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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ー1ヶ月間の軌跡ー・ーアンデット編ー
149/1227

3-15 聖職者と物流管理の日。

リーファ(R)歴4075年8月2日、地の日。

 俺と共に来たる日に備える事で内容が明らかになる神授スキルが存在する。タイミング的にそろそろ随時明らかになり始める頃らしい。


 協力者や理解者や仲間達が、神授スキルを無事入手出来る様に、何か手伝える事はないだろうか。フォルティーナに相談したところ、意外な事にまともな反応が返って来た。


「待つのもたまには良い物だね。こういう事は急いでは駄目だね」


 変な物でも食べたんじゃないかと少し心配になりました。

 

 これは、復旧復興と発展。趣味趣向を追求した約1ヶ月間の気楽な物語かもしれない・・・。と、いう事で、日と時間をほんの少しだけ遡り・・・日付は......


――― R4075年8月2日(地)


 神授スキル【タブレット】『ゲーム』

 R4075年8月2日※18回目の恩恵※

 【対象者】フォルティーナ のみ

  ※女神の実際の神気は億や京※

  ①神気6108万から7108万まで許可

  ②眷属の神気8倍

  ※実は機能していない※



 俺は、知の神殿の傍にある。パフさんの母リディアさんが経営している書籍屋に足を運んだ。


 開店前という事もあり、店にはリディアさんとパフさんと俺しか居ない。


「陛下」


「リディアさん。俺達しかいないんですから、ロイクでお願いします」


「か、畏まりました。ロイク様」


 様は付いてても仕方ないか・・・。


「ロイク様。本当に母で大丈夫でしょうか?」


「私で大丈夫?って、パフ。何の話かしら?」


 リディアさんは、平積みにした書籍の埃を慣れた手付きで払いながら、パフさんと話をしている。


 ここはパフさんに任せて、俺は聞いてよっと。


「昨日。ロイーナだって話をした時に、大きな図書館を建設予定だって言ったでしょう」


「知の神殿の傍に建築予定って言っていたわね」


「ロイク様は、お母さんを図書館の館長にとお考えです」


「私に?」


「知の神殿の周りは、読書を楽しんだり、語り合ったり、意見をぶつけ合ったり出来る公園が整備されてるでしょう。その公園と家のお店の間に、図書館を建設する事になったの。図書館を利用出来るのは連合国家フィリーに加盟している国の人達だけで、出入口は左右の扉だけ。お店には図書館側から中央の扉で直で入店出来るけど、お店から図書館へは直で入館出来ない様にするそうよ。大通りに面した中央。今の場所で書籍屋を続けながらでいいから、館長をお願いしたいそうです」


「私は、書籍を販売するだけで、学がありません。それでも宜しいのでしょうか?」


「リディアさん。そこが重要何ですよ。各国の派閥や有識者達って、変な派閥があって、中立の立場で書籍を扱って貰えない気がするんです。その点、リディアさんは、イオンさんの代から続く売ってくれないで有名だった。生粋の書籍屋のオーナーじゃないですか」


「書籍を売らないと、御客様と喧嘩していたのは私の祖父イオンで、父ジェレミーも私も困っていたのですが・・・」


「その位書籍が好きな書籍屋の現オーナーですよ。書籍ならリディアさんだって思ったんです。パフさんを館長にって意見もあったんですが、パフさんを1人で市街地に出すとなると警護だの護衛だのと一騒動が予想されるので却下になったんです」


 リディアさんには、AIRAから2人の諜報員が警護の為、常時張り付いている。彼女が気付いた時に話すつもりでいる。


「考える時間をいただいても宜しいでしょうか」


「はい。建築用のマジシャン(魔術師)達の育成も兼ねているので完成するのは早くても半年後です。強制する気はありませんので、ゆっくり検討してみて貰えると助かります。世界中の書籍と俺が所持している古い書籍の複製。神々様の神学書。正創生教の経典。魔術書やスキルや様々な資料や図鑑。各国の法律書等も蔵書する予定なので、1500万とか2000万点の書籍を管理する事になると思います」


「館長やります。是非、やらせてください」


「え?」


「私の夢。理想とする世界。書籍との世界が図書館には広がるのですね」


「え?」


「私も地属性の魔術が扱えます。何でしたらパフも地属性の魔術が扱えます。半年と言わず。一週間で仕上げましょう」


「え?」


「そうと決まれば、パフ。店の書籍を倉庫まで移動するわよ。こんな所に建物があったら図書館建設の邪魔よ。書籍を移動させたら、こんな邪魔な建物さっさと更地にするわよ」


「お・・・お母さん・・・」


「パフさん。リディアさんどうしちゃったのかな・・・?」


「学術書や歴史書や図鑑は書籍。法律に関する書籍は宝書。宗教に関する書籍は聖書。書籍よりも宝書や聖書は高尚なる存在で書籍と一緒に考える事は過ちだと考える学者さんが多いそうです。ですが、家の母や祖父は書籍は書籍。誰もが自由に知識や他人の考えを知る事が出来る物が書籍。書籍に優劣等無い例えそれが風俗を乱すような大人な何かだとしてもって。ロイク様が全てを書籍扱いで蔵書すると・・・ですのであれです・・・すみません」


「なるほど」


 本を集めるって言っただけでねぇ~・・・。売らない書籍屋・・・貸さない図書館とか・・・大丈夫かなぁ~?



 図書館が完成するまでの間、知の神殿の左隣にあった書籍屋を、知の神殿を囲む公園の一画に移す事にした。


 俺は、神授スキル【転位召喚・極】で、書籍屋を移築した。


「図書館が完成するまで、すみませんがここで経営してて貰えますか?」


「ここ、知の公園の正面ですよ」


「書籍屋だし、知の神様も喜ぶと思いますよ」


「罰があたらないかと・・・」


「え?知の神様ですよね?・・・知識や知恵の向上に貢献する行為に罰ってまさかぁ~ハハハ」


「ロイク様。神殿から誰か走って来ます」



「お前達。誰の許可を得て、神聖なる知の神殿の目と鼻の先に、この様な小汚い小屋を建てたぁっ!」


「パフさん誰この人?」


「さぁ~知りません」


「貴様。私を知らんとはぁっ!田舎は何処だ領主に貴様の悪行を事細かく報告してやるからな。覚悟しておけ」


「それは構いませんが、貴方は誰ですか?先日、知の神殿を建立した時には、まだ神官も巫女もいなくて正創生教会の神官達に手伝って貰ったのですが・・・」


 神官や巫女や修道士や修道女。聖職者や神学校の生徒達のリストは提出する事になってるとかってchefアランギー様と首相のルードヴィーグ卿と副首相のマクドナルド卿が言ってた様な・・・。


「貴様。神聖な知の神殿を愚弄するか。衛兵。衛兵」


 神殿警護の為に、組織された神殿警備隊は、王国警備隊に所属している。



「聖なる神殿を侮辱する輩です。捕らなさい」


 警備隊員達は、偉そうな男の命令が聞こえるや否や、俺の前に2列に並び跪く。


「な、何をしている。早く捕らないか!?」


「国王陛下。パフ王妃。パフ王妃様の御母上様。この様な場所に警護も付けづ如何なされましたか」


 16人の警備隊員。その隊の隊長と思われる男性だ。


「国王陛下!?・・・陛下だと・・・」


「知の神殿の神官長。ロイク・ルーリン・シャレット陛下の御前です」


「あ・・あ・・・あ・・・・あ・・・・・」


 偉そうな男は口から泡を、股間を濡らし気絶した。


「して、不審者はどちらでしょうか?」


「彼の名を知って者はいるか!?」


「はっ!彼は知の神殿の神官長で、トーマス・ワシントン。亡トミーサス王国の伯爵家の遠縁の一族の親戚で、名誉男爵様です」


「つまり、何だ・・・。亡トミーサス王国の名誉男爵って事かな?」


「だと思われます」


「ロイク様。その前に、登録や報告の提出書類の行き違いがあったのかもしれません。確認の為、役所にお連れした方が良いのではないでしょうか?」


「そうですね。・・・えっと。隊長」


「はっ!」


「神官長を知の神殿エリアの区役所にお連れし聖職者登録の確認を。それと、その前に着替えをした方が良いか・・・」


「はっ!副隊長」


「はぁっ!」


「お前に兵を3人預ける。神官長殿を区役所まで御案内する様に」


「はぁっ!」


「隊長それとなんだけど、これ書籍屋何だけど、図書館が完成するまでここにあっても問題無いと思うんだけど、どう思う?」


「問題ありません。陛下の御言葉は絶対です。問題あるはずがございません」


「何か意味が違う気がするけど、まっ良いか。という事で、リディアさん。書籍屋休業は無しです。建築の手伝いは大いに歓迎しますが、本業に支障が出ない程度でお願いします」


「は・・・はい」


「あっ。そうだ。隊長」


「はっ!」


「この店の周囲も神殿と同じ様に警備しておいて貰えると助かるんだけど良いかな?」


「はっ!」


 OKって事で良いのかな?はっ!だけじゃいまいち良く分からない。軍や騎士団や警備隊の人達の挨拶の仕方を何とかしないと意思疎通で失敗しそうだ。


「頼んだよ」


「はっ!」


 何だかんだで、スカーレット大図書館完成までの計画は、順調に進んでいます。



 パフさんと俺は、リディアさんを移築した書籍屋に残し、ゼルフォーラ王国コルト地方ブオミル領侯都ロイのロメインさんのバトン宝石商会の本店のVIPルームへ、俺の神授スキル【フリーパス】で移動した。


「ロイク様。ロメインさんを呼んで来ます」


 パフさんがドアを開けようとドアノブを掴んだと同時に、ドアが廊下側へ開いた。


「あっ。ットットットット」


「こ、これは、パフさん、様」


「吃驚しました。突然ドアが開く何て」


「パフ様。私もです。商会のVIPルームを開けたらパフ様の姿があるじゃないですか・・・御相子です」


「ロイク様もおられます」


「なっ!」


 ロメインさんは、物凄い勢いで部屋に駆け込んで来ました。



「調べて欲しい事ですか?」


「最近、ミスリル製を騙った武具や装飾品が出回ってますよね」


「はい」


「調べてみたら、ロイが生産の拠点になってるみたいなんですよ」


「ロイがですか!?証拠が?・・・」


「鉱石とか宝石とか砂や土や植物や動物って、産地によって微妙に違うのは知ってますよね」


「はい」


「鉱石の原産地も、製品の特長も、ロイで間違い無いみたいなんです」


 俺は、タブレットから、ミスリル製を騙った剣を1本取り出し、ロメインさんに鞘ごと渡した。


 ロメインさんは装飾を確認した後、剣を抜き刃を確認する。


「ロイの鍛冶技術によって打ち出された剣に間違い無い様です」


「ロイク様。鍛冶師や工房の職人達が、素材を偽って卸すでしょうか?」


「製造を依頼している商人が怪しいと思ったのでロメインさんに相談しに来たんです」


「なるほど」


 パフさんは頷いていた。


「旧職人街を見に行きますか?」


「旧職人街?ですか?」


「はい。旧坑道から奥は、アシュランス王国領内ですので、旧検問所から外はアシュランス王国です」


「職人街はどうなってるんですか?」


「6地区全て、アシュランス王国です」


「ロイク様。偽物って、家の国で製造されてるって事になりませんか?」


「・・・そうみたいですね。職人街が家の国になった経緯って何ですか?」


「経緯も何も、東モルングレー山脈は、大樹の森の山脈です。本来鉱山もアシュランス王国の管理下です。集団神授を経験した誰もがそう考えています。ですが、鉱山を失ってはロイの経済は破綻します。産業は大打撃を受けます」


「だと思います」


「ロイク様の便宜だと伺っておりました」


「え?・・・だったら、職人街もロイで良いと思うんですけど・・・」


「地の迷宮や、大地石の祠がある地を、ゼルフォーラ王国が管理するのは、連合国家フィリー加盟各国や諸外国が黙っていないでしょう。神授による啓示は創造神様の御意思です。生活の為の御好意と信仰の為の御意思です」


 意味が良く分からないが、職人街はアシュランス王国の管理地って事な訳か。


「パフさん。戻ったら、職人街の責任者と派遣する警備隊をどうするか話合う事にします。皆に連絡しておいてください」


「ロイク様。ゼルフォーラ王国とアシュランス王国にも国境はありますが、検問や出入管理所はありませんし、軍や警備隊は連合軍として、共同防衛隊・共同警備隊が組織されていますので、警備隊を改めて派遣する必要は無いかもしれません」


「そうなんですか?」


「はい。代表者も、職人街にいるのではないかと・・・」


「あぁ~・・・なるほど」


 自分の国の事なのに、知らない事ばかりだ。確りしないと・・・。


「鉱石はゼルフォーラ王国のロイ。製造はアシュランス王国の職人街って事になるから、ロイの方はロメインさんにお任せします。信用問題だし大事になる前に片付けてしまいましょう」


「分かりました。ロイのアフェールギルド(商人商家協会)ギルドマスター(協会長)として、傘下の鉱石組合を内々に・・・」


「武器商人に防具商人。武具関連の商人もお願いします」


「畏まりました」



 パフさんと俺は、職人街の金属地区に、俺の神授スキル【フリーパス】で移動した。


 目の前にあった一軒の鍛冶屋に入る。


「いらっしゃいませ」


 12歳位の女の子が声を掛けて来た。


「アシュランス王国王都スカーレットから、旧職人街の様子を確認しに参りました。責任者のロイクと、補佐役のパフと申します」


「アシュランス王国からですか?」


「はい。旧職人街は、創造神様の御意思によりアシュランス王国の管理下にありますので、王都より様子を伺いに参りました」


「おい。誰か来たのかぁっ!俺は鍋は打たねぇ~からなぁっ!」


 奥から男の嗄れ声が聞こえる。


「お爺ちゃん。アシュランス王国の王都から責任者と補佐役って人が来たぁっ!」


「はぁ~!?責任者だぁっ!補佐役だぁっ!・・・何だそれ、責任者は頭領だろうがぁっ」


「それが、様子を見に来たって言ってる」


 大声で、俺達の前でする様な会話では無いと思うけど・・・。


「知るかよそんな事ぉっ!帰って貰え。俺は鍋は打たねぇ~」


「という事なので、祖父は鍋は打ちません。お帰りください」


 ・・・鍋を依頼しに来た覚えは無いのだが。


「君の名前を教えて貰えませんか?」


「わ、私をどうする気ですかっ!?」


「・・・どうもうこうも何もしません。名前が分からないと話がし難いだけです」


「そうですか・・・。分かりました。私の名前はゲルダです。祖父はゲオルク。鍛冶師の頭領です」


 あれ?・・・鍛冶師の頭領って、旧職人街の責任者なのかな?


「ロイク様。子供相手に話は時間の無駄です。鍛冶師の頭領ゲオルクさんと直接話をした方が良いのではないでしょうか?」


「ですね」


「補佐役さんは、祖父の知り合いでしたか?」


「えっ?」


「祖父は他人に余り名前を名乗りません。名前を知ってる人は少ないんです」


「えっと・・・そうです。知り合いです」


 この子。・・・・・・深く考えるのは止めておこう。うん。優しさだ。


「お爺ちゃん。お爺ちゃんの知り合いだった」


「俺の知り合いだぁ~!?おかしぃ~なぁ~・・・。どんな感じの野郎だぁっ?」


「えっとぉ~。10代の女の子」


「女だぁ~?・・・おめぇーの友達じゃねぇ~のかぁっ!」


「お爺ちゃんの名前知ってたぁっ!」


「じゃぁ~。知り合いの孫娘か娘って事だなぁっ」


「だと思う」


「おう。だったら会わねぇ~となぁっ!」


 この会話も俺達の前でしない方が・・・。



 頭領ゲオルクがやって来た。


「誰だぁっ?おめぇ~等」


「私は、補佐役のパフと申します」


「親父と祖父さんの名前を言ってみろぉっ」


「私の祖父はジェレミー。父はリカルド。曾祖父はイオンです」


「イオンって本屋のイオンかぁっ!?」


「はい」


「そっかそっかぁ~。パフだなんて偽名使ってどうしたぁっリディア嬢」


 リディア嬢?・・・あぁ~。


「リディアは私の母です」


「おぉ~そうかぁっ。それで、何しに来た。俺は鍋は打たねぇ~からなっ!」


 余程、鍋を製造したくないんだろう。どうしてかは知らないけど。


「ゲオルクさん。最近の事です。ここ旧職人街で製造された剣が、素材の偽称商品として出回っています」


「まじでかぁっ・・・」


「はい。アシュランス王国では市場に出回る前に全て回収出来ていますが、ゼルフォーラ王国やララコバイア王国には既にかなりの数が出回っていると思われます」


「素材の偽称・・・何って偽ってるんだよぉっ」


「ミスリルです」


「まじでかぁっ・・・」


「お爺ちゃん。ミスリルって勝手に加工しちゃダメだったんじゃ」


「あぁ~・・・。王国の許可無く加工すると最悪死刑になる・・・」


 なるほど。ここはゼルフォーラ王国じゃ無いから加工して良い訳か。・・・あっ。加工すらしてないのか、偽物な訳だし・・・。


「アシュランス王国では日常品レベルでミスリル製品が安価で出回っています」


「安価のミスリル製品だぁ~?それが、偽物として回ってるんじゃねぇ~のかっ!」


「残念ですが、偽物はミスリル含有率が0%の商品です。アシュランス王国内に安価で出回っているミスリル製品は、ロイク様が開発されました。シャレット合金と呼ばれる。ミスリル25%以下。スチール15%~50%。クリスタル15%~50%。ヒスイ10%。ミスリルは最低でも3%は含有しています」


「3%かぁっ!・・・日常品レベルで3%はすげぇーなぁっ!」


「お爺ちゃん?」


「見習いのおめぇ~は知らねぇ~かもしれぇ~けどなぁっ!通常ミスリルの剣って俺達の世界で呼ばれる剣はなぁっ!ミスリルが10%程度の剣の事でなぁっ。ミスリルでメッキ加工した剣もミスリルの剣だって言い張る鍛冶屋もいるくれぇ~何だ」


「おい。そこの兄ちゃん。おめぇ~何かミスリル製品持ってねぇ~のかぁっ?王都では日常品で出回ってるんだろうっ。何かあんだろうっ」


無礼(ブレ)


 俺は、パフさんを制止した。


「そうですね。公民館に旧職人街に居る鍛冶師や鍛冶屋を全員集めてくれるなら神純度。100%のミスリルをお見せします。どうですか?」


「か、か、神純度だぁっ!?」


「そうです」


「嘘だったら。てめぇ~どうなるか分かってるだろうなぁっ!」



 ゲルダさんに案内され、公民館に移動した。


 旧職人街ははっきり言って狭い。頭領ゲオルクさんは、態度の悪い男達を小一時間で100人以上集めてくれた。青年や若い女性の姿もちらほらと見受けられたが、子を育て育む世代の男女の姿が極端に少ない様だ。


「ゲオルクさん。鍛冶師や鍛冶屋はこれで全員ですか?」


「あぁ」


「老人と子供ばかりみたいですが、他の皆さんは?」


「日中はロイだぁっ!夜遅く寝に帰って来て、朝早く仕事に出かけてるんだよぉっ!それが何だよぉっ。文句でもあんのかぁっ!あぁ~」


 国境はあるけど、出入に制限が無い。輸出入も関税等一切無い状態。労働の場合の税金ってどうなってるんだろう。ふと疑問に思ったが俺には分からない。戻ったら誰かに確認しようと思う。


 今は、偽物のミスリル製だ。


 俺は、タブレットから、神純度、ミスリル100%の剣と鋳塊を取り出し、公民館のテーブルの上に置く。


「これは、ミスリル100%の剣と塊です。確認してくれて構いません」


 何処から出したんだと声が聞こえたが無視して話を進める。



「こんなすげぇ~もんを・・・。おめぇ~はいったい」


「ゲオルクさん。こちらは、アシュランス王国国王ロイク・ルーリン・シャレット陛下です」


 パフさんがそっと耳打ちし教えた様だ。


「なっ!・・・大樹の英雄だと・・・。証拠はぁっ?」


「アシュランスカードでも見せていただきますか?」


「そ、そんな事して本物だったらどうすんだよぉっ!・・・不敬罪で処刑されちまうだろうがぁっ!」


「ロイク様が、その程度の事で人を処刑したりすると?」


「・・・今は信じておいてやらぁ~。次会う時に分かる様にしてくれぇっ!」



「頭領。すげぇ~本物のミスリルだぞ」


「すげぇー・・・鉱石鑑定したら。100%って・・・これ幾らするんだよ」


「この鋳塊20Kgだから・・・家一軒くれぇ~じゃねぇ~のか?」


「馬鹿かおめぇ~。ミスリル10%位の剣で、800万NL以上するんだぞ。20Kgあったら何本作れるか考えてみろよ」


「ぶはっ・・・億NLかぁっ・・・。あのわけぇ~男。すげぇ~奴じゃねぇ~のか?」


「何処かの貴族のボンボンとかぁっ!」


「当主でも、ミスリル100%を20Kgとかありえねぇ~って・・・」



 そろそろ頃合いかな?


「今、見せたミスリルを騙った商品が、ここ旧職人街で製造され、各国で出回っています」


≪はぁっ?ありえねぇ~よ


「俺は、皆さんが製造した商品を、ミスリル製だと偽って流通させている商人がいると睨んでいます。鉱石や商人の方はロイに任せましたが、アシュランス王国側の問題はアシュランス王国で解決したいと考えています」


「リディアじゃねぇ~や。パフ。俺達はどうしたいい?」


「ロイク様。彼等は・・・?」


「この1ヶ月の間に納品した商品のリストと納品先をまとめた資料を見せて欲しい。金銭の報告は必要無い」


「顧客情報を開示しろだとっ!」


「頭領。そんな事出来る訳ねぇ~」


「信用あっての俺達だぞ」


「パフ。流石に職人として顧客との取引に関しては・・・」


「皆、何か勘違いしていないか。これは、職人と商人の信用以前の問題だ。職人として国の信用を失って商人と取引が許される訳が無いだろう。提出を拒む者は偽物の商品を流通させた共犯者として逮捕拘束する。分かったか」


「てめぇ~みてぇ~な若ぞぉにふざけるなぁっ」


「そうだ。何の権限だぁっ。てめぇ~こそ職人街の秩序を乱してる張本人じゃねぇ~かよ」


「ま、待て。静かにせい」


≪頭領


「こ、この、こちらの、こちらにおわす・・・あぁ~良く分かんねぇ~。この人は、アシュランス王国の王様だぁっ!」


≪はっ?


「だからぁっ!。俺達の国の王様なんだよぉっ。分かったかぁっ!」


≪はぁ~~~!?



 取引リストを入手した俺は怪しい商人や商家をロメインさんに伝え、怪しい貴族に関しては聖王イヴァン陛下に直接伝える事にした。


 協力していたと思われる2人の鍛冶師の処遇は、頭領ゲオルクさんに一任した。



 この日以降、聖職者と物流の管理が強化される事になる。


 商人商家の商品は必ず検品される事になってしまったのである。


 神々様から啓示を受けたり、神学校や正創生教の宗教学校を卒業し神官や巫女として教会や大聖堂や神殿に聖職者とし派遣される。例外として修道院や孤児院からのエスカレーターも存在する。聖職者の管理が強化され。アシュランス王国の神殿から聖職者達が8割以上も姿を消し一部混乱状態に陥ってしまったのは内緒だ。逮捕拘束を逃れ夜逃げした者達が多かったからであって、弾圧したからではない。


 正創生教会と幸運の神殿から、暫くは神官や巫女が派遣されたそうだ。

ありがとうございました。

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