3-9 ゼルフォーラ砂漠調査の日⑤~タブレットと神様は使い様~
リーファ歴4075年7月29日、闇の日。
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「【タブレット】『検索』対象:運を司りし遊びの女神フォルティーナ」
≪・・・検索中 ・・・検索中
タブレットの画面には、アシュランス王国王都スカーレットのエルドラドブランシュのファミリーエリア3階のリビングルームの見取り図が表示されている。
≪・・・対象は0件です。
「駄目みたいです」
「仕方が無いね。次はフォルトゥーナでやってみるね」
「分かりました。【タブレット】『検索』対象:運を司りし遊びの女神フォルトゥーナ」
≪・・・検索中 ・・・検索中
≪・・・対象は1柱です。
「来ました」
「表示するね。Goだね」
「はい。『視認対象』:家族、眷属、眷属神と神様達・『画面選択』:100インチ(縦124.5cm/横221.4cm)・『表示座標』:リビングルームのテーブルの上30cm・『表示方法』:東西南北4方向・『表示対象』:画面上に青色」
≪・・・干渉規制強化対象です。
「駄目みたいです」
「おんや、居場所の特定に規制ですかぁ~なるほどなるほど。はい」
「そうな......
「ちょっと、貸してみるね。【タブレット】『認証更新』対象:フォルティーナ・『視認対象』『画面選択』『表示座標』『表示方法』『表示対象』に変更無しだね」
......んですよ。って、また勝手に・・・」
≪・・・表示しました。
「えええぇぇぇ!!!どうして?」
「当然だね。自分の事を検索出来無いスキルが在ってたまるかね」
「アランギー様を検索して表示してみて貰えますか」
「分かったね。『検索』対象:アランギー」
≪・・・該当は1柱です。
「表示するね。Goだね」
≪・・・表示しました。
「えっ!?」
「あら。ねぇロイク。フォルティーナは第二神の大上神よね。もしかしてなのだけれど、自分より神格が下の存在の検索に対して干渉規制は無いのかもしれないわ」
「ありえますね」
フォルティーナならもしかして!
「フォルティーナ。アシュランス王国領のゼルフォーラ砂漠にあるオアシスグラースの地下を検索して貰えますか」
「分かったね。『検索』対象:悪狸神・『座標』Colt-c135-to004-lo179-ré0920・『表示方法』:地上から地下50mの見取り図」
≪・・・該当は1柱です。指定座標を見取り図で表示します。
宙に映し出された画面には、地下4階まである大きな人工物が表示されていた。
「な、何ですか今のは!?」
「何とは何だね。言われた通り、悪狸神の居る場所を検索したね」
「悪狸神って神様の事ですよね?」
「何を言ってるね。悪狸神が神でなかったらいったい何だね?」
あの地下研究施設に存在する神様の1柱は、悪狸神様って事か・・・。
「神気の正体が1つは1柱様だと分かっただけでも進展です。それとですね。今、愛と憎しみの館の時の様に座標で直指定しましたよね?」
「当然だね。場所が分かっているのに検索する何てナンセンスだね。指定して表示するこれ常識だね」
「フィーラから転移移動したと思われる地下研究施設の場所。始めから知ってましたね?」
「当然だね。その程度の事あたしには造作もないね」
「最初から教えてくださいよ。エリウスさんまで巻き込んで、マルアスピーと俺は朝から砂漠を徘徊してたんですよ」
「僕も手伝ったぞ」
「問題はだね。そこでは無いね」
・・・そこが問題だろう。
「かなり問題だと思います」
「えぇ。知っていたのなら、来たる日に備える効率を優先するべきね」
「この世界での名前は知らないね。この世界の地名は人間種が勝手に名付けたね」
「便宜上であれ、名前が無いと不便ですからね。一纏めに山、森、川、海、湖、町って言われたら逆に何処の事なのか分からないです」
「だからあたしは言ったね。前は大樹の森だったね。でも、今は砂漠だね」
大樹の森が砂漠になった場所。確かに情報としては漠然としているが、調べれば直ぐに分かる範囲ではある。
「その砂漠にあるオアシスの下だね。研究施設はそこに転移移動したね。邪落ちした遊がいるね。もしかしたら眷属が居るかもしれないね」
砂漠にある3011個のオアシスの中のどれかの地下に・・・
「時間時代の経過を踏まえ話したね」
もっと、場所を絞る事も可能だっただろうに・・・。これ以上は止めておこう。この女神に悪気など微塵も無い。ただちょっとあれなだけだ。
「結果。あたしのおかげで研究施設が見つかったね。うんうんだね」
結果・・・確かに・・・。
「そうですね・・・」
「ゼルフォーラ砂漠のどの辺りなのか場所を限定してくれていたのなら、もう少し早く見つけ出す事が出来たでしょうね。それに、ロイクや私よも高い神気を持った存在が居ると知っていたのであれば、事前に話して欲しかったわ」
「気付いていると思っていたね」
「検索が不可能な状態なんですよ。邪属性の結界のせいで、施設の真上に行くまで感知すら難しい状態なんですよ。気付ける訳無いじゃないですか」
「あたしは、気付いたね」
「おんや。私も気付いておりましたですぞ。はい。神気の正体までは分かりませんでしたが、3柱は間違いなく」
「アランギー様。3柱だけですか?」
「はい。神気力が1や2は、神界や神域の燃やして良い塵に付着した神の神液類よりも神気が低いのです。日常の塵を意識し暮らす存在はそう多くはありません」
神気が1や2は、ゴミ以下って・・・意味は違うんだろうけど、聞く人によっては凹むなぁ~。
「あたしは、ゴミと神と神気を持った存在の区別位は余裕だね」
「キューンキューンだね。お前は腐っても第二神それ位出来て当然なんだな」
「当然だね」
腐ってもかっ。
「もはや人間と呼ぶには大き過ぎる神気を持つ神に愛されし24歳位に見えなくもないこのコルト下界で守護聖人管理者として創造神より神授を与えられし女神と神獣と精霊と悪魔と人間の女を嫁とし許嫁とし公認されたプレイボーイなる青年よ。悪狸神は、邪の神の眷属神なんだな」
「左様。悪狸神は二級下級神。我より、我が従う神に近い眷属神だ」
二級下級神様なのか。神鰐のクロコダイアンさんよりも神格の階級が1つ上なのか。しかし、分からないなぁ~。二級下級神の悪狸神様の神気は15万強16万に近い次元。三級下級神のクロコダイアンさんの神気は16。五級神のアルさんは20。この神気力の差と階級にはルールがあるのか?
まっ。取り合えず神格については保留にしておこう。調査の件が片付いてからゆっくり話し合うしゆっくり聞くと約束もしたしな。今は、神授スキル【タブレット】の能力と、オアシスグラースの地下の調査をどう進めるのかが最優先事項だ。
そうなると、やっぱりフォルティーナに確認だな。
「フォルティーナ。悪狸神様の他に神気を持つ存在が4つか5つある様ですが、正体は分かりますか?」
「遊びの女神よ。我は、我が従う神の命により、遊の系譜を辿っている。悪鬼神は神界の牢獄に再収監される時、我に言った。悪鬼神が遊にした存在は全部で21人だと。心当たりはあるか?」
俺が切り出すと同時に邪神竜様も切り出した。
「あっ。済みません。邪神竜様お続けください」
「うむ」
女の子の容姿で、本来の姿の時と同じ所作は、何か可愛らしくて面白いな。
「眷属神や眷属達が、コルト下界にばら撒いた邪落ちした存在から、辿ろうという訳かね」
「そうだ」
「邪の祝福を与えられた存在から祝福を与えた存在が分かるんですか?」
「当然だね。ロイク。考えてもみるね。あたしの冥護。アスピーの加護。他にも色々君は与えられているが、全て誰から与えられたか分かるね」
「でも、同じ事が出来る邪の神様の眷属神様や眷属は沢山存在しているんですよね?」
「そうだね。だがだね。・・・調度良いね。マリレナ。こっちに来るね」
「は、はい・・・」
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「えっと、私がロイク様に風の精霊の加護を与えると良いのですか?」
「そうだね」
「どうすれば良いのか分かりません」
「精霊の事は精霊に聞くね。あたしは神で精霊ではないね」
自分で振っておいてこれだもんな。相変わらず無責任な・・・。
「マリレナ。精霊の加護は簡単よ。【Kiss】するの」
「接吻ですか」
接吻って・・・。流石です!
「えぇ。Kissしている時に、ロイクに身も心も捧げたい。ずっと一緒にいたいと願うの」
「分かりました。やってみます」
「はっ!?い、今ここでですか?」
「さぁ~今だね」
「いやいやいやいや。それおかしいですから。そういう事は神様達に見守られながらやる事じゃないですから・・・後で、後で」
「ほう、2人でこっそり大人な時間を過ごしたい訳だね。ロイク。君もやる様になったねぇ~だね。アスピーやアル、あたしのおかげだね。うんうんだね」
「なっ・・・何言ってるんですか!さ、さっ、調査をどうするか続きを話し合いますよ」
「その前に、我の要件が先だ」
「う~ん・・・う~ん・・・ふむふむだね・・・・・・おっそうだね。この件はロイクの方が詳しいね。ロイク。君が邪神竜に答えるね」
「はぁ~↑?」
「ロイク殿よ。答えて貰おう」
「えっと・・・ですね」
「我に協力するならば、悪鬼神からの情報を提供しよう」
おっと。指令③に繋がる有益な情報かもしれないし、かなり有難い。
「分かったね。ロイクが協力するね」
って、勝手に話が・・・。勝手に進めないでぇ~。
「良かろう」
邪神竜様は、右手の親指と人差し指の腹を3カウン程合わせると、左右に指を開きながら俺へと腕を伸ばした。
それと同時に、俺の頭の中に情報が流れ込んで来た。
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「今のは?」
「21の情報だ」
「なるほどだね。うんうんだね」
フォルティーナも同じ情報を受け取った様だ。
「全てここコルト下界の人間種だ」
「そうみたいですね」
「我に開示せよ」
俺が持ってる情報は・・・。
「えっと、見覚えのある顔が3人いました。1人は、家で拘束している樹人族だった存在です。もう1人は、その拘束している存在の記憶の中にいたヴァルオリティア帝国軍貴族士官用軍服姿の人間族の男で、この遊はどうして性別の識別が可能なのか不明です。もう1人は、邪神竜様や悪狐神様も御存じの遊で、ブオミル領侯都ロイの領主館の地下13階に居る魔人族です」
「なるほど。18人については知らぬ訳だな」
「はい。残念ながら・・・ですが、創造神様から神授していただいた情報をこちらも開示します。邪神竜様。提案なのですが、情報を照合し常に最新の状態で共有しませんか?」
「うむ。良かろう」
「まず、神界の牢獄から逃亡した神様は5柱です。その内1柱は、悪鬼神様で既に再投獄されています。条件はゴルゴ―ンの真実の完成。完成した際には見せに行く事になっています。残り4柱は、居場所もそうですが名前すら分かりません」
「脱獄当時。神界でトップニュースとして扱われ誰もが逃亡犯の名前を知っていると思っていたのだが。そうか人間種には伝わらなんだか」
「・・・少し前まで神様は創造神様1柱だと信じ信仰していた世界です」
「我もコルト下界は数億年ぶりであった。人間種を見たのは、ロイク殿が初めてであった」
「なるほど。美味そうな匂いがした」
美味そうって、当然食べ物としてだよなぁ~・・・。
「それは、私も思ったぞ。キューンキューンだな。この世界は美味そうな匂いに溢れかえってるんだな」
「おんや。当然ですぞ。はい」
食べ物の話になったから来ると思ったけど、短くまとめてくれたんですね。
「それで、脱獄した神様は何と呼ばれる神々様なのですか?」
「四級神の赤毒蛇神。三級下級神の棺桶犬神。三級下級神の悪鬼神。六級下級神の邪犬歯神の左。七級下級神の邪耳神の左。聞いての通り、邪犬歯神と邪耳神は邪念の神の1部だった存在が神格を持った神だ」
「あっだね」
「どうしたんですか?」
「何だ遊びの女神よ」
「地下施設に居る神気力2の神だがね。邪耳神だね」
「指令③が更新出来そうですね」
「あっだね」
「遊びの女神よ。先程から騒がしいぞ」
「右耳の方だね」
「何か違うんですか?」
「全く違うね。右耳と左耳では、犬と猫位違うね」
「かなり違いますね」
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「未確認の遊がいるのは間違い無いね。さぁ~ロイク。拘束して来るね」
何言ってるんだこいつは!話聞いてなかったのか?
「ほぉ~。15万強の神気を持つ悪狸神様を、頑張っても神気38160の俺に拘束して来いと!?無理に決まってるじゃないですか」
「無理ね。神気76324の私でも不可能よ」
「フォルティーナ様。主殿とマルアスピー様に死ねと仰られるのですか?」
「何を言ってるね。相手は、神気力158700の【悪狸神】。神気力94300の【葛藤を司りし神イエレミーヤ】。神気力6933の【寄蟲神】。神気力2の【悪兎神】と【邪耳神】。神気力1の【神蛙】だね。1柱だけではないね。油断すると本当に死ぬね」
「だから、無理です。6柱様を相手に・・・無謀を通り越してもはやただの自殺じゃないですか」
「そうね」
「安心するね」
「何にですか?」
「良いかね……
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......つまり、悪狸神は狸だけ。狸には狐だね。狐と言ったらだね悪狐神だね。さぁ~どうぞだね」
「おーい!だから何故さっきから尻尾を握るのだ」
この女神間違い無くあれだ。・・・もはや何も言うまい。
『ねぇロイク』
我慢です。
『・・・そうね』
神様の名前が分かっただけで、現時点で俺達に攻略の手段はありません。無謀な事をする気もありません。
『当然ね』
フォルティーナの話は無視です。一先ず、遊の件を邪神竜様と照合したいと思います。
『そうね』
「邪神竜様」
「何だ」
「突入する前に、知っている事を整理したいと思います。創造神様から逃亡犯の神様を拘束する様にと指令を神授していただいた時に、検索したコルト下界の遊の情報を今から画面に表示します。最新の情報は干渉規制強化対象らしく現時点では入手出来ませんが無いよりはましだと思います」
「その通りだ」
「【タブレット】『表示』対象:指令③一次認証許可強制検索情報『邪落ち遊のリスト修正版』≫」
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【人間族】18人 【小人族】0人
【巨人族】2人 【獣人族】5人
【樹人族】2人 【妖精族】3人
【竜人族】0人 【魔人族】6人
【合計】36人
1.樹人族2人の内1人は拘束中。
2.魔人族6人の内1人は居場所把握。
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「増減は分かりませんが、78日前のコルト下界には、遊は36人でした。先程の邪神竜様の情報が......
***********************
悪鬼神が邪落ちさせ遊と成った存在
≪邪の祝福&洗礼〇≫
遊1◎【種族】人間族 【性別】男
【身分】ヴァルオリティア帝国貴族
【階級】士爵家の長男
【適正】集団戦闘指揮官
※軍服の男と思われる※
遊2◎【種族】人間族 【性別】女
【身分】ガルネス神王国民
【階級】世界創造神創生教会助祭長
【適正】身体融合
遊3◎【種族】魔人族 【性別】男
【身分】ベリンノック王国民
※ロイの領主館地下13階の翁※
≪邪の祝福〇&邪の洗礼待機≫
遊1〇【種族】樹人族 【性別】男
【身分】地の樹人族の一族
【階級】闇樹人族
【適正】指弓速射
遊2〇【種族】妖精族 【性別】女
【身分】フェルゼンラール王国民
【階級】森の一族
【適正】透明化・擬態化
遊3〇【種族】妖精族 【性別】女
【身分】フェルゼンラール王国民
【階級】森の一族
【適正】通常
遊4〇【種族】妖精族 【性別】男
【身分】フェルゼンラール王国民
【階級】湖の一族
【適正】通常※性欲に難※
遊5〇【種族】魔人族 【性別】女
【身分】ララコバイア王国民
【階級】男爵家の令嬢
【適正】高密度魔術
遊6〇【種族】魔人族 【性別】女
【身分】ベリンノック王国民
【適正】篭絡傾国
遊7〇【種族】魔人族 【性別】女
【身分】ベリンノック王国民
【適正】思考傍受
遊8〇【種族】魔人族 【性別】女
【身分】ベリンノック王国民
【適正】透過移動
遊9〇【種族】魔人族 【性別】女
【身分】ベリンノック王国民
【階級】世界創造神創生教会修道士
【適正】生首分離
≪邪の祝福△&邪の洗礼回避≫
遊1△【種族】巨人族 【性別】女
【身分】ヴァルオリティア帝国民
【階級】隔離管理奴隷民
【適正】なし
※遊2△の妻だった※
遊2△【種族】巨人族 【性別】男
【身分】ヴァルオリティア帝国民
【階級】隔離管理奴隷民
【適正】なし
※遊1△の夫だった※
遊3△【種族】獣人族 【性別】女
【身分】ヴァルオリティア帝国民
【階級】隔離管理奴隷民
【適正】なし
遊4△【種族】獣人族 【性別】女
【身分】トミーサス王国民
【階級】王国管理奴隷
【適正】鮮血狂気
遊5△【種族】獣人族 【性別】男
【身分】トミーサス王国民
【階級】王国管理奴隷
【適正】吸血回復
遊6△【種族】人間族 【性別】女
【身分】ゼルフォーラ王国民
【階級】貴族領民
【適正】なし※異性発狂※
≪邪の祝福に飲み込まれた存在≫
遊1×【種族】樹人族 【性別】女
【身分】風の樹人族の一族
【階級】通常樹人族
【適正】占い
※拘束中の樹人族※
遊2×【種族】獣人族 【性別】男
【身分】トミーサス王国民
【階級】王国管理奴隷
【適正】なし
遊3×【種族】獣人族 【性別】男
【身分】トミーサス王国民
【階級】王国管理奴隷
【適正】なし
遊4×【種族】人間族 【性別】男
~ 【身分】ヴァルオリティア帝国民
15×【階級】凶悪犯罪者奴隷
【適正】共食い
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......なので、変動が無ければ、この世界には遊が後33人存在してる事になります」
「現状から遊は増えていると考えるべきだと思うわ」
「僕もそう思うぞ」
「主殿。私もマルアスピー様と同じ考えでございます」
「フォルティーナ。遊の存在だけでも検束出来る様になりませんか?」
「う~ん、現状のロイクでは無理だね。諦めて別の方法で探すね」
別の方法かぁ~。現時点では、眷属の神格の階級を可能な限り上げて検索能力を高めるしかないかな。
「旦那様。ルーリン・シャレット家のマジョルドムとして献策致します」
「えっと、クロコダイアンさん。旦那様とか執事とかいったい何の話ですか?」
「誠意には誠意。対価には対価でございます」
ドラゴン種の新鮮な内臓は、物々交換しているはずだし。
「おんや。パトロン殿よ。知りませんでしたか。はい」
「何をですか?」
「クロコダイアンは、私がマジョルドムとして永久不滅の終身雇用致しました」
「え?ドームココドリーロはどうするんですか?」
「旦那様。シャレット城のデューサルヴィタール専用居住地区にいただきました部屋の壁にポルトメタスタスを設置させていただきましたのでマジョルドムと接客。二足の草鞋が可能となっております」
シャレット城?デューサルヴィタール?ポルトメタスタス?えっ?
「パトロンロイク殿。このアランギーにお任せあれ。はい」
「・・・は、はぁ~・・・お願いします・・・」
≪パンパン
「さぁ~皆さん。パトロンロイク殿はまだ御仕事中でございます。気を引き締めて参りましょうぞ。はい」
何が起こってるのこれ・・・
「クロコダイアン。続きを。はい」
「そうでした。旦那様に献策致します。旦那様が心より信用する眷属の1人に可能な限り階級の高い神格位を付与するのです」
クロコダイアンさんも同じ考えみたいだ。
「やっぱり、そうですよね。俺もそれしか方法が思い付きませんでした。さっき、フォルティーナがタブレットを操作した時に確証に至りました。マルアスピーと俺の考えは正しいと」
「私の献策は、ここからでございます。神の世界の常識で考えるに、相手は旦那様の事をそこまで気に留めていないと思われます。旦那様は一応人間種に御座います」
「一応って言うか。間違い無く人間ですね」
「神は人間種の事など余り・・・ほぼ気にしておりません。殺戮に明け暮れ滅ぼうが、争い殺し合おうが、憎しみ殺し合おうが、愛し合おうが。それは、少しは覗いてしまう時があるかもしれませんが、神に与えられた終わりの見えない時間の中では瞬き程の時間でしかありません。さして魅力のある存在でもありませんし興味が無いと断言して良いかもしれません」
「興味無い割に結構な頻度で干渉してますよね。神様って」
「うんうんだね。酔狂なあたしくらいだね」
「おんや、私には下界が必要ですぞ。はい」
「思いますに、運の女神も料理の神も物好きな部類の神種なのでしょう」
酔狂か。・・・だから嫌がらせとも取れる有難迷惑な結果にフォルティーナは俺達を導いてしまうのか。なるほどな。
「そして、更に付け加えます。運の女神フォルティーナ様がコルト下界を離れた隙を付きタイミング良く彼等は行動を起こしているようです。見計らった様に活発化します。実に姑息です」
「・・・そうだったんですね。知りませんでした」
「神格を持つ存在であっても、注視していなければ気付けない程に目立たず活動しております。一応人間種の旦那様では、気付けなくて当然です」
「あたしが神界に帰っている隙を付いて面白うそうな事をするなんて許せないね」
「ですので、彼等の今迄の行動パターンを逆手に取るのです」
・・・フォルティーナ。今おかしな事を・・・。
「おんや、逆手にですか。はい」
「運の女神フォルティーナ様には暫く神界に帰っていただきます」
こっちにはアランギー様がいる。フォルティーナがいなくても全然平気だしな。
「断るね。断固拒否するね」
「フォルティーナ。クロコダイアンさんの話聞いてましたよね?」
「先に断言するね。あたしは、創造神から帰還一次凍結されたね。暫く帰って来るなと神授を受けたね。帰るところが無いね」
「おかしいですね。俺の記憶では、神界定期帰還命令一次凍結。暫く神界に帰って来なくても良いよってだけで、帰るところは有りますよね?」
「・・・有り体に言えばそういう解釈も出来るね」
有り体に解釈って・・・。
「話を続けます。あくまでも帰ったふりで良いのです。夫婦を引き離す程、このクロコダイアン落ちぶれておりません」
「クロコダイアン。君はなかなか優秀な軍師になれるね。この家で働く事を改めて許可するね」
「奥様。お褒めいただき有難うございます」
「うんうんだね」
神様が介入した時の話題って、流れを全く読む事が出来ない。支離滅裂とまではいかないが脈絡がおかしい事が多い。多岐に渡り話が脱線し時間だけが過ぎて行く。時間の使い方が雑過ぎる。
「まずは、フォルティーナ奥様に」
「今、何と言ったね・・・」
「まずは、フォルティーナ奥様に。と、申しました」
「もう少し大きな声でハッキリと皆に聞こえる様に言うね」
「畏まりました。まずは、フォルティーナ奥様に、悪狸神の拘束していただきたいのです」
ブッ・・・一番手っ取り早い方法。ストレート過ぎるだろう。それに、フォルティーナは普通に頼んだところで絶対に動いてくれないだろう。
「そして、フォルティーナ奥様は、旦那様の名代として葛藤の神イエレミーヤ様に接触し、ルーリン・シャレット家の本日の夕食会に招待していただきたいのです」
「ふむふむふむそれでどうするね」
何か珍しく話を聞いてるみたいだけど・・・不安だ。
『ねぇロイク』
はい。なんでしょう。
『このまま、全部フォルティーナに任せてしまった方が良いと思うのだけれど、あなたの考えを聞かせて欲しいわ』
珍しいですね。俺の意見を求める何て。
『危険な場所は避けるべきだからよ』
死にたくはないですからね。
『えぇ。それで、どうなのかしら』
そうですね。全部、任せてしまえるなら楽だし、何となくスッキリすると思います。
『決まりね』
ですね。どうやってフォルティーナに6柱様全員を拘束させるかが問題です。
『ロイク様』
ああ。はい。
『このままフォルティーナ様に全て任せてしまった方が良いと思います』
ハハハ。アルさんも同じ考えでしたか。今、マルアスピーからもアルさんと同じ様な提案があったばかりなんです。繋ぎます。
『お願いします』
アルさんも、俺達と同じ意見見たいです。
『フフフ。そうよね』
『はい。ロイク様に何かあったら嫌ですからね』
『ロイク様』
どうしました。マリレナさん。
『相手はロイク様やマルアスピーさんよりも強い神様なのですよね?』
2柱様は間違いありませんね。
『迷う必要は無いですよ』
迷う?
『はい。フォルティーナ様は創造神様に次ぐ存在です。神気に制限があって今は5000万強しか出せないね。と、仰っていましたが、相手は15万。フォルティーナ様に全てお任せし、私達は傍観に徹するべきだと思います』
えっとですね。マルアスピーもアルさんも俺も、マリレナさんの意見に大賛成です。繋ぎます。
マリレナさんも同じ考えの様です。ファルティーナに頑張って貰いましょう。
『そうね。フフフ』
『はい』
『皆さん考える事は同じでしたか。フフッ』
ですね。
・
・
・
「おい。ロイク。レソンネで何をコソコソと話ていたのだ。気になるぞ」
「ミュー。ロイクはフォルティーナの事を自慢のお嫁さんだと褒めていたの」
「ほぉ~・・・」
「ロイク。君は・・・うんうんだね」
『ホラ。ロイク』
『『ロイク様!』』
えっと・・・
「そ、そうなんですよ。フォルティーナはいつも頼りになるなぁ~。って、それと、誰よりも皆の事を大切に思ってくれるし・・・それと・・・」
あと何だ・・・。
「ほぉ~。運を司りし遊びの女神様はそんなにも素晴らしい女神様なのか。興味が湧いたぞ」
ミューさん。ナイスアシストです・・・。フゥ~助かりました。
「えぇ。ミューはフォルティーナに会ったばかりなのだから知らなくて当然なの。フォルティーナは私達家族にだけ慕われているって勘違いしては駄目なの。フォルティーナの神殿は神々様の神殿の中でいつも一番活気に溢れているの」
「うんうんだね」
『良い感じです。マルアスピーさん』
ミューさんが会話に入って来てくれて助かりました。
『そうね。ミューには、例のお肉でお礼ね』
・・・例の肉でですね。
『えぇ』
「1柱ではないと、創造神様より啓示があったばかりだと言うのに、それは凄い。僕もフォルティーナの神殿に行ってみたいぞ」
「うんうんだね。いつでもウェルカムだね」
「そうですよね。俺も何だか急にフォルティーナの神殿に行きたい気分になってきました」
「えぇ私もよ」
「私もフォルティーナ様の神殿に招待していただきたいです」
「ロイク様。私もフォルティーナ様の神殿に行ってみたいです」
「皆で行きましょう。地下の研究施設の件が片付いたらになりますが」
「そうですよね・・・でも、ロイク様やマルアスピーさんよりも高い神気の神様がおられるのですよね」
「えぇ。ロイクや私では抗えない程の神様ね」
「家族皆でフォルティーナ様の神殿にと・・・私の力では6柱全員を拘束する事は不可能ですし・・・申し訳ありません。ロイク様」
「アル。貴方のせいではないわ。ねぇロイク」
『後は任せたわ』
えっ?・・・ここから、どうやれって言うんですか!
『ロイク様。お願いします』
「精霊になったばかりの高位樹人族も神殿にはまだ行った事がないのか?ならば、行くと時は僕も一緒だぞ」
「はい。ロイク様と皆で一緒に行きましょう」
「しかし凄いぞ。まだ1ヶ月そこらだぞ」
一攫千金を狙うギャンブラーや商人達で神殿はいつも大混雑している。活気に溢れている。嘘では無いから良いよな。
「キューンキューンだな。遊びの女神を急に褒めだした様なのだ」
「我が邪の神殿を訪れた時、運の神殿から多くの祈りの念を感じた。遊びの女神がコルト下界に住まう理由の1つなのだろうな」
「フォルティーナ奥様。私の献策をお聞き届けいただけませんでしょうか」
それだと、足りないんです。クロコダイアンさん。どう付け足せば・・・。
「クロコダイアンさん」
「旦那様」
「フォルティーナは、・・・えっと本当は今直ぐ行って全て片付けてしまおうって考えてるんです」
「何と」
「ですよね。フォルティーナ」
「おんや。そうでしたか。私も気付きませんでしたぞ。はい」
「そうなのか。僕にはそうは見え無いぞ」
「ミュー。彼女は謙虚なの」
「そうなのか?なるほどだぞ」
「俺達がくだらないお喋りをしているせいで、フォルティーナは早く解決しに行きたいのに、優しい彼女はいつもの様に最後まで耳を傾けてくれているんです。ですよねフォルティーナ」
「な、なんだね・・・さっきからいったい何だね」
「いつもありがとう」
「と、当然だね」
「フォルティーナ。いつもありがとう」
「アスピーまで、どうしたね」
「フォルティーナ様。フォルティーナ様は献身と慈愛も司る神様だったのですね」
「フッ当然だね。アルは知らなかったのかね!」
「フォルティーナ様。えっと・・・」
『ロイク様どうしましょう。名前を呼んだのは良いのですが、言葉がありません』
この際、何でも良いですよ。適当にお礼とかでも・・・。
『お礼ですか?』
『マリレナ。有難うで十分よ』
『そうですよ。マリレナさん』
「えっと。ありがとうございます」
「そうかね。まぁ~何だね。うんうんだね」
『すみません。お役に立てず』
何を言ってるんですか。あの顔を見てください。満面の笑みです。確実に喜んでいます。もう一押しです。後は、フォルティーナコールで・・・
『『『フォルティーコールで?』』』
押し切りましょう。
『『『そうね』』』
「「フォルティーナ」」
マルアスピーと俺が先陣を切る。
「「フォルティーナ様」」
アルさんとマリレナさんが俺達に続く。
アランギー様もさぁ~御一緒に!
『おんや。パトロンロイク殿。これはいったい?』
フォルティーナコールです。さぁ~御一緒に。
『おんや。なるほどなるほど。それでは御言葉に甘えて。はい』
「運を司りし遊びの女神よ。こんなにも慕われている貴女を同じ神として誇らしく思います。はい」
クロコダイアンさんも御一緒に!
『私の献策をフォルティーナ様、御一人に実行させる気ですね』
そうです。今の俺達じゃ死んじゃいますから。
『最も成功率の高い方法です。噛ませていただきましょう』
「フォルティーナ奥様。旦那様は果報者に御座います。フォルティーナ奥様がいつも傍で優しくそして力強く支えてくれるのですから。もうこれ以上は申しません。旦那様の仰る通りでした。私達はリビングルームでフォルティーナ奥様の御帰りをお待ちしております」
「良く分からんが祭りの様だな。キューンキューンなんだな。遊びの女神よ。楽しいなぁ~ハア ヤットコ ヨイトコ ヨイトコナだな」
「遊びの女神よ。これはいったい何が起こっているのだ。我にはこの状況が理解出来ぬ」
「邪神竜様」
「ロイク殿。これは?」
「フォルティーナが全て解決してくれるという事です。フォルティーナがやっぱり1番です」
「遊びの女神がか」
「なっ!ロイク。君は・・・煽てても何も出ないね」
「キューンキューンだな。1番良い女だな。お前が1番ヤットコセ ヤットコセ」
「・・・ちょっと行って来るね」
≪パチン
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「行きましたね」
ありがとうございました。