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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ー1ヶ月間の軌跡ー・ーアンデット編ー
140/1227

3-6 ゼルフォーラ砂漠調査の日②~古代種の魔獣アンモマール~

リーファ(R)歴4075年7月29日、闇の日。

 マルアスピーと俺は、御者台へと移動した。


「自然の力の循環に乱れは無いようよ」


「はい。マルアスピー様」


「邪属性の強い場所が地上に大小3箇所あるみたいですが・・・」


「はい。主殿。広範囲に散っているようです」


 俺は、神授スキル【タブレット】で検索する。


≪・・・・・・・・・・・・・・・干渉規制強化対象です。



「やっぱり、ダメか・・・。邪属性の場所を検索するだけでも、干渉規制ってどういう事なんだぁっ!」


「干渉規制にフォルティーナの様に干渉って神様なら皆出来るのかしら?」


「どうなんでしょうね」


「【神授スキル】。【BIRTHDAY・SKILL】や神具類に付与されている力を含め、ロイクのだけでは無く、私達全員のスキルを再確認した方が良さそうね」


「内政と外交が一通り落ち着いたら、皆で一緒にやりましょう。家族なら見られても平気な訳だし、何より大勢の方が何かに気付けるかもしれません」


「そうね」


「主殿よ。如何なされる?」


「地下の調査を一旦中止して、邪属性を感じる場所の確認をしに行きましょう。放ってはおけません」


「それでは、小規模な邪属性溜りへ移動します」


「お願いします」


「お任せあれ」



「干渉規制の対象に関係しているから検索出来ないのよね」


「だと思いますが、何とも言え無いです。タブレットの力を欺く事の出来る何かがあるのかもしれないし。それに、おかしくありませんか?」


「おかしい?」


「えぇ。神授スキル【タブレット】の『検索』が干渉規制で検索エラーの状況にも関わらず、俺達は3人とも3箇所の邪属性溜りに気付きました」


「そうね」


「確かに、変です。神界の理によって検索の力に制限が課せられたのであれば、コルト下界の理は上位の理の中にあるはずです。私達は上位の理によって邪属性を感知出来ないはずです」


「ねぇ、エリウス。それは行き過ぎた考えね。神界の理によって制限が課せられたのは、神様同士の公平性を維持する為よ。コルト下界に存在する9つの自然の力の属性の1つを感知不可能にする物ではないわ。何より邪属性だけを循環の中で感知不可能にしてしまったら、世界は崩壊してしまうもの」


「エリウスさんも、マルアスピーも重要な事を忘れてますよ」


「何かしら」


「重要な事ですか」


「神様達は究極の御都合主義、日和見、無責任。そんな1柱様が多いみたいなのは知ってますよね」


「そうね」


「はい。残念ながら・・・」


「法に抜け道がある様に、理にもまた方法があるんじゃないかなと。難しく考えても無駄な気がします。理不尽が簡単に介入して来る訳ですから・・・」


「それもそうね。でも、スキルの再確認はするべきよ。特にタブレットは最優先ね」


「俺もそう思います。・・・・・・今回の調査が終わったら、家に居る神様達だけでは無く、他の神様にも協力していただいて検証してみます」


「他の神様?」


「主殿よ。お役に立てるのであれば幾らでも協力致しますぞ」


「エリウスさんありがとう」


「眷属神として当然の事です。礼の言葉など不要にございます」


「それでも、ありがとう」


「・・・いえ」


「ほら、邪神竜様に、悪狐神様に、アイドルさんに、樹懶神様方ですよ」


「八十神商店街のナマケモノ達は、神様だったわね。忘れていたわ」


 そこ普通忘れちゃいけないとこだと思いますよぉ~。


「ロイクの神気を成長させ充実させる事も創造神様の御意思なのよね?」


「そうですね」


「神々様方と親睦を深め信頼を得。眷属神も増やす。後は、フォルティーナに預ける存在を精査する必要もあるわ」


 フォルティーナに預けるねぇ~・・・確かに彼女なら間違って色々やってくれるからなぁ~・・・。


「神格を持った存在を増やしますか」


「えぇ。ルージュちゃんみたいな子が増える事は、ロイクにとって良い事よ」


「神様に乗るとかって何か気が引けるんですよね」


「相手が神様でも、家族や眷属であるなら、遠慮をしてはいけないわ。それは信用されて無い。と、相手を不安にさせる行為よ」


「分かってはいるんですが・・・考えておきます」


「えぇ。その方が良いわ。・・・エリウス」


「はい」


「貴方は、輓獣車を引けて嬉しいわよね?」


「それはもうぉ~。ヒヒィ―――ンでございます」


「ね、ロイク」


「そうみたいですね・・・」


 ・・・エリウスさんは特殊なケースだと思うけど・・・。普通の馬は馬車とか引きたいと思うのか?


「馬に生まれたからには、快適で心地良く引く。憧れの職業でございます」


「そうなんですね・・・」


「モテるんですよ。これ。意外に・・・ヒヒィ―――ン」


「良かったわね」


「はい。マルアスピー様のおかげです」


 自然の力の循環をそのまま利用したり、魔術や魔法や魔導具を利用して、輓獣を使わない移動手段を一般にも普及させようって考えてたけど、馬達にとって憧れの職業を奪うのも問題か。馬に恨まれるのも何だしな・・・。


 1つ試しておきたい事があるんだけどなぁ~・・・。まだ早いって事か!



「主殿。マルアスピー様。何かが来ます」


「えぇ」


「邪属性は感じるのに、姿は見え無いですね」


 周囲は邪属性の自然魔素(まりょく)に覆われている。


「あのオアシスそのものから邪属性の自然魔素が溢れてるみたいですが・・・風下だからでしょうか。西側のこの付近の砂漠だけ邪属性の濃度が濃いですよね」


「オアシスもそうですが、この辺りは地面からも微量ではありますが・・・邪属性の循環が始まりつつあるようです」


「マルアスピーどう?」


「そうねぇ~・・・エリウスは聖獣だった存在。聖属性や邪属性には敏感よ。私達には分からない極僅かな邪属性の痕跡や流れを感じ取っているのかもしれないわ」


「邪属性が濃過ぎて存在の認識が微妙になってます。風上に移動してください」


「お任せあれ。うん!来ます!!」


「これ結構近いな!」


「ロイク。上よっ」


「あれって・・・」


≪ゴ―――ン


 輓獣車は、俺の神気を利用し途轍もなく強力な清澄魔力の聖属性による結界が施されている。中空の離宮に張られている最終結界より強力かもしれないとフォルティーナに言われた程の結界が常に展開している。


 本来の目的は、認識障害や盗難防止。家族会議で、トゥーシェ騒がしい方と女王様な方の2人以外が賛成し決定したので、結界を張っただけとも言えるのだが・・・。


 そんな輓獣車のキャビンの真上部分に、見た事も無い物が上空から落下しぶつかった。


「主殿よ。あれは古代種!?です」


「へぇ~・・・あれって、古代種なんですか。・・・大きな貝に見えますが」


「えぇ。貝ね」


「古代種って殻とか甲羅系が多いとかありませんか?」


「どうなんでしょう。私は古代種の時代にはまだ存在していませんでした」


 古代種ってどの位前の存在の事何だ?・・・神様とかって古代種・・・神様は神様か・・・千年単位だと一昔前とかだよなぁ~・・・万年だとちょっと気合いを入れると生きられる種族もいるし・・・やっぱ億年か!


「主殿!?・・・頷いておられるがどうされました?」


「ロイク。何に関心しているのかは知らないのだけれど、感心するのは後よ」


「あっ・・・それもそうですね。いや、この世界の大先輩なんだよなぁ~って思ったら何か凄いなって・・・それで、これって、やっぱり」


「「貝」」


 マルアスピーと俺の声がハモる。


「ですよね」


「そうね」


「海や空の存在は大きくなる傾向にあると聞いた事がありますが、砂漠の存在も負けてはいないようです」


「エリウスさん。貝って砂漠よりは海や水辺の存在ですよ」


「ですが、現に砂漠の宙を浮かんでおりますが・・・」


「確かに・・・」


「ロイク。神眼で確認して御覧なさい。精霊眼や神獣眼よりは詳細認識が可能なのでしょう」


 俺の神眼は制限が多い。・・・俺は神眼を意識し上に存在する何かを凝視した。


「・・・・・・大烏賊菊螺旋貝・狂暴(邪アンモマール)・・・あの殻レミレリラスを含有してるみたいですよ」


「邪属性に侵食された魔獣。嘆きの洞窟の時と同じよ」


「つがいのアースドラゴンかぁっ!懐かしいですね」


「懐かしがるのは後にして貰えるかしら。今は古代種よ」


 優しい言葉の1つ位あっても・・・彼女にそれを望んではいけないか・・・絶賛人間種の心の変化、感情について勉強中なのだから。


「・・・了解しました。マルアスピーはキャビンで寛いでてください」


「分かったわ」


「エリウスさん。適当な場所を見つけて停車です。俺が出たら、結界内からでこの・・・」


 俺は貝を改めて凝視する。


大烏賊菊螺旋貝・狂暴(邪アンモマール)の観察をお願いします。何か分かったら【レソンネ(共鳴)】で伝えてください」


「お任せあれ」



 俺は、砂漠に降り立つと、神眼を強く意識し古代種の大烏賊菊螺旋貝・狂暴(邪アンモマール)を視認した。


***********************


【分類】古代種の魔獣

大烏賊菊螺旋貝・狂暴(邪アンモマール)

 レア度:★★★★★★★★☆☆☆

【個体レベル】114

【HP】 546,472

【MP】  10,092

【STR】  79,999

【DEX】     114

【VIT】 249,999

【AGI】     999

【INT】     114

【MND】     114

【LUK】―――――――


***********************


 少し硬めで大きいだけで弱いな。殻と肉の回収さえ出来れば良い訳だから・・・そうだなぁ~。


『ねぇロイク。思い出した事があるのだけれど』


 あぁ、はい。えっと、どんな事ですか?


 神眼を強く意識し視認している時に話掛けられると、意識が声に誘導され持って行かれる感覚に成り、夢から覚めた様な錯覚に陥る。そのせいか、神眼は意図的に軽度であったり停止に近い状態にしている事が多い。


大烏賊菊螺旋貝(アンモマール)は、殻だけが宝石化した状態で化石化すると、虹の化石と呼ばれ精霊界でも神界でもとても高値で取引されるそうよ』


 へぇ~。お金の話でしたか・・・・・・ですよねぇ~。


『前に家の書籍で読んだ事があるの』


 虹の化石ですか。


『空に架かる橋の事よ』


 えぇ、分かります。


 俺は、殻部分に視線を動かす。


 あの螺旋部分が化石化すると綺麗に化ける訳かぁ~・・・そうなるとバラバラに粉砕して回収するのはダメって事だよなぁ~。レミレリラスの回収よりも、50m以上の殻を無傷でって事か・・・どうしようかなぁ~。


『思い出したわ』


 何をですか?


大烏賊菊螺旋貝(アンモマール)の仲間で現代種の種類の殻でも、高値で取引されているの』


 そうなんですね・・・。


『現代種は、15cm~2mの物が多いらしいのだけれど、15cmの虹の化石に成り掛けている殻でも、1000万NL以上で取引されるそうよ』


 おっと、予想以上の価格が耳に飛び込んで来たぞぉ~・・・。


 高いですね。


『精霊界の工房ロイスピーの販売店か、神界のディーラーに直接交渉ね』


 売るの決定事項なんですね。・・・お金の事には確りしていらっしゃる。大切な事なのは分かるけど、何か寂しい。


 分かりました。無傷で仕留めます。


『えぇ。ロイク。頑張ってね』


 あ・・・はい!


 俺って、単純だなぁ~って思う。でも、1言って大切だよね。


≪シュルシュルシュルシュル ムギィッギィギィギィ―――


 触手が2本。俺の周りに展開している結界に絡み付く。


 グロイな、それに締め付ける力も意外にある様だ。・・・この肉って本当に美味しいのかぁ?吸盤に棘みたいな物もあるし、触手が伸びて来た殻の穴部分には、烏賊みたいな目が2つ。それに、あの短い触手数十本数百はありそうだけど・・・本当にキモイ。


≪パチーン パチーン


 叩いても締め上げでも無駄だよ。烏賊?貝?・・・どっちでも良いか。さて、本当にどうしたら良いのやら。



 貝殻から烏賊っぽいのを取り出して、まずは殻を回収だな。烏賊の方は柔らかいし最悪キモイから食べないかもしれないし傷があっても問題無いだろう。


 貝殻を何処かに固定しないと中味を取り出せないか。


≪ギュゥ


 うわぁ~何かヌルヌルして気持ち悪・・・。


 俺は触手を掴むと、触手を引っ張り地面へと大烏賊菊螺旋貝・狂暴(邪アンモマール)を叩き付けた。もとい、自然の力の循環の風を操り、砂の地面に落ちる前に風のクッションを展開し、優しく置いた。大切な商品を傷物にする訳にはいかない。


 固定・・・固定・・・。地属性で固定すると接触面に負荷が加わった時に、傷付く可能性があるか・・・。水も火も風も貝殻だけを固定して中味を取り出すのに調度良い拘束手段が無いなぁ~。


≪シュルシュル


 ちょっと考え事の最中なんで動かないで貰えるかな。闇属性下級魔法【レストリクシオン(強制拘束)】☆2☆1☆1 発動 ≫


 ラピスだと粉砕しちゃうだろうし・・・。合成加工で氷結させて地面に固定して中味だけ引っこ抜く。これだな!


 神授スキル【マテリアル・クリエイト】『合成加工』:氷・『形状』:大烏賊菊螺旋貝・狂暴(邪アンモマール)の貝殻の入り口以外を覆い地面に固定 発動 ≫


 俺は、強制拘束し、氷漬けにした大烏賊菊螺旋貝・狂暴(邪アンモマール)の長い2本の触手を1本ずつ手に握る。


≪ギュゥッ


「せぇーのっ!」


 おっ、意外に奥の方まで確り入って抜けない。・・・氷漬けにしたせいで中で固定されたのかもな。・・・肉は千切れても問題無い訳だから・・・少し強く抜いても良いか。・・・さぁ~目だけじゃなく顔を姿を見せて貰うかぁっ!


「せぇ―――のっ!!」


≪ブチ ブチブチブチブチ スポーン


 良し。良い感じで分離出来た。しかし、中身は更にグロイな・・・。


 タブレットに強制回収され、貝殻が消える。


 絶対不味いよこれ。美味そうに見えない。烏賊とも蛸とも蝸牛とも違う。何だよこれ。マルアスピーに確認してみるか。


 マルアスピー。これ本当に美味しんですか?


『さぁ』


 さぁ~って、さっき美味しいって・・・あれ?美味しい何て誰も言ってないか・・・あれ?


『食べた感想を記した書籍を読んだ事は無いわ』


 もしかして、回収するのって殻だけで良かったとか?


『虹の化石に成る為には、最低でも800万年はかかるらしいの。楽しみね』


 えっ!?・・・・・・えっと、それだと生きてるのを狩っても・・・。


『大丈夫よ。フォルティーナに時間の理を調整して貰うから』


 1時間が5日だとして、800万年ですよ・・・1年390日が、800万回ですよ。


『そうね。1日30時間で150日。最低でも5万3333年強で化石になるわ。6万年もあれば立派な虹の化石の出来上がり』


 ・・・そ・・・・・・良かったですね・・・。


『えぇ・・・後は、宝石化の方法を考える必要がるわね』


 そうですね・・・。


『その大きさなら、数百億、数千憶NLかもしれないわ』


 はぁ~・・・。そぉーそれで、このまず・・・グロテスクな肉の方も回収した方が良いですよね?


『そうね。見た目が悪い物。香りが臭い物の方が美味しいってジンクスが人間種達の世界にはあるのよね。楽しみだわ』


 本当に、そう思ってますか?


『・・・えぇ』


 今、少し考えませんでしたか?


『気のせいよ』


『主殿。古代種ですが、途中から動かなく成ったように見えましたが』


 強制拘束で抑え付けたんです。殻に傷を付けたくなかったんで無理矢理中に入ってるこのグロイのを取り出したんですよ。


『個体レベル100を超える古代種を強制拘束し、いとも簡単に殻を回収し、本体をどの様に食するのか奥方様と吟味なされるとは流石は我が主殿です』


 吟味って言うか・・・これ美味しいのか謎でしかないけどね。


『マルアスピー様』


『何かしら』


『このエリウス。砂漠の海の幸という物を食べた事がありません』


 聖邪獣の聖獣だったにしても馬だった訳だし・・・。


『大樹の聖域の傍に海はないものね』


『はい。楽しみですなぁ~。砂漠の海の幸』


 ようするに、エリウスさんは、このグロイ肉を食べたいって事だから・・・。


 分かりました。サクッと仕留めて回収します。味見で少し食べてみますか?


『是非。是非』


『・・・』


 食材を傷めず入手する最高の方法。細長い刃物や棒で一刺しで仕留める。もしくは絶命の魔法を強制する。


 俺は、タブレットから神具【打破の優弓】を取り出すと、大烏賊菊螺旋貝・狂暴(邪アンモマール)の2つの黒い目の様な部位の間に狙いを定める。


≪シュッ!


 思い付いたのは矢で射る方法だった。久々に矢を射った気がして、ちょっと楽しかった。俺はやっぱり狩人何だと思った。



 大烏賊菊螺旋貝・狂暴(邪アンモマール)の肉は、浄化してからタブレットに回収した。そして、昼食を済ませたばかりだと言うのに、1Kg程の肉を焼いていたりする。


≪バチバチ バチバチ


「主殿よ。美味そうな匂いがして来ました」


 エリウスさんは、かなり普通の馬の様になり、涎が口から溢れ地面に滴り落ちている。


「匂いは魚介そのものみたいです」


「そうね。海に似た香りがするわ」


「海の香りですか・・・なるほど。確かに生臭い様な潮の様な・・・」


「雰囲気が台無しよ」


「魚介を焼いて食べるのに雰囲気とか必要ですかね?」


 浄化した大烏賊菊螺旋貝・狂暴(邪アンモマール)の肉は、大烏賊菊螺旋貝(アンモマール)の肉と成り、強過ぎる火力でローストするのはダメだと結論に至り、マルアスピーの火属性魔法でじっくり焼いていたりする。


 BBQ以上に色気も優雅さも無いクッキング風景である。


「エリウスさんは、肉とか食べて平気なんですか?」


「何でもペロりですよ。寧ろ好物です」


「意外です。肉食だったんですね」


「草は好きですが、長らく生きていると流石にあの味気なさに飽きてしまって、肉や酒を自ずと欲してしまうのですよ」


「どのタイミングで食べて良いのかサッパリ分からないわね」


「満遍なくコンガリ焼けてるみたいだし、そろそろ良いんじゃないかと」


「そうですか。それでは有難くいただきます。・・・アフハフアツツ・・・美味。これ・・・想像以上に美味いですよ」


「そうですか。それは良かったです。マルアスピーも食べますよね」


「えぇ。・・・少しだけ貰うわ。ロイクもね」


「そ、そうですね・・・」



 結局、1Kgを3人でペロリと平らげた。味付け無し。ただ焼いただけの肉は、帆立と牡蠣と鮑と烏賊と蛸とエスカルゴと何だか貝類総出の旨味を楽しむ事が出来るそんな肉でした。淡泊ながらも旨味がありとても美味しかった。ちょっと複雑な大人な感じでした。



 俺達は、その後、邪属性を感じる2箇所を順に周り、大烏賊菊螺旋貝・狂暴(邪アンモマール)9匹。最初の1匹を合わせて10匹を仕留めた。



「殻は無傷で10個回収しました」


「そう。楽しみね」


 ・・・5万3333年以上後がですよね。


「肉も沢山入手出来ました。楽しみが増えましたなぁ~」


 エリウスさんは、この肉をかなり気に入った様だ。嫁達にも食べさせたいと言うので、戻ったら500Kg程渡す事にした。無く成ったらまた言ってと・・・


「矢傷が一箇所だけで直ぐに回収したので鮮度は抜群ですよ」


「いやぁ~主殿の眷属に成れて良かったです。こんな美味い物が砂漠の海の幸に存在していたなんて、全く驚きです」


「古代種は亀もそうでしたが、淡泊な物が多いのかもしれません」


「なるほど。古代種狩りをする時は、是非お供させてください」



「そうですね・・・脱線しましたが、調査を再開します」


「そうね」


「主殿。手掛かりがまた無く成ってしまいましたので、残りのオアシスを1つずつ周るしかないと考えます」


「手掛かりが無い以上、西部、中央部と同じ様に地道に行きますか!?」


「ねぇロイク」


「はい。なんでしょう」


大烏賊菊螺旋貝・狂暴(邪アンモマール)はどうして邪属性の浸食を受けていたのかしらね」


「主殿。マルアスピー様の仰る通りです。地面に僅かに感じる邪属性の循環が始まりそうな違和感。オアシスから溢れ出る邪属性の自然魔素。規模は大小ありましたが、何故3箇所にだけこの様な現象が起こっていたのでしょうか?」


「古代種がその3箇所だけに存在し、他のオアシスには今の所存在していないのも気になるんだよなぁ~」


「そうね」


「邪落ちとか、呪印とも違う、自然の力の循環の邪属性の自然魔素(まりょく)・・・何者かが循環の理に介入して、砂漠の地下に邪属性の濃い場所を故意に存在させてる可能性が高い。それがオアシスや地面に影響を与えている。検索で見つけ出す事も、認識する事も出来ない何処かに・・・」


「神様や眷属神や眷属や(ジュー)が関わっている可能性が高いのよね」


「フォルティーナはそう言ってました」


「ロイク。1つ教えてあげるわ」


「何をですか?」


「地属性の精霊は頑固で執念深く凝り性なのよ」


「へえ~・・・精霊様の話ですか」


「そうね。フフフ」


 マルアスピーは大樹属性。ようするに四大属性全てを同時に統制し扱う事が出来る存在。地属性の性質も持ってるから頑固なのか・・・なるほど。


「おや!?」


「エリウスどうかしたの?」


「何かが物凄いスピードでこちらに・・・」



「もっのすごぉーく良い香りがするぞ。食べ終わってしまったのか?」


「君は?」


「僕は、ワワイ山脈の山頂に宿りし精霊。中精霊のミューク。偉いんだぞ」


「マルアスピー。この子」


「えぇ」


 マルアスピーは、俺と視線を合わせると、小さく頷いた。


「ワワイ山脈の精霊様がゼルフォーラ砂漠で何をされていたのですか?」


「砂漠になってしまったこの地は、大樹の聖域の管理下から離れ日が長い。ワワイ山脈の頂上に宿りし僕が、循環から離れてしまったこの地を見守っていたのだ。偉いんだぞ」


「そうね偉いわね」


「凄いですね。創造神様からお預かりした場所以外も見守っていたんですね」


「うん・・・!?精霊が創造神様より預り管理する事を知っているのか?・・・あっ!・・・えぇっ!・・・も、もしや貴方様は・・・長老精霊様では・・・ありませんか!?」


「私は、大樹の森の聖域の精霊樹に宿りし精霊。マルアスピーです。力は精霊王様にも匹敵する状態にありますが大精霊です」


「母精霊として精霊王様を支えるドゥーミナ様の姫君様は放浪精霊になられたと聞いておりましたが、精霊樹に無事お戻りになられたのですね。それは何よりです」


「あぁ~。ミト様の事ですか。ミト様は、俺が植樹した精霊樹の幼樹に大精霊様として宿って貰ってます」


「精霊樹を植樹した?」


「えぇ。ワワイの森が大樹の森に復帰したのは良いんだけど、見境無く広がるので、精霊樹の幼樹を2ヶ所に新たに植えたんです」


「えっと・・・精霊樹は創造神様がこの世界に植樹された神の木。神樹です・・・貴方はいったい」


「これは失礼しました。俺はロイク・ルーリン・シャレット。ワワイ山脈の頂上に宿りし中精霊のミューク様。宜しくお願いします」


 俺を握手をしようと右手を伸ばした。


「人間種が・・・。・・・あぁ!僕はミューク偉いんだぞ」


 中精霊様は、慌てて俺の手を握ってくれた。これが、地の中精霊ミュークさんとの出会いの瞬間だった。

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