3-8 ゼルフォーラ砂漠調査の日④~オアシス・グラース~
リーファ歴4075年7月29日、闇の日。
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邪狼獣のセリューさん兄妹姉妹の様に被害を受けた事があるのかもしれない。耳に入る噂のほぼ全てが残念な物ばかりのは確かだ。梟の聖獣様なのに本当に残念な存在だと思う。
「サヴィーは、母の従者。母の聖邪獣なの」
「今って、ミト様と一緒にフィーラの精霊樹の幼樹の精域に住んでるんですよね?」
「えぇ。そう聞いたわ。家に居るのは、苺と珊瑚と正午と林檎と、ピエールだけね」
「そっかぁ~。エリウスさんは離宮に引っ越したし、マルアスピーは俺と一緒だから。ピエールさんと猫達だけになっちゃうのか」
「そうね。フフフ」
「ドゥーミナ様の後任で精霊樹に宿ったミト様は追放され放浪していると聞いていたのだが・・・そうか、大精霊として復帰されていたとはな。驚きだぞ。
「えぇ。そうね」
「だがとても残念だ・・・あの厄災迷惑鳥が、まさかミト様の下にいるとは本当に残念だぞ・・・・・・よし、僕は決めたぞ」
「何をかしら」
「ロイクには嫁ぐ。創造神様からいただいた良縁だぞ。断る理由が1つも無いからな。だがだ。だがだぞ。譲れない物が1つだけあるのだぞ」
「譲れない物ですか・・・」
「そうだぞ。あの厄災鳥が僕の半径2Km以内に絶対に近付かない事。この約束が果されるまでは、ワワイ山脈の頂上の精域から引っ越ししないぞ。ロイクは僕と夜を共にする時だけ泊りに来るのだぞ」
嫁取りとか家族計画とか、地の中精霊ミュー様の中では決定事項な訳か・・・マルアスピーばりだなぁっ!
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サビィ―さんの話は保留にした。やっと見つけた研究施設の調査がこれでは進まないからだ。
俺達は、施設内を隈なく確認し、研究資料や機材機器。倉庫に保管されていた素材や食料や水や回復道具等使えそうな物を、全てタブレットに収納した。
遺体は、邪属性の浸食を受け汚染されていたからだと思う。遺体を清めようと施した聖属性下級魔法【ベネディクシヨン】で跡形も無く消滅してしまった。
「あら、昇天ね」
「遊に近い存在に落ちていたようです」
「邪の洗礼を受けてもいないというのに、邪落ちとは哀れな者達だぞ」
「邪落ちって・・・ミューさんも、遊の事を知ってるんですか?」
「ジュー?・・・ジューという物は知らないぞ。なるほど、邪の神様の眷属神様の眷属とジュー。あの会話のジューとは邪落ちした存在の事であったのか。今分かったぞ」
「邪落ちについて知ってる事があったら教えてください」
「知ってるも何も、邪落ちとは、邪属性の浸食干渉を受ける事だぞ。邪に飲み込まれずに見事洗礼に抗えた存在は眷属へと高位進化する。飲み込まれた者は理性を失い破壊と欲望の限りを尽くし最後には朽ち果てる事になるのだぞ」
「なるほど」
「邪属性は、聖属性の干渉に対し非常に脆い。そして無属性とは互いに干渉し合う事が無い。地属性、水属性、火属性、風属性、光属性、闇属性。6つの属性の中で、光属性とは相殺し合う事が多い。だが、地属性や闇属性との相性が非常に良い属性なんだぞ」
「初耳です」
「初耳ね」
「精霊界では一般的に、邪属性は水属性と火属性と風属性を侵食する。邪属性は光属性に干渉する。邪属性は地属性と闇属性を狂騒する。と、言うんだぞ」
「狂暴化させ狂人化させる邪属性の呪印ってもしかして地属性や闇属性が・・・」
「その呪印とやらを知らんぞ」
「それについては後程説明します」
「そうか、分ったぞ」
「マルアスピー。実験で利用された獣や魔獣や人間種だった存在達が所持する属性を調べたら面白い事になりそうです」
「えぇ。フフフ」
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しかし、見当たらない。
「ねぇロイク。何を探しているのかしら?」
「魔力陣。或いは魔法陣。それとそれに関係する装置です。出来れば自然魔素を蓄える装置なり魔晶石もですね」
「高濃度の自然魔素を感じる場所は無いわよ」
「はい。なので、自然魔素が尽きてしまったかもしれない場所を探してるんです」
「なぁ~この建物の中の人間種は、水も食料も回復薬も十二分にある中で、何故、鬼の様な形相で息絶えた?疑問だぞ」
「邪属性の浸食、干渉、狂騒に耐えられなかったんじゃないかと」
「この部屋で終わりね」
「ですね・・・資料は回収出来ましたが、この研究施設をどうやって転移させたのか分からないままです。中央の研修施設を中心に個室の研究室や部屋や倉庫。大規模な研究用施設だったのは分かるんですが、それでも全部ではありません。フィーラで高位樹人族の皆さんを救出した時、マリレナさん達を助けた時ですが、あの時に俺が入った施設はこの研究施設と繋がっていたはずなんです」
「研究施設が幾つかの施設に別れて転移したと考えているのね」
「そうじゃないと辻褄が合わなくて・・・それに、他の場所に転移した施設がある。そう考えると、フォルティーナが話ていた眷属や遊の存在も可能性としてあり得るじゃないかと・・・」
「フィーラの総督府の地下施設は、本当にこの研究施設だったのかしら?」
「どういう意味ですか?」
「ここは私が想像していたよりもとても狭いの」
・・・狭い!?・・・それなりに広い施設だと思うけど。
俺は、階段を下りて最初にあったこの地下研究施設の中で最も広い中央の研究フロアーへ移動し、フロアー全体が視界に入る様に階段の手前に立ち、改めて見渡す。
マルアスピーの言う通り狭い。狭いと言うか、研究フロアーや研究室や倉庫や各部屋。遺体の数・・・おかしい。おかし過ぎる。施設の規模に対して人が多過ぎる・・・。
「狭いかどうかは分かりませんが、施設の規模はそれなり大きいと思います。ですが、見て周った通り、あくまでも他に部屋が無いと仮定した場合、遺体の数が多過ぎます」
「そうね。この大きな部屋が1つ。倉庫が9部屋。研究室が13部屋。用途不明の部屋が30部屋。この大きな部屋は、工房ロイスピーの実験室より少し広い程度。そうね・・・約90㎡って所かしら。ロイクが昇天させた人間種は頭部の数1つを1人とした場合720人」
「数えてたんですか?」
「えぇ。ライバルを知る事は、商売における基本よ」
ライバルって・・・。
「それに、この地下施設では、転移でロイクから逃れる事が出来たとしても、研究を続けるのは無理ね」
「どうしてですか?」
「食べ物や水が豊富に存在していたとしても、ここでは人間種は生きていけないからよ」
「え?」
「あの形相はそうであったのか。見落としていたぞ」
「えっと、マルアスピー教えて貰えませんか・・・」
「ミューと私は精霊。ロイク。貴方は人間族だけれど常に聖属性の強力な結界に守られ状態異常は全て無効。即死も無効だったわね」
「だったと思いますが・・・それが?」
「ここは、人間種が生きる為に必要な呼吸に大きな制限があるの」
「まさか・・・」
俺は、神授スキル【神眼】に意識を集中する。
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何て事だ。人間種の基本を見落として調査していた何て・・・。
「人間種には過酷な環境よね」
「邪属性に侵食されながら窒息死か。ますます哀れだぞ」
「それは分からないわ。でも、昇天したのは事実よ」
「自然魔素も空気の割合も、邪属性が86%で地属性が14%の環境・・・」
「水属性と風属性が存在しない場所では、呼吸する生き物は生存は不可能だぞ」
「俺って呼吸しなくても生きていられたんですね。気付きませんでした」
「ほうぉ~ロイクは呼吸無しで生きられる人間種であったか。創造神様によって見出されただけの事はあるな。素晴らしいぞ」
「呼吸困難や窒息の状態は、状態異常なのだから無効なのよ」
「それ言ったら、かなり色んな事が無効になってしまいませんか?例えばですけど、火傷は肌の状態異常だし、筋肉痛や腹痛や頭痛や・・・・・・あっ!」
俺って、この数ヶ月・・・怪我1つしてないし、身体の具合が悪く成ったって事が1度も無い。・・・・・・・・・。
「思えば普通の人間なら死んでそうな場所や場面が幾つかあった気もします。俺は平気だけど、パフさんや、アリスさんや、サラさんや、テレーズさんや、メリアさんや、カトリーヌさんや、バルサさんや、バジリアさんや、エルネスティーネさんは、人間種です。今後は、【フリーパス】や転移や転位召喚を使う時は気を付ける様にします」
「そうね。それが良いわ。フフフ」
「今回の調査は空振りの様ですが、対象の状況をもっと正確に見極め、仲間や家族の能力や状況を的確に判断し行動する。この事に気付けただけでも収穫があったと思う事にします」
「マルアスピー。楽しそうだぞ」
「えぇ、そうね」
へぇ~。あの表情は楽しいって感情の1つなのか・・・精霊様同士だと微妙な感じも分かるんだぁ~。・・・この流れで楽しい事ってあったか?
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「もう調べる物も無いし。物品や雑貨や廃棄部も回収しました。地上に戻りましょう」
「フフフ。それが良いわね」
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俺達3人は、地上へと移動した。
「主殿。目的の物はありましたかな?」
「いえ。ありませんでした」
「そうでしたか。諦めるのはまだまだ先の話です。この砂漠にはまだまだ確認していないオアシスがあります」
「そうですね。神授スキル【タブレット】『検索』ゼルフォーラ砂漠のオアシス。調査済を赤、未調査を青で表示 ≫」
「あら、オアシスは検索出来るのね」
「そうですよ」
「ふ~ん。・・・後11個あるのね」
「みたいですね」
「次のオアシスに移動しますか?」
「ちょっと待ってください。粉砕してサビィ―さんが管理する並行空間。異空に神授スキル【転位召喚】で強制転位移動させます」
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神授スキル【マテリアル・クリエイト】『解体分割』と『分離分解』を施し、俺の神気を帯びた宝玉を漂わせている並行空間に廃棄した。
何か問題が生じた際には、サビィ―さんに空間を破棄して貰う事で、無かった事に出来る。頼むのが何と無く怖い気がしないでもないけど・・・。
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「なぁ~。ロイク、マルアスピー、神獣殿。聞きたい事があるぞ」
「何ですか?」
「何かしら?」
「中精霊殿が私にですか?」
「地下にあった人工物や、邪属性の濃い場所を調査しに、この砂漠に来たのだろう。ならばどうして北の大陸とこの大陸を繋ぐ地下道を調査しないのだ。不思議でならないぞ」
「フィンベーラ大陸とゼルフォーラ大陸を繋ぐ地下道があるんですか!?」
「初耳ね」
「はい。マルアスピー様。聞いた事がありません」
「砂に埋もれて久しいからな。知っている者も少ないと思うぞ。2000万年~3000万年前に、北の大陸にあった大樹の森の管理下だった森が、砂漠化し始めてフィンベーラ砂漠が誕生したそうだぞ。まぁ~僕も先代様から先代様も先代様から聞いた話らしいから詳細は不明だぞ」
「ゼルフォーラ大陸側も砂漠なってしまった事で砂に埋もれたって事ですよね?」
「そうだぞ。ここが砂漠になったのは最近の事なのだが、大樹の森だった頃の名残で、ワワイ山脈から吹き降ろす自然の力の循環。風属性の流れは入口だった場所に今も集まっているぞ」
「風が一箇所に集まる場所があるのか・・・大樹の森の精霊樹から流れ世界を一周して戻る風の循環の他に」
「それは、世界規模の循環。コルト下界の循環の理の事だぞ。今の話は、ワワイ山脈から北の地とフィンベーラ山脈から南の地に挟まれた小さな世界の循環の話だぞ。理の中で少しずつ変化しながら常に循環し続けてるんだぞ」
「なるほどぉ~。まぁ~今は砂漠のオアシスの調査を進めたいと思うので、地下道に関しては次の機会にします」
「そうね。残りのオアシスを調べてしまいましょう」
「それでは、次のオアシスに移動します。ヒヒィ―――ン」
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そして、ラストのオアシス。3011個目。レジナットから北西へ僅か5.6Km程の地点にある。レジナットからゼルフォーラ砂漠へ足を踏み入れると最初にあるオアシス【グラース】。名称まであるオアシスで、もう1つの地下施設を発見した。
「主殿」
「ロイク」
「何も言わないでください。俺達は砂漠の楽園を3011箇所も巡り、砂漠とオアシスを輓獣車で観光した。それだけです」
「良い運動になりました。美味しい食材にも出会えました」
「なぁ~それは良いのだが・・・この下、これは神々の力・・・神気ではないか?それにだぞ。邪属性の結界をコルト下界に張れる存在は・・・・・・だぞ」
「ミューさん、張れる存在は何ですか?」
「それは、邪の神様かその眷属神様だけだぞ」
「なるほど。眷属や遊どころか、逃亡中の神様を見つけてしまったかもしれない訳か・・・」
「逃亡中の神様?どういう事だ。聞きたいぞ」
「先月の上旬に創造神様から神授をいただいのたのです」
「ほうぉ~。創造神様から次々神授をいただけるとは凄いぞ」
「嬉しくない神授が多いんですよ。で、その神授は創造神様からの指令③にあたる物で、神界の牢獄から逃亡した神様を5柱拘束しろってものだったんですよ」
「人間種に神様を拘束しろとな。随分と期待さえておるのだな。ますます僕の夫に相応しいぞ」
「それは、後で話し合うとしてですね。・・・先日、悪鬼神様という神様の拘束には成功して、邪神竜様に身柄を引き渡した事で、後4柱になったんです」
「凄いではないか。この下の存在も逃亡した神様かもしれないぞ」
「そうなんですよね。ただ、問題が・・・」
「そうね。これは問題よね」
「主殿。これは非常に問題です」
そう、オアシスグラースの下には、神気力15万強の神様が1柱。神気力9万強の神様が1柱。神気力7000弱の神様が1柱。神気力1と2の神様が3柱。神様が5柱もおられるのです。
「無理ですよねぇ~」
「えぇ」
「主殿よ。絶対に不可能です」
「どうした?探していた場所が見つかったのだ。早く中を見たいぞ」
「それがですね。マルアスピーの最高神気よりも2倍も高い神様が1柱。1万4000程高い神様が1柱。いるみたいで・・・拘束するどころか、俺達が一瞬で消滅しちゃうかもしれない位に無理がありそうなんですよ」
「・・・そうか、それは好ましく無いぞ」
「ロイク。どうするの?」
「アランギー様か、フォルティーナの力を借りるしかないと思います」
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俺達は、俺の神授スキルで、エルドラドブランシュのファミリーエリアの3階にあるリビングルームに移動した。
「このメンバーに集まって貰ったという事は、理由は分かりますね」
アルさん、フォルティーナ、アランギー様。クロコダイアンさん、邪神竜様、悪狐神様。エリウスさん、ミューさん、マルアスピー。そして、マリレナさん。10人に集まって貰った。
神様が7柱。精霊様が3精霊。人間種は俺だけ。
「紹介します。ワワイ山脈の頂上に宿りし中精霊ミューさんです。マルアスピーと俺は、エリウスさんとミューさんの協力もあり、帝国の地下施設を発見する事が出来たのですが、発見した2件の内の1件に問題が起こってしまいました」
「ロイク様・・・」
「アルさん。その問題とはですね。神気が15万強の神様が、発見した施設内に滞在しているという事です」
「キューンキューンだな。それ、中級神の上位レベルの神気だな」
「左様。我等下級神より格上の存在だ」
「邪神竜様は、化現出来るのですね」
「我は、我が従う神に悪鬼神を捕らえたと報告した。我が従う神は創造神即ち神界の牢獄に悪鬼神を引き渡す様にと我に命じた。我は、我が従う神の御意向に従い行動した。創造神は我にコルト下界の理の中化現を強いた」
「なるほどねぇ~」
どうして女の子の姿なのかは別として、今の姿で神様を拘束しに連れて行っても大丈夫なのかな?
「邪神竜様の神気は500だと聞いていたのですが、999あるみたいなのですが、この力はそのままコルト下界で利用可能ですか?」
「我が持つ、我が従う神より与えられし神気は500のみ、499は創造神によって強制付与され、我に葛藤を与えた」
「なるほど」
利用可能とっ。
「しかし、人間よ」
「はい」
「僅かの間に、また一段と人間種たる一線を越えた様だな」
「はぁ~色々ありまして」
「もはや人間と呼ぶには大き過ぎる神気を持つ神に愛されし24歳位に見えなくもないこのコルト下界で守護聖人管理者として創造神より神授を与えられし女神と神獣と精霊と悪魔と人間の女を嫁とし許嫁とし公認されたプレイボーイなる青年よ」
「それって俺の事ですよね?」
「良く気付いたな」
「ここに人間は俺だけですからね。それで、悪狐神様。俺を呼んだって事は何か用事があるって事ですよね?」
「その通り。油揚げはまだかね?」
「え?」
「私を家に招く時は、油揚げを容易する。これ常識なんだが」
「知りませんでした」
「普段の私なら激怒し人間なんか食べてしまう所なんだが・・・もはや人間と呼ぶには大き過ぎる神気を持つ神に愛されし24歳位に見えなくもないこのコルト下界で守護聖人管理者として創造神より神授を与えられし女神と神獣と精霊と悪魔と人間の女を嫁とし許嫁とし公認されしプレイボーイなる青年よ。青年は私よりも遥かに高い神気なのは何故だ」
「はぁ~色々ありまして・・・」
「色々か。面白そうだなんだが・・・キューンキューンだな」
「邪神竜に悪狐神。お前達はあたしの夫。ロイクに感謝する日が来たね」
「私が人間にか?キューンキューンだな。ありえん」
「我は既に感謝の意を表し【召喚の盟約】と共に祝福を与えたはず」
「そういば、神獣種神竜類の長アンペラルドラゴ様と御会い出来る券を13枚とか、神竜の堅鱗の調帯のお礼を言ってませんでした。ありがとうございました」
「うん?気にするな。あれは我のほんの気持ちだ」
「それでだね。邪神竜。君の神格の階級は何だね?」
「我は、六級下級神だ。それがどうした」
「まぁ~待つね。悪狐神。君の神格の階級は何だね?」
「私も、邪神竜と同じ六級下級神なんだが、それがどうしたのだ?」
「今なら、お前達の神格を上げられるとしたらどうするね」
「何だと?」
「昇格と降格の権限を有する存在は創造神だけだ。幾ら第二神の遊びの女神でも無理だ」
「分かってないなぁ~だね。ここに居るロイクはだね。創造神より神格を第3者に与える権利を神授された創造神が創造した世界で唯一の人間種だね」
「人間か冗談が上手くなったではないか」
「あたしは冗談は言わないと決めてるね」
嘘だ・・・存在自体冗談みたいな癖に・・・。
「遊びの女神よ。我が知る限りでは、確か、上神格の神であれば眷属に九級下級神の神格を与え眷属神にする事が出来たはず」
「当然だね。大神格なら八級下級神まで出来るね。大上神格なら七級下級神まで出来るね。あたしや元大上神の邪の神は六級下級神まで出来るね」
「邪神竜も私もその六級下級神だ」
「甘い狐だね。良く聞くね。ロイクは何とだね・・・何と・・・何とだね」
「勿体ぶらずにさっさと言わぬか」
「悪狐神。遊びの女神のペースに乗せられるでない」
「キューンキューンだ。人間。水を一杯所望する」
「どうぞ」
「料理の神が何故水を出すのだ?」
「おんや、知りませんでしたか。パトロンロイク殿は現在私の上席にある身。はい」
「神格も持たぬ眷属でしかない人間がか・・・」
「左様。パトロンロイク殿は私のパトロン殿なのです。はい」
「ロイクはだね。創造神から通常神の【三級】が2つ、下級神の【一級~六級】が1つずつ、【七級~八級】が2つずつ、【九級】が3つ。別に、最初に神授によって貰った下級神の【六級】が1つ、【八級】が1つ、そこにいる聖馬獣だったエリウスに与えた【九級】が1つ。神格位の付与権を持っているね」
「三級神・・・!?」
「信じられないかね?」
「当たり前だ。神格も持たぬ神でもない存在が、神格を与え神を眷属神として従えるなど聞いた事が無い。キューンキューンなんだ」
「九級下級神のエリウスはロイクの眷属神。疑い様の無い現実が目の前にあってもかね」
「そんな戯言あって・・・あって・・・あ・・・あ・・・あった」
「我は・・・我が従う神が・・・」
「フォルティーナ。元大上神の邪の神様は元大上神な訳で、今はどういう状況で存在している神様なんだ?」
「我が従う神は、神格を持つが階級を持たざる神となり、存在はするがお隠れになり存在している」
う~ん。神様達にも複雑な大人の事情があるんだろうけど、相変わらず意味が分からないや・・・。
「邪神竜。お前・・・例えばだがだね」
「なんだ」
「五級下級神の神格位を与えると言ったらどうするね」
「なっ!・・・」
「四級下級神の神格位ならどうするね・・・」
「ななっ!」
フォルティーナ。お願いだからそのニヤニヤほくそ笑む顔止めて・・・綺麗な顔が・・・。
「まぁ~要らないなら別に良いね。神格が欲しい存在は沢山いるね。残念だったね。今なら、ロイクとジャンケンという神事で、負けても五級下級神の神格位が与えられたのにぃ~本当に残念だね・・・」
いやらしい顔でニタ付くフォルティーナ。
「ジャンケンが神事だと?」
「知らなかったのかね?悪狐神。お前は物知りだね。邪神竜に教えてやるね」
「悪狐神。どういう事だぁっ!」
「・・・こ、コルト下界の新ルールなんだな。キューンキューン」
ほくそ笑むフォルティーナ。
これ絶対。フォルティーナの悪乗りだ。
「その通りだね。流石は悪狐神だね。だがだね。コルト下界で採用されたばかりのジャンケンには複雑なルールがあるね」
「複雑なのか?ジャンケンなのに複雑なのか?」
「我の本来の姿では出来なんだジャンケン。・・・創造神は全てお見通しだった訳か。フッ。我の負けだ」
何だ?女の子の姿恰好の邪神竜様が何かを悟ってしまわれたぞ。
「神事を受けるかね?」
「イヤ。我はロイク。ロイク殿が与えてくださる神格位を甘んじて受け入れようぞ」
「なるほどだね。さて、悪狐神。お前はどうするね」
「私の親神は実の親でもある四級神の九尾狐狸。兄は五級神の邪狐神。親神の断りも無く神格位をどうこう出来る訳がなからろうが」
「それだと、邪神竜様は?」
「我の親神は、存在はするがお隠れになり存在する神。我は邪の神様の眷属神。悪狐神や邪狐神は九尾狐狸神の眷属神だ。九尾狐狸神は百獣神の眷属だ」
「旦那様。私の親神も百獣神様にございます」
「百獣神様って、アルさんにとっても親神様ですか?」
「私は、五大神鳥の中心、神鳥類の長です。長に親神はいないのです」
「アルは、ロイクの家族だね。自動的にロイクの眷属神という事だね」
「え?そえだとフォルティーナは?」
「あたしは上位過ぎる存在だね。残念だがだね。ロイクがあたしと創造神の眷属だね」
そういうものだと思っておこう。
「フォルティーナに2つ確認があります」
「何だね」
「1つ目は、フォルティーナが神格を与えたはずのドラゴンが、どうして俺の眷属神になったんですか?」
「簡単だね。最初からロイクの眷属だった存在に、互いに合意もせず不可抗力で神格を与えてしまったら、最初からロイクの眷属だった存在は、最初からロイクの眷属神だった存在という事になるね」
「不可抗力でどうやったら神格を与えてしまえるんですか?」
「人間誰にでも過ちは付き物だね」
「神ですよね?」
「何を言ってるね。神なら尚更だね」
・・・貴方ならそうですね。そうでした・・・。
「おかしいね。餌を与えるのが面倒な時があるね」
ペットとか飼育してはいけないタイプだ・・・この人。無視して話を進めさせて貰おう。
「2つ目ですが、俺は神格位を与える事が出来る訳ですが、八級下級神に九級下級神を与えたらどうなりますか?」
「無理だね」
「無理?」
「神格位の降格は創造神だけの権限だね」
「降格って扱いになる訳か」
「過去に1度だけ創造神が権限を発動したね」
「へぇ~」
「我が従う神元大上神邪の神様です」
「あぁ~なるほど」
「それで、今の話の続き何ですが、降格じゃない場合はどうなるんですか?」
「降格じゃ無いとはどういう意味だね?」
「神格位を空白で与えたら剥奪になるんですか?」
「何を言ってるね・・・」
「神格位が下の存在が神格を奪えるのは・・・いや何でも無いね。神格を持たざる存在が神格を持つ存在から神格位を奪う事は簒奪と言ってだね。前例が無いね」
「先日気付いたんですが、空白の付与が出来るみたいなんです」
「・・・狐。こっちに来るね」
「なっ!何で私が?・・・まさか」
「安心するね。万が一の時にはだね。あたしが六級下級神の神格を与えるね。あたしの眷属から直ぐに外すね」
「な、何を言ってるのだ」
「眷属から外すって出来るんですか?」
「大上神のあたしに出来ない事がほとんどないね」
聞いてる限り、結構あると思うけど。脱線注意。
「おい。何で私の尻尾を掴む」
「逃げない様にする為に決まってるね」
「おい・・・本気なのか・・・」
「当たり前だね。大丈夫だね。大丈夫だね。痛くないね。直ぐ終わるね・・・」
「ちょっと待て全然大丈夫じゃないだろう。これ。おい邪神竜見て無いで助け出す努力位は姿勢位見せろよ」
「我は無駄な争いはしない主義でな」
「な・・・な・・・」
「さぁ~ロイク。今でしょうやっておしまいだね」
「いやダメでしょう。嫌がる人にそれ神様でも犯罪になるんじゃ」
「あたしが許可するね」
「いやでも・・・」
「おぉ。青年よ・・・」
「分かったね。助けてやる代わりにだね。悪狐神。お前はロイクの眷属決定だね」
「あ・・・あぁ・・・って、何でそうなる。原因はお前だろう」
「分かったね。それなら、お前の親をここに呼ぶね」
「呼んでどうする気なんだ?」
ありがとうございました。