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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ー1ヶ月間の軌跡ー・ーアンデット編ー
154/1227

3-20 生贄の里は聖地で隠れ里の日④~キスとベーゼ~

リーファ(R)歴4075年8月4日、火の日。

「フォルティーナ。どのボタンを押したんですかっ!?」


「さっきも言ったね。酔っていて覚えて無いね」


 教える気なんて更々無いって事か・・・。


「マリレナさん。4つのボタンですが、見た感じで良いです。どんな感じか教えてください」


「はいっ!」


≪ザッ バッ


「何処に行く気ですか?」


「ロイク。そこを退()くね。あたしは、マリレナに挨拶しに行くだけだね」


「その言葉を信じれと・・・」


「ふっ。どうやらあたしの本気を見せる時が来てしまったようだね」


≪ザッ バッ


 フォルティーナと俺は手四つの状態で向かい合っている。


≪ギギギギギギ



「ロイク。視線がいやらしいね」


「な、何言ってるんですかぁっ!」


「フッ。双丘ならまだしも、何も無い谷に気を取られるとはまだまだ脇が甘いね」


 脇って・・・。


「甘いです。オブラートに包み込んだ猥言程度で俺が狼狽えるとでも思いましたか」


≪ギギギギギギ


「アスピーにアル・・・フッ」


 フォルティーナは、ニヤニヤと実に厭らしい表情だ。


「どうだったね」


「俺達の戦いに彼女達を持ち出すのは反則ですよ」


「ルールはあたしだね」


 この痴女神・・・。


「ロイク様っ!」


「あ、えっと、はいっ!」


「まずボタンは全部で4つでは無く5つでした。4つは、フォルティーナ様が剥がしたお札の陰に縦一列で並んでいます。もう1つも社の中にあります。天井部分と同化させ目立たない様に同系色のスモーキィ・リーフ色です」


「はぁっ?スモーキィー何ですか?」


「ロイク。聞こえなかったのかね。スモーキィ・リーフだね」


 あの社って、スモーキィ・リーフ色なのか・・・。


「余所見かね」


≪ギギギギギギ


「何のこれしき」


「フッ、流石はあたしの夫だね。褒めてやるね」


「フォルティーナに褒めて貰えるとは光栄です」


「・・・まぁ~良いね。ところで、マリレナとはどうだったね」


「なっ・・・何言ってるんですかっ!」


「隠す必要は無いね。創造神に創造された瞬間から全ての存在は子を生して来たね。ハッハッハッハッハだね」



「ロイク様ぁっ!」


「は、はい」


「縦に並んだ4つのボタンですが、上から【ライト・パリス・グリーン色】【ウィンター・リーフ色】【レンブラント・マダー色】【フォーゲット・ミー・ノット色】ですぅっ!」


「えっと・・・はい↑?」


≪ギギギギギギ


「何だね。ロイク。聞いて無かったのかね。ライト・パリス・グリーン、ウィンター・リーフ、レンブラント・マダー、フォーゲット・ミー・ノットだね」


 ・・・それ色なのか?


「マリレナさん。5つのボタンですがぁっ!」


「はいっ!」


「5つともどんな色なのかサッパリ分からないです」


「ふっ」


「天井のボタンは少し濃い茶色です。縦一列のボタンは上から薄い黄緑色、濃いけど少し薄い茶色、鮮やかではない赤色、鮮やかではない水色です」


 えっと、天井は濃い茶、上から黄緑、濃い薄い茶、濁った赤、濁った水って事か・・・。


≪ギギギギギギ


「油断だね」


「クッ」


「さぁ~。ロイク、今なら許してやるね」


「許される様な事をした覚えはありませんが」


「今のままではダメだね。先に進む必要があるね」


「その為に、マリレナさんに社を調べて貰ってるんですよっ!」


≪ギギギギギギ


≪ガバッ


「何、抱き着いてるんですかぁっ!」


「ロイク様。大丈夫ですかっ!?」


「だ、大丈夫です。抱き着かれているというかぁっ!・・・抱き着かれてるだけです」


「そ、そうですか・・・」


「フッ」


「フォルティーナ。何がしたいんですか?いったい何が目的です?」


「抱き着かれても顔色1つ変えないかね。成長したね」


「何の話です?」


「良い事を教えてやるね。ただし条件があるね」


「何ですか?」


「飲むと言う事かね?」


「マリレナさんっ!」


「はいっ!」


「どうなんだね?」


 フォルティーナが良い事を教えてくれると言ってるのですが、条件があるみたいなんです。乗っても良いと思いますか?


『抱き着いて、囁き合っている様にしか見えませんし、問題無いかと・・・』


 これは流れでこうなっただけです。


『フォルティーナ様も家族ですし気にしてませんよ』


 いや、今そんな余裕な状況じゃ無いです。気を抜いたら骨が持ってかれます。


『フフッ。激しい抱擁ですね』


 さ、流石に笑えないです。


『ボタンどうしますか?』


 今、聞き出します。


『分かりました』


「条件次第です」


「飲むと約束するね。条件はそれからだね」


「良い事って何ですか?」


「条件を飲むかね?」


 ・・・ダメだ。これじゃ堂々巡りだ。


≪ギュッ ムニュッ


 ・・・む、胸が・・・あぁ~・・・。って・・・。


「フッ」


≪ギュゥ―――


 締め付けが・・・。きつくなって来たぁっ!


「飲むかね」


「分かりました・・・。条件を飲みましょう」


「最初からそうやって言う事を聞けば良いね」


≪パチン


 フォルティーナが指を鳴らすと......



 俺達は、さっきまで座っていた席に座っていた。


「えっ?」


「あれ?・・・マリレナさん」


「男と女と女が居るね。何を2人で呆けているね」


『フォルティーナ様のパチンですね』


 その様です。


「まずはあたしからの条件だね。あたしからロイクに2つ。マリレナに1つだね」


「はっ?飲んだのは俺ですよ」


「良い事を教えてやるね」


「聞いてますか?」


「聞いてるね。マリレナはどうするね?」


「私も飲みます」


「良い返事だね」


「マリレナさん。大丈夫なんですか?フォルティーナの事です。訳の分からない事を要求して来る可能性がありますよ」


「ロイク。君はあたしを何だと思っているね。・・・まぁ~良いね。まずロイクには冷たい神茶を出して貰おうかね。動いた上に喋り過ぎて喉が乾いたね」


「神茶ですか・・・。構いませんが」


 俺は、タブレットから冷たい神茶と専用の湯飲みを3つ取り出し注いだ。



「プッハァ~。生き返るねぇ~」


≪タァンー


 フォルティーナは、神茶専用の湯飲みを豪快にテーブルに置いた。


「それで、条件は何ですか?」


「次の条件はだね」


「次?」


「何を言ってるね。運動の後のお茶が1つ目の条件だね」


『フフッ』


 どうしたんですか?


『何て言いますか。可愛いなと思いまして』


 そ、そうですかね・・・。


『えぇ』


「それで、もう1つの条件は何ですか?」


「ここから出たいかね」


「えぇ、今直ぐにでも出たいです」


「分かったね。毎日一回あたしに優しく心温まるKissをするね」


「はぁ~?」


「だからKissだね」


「何の拷問ですか?」


「失礼な。女神の唇にKiss出来るね。拷問とは違うね。四回も五回も変わらないね」


「1つ確認します」


「何だね」


 四回も五回もって何だ?


「無理矢理Kissされたのは覚えてますが、あの1回だけだったと思うんですが・・・」


「あぁ~。あの後だね。アスピーと君の寝室にお邪魔してだね。3回程してみたのだがだね。どうやら、ダメだったね」


 ・・・何?・・・こいつ色々やってるなぁっ!


「・・・それで?」


「ロイクからでないとダメな事が確定しているね」


「で?」


「2つ目の条件は、毎日一回あたしに心温まるKissをするね」


「断ります」


「何故だね」


「違う条件にしてください」


「う~んだね。・・・フッ。まぁ~良いね。先にマリレナだね」


「フォルティーナ様どんな条件でしょうか?」


「マリレナ。君は精霊に成ったばかりだね」


「はい」


「成ったばかりで申し訳ないがだね。アルの様に神格を持った眷属神に成って欲しいね」


「神様に成れと?」


「端的に言えばそうなるね」


 最初から端的だったと思うけど・・・。黙ってよ。


「アスピー様は精霊のままで宜しいのでしょうか?」


「アスピーには、神授スキル【Baiser】とは別に、創造神が大樹の加護に重ねる様に神授スキル【Kiss】の効果を与えているね。これは、アスピーとロイクの間にしか存在しない魂と魂を繋いだ絆の様なスキルだね」


 へぇ~・・・。


「ロイク様は神授スキルで【Baiser】と【Kiss】を所持していて、【Kiss】はマルアスピー様との間にだけ作用しているのですね」


「その通りだね。アスピーに神格を持たせた場合だね。それがどうなるか分からないね」


「なるほど」


 なるほど。


「そして、Baiserは神格を持った者にしか作用しないみたいだね」


「マルアスピー様には、Baiserが作用していないのですか?」


「そこが分からないね」


「「分からない?」」


「あっ。済みません。マリレナさんとフォルティーナでどうぞ・・・」


 いかんいかん。つい反応してしまった。


「アスピーの成長はロイクの成長と同期しているね。しかもだね。創造神が何を思ったかだね。神気をロイクから2倍で受け取れる様にしているね」


「2倍ですか!?」


「しかもだね。アスピーは、日増しに強くなってるね」


「日増しにですか。・・・あぁ~、なるほど」


 マリレナさんは、俺の方を見て微笑んでいる。


「フォルティーナ様。神格の件、お受け致します」


「分かってくれたかね」


「えぇ。とても良く」


 2人は、立ち上がると、笑顔で握手を交わした。



「さぁ~。ロイク」


「何ですか?」


「何ですかとは何ですかだね。良いかね。君が他の条件を望んだね」


「そうですね・・・」


「そして、素晴らしい条件を思い付てしまったね」


 フォルティーナは、ニヤニヤとほくそ笑む。美しい顔が悪意に満ち満ちている。


「ロイク様」


「は、はい」


 マリレナさんは、俺の顔に顔を近付け、俺の瞳を凝視する。


「良いですか」


「何がでしょうか・・・」


「フォルティーナ様は、来たる日の為に、備える必要があるとお考えなのです」


「それは、俺もそのつもりですが・・・」


「許嫁と嫁の差を御存じですか?」


「ええぇぇ・・・。まぁ~一応・・・」


「一応ではダメです。創造神様公認の許嫁は許嫁であってまだ正式な嫁ではありません」


「そ、そうですね」


「創造神様公認の嫁は、正式な嫁です。つまり世間一般で言うところの夫婦という事です」


「はい」


「許嫁と嫁の大きな違いは何ですか?」


「えっと・・・結婚とかでしょうか?」


「違います。結婚は1つの事象、区切り節目でしかありません。心の繋がり、身体の繋がり、夫婦としての繋がり、家族としての繋がり、繋がりが許嫁と嫁とでは格段に違います」


「そ、そういう物ですかね・・・」


「そういう物です。分かりましたか」


「は・・・はい・・・」


「フォルティーナ様。どうぞ」


「うんうんだね。というわけでだね」


 嫌な予感しかしない。


「2つ目の条件はだね。来たる日を無事に乗り越え正式な嫁になる者以外の者と毎日1回ロイクから心あるKissをする事だね」


「はぁっ?さっきと同じじゃないですか」


「何を言ってるね。良く聞くね。来たる日を無事に乗り越え正式な嫁になる者以外の者と毎日1回ロイクから心あるKissをするね」


「何、言ってるんですか?」


「さっきの激しい抱擁で頭をぶつけたかね?」


 抱擁で頭をぶつけるってどうやってだよ・・・。


「さてと、下らないお喋りはここまでです。ボタンを」


「ロイク様。フォルティーナ様のお話が終わっていませんよ」


 笑顔で睨まないでくだいさい・・・。怖いです・・・。


「す、すみません」


「良く聞くね。つまりだね」


「はい・・・」


 生贄を捧げてた社がある洞窟で何やってるんだろう俺・・・。


「今君には、アスピー。アル。あたし。トゥーシェ2人。マリレナ。バジリア。創造神公認の嫁が7人いるね」


「何か勝手にそうなっちゃいましたね」


「無責任な事を言ってはいけないね。創造神が決めた事は絶対だね」


「はい・・・すみません・・・」


 いつも、創造神様をぞんざいに扱ってる癖に・・・。


「トゥーシェ2人は今はどうでも良いとしてだね。アスピーとアルとあたしとマリレナとバジリアとは毎日愛のあるKissを最低一回する事を義務付けるね」


「何勝手に義務とか言ってるんですか!」


「あぁ~間違えたね。命令だね」


「命令って!」


「良いかね。これもコルト下界の為だね。Kissで世界を救えるね。夫婦の愛が世界を救うね。迷う必要は無いね。ガバっとだね」


 ・・・。綺麗にまとめようとしてる様だが、女神様(こいつ)の力量ではこのあたりが限界みたいだな。


「質問しても良いですか?」


「何だね」


「良い事を教えてくれると言ってましたが、社のボタンと社の奥の道とこの洞窟と、Kissって関係有りませんよね。この条件っていったい何なんですか?それに、今の話だとバジリアさんもトゥーシェと同じで、神授スキル【Baiser】は作用しませんよ」


「何を言ってるね。バジリアからは既に了承を貰ってあるね」


「えっ?」


 こいつ。いつからこの計画を立ててたんだ。


「バジリアがだね。ここに派遣されると聞いた時だね。思ったね」


 その時に、計画したのか?・・・まさかな。


「何をですか?」


「そうだ。あたしも行こう。とだね」


 ・・・。


「後から皆で遊びに行くからだね。生贄の社とか綺麗にしておいて欲しいね。御礼に君も神にしてやるね。神になってロイクを一緒に支えようではないかね」


「それで?」


「バジリアは言ったね。我が夫の為、その神託有難くお受け致します。とだね」


 ・・・神様としての権限フル活用ですか。最悪だ。


「安心するね。サンドラやミューは子供が生まれてから考えるね」


「何処に安心しろと」


「夫になる。親になる。不安ばかりだと思うがだね。家族とはそういう物だね。うんうんだね」


「で、結局。2つ目の条件ってなんですか?」


「聞いて無かったのかね。分かり易く言うとだね。今は建国したばかりで忙しいね。もう少し落ち着いたらで構わないね。そうだね」


「そうだねって・・・何ですか?」


「マクドナルドに神格を与える時に、マリレナとバジリアにも一緒に神格を与えるね。そうだね。うんうんだね」


「フォルティーナ様。お話の意味が良く分からないのですが・・・」


「うんうんだね。ロイク。決めたね」


 また勝手に決まったのか。


「で?」


「マリレナとバジリアが神格を持った日から毎日だね。神格を持った嫁に愛あるKissを最低1回するね。これは厳命だね。この世界の為だね」


「フォルティーナ様。マルアスピー様は?」


「当然だね」


 そこは、当然なんですね・・・。


「1つ質問があるんですが」


「またかね。いったい何だね。女々しいね」


「愛あるKissの定義を教えてください」


「・・・あ、・・・愛は愛だね」



「で、飲んだんですから、出してください」


「何がだね」


「洞窟からですよ」


「何を言ってるね」


「ですから、妨害してますよね?」


「それなら、社の奥の一本道の先に行けば出られるね」


「「ハァ~?」」


「社のボタンがあるね」


「ありますね」


「あれはだね。天井のボタンが精霊樹。縦一列のボタンは上から息吹の谷、結束の一枚大岩、憤怒の火山、水煙の大瀑布を現しているね。あたしが押したのはだね。上から二番目のボタンだね」


「で、何が危険なんですか?」


「コルト下界に住む普通の存在にはとても危険だね。だがだね。普通では無い私達の様な存在には特になんて事は無い社だね」


「フォルティーナ様。それでは、どのボタンを押しても問題ないという事でしょうか?」


「う~んだね。問題が無い訳ではないがだね。タイミングにもよるね。ここの聖域が消滅した瞬間、ここはコルト下界の自然の循環に組み込まれるね。そのタイミングでだね。天井のボタン以外を押したらだね。この里は大樹の森に勢い良く飲み込まれるね」


「僅かですが聖域が存在していたおかげで、隠れ里は大樹の森に飲み込まれていなかったんですか?」


「そうだね」


 なるほど、隠れ里に来た時に感じた違和感は、ここが大樹の森に飲み込まれていなかったからだったんだ。


「天井のボタンを押したらどうなるんですか?」


「社を通し捧げられた生贄の魂が解き放たれてだね。その御礼に精霊樹の種を貰えるね」


「あのぉ~。生贄になった者達が、どうして御礼に精霊樹の種をくれるのでしょうか?」


「解き放つからだね」


「分かり易く説明して貰えますか?」


「つまりだね。この社に宿っていたはずの邪の中精霊が邪の神と共に旅立った後だね。この聖域を見守る存在がいなくなってしまったね。それでエルフ(樹人)達はだね。聖域を管理する存在を社に捧げる事にしたね」


「それで?」


「だがだね。精霊種でも無い。神気も持たない。ヒューム(人間)属では聖域の管理を1年も続けられなかったね。魂が昇天してしまうね。しかもだね。この社に邪の神は精霊樹の種を託しているね」


「「えっとそれで?」」


「だからだね。解き放つとだね。御礼に精霊樹の種を貰えるね」


「・・・その、意味が分からないんですけど」


「フォルティーナ様?」


「最後に生贄になった者は4066年前の者だったらしく既に昇天しここにはいないがだね。死んだばかりの活きの良い魂がこの社に強制的に宿らされているね。解き放つとだね。御礼に精霊樹の種が貰えるね」


 ・・・もしかして、たったこれだけの事をフォルティーナは長々と引っ張ってたのか?


「確認ですが、天井のボタン以外を押すと大樹の森に飲み込まれるのはどうしてですか?」


「天井のボタンを押しても最終的には大樹の森に飲み込まれ、ここは大樹の森の一部になるね。だがだね。天井のボタンを押すとだね(・・)。精霊樹の(・・)が貰えるね」


 フォルティーナは、ドヤ顔で御満悦な表情だ。


 種の件はもう分かりましたから次を話てください次を・・・。


「分かって無い様だね?良いかね。天井のボタンを押す。すると魂が解き放たれる。すると精霊樹の種が貰える。お分かり?かね」


「そこは、もう十分理解してます」


「別の4つのボタンを押す。何も起こらない。挙句に大樹の森から異物だと判断されて一気に飲み込まれてしまうね。時間差はあるが大樹の森になるね」


「4つとも一緒なんですか?」


「少しだけ違うね。大樹属性と相性の良い上から2番目の地属性のボタンならだね。1日程で大樹の森だね。それでもこの里に居る者や周囲に居る者は急激な森の成長に飲み込まれ危険かもしれないね」


 警備隊員達の事を考えてくれていたのか・・・。


「相性が比較的良く無い火属性。上から3番目下から2番目のボタンはだね。1~2ラフン()で大樹の森に飲み込まれる最速スイッチだね」


「ロイク様。天井のボタンを押してから撤収ですね」


「そうなりますけね」


「その為にはだね。社の奥にある一本道を進んでだね。聖域の最後を見届けるね」


「・・・それ、どの位かかりますか?」


「この感じならだね。明日か明後日か明々後日かだね」


 ・・・それまで、ここにいろと?・・・そうだ!


「フォルティーナ。1つお願いがあります。条件は飲みましょう。創造神様の御意思御意向御好意で俺のお嫁さんになってくれた皆に配慮が足りていませんでした。夫としての自覚が無かった事を認め生まれ変わる事を約束します。その代わりなんですが、ここの聖域が消滅したら天井のボタンを押して魂を解放して精霊樹の種を貰っておいて貰えませんか?」


「・・・あたしに、何時消滅するかも分からない聖域の最後を見届けろと言うのかね?断るね」


 おいっ!・・・おっと、ここは冷静に冷静に・・・。こんな事、俺達3人でやる様な事じゃない。


「神様が張った聖域の最後を見届け、神様が預けた精霊樹の種を受け取る。これはフォルティーナに相応しいフォルティーナの為に存在しています。という事で、フォルティーナ宜しくお願いします」


「待つね」


「何ですか?」


「厳命は守って貰うね」


「生まれ変わる事を約束します」


「ふっ。分かったね」



 俺は、マリレナさんを見ていた。


 マリレナさんは、フォルティーナの計画を何処まで知っていたのだろうか?俺の知らないところで話が勝手に進むのには慣れた。が、自分の事を勝手に決められるのは流石に嫌だ。


「ロイク様。どうかしましたか?」


「マリレナさん。フォルティーナとは何処まで?」


「先程の条件の時が初めてですよ」


 微笑みが眩しいです。


「そうですか。良かったです」



≪パチン



 俺達は、入口が塞がったままの隠れ里の洞窟の前に居る。


「ロイク殿。マリレナ殿。フォルティーナ様。御無事でしたかぁっ!」


 バジリアさんが駆け付けて来た。


色々(・・)とありましたが、こっちは終わりました」


 まだ、終わった訳じゃないけど、フォルティーナに任せたし終わったって事で良いよな・・・。若干不安だけど・・・。


「報告します。アンデット176体全ての殲滅を確認しました。遺体は無傷の建物がありました跡地にシートを敷き保管してあります。各警備隊の隊員達は、転移用の魔力陣を使い帰還させました」


「お疲れ様です」


「うんうんだね」


「バジリアさん。フォルティーナ様から伺いました」


「マリレナ殿・・・」


「私もバジリアさんと同じ考えです」


「マリレナ殿」


 フォルティーナは、握手する二人を見つめながら一言。


「そうだね。忘れる所だったね。そんまさる(孫魔猿)の死骸が洞窟の奥に沢山あったね。邪魔だったからタブレットに収納しておいたね」


「死骸ですか」


 俺はタブレットを確認する。



「幼獣91匹と成獣147匹ですか・・・」


「どうしたね」


「203人以外を、この数でって事は無いでしょうから。そうなると残りは何処に行ったのかなと思いまして」


「ロイク殿。アンデットに捕食されアンデット化した個体や、捕食され絶命した個体も存在すると思います」


「それでも、数が合わない様な気がするんですよね・・・」


「「「あっ」」」


 マリレナさんとフォルティーナと俺の声が重なった。


「どうかなさいましたか?」


「聖域が終わったね」


「みたいですね」


「こんな感じで、本当にONとOFFがハッキリしてるんですね」


「だから言ったね」


「ロイク様」


「どうしました?」


「聖域が無くなったって事は・・・?」


「あっ!フォルティーナ。ボタン押さないとどうなりますか?」


「最速コースよりは緩やかに大樹の森に飲み込まれるね」


「それってどの位ですか?」


「コルト下界の5ラフン()ってとこだね」


 それって、・・・やばいだろう。


「フォルティーナっ!」


「何だね。さっきからあたしの名前を連呼して、そんなにあたしの事が気になるかね」


 ・・・。


ありがとうございました。

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