3-3 エグルサーラ調査の日②~銀色に輝く池~
リーファ歴4075年7月28日、光の日。
その後、巨大なラビットウルフやフォレモルモフやウィンドバード。規格外の大きさの魔獣達から幾度となく襲撃を受けた。魔獣達は皆個体レベル1000超えの兵達だったが、属性に対する不可解極まりない反応で余裕で仕留める事が出来た。
不可解極まりない反応。それは、地属性で攻撃したにも関わらず真空の刃で無残にも切り刻まれ果てた様に見えたり、水属性で攻撃したにも関わらず巨大な岩石に押し潰され果てた様にみえたり、火属性で攻撃したにも関わらず氷付きヒビが入り粉砕し果てた様に見えたり、風属性で攻撃したにも関わらず沸騰し蒸発し果てた様に見えたりと、起こり得る現象が噛み合わない。目の前で起こる現象が常識だと認識していた事象を凌駕する。
・・・。今はこの不可解極まりない事象について考察しないと心に決め調査を進める事にした。
そして、南の山々の中で1番高い山の頂上で待ち構えていたのは、とっても大きなオプスキュリテだった。どうやらオプスキュリテとは、切っても切れない只ならぬ関係にある様だ。そんな事を思いながら、超巨大なそれと対峙した。
俺は、マテリアル・クリエイトで【MP】を100万も消費し、聖属性の魔法を発動させ、超巨大なオプスキュリテを仕留めた。経験値は通常のオプスキュリテと同じだった。悲しいかなこの島で仕留めた魔獣からは、魔晶石どころか核や素材何1つ拾う事が出来なかった。経験値は従来の規格の大きさの魔獣と全く同じ。
あらゆる事が不可解極まりないそんな状況だった。
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頂上から見下ろす島の風景。眼下に広がる森と海。・・・そこは、巨大生物の楽園だった。
そして、この山の頂上より少しだけ低いと思われる、北の山々の頂上付近に視線を移すと、光が点滅している事に気付いた。
「今、光りましたよね?・・・あっ!ホラ!また、光りました」
「何処ですか?」
「バルサさん、目の前の山の頂上付近です。ホラ!またぁっ!・・・というか、点滅してますね・・・」
「火の灯とかじゃなさそうですよ。でも、発光の魔導具の光とも違うみたいです」
「ロイク様。あれはいったい」
「俺にも分かりません。テレーズさんの瞳で見ても分かりませんか?」
「離れ過ぎています。この距離では神授スキル【猛禽眼】を発動させても意味が無いかと・・・すみません」
神授スキル【猛禽眼】は、10Km離れた地点に置かれた書籍の文字を難無く読む事が出来る。父バイルの神授スキル【遠望】が10Km圏内であれば自分を中心に視認出来る広範囲認識型のスキルなら、テレーズさんの【猛禽眼】は単体特化認識型。どちらも障害物が存在したり、光の届かない闇の中では活用出来ないスキル。だが、他のスキルや使い様によってはかなりの効果が期待出来る頼もしいスキルになる。
その為、猛禽眼の精度を確かめるのは当然の流れだった。普段本を読む時と同じ感じで読めるのは10Km位までとして、それ以上離れるとどうなるのか。10Kmに1cmでも距離が増えると本の文字を認識する事が出来なくなった。ただし、文字よりも大きいな存在。人や魔獣、建物の識別は詳細まで余裕で可能だった。個人の識別が出来なくなる距離は約16Kmを超えたあたりから。
対象が大きな存在であればある程、認識が鮮明になり距離が伸びる。なかなかどうして凄いスキルである。とは言え、流石に100Km先に関しては論外だよなぁ~・・・もう少し彼女のスキルを考慮してから発言するべきだった。
そうどう見ても、頂上同士は約100Km離れてる。山脈の端と端は30Kmも離れてないとして・・・これは、1つの山脈だったと考えて良いだろうか。・・・近いだけで別々の山脈の可能も否定できないか。
「こちらの山脈と比べ、あちらの山脈は、随分安定していると思いませんか?」
「え?」
マリレナさん・・・そうか、今の彼女には精霊眼があるのか。吃驚した。自然魔素の循環が見える人がいるんだって・・・精霊様になった訳だから。そうだよな・・・。
「こちらの山脈は活火山ですが、あちらは随分と穏やかだと思いませんか?この距離で真逆の存在が成立しているのは不自然ではないでしょうか?まるで、大樹の森の聖域とカイライ山の様です」
「火属性の精霊地と、聖属性の聖域ですか」
「はい。それが隣り合っている様で気味が悪いです」
「荒れ狂うこっちよりも、静まり返ったあっちの方が、そうなると怪しいって事ですね。あっちの方が優先度が高かった訳か・・・」
やっぱり年の功・・・禁句俺の中で言ってはいけない禁句にしたんだった。・・・さてとぉっ!
「北の山々で1番高いあの山の頂上に光を確認しに行きましょう」
「はい」
「確認しに行く事には賛成します。ですが・・・あちらの頂上までまた歩くのは・・・」
「私もテレーズさんと同じ意見です。流石に疲れて膝がガクガク震えてます」
テレーズさんもバルサさんも流石に限界か。・・・向こう側の状況は視認で確認出来てる訳だし、神授スキル【フリーパス】で頂上の手前の木の無い地点までは移動してしまうか・・・自然の流れは安定してる様だし魔獣もいなそうだしその方が無難かな。
「俺のスキルでサクッと移動しますか?見た感じ移動先に危険はなさそうだし」
「「はいぃ~」」
2人は安堵の表情を浮かべ返事した。
「あらあら。フフッ」
「マルアスピーの真似ですか?」
「あの位狙わずに可愛く出来ると良いのですが・・・難しいですね」
マリレナさんは、ペロっと僅かに舌を出し悪戯な表情を俺に見せた。
「そ・・・あれは難しいかもしれないですね」
今のは何だ。何か凄く可愛かった気が・・・
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神授スキル【フリーパス】で頂上の手前まで移動した俺達は、頂上を目指し10ラフン程草木を掻き分け登った。
「銀色の池?」
「水ですよね・・・」
≪チャプチャプ
「これ!お湯ですぅ~」
テレーズさんは、臆することなく、躊躇することなく、正体不明な銀色の池に手を入れていた。
「お湯ですか?」
「えぇバルサさんお湯みたいです」
「テレーズさん・・・何とも無いですか?」
「何がですか?」
今のところ以上は無い様だ・・・
俺は念の為、彼女の状態を神眼を意識し強制的に確認する。
現状では異常無しか!しかし、銀色のお湯って金属や鉱石が溶けたとか?
「ロイク様。あれって、自然魔素の循環がおかしくありませんか?」
「おかしいというか、安定し過ぎてますよね?」
「高濃度な水属性の水に、高濃度な地属性が溶け込み、高濃度な火属性によってどういう訳か安定している。そんな感じでしょうか?」
「強いて付け加えるなら、闇属性も少し溶けてますね」
「そうですね・・・それに僅かですが風属性もです・・・」
「有り得ないですよね?」
「持ち帰って工房ロイスピーで調べた方が宜しいのではないでしょうか?」
「そうですね・・・サンプルを持ち帰って分析してみます。巨大な魔獣ってだけでも気になるのに、この不思議な銀色のお湯・・・何なんですかねこの島は!」
「ロイク様。この銀色のお湯ですが、気持ちい良いですよ」
「ロイク様。これって温泉の1種なのではないでしょうか?」
バルサさんまで銀色のお湯に触れていた。足湯スタイルで・・・
「バルサさん、テレーズさん。お楽しみの所申し訳ないんですが、体調は大丈夫ですか?」
「かなり歩いたので疲れてはいますが、この位ならへっちゃらです」
「私はバルサさん程体力が無いので、帰ったら少し休みたいです」
・・・う~ん。身体に害はなさそうだ・・・。
「2人に質問しても良いかしら?」
「「マリレナ様がですか?」」
「闇属性が溶け込んだお湯は、そんなに気持ち良いのですか?私も試してみようかしら・・・」
「「え?・・・・・・や・み!? きゃぁ~~~」」
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闇属性。基本的には、呪い状態異常の属性。イメージは取り合えず悪い・・・
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エルドラドブランシュの屋上の研究室に戻った俺は、採取した銀色の液体の成分を分析していた。
「ねぇロイク。何か分かったの?」
「そうですねぇ~・・・成分の49%がレミレリラスで、49%がレインボーって聞いた事の無い金属で、他色々で2%って感じです。自然魔素の配分は、地属性39%。水属性40%。火属性19%。風属性1%。闇属性1%。信じられませんが5種類の属性が溶けてるのに安定しています」
「原理が解明出来れば、ロイスピーの商品はもっと売れるわね」
「・・・そうですね」
他にも使い道が沢山あると思うけど・・・
≪シュゥ
「突然、後ろに出現しないでくださいよ。心臓に悪い」
「小さな事を気にしていてはハゲるね」
「ハゲる前に心臓発作で死んじゃったらどうするんですか」
「何を言ってるね。ハゲる心配から解放されるね。素晴らしい事だね」
こいつはっ!・・・。
「それで、何しに来たんですか?」
「神界にのみ存在する神虹石の良い香りがしたね」
「しんこうせき?」
「ロイクが持っているその銀色の液体からするね」
「これですか?・・・これ、さっきの島で採取してきた液体ですよ」
「変だね。間違い無く神界の鉱石の香りだね」
「あぁ~なるほどね。この液体なんですが溶けてる成分の内49%はレミレリラス鉱石みたいですから神界の鉱石の臭いがしてもおかしくないと思いますよ。神殿にいながらで良く臭いに気付きましたよね?」
「違うね。レミレリラスは武具や日用品として最高級品の金属だね。この香りは永久機関や消毒や精密機器に重宝される神虹石だね」
「49%レミレリラスで、49%レインボーで、他2%らしいんで何処かに混ざってるのかもしれないです」
「・・・・・・う~んだね。神界にしか存在しないはずのレミレリラスとレインボーが両方手に入る場所がコルト下界にかね・・・・・・大変な事だね。驚きだね。信じられないね。採取したのはそれだけかね?」
「まさか。調べた限り40㎡位の広さの温い水の池で、水深は深い所で5m浅い所でも1m。水量は約124キロリットル。一応湧いている様だったので、200ccの瓶10本分を採集してきました」
「なるほどだね。・・・神星石・・・神虹石・・・ミスリル・・・クロム・・・あくまどう・・・プラチナ・・・他にも混ざっているようだね・・・だが、間違いないね。神界にしか存在しない金属が2つそこに存在しているね」
「しんせいせきとしんこうせきについて聞きたいんですが、この世界でいう所のなんですか?」
「今更かね?」
「今更と言いますか・・・聞いた事も無いし、溶けてるので見た目から想像出来ないし」
「良いかね。あたしは、暇じゃないね。時間を有意義に使うタイプだね」
今迄数億年レベルで無駄にして来ただろうに・・・良くもまぁ~・・・。
「そこを何とかお願いします」
「分かったね。神界に存在する金属や鉱石には神と必ず付くね。例えばだね。レミレリラスは、神星石。レインボーは、神虹石。レインボーよりは劣るがだね。オリハルコンは、神金石。更に劣るがだね。コルト下界のミスリルよりは気持ち勝る。ヴレミスリルは、神銀石」
「・・・・・・フォルティーナ。以前言ってましたよね」
「何をだね」
「この世界に存在する物なら、一般に流通させない限りなら活用して良いって」
「言ったね」
「レミレリラスは家族専用の武具には既に活用してますが、そのレインボーも家専用とかになら活用して良いって事ですよね?」
「・・・そう・・・なるね。たぶんだね」
「と言っても、まだどんな特性や特徴がある金属なのかサッパリ分からないので、今後の話になりますけどね。ミスリルより勝るえっと・・・」
「ヴレミスリルかね?」
「それとか、オリハルコンでしたっけ。トップクラスの金属は存在するのに、下のクラスの金属が存在しないとかって、何か理由とかあるんですかね?」
「当然だね」
あるのか!
「この世界に存在しない物を、神眼と魔法で分析したら、名前だけでしたが認識出来てしまったのはどうしてだと思いますか?」
「・・・コルト下界に存在する全ての理をロイクは知っているね」
今いち良く分からない。認識は出来るけど、意味を理解出来ていない。こんな感じだろうか・・・
「う~んだね。・・・分かったね。これを見るね」
フォルティーナは、宙から白色いや銀色に輝く金属を取り出した。
「それは?」
「神眼で視認してみるね。アスピー精霊眼でもやってみるね」
「えぇ」
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「あれ?ダメです。フォルティーナが右手に持ってるのに見えてるのに、認識しません。存在が無いみたいです」
「これは、ヴレミスリルだね」
「それが」
「私の瞳には真っ黒な空間の裂け目の様に見えるわ」
「コルト下界に存在しない存在だね。ロイクには神眼で見えたとしても認識は出来ないね。アスピーは精霊界でこれを視認すれば認識出来るがコルト下界では下界干渉規制で全体が隔離され瞳に映るね」
「あれ?・・・フォルティーナ。俺の神眼でヴレミスリルって認識が」
「それはだね。コルト下界に存在してるからだね。全ての理を知るというロイクの能力が書き換えられたね」
「それ、この世界に存在するって理が書き換わった事になりませんか?」
「そうなるね。気にする事は無いね。神が存在するとバレた今何も気にする必要はないね」
ダメだろう・・・
「おかしいわ」
「どうしたんですか?」
「この世界に存在する事が書き換えになったのなら、どうしてフォルティーナとか神の情報が認識出来ないのかしら。ロイク前に言っていたわよね。神様でも家族なら視認出来るけど、フォルティーナのステータスやスキルは視認出来ないと」
「はい」
「あぁ~それはだね。あたしやアランギーがロイクから見て上位の存在過ぎるからだね。それにだね。神は理の外に存在するね。コルト下界の理も他の下界の理も、精霊界の理も神界の理も、神の理の中に存在しているが、神は神の理の中に存在する幾多の理の外に存在し干渉される事が無いね」
ようするに何でもありな存在が神様って事か。
「ふーん。・・・それならそれで構わないは。それよりも、教えて貰えるかしら」
「何をだね?」
「この液体には、神界にしか存在しないはずの2つも金属が溶けている訳よね。その影響なのかしら。この液体には地属性水属性火属性風属性闇属性、信じられない事に5つの属性が存在し安定しているわ。これは何かしら?」
「そうだったね。それも気になっていたね」
「この液体の自然魔素の有り得ない状況の事ですよね?」
「ロイスピーの新商品に使いたいわ。教えて貰えるかしら」
誰が相手でも決してブレない。逞しい人だ。
「当然だね・・・その液体は、コルト下界では存在出来ない自然魔素を停止させた状態にあるね」
「「停止ですか?」」
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「何を見つめ合ってるね。ダメだね。妻の前で、もう一人の妻とだけ愛を確か合う行為はいただけないね・・・」
ニヤニヤするな。綺麗な顔が勿体ない・・・
「思った事が同じか確認し合っただけよ。気にする必要はないわ。それで、停止しているのに存在し続けて居られるのは何故かしら。自然魔素は飽和するか流動しない限り存在していられないはずよ」
「うんうんだね。流石はコルト下界の自然の力の循環を管理するアスピーだね。その液体はだね。【5属の攻撃因子水】というね。・・・どうしてそんな物がコルト下界に存在するのは知らないがだね」
「「5属の攻撃因子水?」」
「コルト下界では、自然の力の属性を、四大属性の地水火風と、非四大属性の聖邪光闇と、無属性の無。属性9つを3つに分類しているね」
「そうですね」
「えぇ」
「それは、精霊界でも概ね一緒だね」
「えぇ」
「だがだね。神界や邪の神が創造した魔界では、地水火風闇を【5属の攻撃因子】。聖光を【2属の補助因子】。邪を【再生因子】。無を【万能因子】といって、4種類の因子に分類しているね。基本的に属性として認識していないからだね」
「確かに神様として神気をわざわざ魔法や魔術に変換して扱うのは変ですね。天罰として発動した方が威力の調整がしやすいってのもあるんでしょうが」
「その通りだね。つまりだね。神界には自然の力の循環は存在しないね。属性という認識をする必要がないからだね。循環は無いが因子は存在するね。常に安定した状態。つまり5属の攻撃因子の塊であったり2属の補助因子の塊であったり再生因子の塊であったり万能因子の塊であったりだね。その液体は、5属の攻撃因子の塊が液体として何故かコルト下界に存在しているという訳だね」
「説明になっていないわ。その液体はコルト下界に存在しているというのに、どうして安定したままでいられるのかしら」
「言ってなかったかね。この5属の攻撃因子の塊は1度5つの因子で結びつくとだね。条件を満たさない限り安定したまま存在し続けるね」
「聞いて無いわ」
「聞いてません」
「究極の安定系。液体として因子が一塊に成っているのは実に勿体ないね」
「と、言いますと?」
「5属の攻撃因子は条件を満たさない限り究極の安定を約束された塊だね。金属として存在した方が価値が高いね」
「あら。残念ね。・・・【MP】回復用に活用する事は無理そうね」
「その通りだね。これは安定しているね。摂取しても安定して尻から出て終わるね」
ニヤニヤしないでください。お願いします。
「液体では無い状態。今回は金属の場合で聞きますが、金属だと使い道がある訳ですか?」
「当然だね。さっきも話したがだね。オリハルコンは、5属の攻撃因子の塊が金属として存在した物の事だね」
「へぇ~・・・聞いてませんけどね」
「えぇ」
「何でも良いね。オリハルコンがそのままでは武具として不向きなのはだね。条件を満たすと安定を失うからだね」
マルアスピー。
『何かしら』
これ、長くなるパターンですよ。
『そうね』
どうします?
『まだ、確認したい事があるの』
そうですか・・・
「そこ!あたしが気分良く話をしている時に、見つめ合うとは何事かね。あたしの声は夫婦のあれをサポートする為に存在してないね。分かったかね」
・・・
マルアスピーと俺は、頷き合ってから切り出した。
「それで、5属の攻撃因子の塊が安定しなくなる条件って何なんですか?」
「えぇ。気になるわ」
「うんうんだね。良いかね。邪属性を神界ではどうして再生因子と呼ぶのか。それはだね、再生因子はあらゆる存在を乱す因子だからだね。つまりだね。究極の安定を約束された因子達の塊にだね。この再生の因子を加えるとだね。あ~ら不思議安定を失い其々が其々で1つの因子として活動を再開するね」
「「なるほど」」
「オリハルコンがそのままでは武具として不向きなのはその為だね。攻撃対象に切り掛かった瞬間、究極の安定を約束された至高の切れ味を誇る刃が、邪の因子と接触するね。オリハルコンはオリハルコンで無くなるね。無くなると言うか本当に消えて無くなるね」
「それ最悪ですね。ドラゴンに剣で切り掛かったら直前で武器が消えて肉弾戦とか自殺行為ですよ」
「そこで、素晴らしい解決をロイクとアスピーに伝授してやるね」
「はぁ~・・・」
「何かしら」
「邪には聖。これは因子だろうが属性だろうが同じだね」
「同じなんですね」
「同じなのね」
「オリハルコン。5属の攻撃因子の金属の塊に、2属の補助因子を加えるね。コーティングするね。するとだね。あ~ら不思議邪に接触してもコーティングが100%邪を祓うね」
「なるほど。オリハルコンを武具として利用する為には、2属の補助因子による付加なり付与を与えると良い訳ですね」
「そうだね。オリハルコンに聖光の理を与えるね。これを、レインボーと言うね」
おい・・・おい・・・やっぱりかなり無駄な時間だったよ・・・
「この液体の中には、レミレリラスとレインボーが溶け込んでいて、レインボーは5属の攻撃因子が金属として塊になった物に2属の補助因子のコーティングが施さた物だけれど液体に溶け込んでいる状態。そして液体事態は5属の攻撃因子が液体として塊となって存在しているって事で良いのかしら?」
「まぁ~だいたいあってるね。安定を失った5属の攻撃因子の塊が動き出すと面倒だね」
「どんなふうにですか?」
「因子が不規則に運動したらどうなるね」
「コルト下界でなら天変地異や魔獣の活性化や自然魔素が乱れるわね」
「そうだね。つまり、俊敏になったり、強くなったり、大きくなったり、場合によっては死ぬね」
あの島・・・活発な方はもしかして乱れていたのか?・・・強く大きくなるねぇ~
「あの島には、巨大なジュルムとか魔獣がゴロゴロ存在してたんですが。この液体の影響って事で間違いなさそうですね」
「違うね」
「違う?」
「その液体のせいではないね。邪の因子・・・属性が原因だね」
「まぁ~そうですが・・・ですが、あの島にこの液体が無かったら、あんな事になってないかと、何であんな所に神界にしか存在しないはずの物が存在していたのか。凄く問題じゃないですか?」
巨大化・・・強くなる強靭化・・・・・・まさか・・・帝国があの島で実験?
「ねぇロイク」
「はいなんでしょう?」
「間違って邪属性が、その液体があった池に接触したら大変な事になるわ。自然の力の循環を管理する者としてお願いがあるの。それにね。貴方はこの世界を創造神様から御預りしているの」
「そうですね」
「その液体を全部この工房に回収して来て貰えるかしら」
「その方が良さそうですね。調べたい事がかなり増えたし調度良いかな」
「調べたい事?」
「もしかしたらですが、帝国がこの液体や島の巨大な魔獣達に関わってるかもしれません。地下の研究施設を丸々転移で移動させてしまうだけの技術がある訳だし、あの島でも何かをやっていたのかもしれません」
「あぁ~それは関係無いね」
「えっ!?・・・関係ないんですか?」
「全く関係無いね。・・・」
「断言出来ますか?」
「当然だね。あれは、邪の神が最も得意とした存在の理を強くする神気を、眷属や邪落ちした存在達が扱える様に魔術魔法化した邪の理に干渉する禁止された呪印の1つだね。5属の攻撃因子の塊が乱れた物とは全く別物だね」
・・・えっと。この場合、何にツッコミを入れると良いんだ!
「フォルティーナ」
「何だね」
「俺が、帝国の研究に関する資料とかを必死に集めてるの知ってますよね?」
「当然だね」
「帝国の研究の内容とか魔獣や獣や人間だった人達の事を調べてたの知ってますよね?」
「当然だね」
「地下に沢山拘束してるの知ってますよね?」
「あれを見て直ぐに分かったね」
「・・・邪の神様の力から派生した呪印が原因だって知ってて、どうしてゼルフォーラ砂漠の調査を俺にしろって言ったんですか?」
「知らないのかね?」
「・・・何をですか?」
「ゼルフォーラ砂漠はその昔はだね。大樹の森の一部だったね」
「そうなんですか?って、砂漠とか大樹の森の話をした覚えは無いんですが!」
「祖母の話では、ゼルフォーラ大陸のほぼ全域を大樹の森が覆っていた頃があるそうよ」
「ホラだね」
ドヤ顔は要らないですから・・・
「良いですか。来たる日に備えるって事を最優先で考えた場合ですよ。神界にしか存在しないはずのあの島の銀色の液体の池の存在。邪の神様の眷属達によって邪落ちした遊と呼ばれる存在によって齎されたと思われる帝国の呪印。神界からコルト下界に逃亡し潜伏している神様の拘束。コルト下界に暮らす俺以外の人達の肉体や武具の強化。修練は俺も続けますけどね。こんな感じで神様が絡んだ件が意外にあるんです。なので、フォルティーナはもう少し知ってる事があったら開示するべきです」
「うんうんだね。ゼルフォーラ砂漠に行ってみると分かるね」
「だから、砂漠に行くと何が分かるんですか?」
ありがとうございました。