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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーコルト編ー
15/1227

1-8 冒険者探検家協会と、レベル274?

作成2018年2月14日

***********************

【タイトル】 このKissは、嵐の予感。

【第1章】(仮)このKissは、真実の中。

 1-8 冒険者探検家協会と、レベル274?

***********************

――― パマリ侯爵邸(領主館)執務室


 俺とマルアスピー様は、パマリ侯爵領のコルト町にある侯爵邸。ミント・パマリ侯爵第一夫人が領主館と呼んでいたパマリ侯爵家の繁栄の象徴に来ていた。


 繁栄の象徴。領主館は宮殿その物だった。


 マルアスピー村で最も大きな建造物アンカー男爵邸(領主の館)は、シンメトリー(左右対象)構造のお手本の様な大豪邸だが、規模が違い過ぎる。こんな感じだ・・・因みに周囲は農園だ。

挿絵(By みてみん)

 そして、パマリ侯爵邸を宮殿と呼称したのには訳がある。王国軍の騎士団事務所や、世界創造神創生教会のパマリ神学講堂が、敷地内に存在し、国王・王族専用道が整備されている。そして、幅30mの水堀に囲まれ、湖に浮いている様な、とても美しい構造になっているからだ。


挿絵(By みてみん)


 規模や目的の違いが理解出来る。



「ほう。これは、素晴らしい一品ですな」


「貴方、(わたくし)のコートもとても素晴らしいですわ。どうです似合っていますか?」


 セイズマン・パマリ次期侯爵と、その妻バートリー・パマリ次期侯爵夫人は、贈物を気に入ってくれた様だ。


「セイズマン様にお渡ししました武具は、闇炎牙狼(オプスキュリテ)の毛皮で作りました。【闇炎牙狼(オプスキュリテ)の魔導衣】です。ジョージ様とアンガス様にも容易させていただきました。」


「この様な物を3着も準備するとは、マルアスピー村は随分と豊かな所の様だな」


「確かに、自然の恵みに富んだ地ではあります。自然豊かな小さな村ですね」


「貴方・・・私のコートの名は何と言うのです?」


「奥様にお渡ししました武具は、地水大牙狼(メルクロイーヴ)の毛皮と、闇炎牙狼(オプスキュリテ)の毛皮と兎耳狼(ラビットウルフ)の毛皮と、精霊の金糸で作りました。【御伽噺の外套】という物です」


「何と!妻のコートには、S級魔獣の地水大牙狼(メルクロイーヴ)の毛皮が使われているのか?」


「はい」


「貴方。そのメル何とかという毛皮は高価な物なのですか?」


「高価どころの話ではない。私の魔導衣の闇炎牙狼(オプスキュリテ)の毛皮でさえ、王都では最低級品質の物であっても3000万NL以上で取引される。この毛皮はどう見ても最高級品質・・・8000万NL以上だろう・・・お前のコートの毛皮は、討伐の難しさゆえに、幻の毛皮と呼ばれ。そのレベルの品質の物になると王族の中でも選ばれた者専用と言ってもおかしくない代物だ」


「おぉ~何と素晴らしい・・・それで、これは、幾ら位なのですか?」


「以前、王都のオークションで見かけた時は、この品質より遥かに劣った物で、2億NL以上の値で落札されていたな」


「2億以上ですか・・・」


「実に素晴らしい一品だ。シャレット士爵家のロイク、マルアスピー夫妻よ。妻も大変な喜び様だ。私や息子達にまで素晴らしい武具を感謝する」


「私のコートは、素材と状態から・・・ざっと3億3000万NLってところね・・・」


『ねぇ~ロイク。この人、目がお金になってるわよ』


 何か怖いよね・・・


『そうね・・・』


「そうだ。セイズマン様」


「何かね。何でも聞いてくれ」


「ありがとうございます。贈物としてお渡しいたしました武具には、製作段階で魔術を使い付加を施してあります。武具であり魔導具としての効果もあるのです」


「・・・武具としてファッションとしても優れた上に、更に魔導具でもあると?」


「はい。奥様の【御伽噺の外套】には、地属性、水属性、火属性、闇属性の耐性値が6割UPする付加と、土の上。水の中。火の中。光の無い闇の中に置いておくだけで、お渡しした状態に修復するオート修復機能を付加してあります。セイズマン様とジョージ様とアンガス様に贈りました魔導衣には、火属性魔術レベルが1つ上がる付加と、火属性の耐性値が3割UPする付加と、闇属性の耐性値が5割UPする付加と、戦闘時の状態異常【毒】【精神浸食】【精神混乱】【沈黙】回避の付加と、【MP】の最大値を100増加させる付加をしてあります。そして、全て装備者を指定した限定武具です」


「何と、全て・・・装備者指定武具(リュニックファタリテ)ですか・・・」


「貴方。このコートは私だけのコートという事ですか?」


「そうだ。しかも盗まれる心配が無い。持ち主以外扱う事が許されない物だからな」


「なんて凄い。ロイク殿。パマリ家への忠義良く分かった。コルト滞在中は(わたくし)の名に懸けて不自由粗相の無い様にしよう」


『あのコートは希少で高価な物だったのね。価値が分かった途端に・・・面白い反応。フフフッ』


 面白い?ちょっと意地汚いかなって思っちゃったよ。


『欲は人間種固有の思考感情よ・・・悪い事じゃないわ。私の胸好きでしょう?』


 何で、ここで胸なんですか?


『だって、立派な欲じゃない。素晴らしい事よ』


 ・・・


「明日には、王都を目指し出発する予定です。突然の訪問にも関わらず、お会いしていただきありがとうございました。今後とも宜しくお願いします」


「何を今更改まっている。さっきも言ったではないか。今朝起きた貴族領軍の演習時の事故から息子達を救ってくれただけでも信用に値する。次期当主として友好を約束しよう」


「ありがとうございます」


「貴方。今夜、夕食会を侯爵邸で開きましょう。一族や臣下達を集め盛大に祝いましょう」


「夕食会は分かるが、何を祝う?」


「パマリ次期侯爵とシャレット家の親密な関係を披露するのです」


「・・・・・・なるほど」


 セイズマン・パマリ次期侯爵は、少しだけ考えた様だ。


「ロイク殿、マルアスピー殿。夕食会で改めてお会いするのを楽しみにしています。貴方。私は支度があります。それでは」



 バートリー・パマリ次期侯爵夫人は、足早に執務室を退室した。


『神様の予定表通りね』


 そうなると、ここでタブレットを使って、今朝の救出事件を貴族領軍の演習中の魔獣との遭遇事件の様に思わせると良いんだよね?


『救出された人間種や私兵の人間種達がどの様に話を進めているのか分かりませんが、魔獣の群れの存在を次期侯爵に教えると良いのでしょう?』


 ふ~ん・・・とりあえず


「【タブレット】発動≫」


 可視化:対象セイズマン・パマリ


『それっぽく言うのが上手くなったわね。大根役者は卒業かしら』


 ・・・


「ロイク君。それは何だね?」


「はい、この版は、私の神授スキルの1つで魔術の一種です。事前に調べた情報を版上に絵の様に浮かび上がらせる事が出来ます」


「始めて見るスキルだが、それを取り出したという事は、何か私に見せたい物があるのかな?」


『意外に察しは良いみたいね』


「はい。先程、救出時に必要用な情報として、周辺地域のどの辺りまでコルトの治安部隊の効果が出ているのかを調べたのですが、気になる事がありました。ですが、下手に騒ぎを大きくするのもどうかと思いまして、アームストログ隊長には報告しませんでした」


「ふむ。賢明な判断だ。それで、気になる事とは?」


「はい。コルトの町から南へ10Km程行った先にある湿地帯の南部。貴族領軍が演習を行った地点より更に南へ2Km程の地点に、魔獣の群れ。魔獣が集結している様なのです」


「街から12Km程しか離れていない場所に魔獣の群れか?数は?」


「改めて確認し報告させていただきます。【タブレット】検索・コルト町の南10Km地点を中心に半径10Kmを表示」


≪・・・・・・表示します。


「おぉ~版が光ったぞ」


『あれ?声は聞こえてないみたいね』


 そうみたいですね。


「見難いですよね?版サイズUP・・・」


≪今回限り。サイズを10倍に引き伸ばします。


「おぉ~。空中に絵が浮いておる。どれ・・・触れないのか・・・」


 セイズマン・パマリ次期侯爵は、空中に大きく描かれたタブレットの絵を触ろうと何度か指を絵に押し付ける仕草をしていた。


「私の魔力で絵が浮かび上がってるだけなので触れないのです」


「そうか・・・で、この上の方に見えるのは、コルト町で良いのか?」


「はい、コルト町の南側です。魔獣表記を赤の点滅。種類を表示」


≪・・・・・・表示します。


「何だ?この点滅全てが魔獣なのか?」


「その様です」


「泥地石竜子、地火石竜子、闇大石竜子、痺れ魔鰻か・・・」


「点滅が多過ぎて、数が分かり難くわよね?」


「数を表示」



※地図を表示した状態で魔獣の名前と数字が表示※

***********************



 泥地石竜子(ブーリザード)302匹


 地火石竜子(ラーヴリザード)18匹


 闇大石竜子(オプスリザード)19匹


 翡翠石竜子(ジェッドリザード)4匹


 痺れ魔鰻(マグネアンギーユ)115匹



***********************


「ちょっと待て・・・翡翠石竜子がいるのか?」


「そうみたいですね」


「強い魔獣なの?」


「強い方だけど、軍隊なら余裕で討伐出来る魔獣だよ。皮膚や鱗が翡翠だから1匹で数百万NL位稼げるんだよ。しかし、なかなかの数が南に集まっていたようですね」


「これは・・・報告感謝する」


≪チャリーン


「お呼びでしょうか?」


「トッド。街の南12Km地点の湿地に、大量の魔獣が集結しているという正確な情報が入った。貴族領軍に湿地戦闘の準備をさせ今直ぐ掃討殲滅させろ」


 トッドと呼ばれた男性は、空気中に浮かぶ絵を見て驚いている様だ。


「なっ・・・魔獣が400匹以上も・・・」


 数に驚いたのか。


『フフフッ』


「セイズマン様。王国騎士団への要請は如何いたしますか?」


「不要だ」


「かしこまりました」


「私は、まだ話がある。さっさと貴族領軍へ指示して来い」


「は、はい」


 トッドと呼ばれた男性はセイズマン・パマリ次期侯爵の命令を受け速やかに行動を開始した。



「先程の男は、当家で執事を任せています。元宮廷魔術師という経歴を持つ変わり者です」


宮廷魔術師(パレスマージ)ですか・・・凄いですね」


『宮廷魔術師って魔術師よね?』


 そっ!だけど、ただの魔術師じゃないよ。魔術師(マジシャン)の上位の上級魔術師(エリートマジシャン)の更に上位が、宮廷魔術師(パレスマージ)なんだよ。因みに、更に上になると、大魔導士(グレートマージ)賢者(サージュ)とかだよ。


『私って、賢者(サージュ)よね・・・』


 そうですね。


『そっか・・・』


 どうしたんですか?


『なんでもありません』



「ロイク殿。この件は、私が責任を持って対処する。混乱を避ける為にも他言は控えて欲しい」


「分かりました。それでは、健闘を・・・」


「ありがとう。・・・それで、夕食会なんだが、暗くなる前に庭でやろうと考えている。慣れない街の中を動くのも大変だろうから、御者と街移動用の馬車を用意させよう」


『あら、気が利くわね』


「助かります」


「それでは、私も夕食会までに執務を終わらせるとしよう。ランチは程々にな」


「はい。お気遣いありがとうございます。それでは、また後程」




――― 馬車で移動中 14:55


 俺達は、パマリ侯爵邸を後にし、侯爵家の馬車で、冒険者探検家協会(アドベンチャーギルド)コルト支部を目指していた。


『随分揺れる馬車よね?』


 うん?どうして、レソンネなのかなって思ったけど・・・なるほど。俺達の輓獣車両が普通じゃないから仕方ないよ。あれはインチキを全力で施した俺自慢のキャビンだから。


『加工のレベルを上げるって、狩りよりも一生懸命やっていたものね』


 それだけの価値はあったでしょう?


『そうね。でも、まだ2時間も乗車移動してないから、良く分からないわね。フフフッ』


 それもそうですね。ハッハッハ


「ロイク士爵様。奥方様。そろそろギルドに到着します」


「うん?御者のおじさん。俺の父が士爵なだけで、俺は違うから、ロイクで良いですよ」


「・・・そういう訳にはいきませんよ。セイズマン様に大切なお客様だからけっして粗相の無い様にと仰せ付かっております。呼び捨て何てできませんぜ」


「・・・士爵って呼ばないでいただけるなら、何でも良いです」


「分かりました。それでは、ロイク様。奥様。と、呼ばせていただきます」 


『私は何でも良いわよ・・・』


 妙に嬉しそうだけど何?


『う~ん?べ・つ・に!』


「到着しました。馬車はギルドの横に待機させお待ちしております」


「ありがとうございます」


「おじさん。ありがとう」←マルアスピー様


 御者のおじさんは、馬車の戸を開け、簡易の階段を設置すると、


「ロイク様、奥様。こちらが、コルト町の冒険者探検家協会(アドベンチャーギルド)です。御用がお済になりましたら、職員に申し付けください。正面まで馬車をまわしお待ちいたします」


「あ・・・ありがとう。それじゃ行って来るよ」


『変わった話方よね?』


 慣れてないんだよきっと・・・


『面白い人が多い街よね。ここって!』


≪タッタッタッタッタ


 御者のおじさんは、俺達が馬車を降りたのを確認すると、馬車の戸を閉め、足早にギルドのドアを開け待機した。


「ロイク様、奥様。どうぞ」


「ありがとう・・・」




――― 冒険者探検家協会(アドベンチャーギルド)コルト支部


 そうなるよね。


 沢山の視線が俺達2人に集まっている。気にならないってのは嘘だが、気にしていないふりをして、俺は神様の予定表通り獣人族の女性が受付しているカウンターを探し移動した。


「すみません」


「は・・・い・・・。あのぉ~パマリ侯爵家の方ですか?」


「うん?」


『馬車のせいね勘違いされてるみたいよ』


 あぁ~


「いえ、パマリ侯爵家のご好意で馬車で移動しているだけで、私は狩人のロイクと言います」


「私は、妻でマルアスピーよ」


「・・・えっ・・・えぇ~~~・・・えぇ―――」


「どうされたんですか?」


「マスターァ――――――――。大変です。マスタァ―――」


「うっせぇーぞ!一回で良い一回でっ!」


 カウンターの後ろのドアの奥から声が聞こえる。


≪ガチャ コツコツコツコツ


「何だよぉ!俺って今飯食ってたんだよぉ!」


『この人がギルドマスターって人間種なの?』


 さぁ~?


「でも、大聖堂の正門扉を開けちゃった人が・・・」


「はぁ~?開けちゃったって何だよぉ!あれは開かねぇ~扉だろうがぁ!」


「それが、今朝開いちゃったんです」


「開いちゃったのかぁ~・・・そっかっ!・・・・・・って、開く訳ねぇ~だろうがぁ!」


『面白い人が多い街・・・』


 話が進まない。どうしようか?


『面白いから見てましょうよ』


 面白い?騒がしの間違いじゃない?


『そうお?事実を知らない人が、事実を知っている人を、嘘だと決め付け滑稽な対応しているのよ』


 それって面白いっていうのかな?


 男と獣人族の女性のやり取りは10ラフン程続いた。



「で、正門扉の事は今はいいとして、この2人は誰だよぉ!見かけねぇ顔だぞぉ!」


 名乗るタイミングが無かっただけなんだけどね・・・


「俺は、マルアスピー村の狩人で、ロイク・シャレットって言います。彼女は、」


「私は、妻のマルアスピー・シャレットです」


「ほぉ~・・・すげぇー美人だなぁ!しかも良い身体してやがるぜこんちくしょぉ~!」


「・・・」


 何、この人?


『欲望に素直な人間種ってところかしら』


 そういう意味じゃなくて・・・


「あー・・・今、お前なんつぅったぁ~?ロイクって言ったかぁ!」


「はい、マルアスピー村のロイクで間違いありません」


「ま、ま、ま、ま、ま、ま、ま、まじかぁ!・・・やべぇっ!まじかよ・・・」


「ギルドマスターどうしちゃったんですか?」


「扉とかどうこういう問題じゃねぇんだよぉ!・・・このお方は、マルアスピー村夜襲撃魔獣の惨劇の英雄殿だぁ!・・・」


「へぇ~英雄なんですねぇ~・・・・・・・・・・・・えぇぇぇぇぇぇ~うわうわうわうわうわ英雄ですよ。皆さんここに英雄が居ますよ。本物ですよ!英雄ですよ・・・扉も開いちゃいましたけど、英雄ですから開いちゃうかもしれないですよ・・・」


「うぉ~どうすんよ・・・俺・・・英雄殿相手に誰だお前死ねとかと言っちゃったよ。まじやべぇ・・・どぉ~すんよ俺ぇ!あぁぁぁぁぁぁ」


『ここ、噂に聞いていた人間種達の大衆劇場。お笑い広場ってところだったのね』


 いや・・・ギルドでしょう・・・?


『でも、ホラ!』


 あぁ~確かに・・・いや・・・ギルドだよね?



 更に10ラフン経過 15:23


「おほっん。えっと・・・興奮し取り乱し御見苦しい所を見せてしまった。まずは、先程の死ねという発言についてだが訂正する。死ねって人に言っては良くないと部下であるこのバルサに注意して聞かせていただけで英雄様に対してではありませんので、謝罪はしません」


 死ねって言われた覚えはないし・・・それと・・・謝罪はしない訳ね・・・


『何々、まだ続いてるのかしら・・・』


「そして、俺は、この冒険者探検家協会(アドベンチャーギルド)コルト支部のギルドマスターでカルバーン・ヌーだ。言っておくが、英雄様よぉ!俺は子爵位持ちの貴族様だ忘れない様に!」


「子爵様がギルドマスターなんですか?」


「わりぃーのかぁ!・・・いや、何か問題でも?」


「爵位号持ちの当事者貴族様が戦闘って、家の父くらいだと思っていたもので・・・」


「子爵が魔獣相手に狩りしちゃ駄目だっていいてぇーのかぁ~あぁ!・・・えと・・・子爵も魔獣を倒したり狩りする日もあったりしっちゃたりするんですよ。英雄様!」


『1人で2役を始めたみたいね』


「ギルドマスター私の紹介してくださいよぉ~」


「あぁ~?さっきしただろうがぁ!」


「してませんよ。・・・もう良いです。自分でしますから・・・私は獣人種獅子族のバルサです」


「獅子族って猫だろうがぁ!」


「酷いギルドマスター。獅子族は愛玩動物の猫とは違います」


「うっせぇ~。何可愛い子ぶりっ子してんだよぉ!」


 また、始まるのかな?用事済ませちゃいたいんだけどなぁ~。


『・・・フフフッ』


 楽しそうだね・・・


『まあね』


「あぁ~済まん済まん。で、英雄様がギルドに何の用事だぁ?」


 おっやっと目的が・・・


『あら、残念・・・』


「ギルドカードを作りたいのですが、手続きをお願いします」


「ギルドカード持ってねぇ~のかよぉ!」


「はい」


「・・・まっいいけどよぉ!この世界はカード主義だから持ってねぇ~のが珍しいって思っただけだ」


『カード主義?』


 始めて聞いたよ。


『そうなのね・・・』


「ほらぁ~・・・英雄様に用紙持って来いよぉ!たっくぅ~受付のくせして」


「私のせいですか?」


「さっさと持って来い」


「分かりましたよ」


≪テクテクテクテク


「バルサが用紙を持って来るまで、カードについて説明するから、良く聞けよぉ!・・・聞く様に」


「ありがとうございます」


『始まったわ・・・ワクワク』



***カード主義の説明***


 各カードには他にも機能があるが、

 主な機能のみ説明。


 商人商家協会(アフェールギルド)の【MGカード】

 ※現金の代わりに利用する便利なカード※

 ※該当する職への転職が可能になる※

 ※該当スキルの付与が可能になる※


 冒険者探検家協会(アドベンチャーギルド)の【PTカード】

 ※パーティーメンバーの状態が分かる様になる※

 ※パーティー編成を自由に行える様になる※

 ※自分を含めた9人まで可能※

 ※リーダー設定のみ冒険者探検家協会(アドベンチャーギルド)で行う※

 ※依頼・討伐・他の受注達成報告の簡略化※

 ※該当する職への転職が可能になる※

 ※該当スキルの付与が可能になる※


 魔術師魔導士協会(マージギルド)の【WWカード】

 ※適正魔術の訓練講習を受けられる※

 ※該当する職への転職が可能になる※

 ※該当スキルの付与が可能になる※

 ※使用可能魔術を【PTカード】に反映※


 狩人射手協会(アローギルド)の【HAカード】

 ※弓矢の訓練講習が受けられる※

 ※該当する職への転職が可能になる※

 ※該当スキルの付与が可能になる※

 ※矢を非課税で購入できる※

 ※解体手数料がランクにより異なる※


 王立大学学芸院(アカデミー)の【RCカード】

 ※訓練講習を受けられる※

 ※該当する職への転職が可能になる※

 ※該当スキルの付与が可能になる※


 王国教会騎士団(ナイツ)の【Nカード】

 ※訓練講習が受けられる※

 ※該当する職への転職が可能になる※

 ※該当スキルの付与が可能になる※


 ≪位置付け≫


 ※王国管理※

  【爵位カード】(貴族)

  【公職カード】(役職)

  【Nカード】(騎士)

  【RCカード】(学者、魔導)

  【奴隷ID】(奴隷)


 ※商人商家協会(アフェールギルド)

  【MGカード】(金銭)

  【各許可カード】(業種別)

  【御者カード】

  【執事家令カード】

  【メイドカード】

  【他】


 ※冒険者探検家協会(アドベンチャーギルド)

  【PTカード】(あると便利)

   ・傭兵職業軍人協会(メルセネールギルド)の【LNカード】

    *準軍属カード*

   ・狩人射手協会(アローギルド)の【HAカード】

   ・魔術師魔導士協会(マージギルド)の【WWカード】

  【遺跡史跡カード】

  【討伐魔獣詳細カード】

  【他】


 他にもあるが、一例。


***カード主義の説明おわり*** 


「という訳で、英雄様。今、持ってるカードをここに出して貰えるかな?」


「はい。って、俺・・・父の士爵カード(扶養)しか持ってないです」


「私、1枚も持ってません」


「・・・お前等、大丈夫かぁ~?」


「はぁ~・・・」


『面白い展開になったわね。次は親身に心配してからの・・・』


 いや、本気で心配されてる感じだよ・・・


「英雄様は、今年何歳だ?」


「24歳になりました」


「あれ?自分の身分カード持ってねぇ~のかぁ!」


「はい。先日まで個体レベルが1だったので親元からの独立手続きがまだなんです。勅令で王宮に召集されていますので、その際に士爵カード(扶養)を返上して、士爵カード(一族)あまり意味の無いカードらしいですが、両親との家族としての繋がりを国が認めるカードらしいので発行して貰うつもりです」


「いやそうじゃなくてな・・・英雄様の自分自身の身分カードの話だよぉ!」


「・・・何処に行くと貰えるんですか?」


「あれ?ゼルフォーラ王国の国民なら、16歳の誕生日の日に大樹の新兵(ルクリュ)便で、届くはずなんだが・・・」


「持ってないです」


「王都に行ったら、それも確認すると良いぞぉ!」


「そうします」


「てかぁ~・・・あいつおせっなぁ~・・・何処まで取りに行ったんだ?」


『人間種は皆、身分カードって物を持っているの?』


 分からない。俺は持ってないし、両親のカードも見た事が無いし・・・


『カード主義って田舎には関係無い話なのかもしれないわね』


 今度、バラとか村の人に聞いてみよ。


「遅い!遅い遅い遅い・・・先に詳細情報の処理やっとくぞぉ!」


「は~い」


「それでは、英雄様と奥様。両手を出してください」


「はい。それでどうすれば良いですか?」


「まず、右手を、そこにある魔晶石の上に置いて、左手を」


≪パサッ パサッ


 カルバーン・ヌー子爵でギルドマスターは黒い紙を俺達の前に1枚ずつ置いた。


「この黒い紙の上に置いてくれ」


「はい」


『私も?』


 そうです。お願いします。


『分かったわ』


「置きました」


「魔晶石から魔力を貰うイメージで右手から左手に何かが流れる感じをイメージしながら、黒い紙に自分の顔を描く感じでイメージしてくれ」


『イメージばかりで言っている意味が良く分からないわ・・・』


 黒い紙に自分の顔を描く感じだけで良いと思うよ。


『・・・紙に魔力を流すと良いのね』


 ・・・なるほど・・・ありがとうございます。


『どういたしまして、フフフッ』



≪ボッ チリチリチリチリ


 俺が左手を置いた黒い紙が、火に包まれ燃え尽きた。


「え?ぅえぇぇぇ~?何で燃えてんのぉ!」


「すみません。もう1枚いただけますか?」


「あ、あぁ・・・はい・・・」


『魔力を注ぎ過ぎよ。加減しないと』


 まだ、魔力流して無かったんだけど・・・


『・・・紙から手を離してみたらどうかしら』


 なるほど



 そっと、優しく・・・そっと優しく・・・


『フフフッ』



「はい。OKだなぁ!紙、見るから、俺にくれ」


「どうぞ」


「・・・・・・・・・・・・あぁ~?レベル無しとレベル274?・・・はぁ~↑?」


******黒い紙の状況******


 ≪ロイク≫

 

 ロイク・シャレット:レベル274


 設定JOB:無し

 過程JOB:狩人(ハンター)レベルMAX

 過程JOB:皮革職人レベル3

 過程JOB:為政家レベル1

 過程JOB:縫製職人レベル3


 賞:複数予定 有り

 罰:無し 


 称号:竜殺し(ドラゴンキラー)(討伐数)

 称号:古代魔獣殺し(エインシエントキラー)☆1

 称号:S級魔獣殺し(メイユールキラー)☆101

 称号:創造神に愛されし者

 称号:種を越えし愛の旅人

 称号:全属性を扱えし者

 称号:世界創造神のきまぐれ

 称号:大樹の加護



 ≪マルアスピー≫


 マルアスピー・シャレット:レベル不明


 設定JOB:無し

 過程JOB:賢者(サージュ)レベルMAX

 過程JOB:大樹の巫女レベルMAX


 賞:無し

 罰:無し


 称号:大樹の大精霊

 称号:大樹の加護を与えし者

 称号:種を越えし愛の探求者


****黒い紙の状況おわり*****


「ギルドマスター。手続き用紙が切れていたので、作ってきました」


「・・・そっか・・・」


「どうしたんですか?ギルドマスター。ギルドマスター・・・」


「一回で良い。一回で・・・」


「あ、先に登録情報の転写を済ませていたんですね。お預かりいたし・・・・・・ま・・・なななななな、何ですかこれ・・・?」


『2人揃うと最高に面白いわね・・・ここ』


 面白がってはいけない気がする・・・


「あのぉ~どうかしたんですか?先程から変ですよ」


「・・・」


 カルバーン・ヌー子爵兼ギルドマスターは無言を貫いている。


「・・・」


 バルサ獣人種獣獅子族は様子を伺っている。


「・・・」


 カルバーン・ヌー子爵兼ギルドマスターは深呼吸し力を貯めている。


「・・・」


 バルサ獣人種獣獅子族は身構えている。


『パントマイムってネタね・・・表情を見てよ。豊かだわ・・・』


「・・・」


 カルバーン・ヌー子爵兼ギルドマスターは額から汗を流している。


「・・・」


 バルサ獣人種獣獅子族は集中力が切れかけている。


「この用紙は・・・あ・・・」


「・・・」


 カルバーン・ヌー子爵兼ギルドマスターはガッツポーズをし勝ち誇っている。


「・・・お二人は何者ですか?この紙には、【邪属の罪(マルクリム)】という偽称を不可能にする魔術が施されています。つまり、ロイク・シャレットはレベル274で、マルアスピー・シャレットはレベル不明は、真実って事なんです。どういう事ですか?」


「真実って事なんですよね?そういう事だと思います」


「274何て聞いた事も見た事も無いです。それに、不明って何ですか?」


『フフフッ。変なの、見た事も無いって、今確り見てるもの・・・ププ』


 いや、笑っちゃまずいから・・・すっかり忘れてたよ。俺達普通じゃ無かったんだから・・・


『でも、嘘付いたら、神様に怒られるわよ』


 ・・・怒られるって・・・それ以前に、人間として孤立しちゃいそうで怖いです。


『安心なさい。私が居ます。私はロイクの味方です』


 ・・・そういう意味じゃないんだけど



 俺達は、獣人の受付担当バルサさんと、ギルドマスターのカルバーン・ヌー子爵からの質問攻めに合う事になった。マルアスピー様は楽しそうにしていたが、俺にとっては人間としての自身をドンドン失って行くそんな時間だった。



 目的の1つ。冒険者探検家協会(アドベンチャーギルド)の【PTカード】を無事GET!

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