3-19 生贄の里は聖地で隠れ里の日③~生贄の捧げ方~
リーファ歴4075年8月4日、火の日。
フォルティーナは、ドヤ顔だ。
俺の神授スキル【フリーパス】や神授スキル【転位召喚・極】は発動しなかった。
「やってくれましたね」
「ロイク様。まさかですけど・・・」
「そのまさかです。たぶんですが、フォルティーナが妨害をしています」
「何の事か分からないね。ボタンを押したら入口が無くなったのは認めるね」
・・・こいつは。
マリレナさん。これから、どうしましょう?
マリレナさんは、右手の人差し指を口元に当てながら小首を傾げ思案している。
可愛い。・・・俺の周りには間違っても存在しないタイプだ。まぁ~その件は時間がある時に考える事にしよう。今は、どうするかだ。まずは、状況を整理してみるか。
『ここから出る事だけを考えましょう』
そうですね。
整理の前に、まずは入口を確かめてみないとな。
俺は、入口だった場所まで戻り岩壁に触れる。間違い無く本物の壁だった。そして、マリレナさんも俺の横で壁に触れていた。
「偽りでは無く本物の壁です。フォルティーナがボタンを押したら、音が鳴り響いて洞窟の入口が消えた。そして社の奥にある道は、何処に続いているか分からない一本道。どうするつもりですか?」
「これは啓示だね。さぁ~。今でしょうだね。奥に進むね」
女神様の『パチン』を追求したところで白を切られ意味が無いのは確実だ。ここは、ボタンを押した責任を追及して・・・。いや、これも意味が無いだろう・・・。
「私達は土の中に閉じ込められたという事ですね」
「まぁ~何だね。考え様によっては洞窟の中も悪くないね。幸いな事にだね。前には道があるね。世の中なかなか捨てたものじゃないね。ハッハッハッハッハだね」
今、女神様を捨てて良い場所があるなら、貴女を捨てたいです。・・・・・・はぁっ!・・・俺は何て事を考えて・・・いや、これは正常な判断。・・・創造神様。今の俺の気持ちは悪意からではありません。心からの正直な気持ちです。許してください。・・・正直な気持ち何です。許してください。
『ロイク様。フリーパスが使え無いのですよね』
はい。フリーパスも転位召喚・極も発動しませんでした。大方、転移用の魔力陣・魔法陣も作動しないかと・・・。
『また、このパターンですね』
はい。またこのパターンです。
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「うんうんだね。面白くなって来たね。ワクワクするね」
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「この先ってどう考えても罠です」
「フォルティーナ様。私も罠だと思います」
「あからさまに怪しいですからね」
「退路を断って、目の前の道へ誘導する。私でも分かる典型的で古典的な罠の1つです」
「面白くなって来たね。さぁ~調査再開だね」
・・・無視か。そっちがその気なら。
「マリレナさん。さっきの話の続き何ですが、お茶休憩でもしながらどうですか?」
「さっきの・・・」
俺は、フォルティーナに気付かれない様に、マリレナさんにウィンクする。
「あぁ~、はい。そうですね。御菓子と御茶で休憩しながら。そうしましょう。ロイク様」
マリレナさんは、会話とウィンクで俺に応えてくれた。
「何を言ってるね」
「休憩しようってマリレナさんと話てただけですが何か?」
「あたしは、この奥に行きたいね」
「俺達はここで休憩してるんで、1人で余り奥に行かないでくださいね」
「罠の可能性が濃厚ですし、気を付けてくださいね。フォルティーナ様」
「・・・何のつもりだね」
「休憩のつもりです。ですよね。マリレナさん」
「はい。ロイク様」
俺はタブレットからシートとお茶とお菓子を取り出した。
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「人間前を向いて生きるね。だから、前に進むね」
「さっきから、チョコケーキばかり食べてませんか?」
「気のせいだね。細かい事を気にしているとハゲるね」
「奥に行くんじゃなかったんですか?」
「食べたら行くね」
「ふ~ん・・・」
もう少しケーキをテーブルに並べておこうっと。
「ロイク様。これも美味しいです」
「今日のお菓子は、マルアスピー達の試作品なんですが美味しかったので、残ってる物を全部貰ったんです」
「マルアスピー様は御菓子作りの天才ですね。フフッ」
「ですね。家のメンバーで唯一のNBTJOBパティシエールですからね。お菓子作りと新事業と財産運用は彼女に任せておけば間違いありません」
お金を稼ぐのが得意な大精霊様か・・・。
俺は、1口サイズのレアチーズ味のマカロンを口に放り込み、紅茶を飲む。
美味い。って、いかんいかん。マリレナさんも俺も本気で休憩を楽しんでしまっている。本末転倒だ。
マリレナさん。さっきの話の続き何ですが・・・。
『話の続き?・・・何の話の続きでしょうか?』
微弱な邪属性の聖域の事です。さっき、微弱状態にある属性の聖域の事を、女神様の口付け、先祖の抱擁だと言ってましたよね。
『はい。【女神様の口付け】は、別名【終焉の膨張期】とも言います。【先祖の抱擁】は、別名【聖域の膨張】とも言うんです』
微弱の状態にある属性の聖域を今の様に呼ぶとして、だったら普通の状態の聖域の事は何て呼んでたのかなって思ったんです。
『普通の状態の聖域は、普通に聖域と呼んでいましたね』
1度膨張したのにって、フォルティーナは言ってましたよね。本来は1度膨張するとそのまま消滅しちゃうんですか?
『そうですね・・・・・・・・・』
どうしました?
「何を見つめ合ってるね。良いかね。健全な男と女と女が3人。洞窟の中で前へ進もうとしている時にだね。女1人を除け者にして、男と女が何をやってるね」
「気付いてしまいましたか」
除け者にされているという現実に・・・。
「当然だね。あたしを誰だと思ってるね」
フォルティーナは、場違いなドヤ顔を華麗に決める。
・・・気付いてないや。それなら。
「今、ここに存在してた邪属性の聖域とその結果について話合っていたんですよ」
「あたしを放置してかね」
「美味しそうに食べてましたからね。それに、食べ終わったら奥に行くんですよね」
「当然だね」
「俺達は、情報を交換してから、どうするか判断する事にしたんですよ」
「人間。前を向いて生きるね。だから、行くね」
さっきから人間人間って〇〇の1つ覚えみたいに・・・。貴女は女神様ですよね!?
「いやいやいやいやいや。それは、情報でも何でも無いです。ただの理想論。場合によっては現実逃避です。なので、社の奥の道を進むかはマリレナさんと俺で判断します」
「何を言ってるね。社のボタンを鋭い洞察力と持ち前の運で発見し押したのはあたしだね。歓喜の中で苦渋の決断をする権利はあたしだけに存在するね」
歓喜の中で苦渋って・・・。周りを絶望へと誘う決断ですか・・・。
「いえ、決断する権利は、皆に平等に存在します」
「ロイク。君って男は我儘だね」
「はぁ~↑?俺が我儘・・・フォルティーナは女神様権限で横暴しまくってるじゃないですか」
「あたしは、神だね。何でもありだね。だがだね。ロイク。君はコルト下界のヒューム属だね」
「だから何ですか。まさか今更生まれとか差別で押し切る気ですか」
「ふっ。神は偉いね」
「確かに神様は、やたらとえらい存在ですよね。本当近くに存在を感じるだけで神経が擦り減ります」
「フッ!・・・まぁ~良いね。あたしに畏敬を感じてしまうのは当然だね」
・・・運と遊びの女神様に、・・・皮肉が通じる訳がない。・・・・・・失念でした。
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「この隠れ里は生贄の里と呼ばれていたんですよね?」
「はい」
「でも、どうして聖地って呼ばれる様になったんですか?」
「簡単だね」
あぁ~また邪魔が入ったよ。
「良いかね。この社に生贄を捧げたのは4066年前が最後だね」
・・・
「それで?」
「生贄の里は4066年前に終わったね」
何、言ってるんだ。この人・・・。
「生贄の里が終わった話はこの際どうでも良いんですよ。どうして聖地って呼ばれているのかって聞いてるんです」
「仕方ないね。あたしは、こう見えてロイクの妻だね。良き妻は夫に尽くすものだね。ここは、一から丁寧に説明してやるね」
えっと・・・。
「マリレナさんに聞くんで、フォルティーナは奥を調査してても良いですよ」
「何を言ってるね」
「社の奥の一本道の奥を調査したいんですよねぇっ!」
「それは、後でやるね。今は、こっちの方が面白そうだね」
・・・どう転んでも邪魔する気か。
『ロイク様』
仕方がありません。さっきと同じプランで行きましょう。
『分かりました』
気持ち良く喋らせて、次行ってみようです。
『はい』
「魔術や魔法や神気の特性を理解する必要がるね」
はぁっ?・・・いきなり脱線から始まった?
「魔術や魔法は自然魔素を使うね」
「「・・・」」
「神気は、神気力を使うね」
「「・・・」」
「基本的にはだね。発動から消滅するまで途中で干渉しない限り事象全体の質量は同じだね」
何の話してるんだ・・・。
「質量に変化が無いのは体内に蓄積した自然魔素を【MP】として消費する魔術と、自身の【MP】の最大値まで自然の循環から自然魔素を集積して扱う魔法だけで、神気は当てはまらないね」
「「・・・でっ?」」
マリレナさんと俺の視線が重なる。
「つまりだね。例えばだね。魔術や魔法で半径1m風速50m/sの竜巻を発生させたとするね。時間の経過と共に竜巻の規模は小さくなるね。だがだね。半径1mという規模が縮小しているだけで、風速50m/sの威力は消滅の瞬間まで維持されるね。温度1800度の火で対象を攻撃している時に威力が衰えてだね。火の温度が35度まで下がってしまう事が無いのと同じだね」
・・・説明下手過ぎるんですけど。
「という事でだね。魔術や魔法は規模こそ衰えるがだね。威力は事象の判断が出来ない状態になるまで同じ状態だと言えるね」
「何の話してるんですか?」
「フォルティーナ様・・・」
「最後まで聞くね。事象の源となる自然魔素が0になった瞬間に事象はONからOFFに切り替わるね。それが、魔術と魔法の限界だね」
限界?
『ロイク様。フォルティーナ様は自然魔素を扱う事の限界を説いていらっしゃるのでしょうか?』
さぁ~。何て言うか、サッパリ分からないです。
「この社のある洞窟は自然の循環から独立してるね。途轍もなく長い年月を事象が維持し続けてるね。だがだね。4066年前の生贄を最後に供給が滞り邪属性が存在し続ける事が難しくなったね。そして、今まさに消滅の時を迎えようとしているね」
「なるほど、生贄によってここの聖域は存在してたって事ですか」
「うんうんだね」
「でも、さっきの話だと、1度膨張したのにって言ってましたよね?」
「ここの聖域は、膨張期を経過し消滅期末期の聖域だったはずなのですが・・・」
「マリレナさん?」
「ロイク様。これからお話する事は、ヴァンのエルフ一族の負の遺産です。当時の通常エルフ族の集落では、邪属性の聖域の結界を維持する必要がありました。そんまさるや他の魔獣達の脅威から集落や家族を守る為です。その為に、年老いたエルフが年に1人生贄として社に捧げられていました。生贄が禁止になったのはエルフ族の長老達を、私達ハイエルフ族やテネブル族が数千年かけ説得したからなんです」
・・・今は信仰心が和らいで少しはまともに成ったみたいだけど、昔は信仰心が高過ぎて微妙だった種族だって聞いたけど、生贄を止めさせるのに1000年単位の説得か。自尊心の塊の様な種族が生贄ねぇ~・・・。・・・ん?ここの・・・。
「ここの聖域って事は、他にも?」
「はい。4066年前に、ここ生贄の里で生贄を捧げる事が禁止となり、ヴァンのエルフ一族の集落から生贄の社が姿を消しました。少しずつ邪属性の聖域が後退し集落全体を包み込む結界を100年後も維持していたのは、ここ生贄の里だけだったのです。そんまさるや他の魔獣達から襲われる心配の無い里はいつしか聖地と呼ばれる様になっていました」
「なるほど」
「普通のエルフ族達には、ハイエルフ族の様に優れた智や、テネブル族の様に優れた武の持ち合わせがありません。生贄を捧げてでも魔獣から身を護る事が最優先だったんです」
「数百万人ものエルフ族を、ハイエルフ族やテネブル族だけで護るのは無理がありますからね・・・」
「当時はまだ現在の様に簡易魔術の時代ではありませんでした。古代魔術と呼ばれる長い詠唱や魔力陣等の高度な知識と自然魔素を統制する才能に近い力が必要でした」
「あれ?」
「どうしましたか?」
「マリレナさん。ここって203人が聖域の内側に居て無事だったんですよね・・・。結界が展開してた訳ですよね・・・まさかですけど、移住者達はこの事を知っていて、生贄を捧げたとか・・・。あっ!でも、それなら隠れ里は襲撃されないのか・・・」
「ロイク。昨日今日、生贄を社に捧げても無理だね。消滅の運命に抗う時間は既に無かったね」
「でも、6日間は何故か結界が機能したんですよね。サッパリ意味が分かりません」
「そうだね。結界が展開したおかげで203人は偶然助かったね」
「膨張期を終え消滅期にあったんですよね。そして今も微弱ですが邪属性の聖域のまま存在しています。消える前に何度も膨張期と消滅期を繰り返したりするんですか?」
「考えてもみるね。今感じている邪属性の聖域を恐れる存在がいると思うかね」
「恐れないでしょうね。感じ取れるかも怪しい位です」
「襲撃を受けた時はだね。今よりも邪属性を感じ取る事が難しい状態にあったね。魔獣は容易に洞窟内に侵入出来たね」
「ですが、203人は助かりました」
「彼女達が社の奥に隠れた15日前からミューに保護された9日前。僅か6日間だけだったがだね。邪属性の聖域には結界が存在したね。それはだね、そんまさるによって、禁止されていた生贄が捧げられるという行為が偶発的に行われてしまったからだね。社の奥に逃げ込む前に社の傍で捕食されたか弄ばれたか自刃した存在がいたね。そう推測すると膨張し消滅しかけていた邪属性の聖域の偶発的な結界の展開も頷けるね」
「消滅しかけていた聖域が、消滅の運命に抗う事は出来なくても、1次的に結界を展開するだけの力を得たと・・・」
「せめてだね。膨張期や消滅期では無く縮小期だったら良かったね。だがだね。それでも多くの犠牲が出たね」
「止めましょう。203人も奇跡的に助かった訳です。消滅のタイミングが先延ばしになるって事は、生贄として捧げられてしまった人が増えるって事ですからね」
「生贄を1年でも早く止めていたら203人は助からなかったね。まぁ~何だね。人の歴史によって生まれる奇跡もあると言う事だね。ハッハッハッハッハだね」
「フォルティーナ様。・・・この状況で、聖域は6日間も結界を展開した。彼女達には」
「あらゆる存在はあらゆる存在の犠牲の上に成り立っているね。賢く冷静な存在は気付いてしまうかもしれないがだね。奇跡が起きて助かったね。生きろと神が言っていると思い込むのも前へ進む事だね」
「どうしたんですか。まともな事何か言い出して」
「フッ。運の女神を信仰するのも時間の問題だね。ハッハッハッハッハだね。神はそれなりに偉大だね」
「神様は関係してないんですよね?」
「ここに邪属性の聖域を張ったのは神以外に存在しないね。神が偶然や必然を統制しているという事だね。神が聖域を張らなければ、今の話その物が存在しないね」
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「奥に進むのは、整理してからです」
「今更何を整理するね。さぁ~。進のは今でしょうだね」
「まず、フォルティーナがボタンを押して入口が消えるまでの間に、自分達が移動した様な違和感を覚えた人は居ますか?」
「私は何も感じませんでした」
「俺も何も感じませんでした。フォルティーナもですね」
「・・・・・・そうだね」
「洞窟自体が転移或いは転位した可能性を考えてみましょう」
「それも無いと思います」
「根拠は何ですか?」
「大きな聖属性の聖域の中に居る事が分かるからです」
・・・あっ、俺が張った聖域か。
「そうですね。もし洞窟と俺達だけを移動させたなら、聖属性の聖域を感じる事は有りませんね」
「はい。聖属性の聖域と一緒に洞窟と私達を移動させる何て事は、ロイク様でも無理だと考えます。可能性として有り得るのは神様ですが神様が態々その様な事をするとも思えません。そう考えると洞窟自体の可能性は無いと断言して良いと思います」
やりそうな神様は、目の前に居る女神様位だろうな。
「フォルティーナもそうですね」
「・・・・・・はいだね」
「次にフォルティーナが破ったお札です」
俺は、お札をテーブルの上に置いた。
「これ名前ですね」
「あぁ~なるほど。エイナルテですか?」
「たぶん、エイナルド・ペッテハウゲンですね」
「男性の名前ですよね?」
「はい。ペッテハウゲンは、ヴァンのエルフ一族のエルフ族の中で一番多い苗字です」
「フォルティーナ。人の名前が書かれたお札を破っちゃダメですよ。今度から気を付けてくださいね」
「は、はい・・・」
「社に納められていたって事は、生贄になった人の名前ですかね?」
「そうだと思います」
「お札から分かる事はここまでの様ですね」
「その様ですね」
「フォルティーナもそう思いますよね」
「・・・・・・そう思うね」
「さっきからどうしたんですか?何不貞腐れてるんですかっ!」
「整理が終わるのを待ってるね」
なるほど・・・。
「生贄ってどうやって捧げられていたんですか?」
「ここは洞窟なので、生贄に選ばれた者に短剣を1本渡して社の前に座らせます。そして入口を塞ぎます。1年後に同じ事を繰り返します」
「・・・」
思ってたよりは残酷じゃ・・・いや、十二分に残酷だな。
「集落の場合は、生贄の社を祀る石造りの寺院の中に座らせます。入口を塞ぎ、1年後に同じ事を繰り返します」
「短剣は?」
「渡しません」
「どうしてですか?」
「間違って抜け出してしまった生贄に選ばれた者が極度の飢えと渇きで錯乱して暴れ狂った際に危険だからと聞いています」
「洞窟と違って建物だから脱出する者がいてもおかしくないって事ですね」
「生贄は結構な頻度で失敗していたそうですよ」
「なるほど。そう考えると洞窟での成功率は高そうです」
「ここが生贄の里と呼ばれ、聖地と呼ばれ、隠れ里と呼ばれ続ける所以ですよ」
「さて、俺達はいままさに、偶然ですが、生贄に選ばれたエルフ族の先祖の皆さんと同じ状況になっている訳ですが、フォルティーナ。何か言う事はありますか?」
「そろそろ、前に向かって進む時間だね。幸い前に道があるね。さぁ~今だね」
反省する気無しと・・・。まぁ~女神様だし当然か。
「マリレナさん、どうしましょう?」
「そうですねぇ~。社をもう一度調べてみますか?」
「駄目だね」
「どうしてですか?」
「あれは危険だね」
「どう危険なんですか?」
「あれは、とっても、危険だね」
「とってもとかじゃなくて、どういう風に危険なのか内容を説明してください」
「言えないね」
「どうしてですか?」
「フォルティーナ様・・・」
「言ってはいけないね」
「何ですかその本や呪いの一節にある様な返答は」
「ロイク様。調べましょう」
「そうですね」
≪ザッ
「フォルティーナ。どいてください」
「社を調べる覚悟があるという事はだね。あたしを倒しあたしの屍を踏み越えて行くという事だね。ロイク。マリレナ。君達にそれが出来るかね」
・・・。
「マリレナさん。俺がフォルティーナを抑えてます。その間に調べてください」
≪バッ
「クッ。ロイク。君って男は・・・私に抱き着いて何をする気だね」
「羽交い絞めというんですよ」
「その程度の・・・あれ?おかしいね」
「どうしまた。降参しますか?」
「脚があるね・・・」
「フォルティーナ。貴女の筋力は既に見切っています。無駄な抵抗は止めて大人しくしてくれませんか」
「大人しくしたら何か良い事があるかね」
「そうですねぇ~」
「ロイク様っ!大変です」
「どうしましたっ!?」
「ボタンが4つもあります」
「・・・フォルティーナ。どのボタンを押したんですか?」
「残念だがだね。酔っていたから覚えて無いね」
「ほう」
俺は、少しだけ力を入れる。
「イタタタタタ・・・だね」
「本当は?」
「別段問題は無いね」
やっぱりな。こいつがこの程度で痛がる訳が無い。
「もう終わりかね」
楽しんでやがる・・・。
フォルティーナは、ニタニタとほくそ笑んでいる。
何だこの異様な悪寒は・・・。
「ロイクぅ~。もっとこうガバっとだね。相手を貪る様に情熱的にだねぇ~」
≪バッ
「まさか尻を自ら擦り付けて来るなんて・・・痴女・・・痴女神ですかっ!」
「後ろから抱き着いて来たのは、ロイク。君だね。ハッハッハだね」
「次は胸が良いかね」
「何の話です?」
「フッ」
・
・
・
「ロイク様。それで、ボタンが4つありますが、どうしたら・・・」
・
・
・
ありがとうございました。




