー所属の絨毯手達を中心に世界規模で人気のスポーツ兼ギャンブルとして定着。国お抱えの絨毯手や、絨毯手が貴族として取り立てられる時代の幕開けとなる。


 宮廷魔術師を兼ねる絨毯手が多い事から、士爵位を叙勲される者が多いのは当然の結果とも言えるだろう。



「競絨毯レースの事は、明日以降で良いとして、加工や分解の成功・大成功・超成功・神成功の状況を確認しないと、気になって眠れないや」


「ふ~ん」


 マルアスピーは、タブレットの画面を見ている。


「希少な金属が沢山あるわね」


「そうなんです。先日回収した銀色の水があるじゃないですか」


「えぇ」


「タブレットで自動処理させたら、回収した銀色の水の量よりも多くなってしまって。ハハハ」


「大成功以上が沢山発生したのね」


「今日、気付いたんですが、自動処理させると100%の確率で神成功になるみたいなんです」


「あら。必ず5倍って事かしら」


「はい」


「凄いわね」


「横になってから直ぐ、兵士達用に創造した外套でタブレットの自動処理機能マテリアル・クリエイト解体分解を試してみたんです。結果は、神成功。創造した時に使った素材より5倍も多く回収出来ました」


「自動の分解は神成功なのね。自動の創造はどうなのかしら?」


「今のところ全部5倍です。見てください」


 俺は、画面を切り替えた。


「タブレットの自動処理機能マテリアル・クリエイト創造・小で、神純度(純度100%)レミレリラス(神星石)を約7.7g使って刀剣を創造すると神成功で5本完成しました。完成した刀剣を5本とも分解し192.5gの神純度のレミレリラスを回収。そこから7.7g使って刀剣を創造。そして分解。これを11回繰り返し。11回目は4本だけ分解し手元に1本残しました」


「手元に刀剣が1本7.7gと素材として1971.2gのレミレリラスがあるのね」


「はい。これって良いんですかね」


「ロイクは神界の希少金属レミレリラスを素材として創造出来ます。分解で増える事と創造で増える事に、違いがあるとは思えません。私としては、どうしてそんなに軽い刀剣を創造したのかの方が疑問です」


「あぁ~。鋼を素材にした刀剣に似せて創造したら、7.7gの重さしか無かっただけです。ミスリル(魔銀石)で創造すると約100gの刀剣が完成するし、鋼で創造すると約1300gの刀剣が完成します。このままだと持つ所がないので最終的にはもう少し重くはなります」


「レミレリラスの13倍がミスリル(魔銀石)で、ミスリル(魔銀石)の13倍がスチール()だったわね」


「はい」


「凄い事なのだけれど、素材その物を創造出来るのだから、分解を繰り返す必要は無いわね」


 あっ・・・。確かにそうかぁっ!


「増える感じが楽しくて良いかもって思っていましたが、創造した方が遥かに早いし楽ですね。ハハハ」


「フフフッ」



「そうだった。万能水が5200tもあったので蛇口を捻ると、タブレットの万能水から優先的に消費される様にしておきました」


「暫く万能水には困らないわね」


「ロイスピー5、ロイスピー10、ロイスピー100。スィーツ類も属性別に準備する必要も無くなって良かったですね」


「そうね。・・・・・・それでも、各属性に特化した飴やガムの製造は続けるつもりよ。現状よりも低価格価で販売するの。小さくて日持ちするのだから大量生産して行商人や貿易商人に卸すの。日持ちする商品は工房ロイスピー以外でも取り扱いを認める事にするわ。直営店で購入するお客様だけの特典1割還元の価値はこれで十分ね」


「それ、chefアランギー様に聞きました。マルアスピーは大樹の森の聖域の精霊樹に宿りし精霊様ですが、商売の精霊様としても大成しそうです」


「商売の神様。商売の精霊っ!フフフ」


 お金・・・まぁ~良いか。嬉しそうだし。


「これからも、宜しくお願いします」


「えぇ」


≪チュッ


 マスアスピーの唇が、俺の唇にちょっとだけ触れた。


 流れ的に意味が・・・。ムードがあったとは思えないけど・・・。



「・・・」


「ロイクって、胸が好きよね」


 今更、否定できないよなぁ~。


「た、たぶん。はい・・・」


「フフフ」


 マルアスピーの優しい瞳と笑顔に悪戯な表情が加わる。


「ねぇロイク」


「はい。なんでしょう」


「私からロイクにKissするよりも、ロイクから私にKissした方が互いに成長するそうよ」


 ・・・フォルティーナだなぁっ!要らない事をマルアスピーに吹き込んだのはぁっ!


「そうみたいですね」


≪チュッ


 マスアスピーの唇が、俺の唇にちょっとだけ触れた。


「良いんですか?」


「えぇ」


「成長しませんよ」


「構わないわ。フフフッ」


「・・・」


 マルアスピーは、優しく微笑みながら、俺に抱き着いた。


ありがとうございました。

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