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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ー1ヶ月間の軌跡ー・ーアンデット編ー
135/1227

3-1 7月27日は、アシュランスカードの日。

リーファ(R)歴4075年7月27日、邪の日。

 ゼルフォーラ王国に存在する全ての貴族領に領都や副領都を設置した。


 フィーラ王国とゼルフォーラ王国は領土交換条約を締結し、旧フィーラ王国は諸外国に向け新国家アシュランス王国の建国を正式に宣言した。ゼルフォーラ王国は聖王の都、王都モルングレーを聖都モルングレーと改名し正式に宣言した。


 まずは、王都を聖都と改名したゼルフォーラ王国で起きた変化を説明したいと思う。


 公爵領の領都を公都(クト)。侯爵領の領都を侯都(コウト)。伯爵領の領都は伯都(ハクト)。子爵家の領都を子都(シト)。男爵家の領都を貴都(キト)。マルアスピー(村)の正式名称は【ゼルフォーラ王国コルト地方アンカー領貴都マルアスピー】となり、サーフィスの正式名称は【ゼルフォーラ王国ルーリン地方トゥジュー領公都サーフィス】となる。


 旧教こと世界創造神創生教とその教会や聖騎士団は全て廃止となり、これにより旧教の騎士=聖騎士と、神授による聖騎士の紛らわしい混同が改善された。また、国教に正教こと正創生教が採用され、聖人教会や大聖堂や神殿、大神殿は神聖なる場所と定められ王国が責任を以て警備する事になった。宰相パトリック・ミィストゥリィー閣下の梃入れによるところが大きい。


 街道と並行し設置を急いだ転移用の魔法陣・魔力陣は、全ての聖人教会や大聖堂に設置。緊急用に領主館や領都庁舎にも設置した。



 そして、俺はというと。(これって、たぶん仕事だと思う)


 ゼルフォーラ王国の御前会議や聖王イヴァン陛下からの要請を受け、街道や港や外壁や城壁や領主館や転移用の魔法陣・魔力陣の設置に貢献したり、聖人教会を建立し続けた。


 代金の半分は王国に請求した。残り半分は貴族領や領主家に最大65回分割月々払いで5年計算で請求。従来の予算の20分の1で済み、従来の工期3年~10年がサクッと1時間以内で済む。破格の好条件で協力し続けた。


 聖人教会の建立は、例によって例の如く創造神様からいただいた家シリーズの中にある三角屋根の聖人教会をそのまま各領都に設置した。正創生教会側は、いつもの如くルーリン・シャレット家による建立として記録した。本当の事を伝える訳にはいかない。皆の気持ちを俺は代弁し創造神様に感謝の気持ちを伝えたのは言うまでもない。


 アシュランス王国ははというと。


 王国の財政と、俺や家族の資産は別物である。これは大前提。


 旧ルーリン・シャレット天爵副王領の領都・聖都スカーレットは、新国家アシュランス王国の王都スカーレットとして新たにデヴューした。王都の市街地は拡大し続け周囲の2都市を飲み込み歪な外壁に囲まれる状況となった為、城壁以外を廃しし外壁は魔法で撤去した。市街地と街道と農地と森林と川と用水路。街道には500m置きに警備隊の詰所があり、国境や森との境界には警備防衛の為の事務所兼塔を設置した。


 外壁の無い首都は、コルト下界が文明社会になってから始めての事らしい。入国税や入都税なるものを徴収していない事が外壁無しの都市を実現する為には重要な事らしい。


 初めてといえば、王都の人口も人間種の文明国家として始めて800万人を超え記録を更新した。


 王都スカーレットは、【北ルーリン平野】と誤って森林を開拓し広がってしまった【西モルングレー平野】この2つの平野を市街地や農地として位置付けた。【モルングレー西の森】や【西モルングレー山脈の西半分】は王都では無く王国の管理下にある。


 スカーレット州、フィーラ州、カトムーイ州、ダカイラ州、ククイム州、ゼンスタード州、ラクール州、エグルサーラ州を設置。王都の正式名称は【アシュランス王国スカーレット州王都スカーレット】となり、森林都市フィーラの正式名称は【アシュランス王国フィーラ州フィーラ市】となる。


 闇の時間にのみ出現する闇の迷宮や、他国が隠しているかもしれない迷宮や塔以外の、地下迷宮・楼閣迷宮・塔は全て俺の管理下に置かれているが、出入管理は迷宮や塔が存在する国に任せている。アシュランス王国には、フィーラの【風の迷宮】。コルトの丘の風の断層の【嘆きの迷宮】。ホラセイラ山脈のカイライ山の【火口の迷宮】。コルトの泉の【湖底の迷宮】。旧トミーサス王国の王都だったトミーランの北、サラン川を渡りトミーサス大森林の中に存在する愛と憎しみの館の【愛と美の修練の塔】と【憎と美の修練の塔】が存在する。全ての迷宮と塔に転移用の魔法陣・魔力陣を設置し、聖人教会や大聖堂や神殿や王国軍関連施設から移動出来る様にした。


 他にも色々やったが、詳しくは回想の際に・・・


 アシュランス王国でもやっていた事は同じで、依頼を受け俺自ら現場に赴き、創造神様よりいただいた神授スキルをフル活用し、大事業と呼ばれる工期3年以上の物から次々と整備し設置した。代金については色々だ。


 王国の税収の4割強を占める大商家【工房ロイスピー】は、マルアスピーと俺が共同経営する工房。気が付けば急成長を遂げ、アシュランス王国や諸外国、家族や俺に膨大な利益を齎している。部門は拡大の一途を辿り、武具や雑貨や魔導具や回復道具やスイーツやデザートや軽食や飲料や他色々と多岐に渡る。家族や俺が仕留め入手した素材の売上。工房ロイスピーで最高品質の加工を施してからの販売は思いの他利益になる。父バイルは素材加工部門の最高顧問として腕を振るっている。あくまでも自称である。


 余談だが、神授スキル【マテリアル・クリエイト】で創造したレミレリラス鉱石の売上がとっても順調です。余談ですが、魔獣の素材は本当に儲かります。


 余談だが、トミーランの王宮跡地に設置し【トミーランマルモアパーク(大理石公園広場)宮殿】と名付けた宮殿は、1ヶ月やそこらで、フィーラの王城王宮跡地に移築。水面の上では無い丘の草原の上に設置された旧トミーランマルモアパーク(大理石公園広場)宮殿改め【フィーラマルモアパーク(大理石公園広場)宮殿】は異彩を放ちつつもフィーラ市の森林住宅と調和していた。料理を司りし神chef(シェフ)アランギー様の住居として存在する宮殿。俺としては宮殿ではなく中空の離宮と同じ神宮殿として認識せざるを得ない。



 さて・・・


 これは、復旧復興と発展。趣味趣向を追求した約1ヶ月間の気楽な物語かもしれない・・・。と、いう事で、日と時間をほんの少しだけ遡り・・・日付は......


――― R4075年7月27日(邪)


 新国家アシュランス王国の国王代理&国王一家の料理担当。料理を司りし神chef(シェフ)アランギー様の提案で、ゼルフォーラ王国とドラゴラルシム王国とララコバイア王国。遥か昔から通貨NL(ネール)を共通通貨にしている国の担当者達と会談した。ヴァルオリティア帝国もNLを採用している国の1つだが絶賛内戦激化中につき招待するのは控える事にした。


 話合いの結果。元々存在する集落であり、アシュランス王国建国に伴い流通する貨幣を増やす必要は無いとの見解で一致した。一致と言っても、3ヵ国の代表者達が勝手に進める気楽な会談を俺は聞いているだけで良かった。造れと言われれば造るし。ダメだと言われれば造らない。それで良いと考えていた。


 会談が終わり、エルドラドブランシュ(王宮であり俺の家)の5階にある執務室で、国王代理&料理担当のアランギー様(神様)と、首相(宰相)のルードヴィーグ・ダダ(722)(樹人族)と、金融経済顧問のブオミル領侯都ロイのアフェールギルド(商人商家協会)ギルドマスター(協会長)で宝石商バトン商会の代表ロメイン・バトンさん(52)(人間族)、パマリ領侯都コルトのアフェールギルド(商人商家協会)ギルドマスター(協会長)でドック奴隷商会の代表ドックさん(63)(人間族)と、金融経済について意見を交をした。



「アシュランス王国に存在する全ての集落に、NLを預けたり引き出したり出来る通貨取引所なる物を設置したのですか」


「ロメイン殿。MGカードで事足りる話だと思わんか?」


「やはり、ドック殿もそう感じましたか」


 ロメインさんとドックさん。アフェールギルド(商人商家協会)ギルドマスター(協会長)達には、通貨取引所の設置は無駄な事に思えた様だ。


 彼等の反応を見てか、アランギー様は下界の者を導くべく救いの手を差し伸べる。


「おんや・・・そうですねぇ~。分かり易くお教えしましょう。はい。・・・ルードヴィーグ。アシュランス王国における売買改革を、ロメインとドッグに説明して差し上げるのです。はい」


 そして、フィーラ王国からアシュランス王国へ移行した現在も首相を務めるルードヴィーグさんへ、丸投げした。


「アランギー様・・・!?」


「利益に繋がる話は大好物でございます」


 気持ち厭らしい反応を示したのはドックさんだ。


「ルードヴィーグ首相閣下。宜しくお願い致します」


 ロメインさんは顧客の多くが貴族や大店のオーナー達、国を相手にする時もある。取引中は表情が大きく消える。


 利益追求の観点で言うなれば狢だが毛色が全く違う2人。


「アランギー様。宜しいのですか?」


「おんや。ダメならダメと言います。はい」


「開発されたばかりの新魔導具を説明をする事になってしまいますが・・・」


「ルードヴィーグ首相。ロメインさんも、ドックさんも身内みたいなものなので大丈夫です」


「畏まりました。陛下」


「ロイク殿!・・・これは、失礼しました。陛下。新しい魔導具の開発に成功なされたのですか?」


 ロメインさんは、冷静且つ慎重だ。


「興味ありますなぁ~ロメイン殿!」


 ドックさんは、ロメインさんとは真逆と言った感じで、傍から見ていると何とも力が抜ける。

 

「これは、陛下が以前開発に成功なされた魔導具を更に進化させ、アイデアと技術を更に駆使した結果。開発に成功したカードです」


 そんな御大層な事はしてないけど口上としては十分かな。ハハハ。


 ルードヴィーグさんは、1枚のカードをロメインさんドックさんの目の前のテーブルに置く。


「身分カードの様ですが・・・」


 ロメインさんは、見たままの感想を口にする。


「触っても良いですかな?」


「どうぞ」


 ドックさんは、目の前に置かれたカードを手に取ると念入りに調べ出した。



「ロメイン殿の言った通り、身分カードにしか見えませんが・・・何か仕掛けでもぉ~~~?」


 向きを変え、角度を変え、ドックさんはカードを確認するが、魔導具の機能を確認する事は出来なかった。


 ルードヴィーグさんは、確認出来なくて当然ですと言った表情でドックさんに右手を伸ばすと、


「実は抗えない仕掛けがそのカードにはあるのです。そのカードを渡していただけますか?」


「勿論ですとも、どうぞ」


「ありがとうございます。それでは」


≪フワァッ


 カードが発光し、カードの面から光の線が宙に伸びると、カードの表面より13倍程大きい画面が、宙に浮かび上がる。


「「おぉ~・・・」」


 ロメインさんとドックさんの声が少し高いキーでハモる。


「これは、私の最新式のカードなので、私しか扱う事が出来ません。私の情報が表示されるので見ていてください。・・・まずは、身分カードの情報です」



「次は、・・・PTカードの情報です」


「おぉ~傘下ギルド(協会)のカード機能も備わっている様ですな」


 ロメインさんは、宙に表示される情報画面を凝視ししながら的確な回答をする。 



「そして次は、RCカードの情報です。私はアカデミー(王立大学学芸院)の委員をやっていおりますので、このカードにまとめてみました」


「栄達なる御方は違いますなぁ~ハッハッハッハ」


 ロメインさんの、【ザ・褒め殺し】スキルでは無いが発動した様だ。商人の力は偉大なり・・・


「いやはや凄い凄い。一国の首相閣下ともなると違いますなぁ~」


 何が凄いのか理解していないが取り合えず褒める。便乗する。ドックさんの商売人魂も偉大なり・・・


「私は、国王陛下や国民の為に私に出来る事をやっているまでですよ。・・・お次は、爵位カードと公職カードをまとめた情報を表示します」



「アシュランス王国侯爵家当主ルードヴィーグ・ダダ侯爵。アシュランス王国第1首相」


「・・・いやはや。侯爵様の個人情報を目にする機会が来ようとは思いもしませんでした。貴重な時間をありがとうございます」


 流石はロイのアフェールギルド(商人商家協会)ギルドマスター(協会長)。違うなぁ~。感心するしか出来ないや。



「ロメイン殿にはおまけです。・・・本来個人のステータスやスキル情報を、他人に見せるのは余りお奨めできませんが、今日はサービスです」


 首相が商人にサービスしちゃダメだと思うけど・・・


「宙の画面が真っ黒のままですが、これはいったい?」


「今ですね。・・・まずは、1つ」


「おっ。LIFE・SKILLですね」


「ドック殿。凝視するのは如何な物かと・・・」


「今日はサービスなのですよ。見ておかないと損ですよ」


 損って・・・


「でもって・・・」


「おぉ~。SENSE・SKILLまでスキルが無くても確認出来るとは・・・」


「スキル商人やスキル判定の魔導具が不要になりますなっ!」


「神授スキル・BIRTHDAY・SKILLは、本人のみ確認する事が出来ます。ステータスですが、身長、体重、視力、利腕、スリーサイズ、両親の名前、家族の名前、JOBに関しては表示のON/OFF切り替えが可能です。名前、生年月日、血液型、簡易身分、簡易階級は常に表示されます」


「凄いとしか・・・」


「個人情報が1枚のカードにまとまっていると、盗難にあったり紛失した際に厄介ですな」


「その心配は不要です。その理由は後ほど説明します。まずは、カードの説明の続きです。【HP】と【MP】も常に表示されます。今迄スキルの無い者達は感覚を頼りに回復のタイミングを見極めていましたが、今後はそれが一変します。カードが表示する数字を見て確認する事が出来ます。今は宙に表示していますが、カードの表面に表示するのが本来の使い方なので非常に便利だと思います。因みにON/OFFの切り替えで他のステータス値も確認する事が出来ます。驚きなのは【LUK】運などという何に作用するのか不明な数値まで確認する事が出来るのです」


「私達商人や、ギャンブラー達には何やら心地の良い言葉に聞こえましたが・・・」


「ドック殿。私にも金貨が空から降って来るそんな音に聞こえました」


「まったくですなぁ~ハッハッハッハッハ」


「商売繁盛万々歳ですなぁ~ハッハッハッハッハ」


 ・・・狢になったか。


「紛失の心配の前に、このカードの真骨頂。陛下が魔導具の歴史を塗り替えられた。まずは1ページ目を御紹介致しましょう。以降2ページと続く予定ですが、それは明日以降でお願いします」


「ロイ・・・陛下の能力の高さは誰もが知る。周知の事実です。期待できますなぁ~なぁロメイン殿」


「そうですな。そういえば御礼がまだでしたな」


「御礼ですか?」


「そうなのです。アシュランス王国の東モルングレー山脈の北の端にある谷でしたか?」


「そうです。ドラゴン()達の求愛の谷と呼ばれている場所です」


「物騒な感じですなぁ~。そんなところへ何をしに?」


「ミスリル鉱脈があったんで採掘の準備ですね」


「なんと・・・ゼルフォーラ王国のミスリル流通とミスリル製品の質が急に向上したと思っていましたが、陛下が絡んでおりましたか。なるほどぉ~」


「その鉱山開発の際に、陛下が討伐に成功したのだよ」


「ま、まさか・・・ダイヤモンドリザード(金剛石竜子)を」


「そうなのだよ。今回も前回同様にダイヤモンド(金剛石)の等級は全てトリプルS(SSS)。しかも2匹分・・・流石に私の商会だけでは買取仕切れなかったのでロイの宝石商仲間を巻き込んでしまったよ。いやー良い買い物が出来てもう笑いが止まらない」


「羨ましい話ですなぁ~私は奴隷商・・・鉱石では儲かりません」


「またまたぁ~。知ってますぞぉ~。ゼルフォーラ王国に留まらず、アシュランス王国の鉱山労働者の需要が高まっていて、契約奴隷達のニーズも右肩上がりだとか。長期スパ―ンで見るのでしたら利益は人が居る限りドック殿の方が多いのではぁ~・・・」


「本来の重労働は、犯罪者奴隷達に労働させるのだが、今回は契約奴隷に限ると両国からお達しがあってな契約奴隷が不足状態で商売になっていないのだよ」


「またまたぁ~」


 ロメインさんとドックさん2人の懐の探り合いが暫く続いた。


 因みに、ダイヤモンドリザード(金剛石竜子)を2匹討伐した時、会話の通じ無いドラゴン()種を9匹討伐した。肉の一部はクロコダイアンさんに話を伝えてからいつもの様に転位魔法で届けた。竜の素材は大量に所持しているので、アシュランス王国軍の通常装備に利用する事にした。



「そして、真骨頂は・・・通貨取引所でのみ利用可能な機能と、別途に開発された魔導具を組み合わせる事で機能する新システム、ロイク・ルーリン・シャレット国王陛下によって一般にまで普及するであろう戦闘スタイル革命。それを凌駕するであろう大革命『売買革命』が、このカード。たった1枚のカードによって齎されるのです」


 褒め殺しにあってかなり気分が乗って居る様だけど・・・大丈夫なのか?


「カード1枚で商売の方法が変わると言う訳か・・・にわかには信じられんが・・・」


 ロメインさんは、冷静さを取り戻した様だ。


「MGカードはアフェールギルド(商人商家協会)に所属し年会費を支払う必要があります。それ以前に高額の取引をする事が一般人にはそうそうありません。MGカードの普及率はゼルフォーラ王国でも10%以下です。何より非NLの国へ一般人が出かける事もそうそうありません。普及率が現状より大幅に上がる事は無いと断言して良いでしょう。そこで!そこに、このカードなのです」


「MGカードが開発された本来の理由が今の普及率そのものですからな」


「左様。宝石商をやっておりますと取引は自ずとMGカードばかりです。貨幣での取引は店舗での小規模取引位ですな。・・・思い出したらまた笑いが・・・」


 表情を殺せる人が殺せて無い。つまりそれだけ儲けたって事だよね・・・。


「まず、このカード自体に付帯する機能ですが、通貨取引所でのみカードにNLを入金する事が出来ます。実は14の通貨に対応しているのですが、それに関しては加盟状況に応じて小出しにといった感じでしょうか。そして、次が組み合わせる事で革命が発生します。陛下!・・・工房ロイスピーの店舗に発行した販売許可証の付帯カードをお借り出来ますか?」


 実演か。


「付帯カードですね。・・・ちょっと待ってください。今出します」


 【タブレット】『取り出し』販売許可証の付帯カード ≫


 俺の手元に1枚のカードが出現する。


「どうぞ」


「「・・・・・・」」


 慣れない、ロメインさんとドックさんは、何に驚いて良いのか困惑している様だ。


「今、私のカードには、スカーレットの通貨取引所で入金したばかりの5000NLが入っています。そして、陛下よりお借りしましたこのカードは、アシュランス王国が発行した販売許可証に付帯さた清算カードです。店舗の会計専用カードだと思っていただけると分かり易いと思います」


「会計?」


「ロメインさんの本店でも採用する事を推奨します。まずは、見ていてください。私が、ロイスピー商品の【MP】回復のエクレアを150NLで購入したとします。今はあくまでも、仮の話で進めます。私は自分のカードを手に持ち150NLだと思い浮かべます。清算カードの方も150NLだと思い浮かべます。その状態でカードを3cm以内で重ねると」


≪ピッ


 一度だけ、高くも低くも無い音が鳴る。


「150NLの支払いが完了しました。清算カードには、残金150NLと表示されるはずです。表示して見ましょう・・・」



「「おぉ~」」


「で、私のカードの残高が、4850NLなら問題無いですよね?」


「そうですね」


「あぁ~」


「見てみましょう・・・」



「「おぉぉぉ~」」


「そして、店舗はこの清算カードを、販売許可証を発行した通過取引所に持参しNLに換金する。その際に、各店舗の商品や取り決めの状況に応じた税金が差し引かれ自動的に納税が完了する優れ物なのです。会計の手間が省けるのもメリットだと思いますよ。更に更にです。清算カードを換金出来るのは販売許可証を発行された者と、発行された者が指定する3親等以内の親族か、共同経営者のみ。悪用される心配はありません。実はこれにも先程のカードと同じ秘密が隠されているのです。ですが、ヒミツは後ほどです。返品対応に関する機能も付帯してあります。清算カードから最新の身分カードへ代金を返金出来るのは14日以内で、商品によっては3日以内。これは販売許可証を発行する際に付帯カードに情報を書き込む事で調整出来ます。購入し4日経って腐ったから引き取れと言われても困りますからね。返品も物による訳です」


「おんや。ルードヴィーグ。それなりに楽しい説明をありがとう。はい。ですがもっと心に訴える響くトークが必要ですぞ。はい。それでは、本物による本物のプレゼンをとくとご覧あれ。パトロンロイク殿よ。今ですぞ」


 次は俺に丸投げですか・・・


「ヒミツの機能の説明を陛下より直々にしていただけるとは・・・」


 早速、ロメインさの攻撃が始まった。


「と、言う訳で、ルードヴィーグ首相に代わりまして、俺が説明します。まずは、ロメインさん、ドックさん。先程の説明の通りで、こんな感じで、アシュランス王国では通貨取引所と新カードと販売許可証と付帯カードを始める事にしました。付帯カードの清算機能と同じ機能を付加した魔導具を店舗に設置する事で、清算の魔導具台数分と清算カードは関連付きます。先程の様に清算カードでも清算は可能ですが、換金用のカードを従業員に預けたままにするのも何なので、カードでは無い魔導具を開発しました。テーブルと言うか台の専用部に近付けるだけで、『ピッ』と売買が成立します。非店舗の露店等では貨幣払いが続くでしょうが、店舗での売買は清算の魔導具と清算カードと最新のカードの組み合わせが主流になると思います。最新のカードはアシュランス王国の国民なら誰でも1枚必ず所持する事になるので、このカードの普及率は従来の身分カードよりも高い100%です。リュニックファタリテ(装備者指定武具)の機能を付与してあるので、100m以上離れると自動的に手元に戻ってきますし、他人が使用すると大きな警告音が鳴り響くと同時に残念ですが身体が麻痺します」


「あっ!陛下。ヒミツをいきなり暴露ですか・・・」


「はて?先程、首相閣下のカードに触れましたがぁ~・・・麻痺はしませんでしたよ」


「それは、ドック殿が正しくカードを利用出来ていなかったからです。使用すると身体が強制麻痺状態になるのです。同じように陛下よりお借りしましたカードも許可の無い物が換金しようとすると強制麻痺状態に陥り容易に逮捕が可能です」


「そんな事が可能なのですか?」


 ロメインさんは普通の商人。魔術や強制契約に詳しく無くて当然だろう。


「いやはや。驚くべきは、強制麻痺!その新カードには高級な魔術リュニックファタリテ(装備者指定武具)が惜しげも無く施されている訳ですか・・・いやはやいやはや・・・それに、手元に戻って来る魔術は非常に有難い。紛失の心配が無く、再発行の手数料も不要。あれは手数料違う罰金だ。無駄に金を取られる心配も無い訳だで・・・実に良いカードです」


 奴隷商のドックさんらしい発言。1NLたりとも粗末しない。勉強になります。身分カードを紛失する話と再発行の手数料の話は別としても・・・


「現時点で、このカードを、俺達は、アシュランスカードって呼んでます。余談ですが、このアシュランスカードはMGカードにもなるんですよ」


「「なんと!」」


「俺のアシュランスカードは、所持してる、各ギルド(協会)、行政施設、正創生教会が管理するするカードが既に1枚にまとまってますよ。勿論、大金の入ったMGカードもです」


 神授スキル【FORMカード】は、カードをチェンジさせるスキル。アシュランスカードの方が使い勝手が良い。FORMカードは、他にも機能である。これからも利用事になるだろう・・・。



「MGカードで管理されているお金と、アシュランスカードの通貨管理機能のお金は別物です。あくまでもMGカードもアシュランスカードにまとめる事が出来るというだけです。さて、あとはおまけ機能なんですが」


「まだあるのですか!?」


「おまけ。良い響きですなぁ~」


「はい。このアシュランスカードは、大地石(ソル)の宝石や鉱石の特性を利用し自然魔素(まりょく)を宙から常に取り込み蓄積します。なので、使用時に所持する者の【MP】を消費する事がありません。先程の様に宙に表示するだけであれば、消費よりも取り込む自然魔素(まりょく)の方が多いのでこの世界が滅ばない限り永久不滅紛失無用のカードって事になります」


「「おぉ~」」


「因みに、人間種の【MP】に換算すると、満タン時2100です。なので、アシュランス王国から他国へ転移用の魔法陣・魔力陣で移動する際は、【MP】消費をこのカードに頼る事が可能になります。つまり、転移用の魔法陣・魔力陣を利用する際は、利用料金だけで移動出来るという事になります。アシュランス王国内に限った話ですが、利用する際の代金は、カード残金から自動で引き落としされます。足りない場合は転移用の魔法陣・魔力陣が発動しません」


「ちょっと、まってくれ。という事はだ。転移用の魔法陣・魔力陣で1回2000消費する【MP】をアシュランスは負担してくれるというのかね?」


「アシュランスというかアシュランスカードが負担します」


「これなら経費がかなり・・・転位用の魔法陣・魔力陣は1回1人に【MP】が2000だったはずだ。・・・片道分の【MP】回復道具やコスト、代行の代金が浮く訳か・・・ロイスピーの商品が売れなくなるのではないかね?」


「それは問題ありません。【MP】回復だけではなく、【HP】回復、【状態異常】回復、それに品薄状態を考えると、転移用の魔法陣や魔力陣にではなく、少しでも命の危険を伴う戦闘分野の方で使用して貰いたいですからね」


「なるほどなぁ~」


「ドック殿。これは物凄い魔導具ですぞ・・・」


「その通りですなぁ~・・・」


「それで、この魔導具アシュランスカードはどの様に作られているのですか?」


自然魔素(まりょく)回路と魔法陣の立体回路は各国の魔導研究機関やアカデミー(王立大学学芸院)に王家を通して発表しましたが、どの国も発行する技術や知識が足りないそうです。現時点でこのカードを製造出来るのは工房ロイスピーのエルドラドブランシュ(王宮であり俺の家)の屋上にある研究施設だけです。蓄積出来る【MP】量が通常カードより多い物も準備しているので、1人での往復運搬も可能にはなります」


「なんと!バトン商会で働く全員に是非とも持たせたい」


「奴隷達に・・・持たせるにしても従来の身分カードから変更するとして1枚幾らなのですか?」


「ドックさん。このアシュランスカードはリュニックファタリテ(装備者指定武具)の魔導具ですが、その前に身分カードなんです。無料に決まってるじゃないですか」


「・・・無、無、無」


「無料じゃと!?買った」


 ドックさん。無料なので買うというか・・・


「紛失しない。盗難されない。経済金融面での恩恵が大きいカード。そして更に、アシュランス王国以外で同じ様な取引を可能にする方法も考えてあります」


「バトン商会で採用したい。早速融通していただけませんか?」


「交渉は担当者をまだ決めていないのでルードヴィーグ首相と後程どうぞ。まずは説明を終わらせちゃいます。他国の商家や商会と清算システムを利用し売買する場合ですが、アシュランス王国の通貨取引所が発行する販売許可証に付帯するカードを使い売買する訳には行きません。ですので、アシュランスカード対応清算魔導具と付帯カードも考案してあります。この付帯カードは、販売取引許可証に付帯するカードと機能は程同じですが、他国なので税金とかを差し引く機能は付帯していません。通過取引所は各国の王都や主要都市に設置する予定です。ゼルフォーラ王国の場合は全ての領都に設置する予定なので、換金の心配は無いと思います」


「うん。是非とも採用したい。いえさせてください。・・・これはまさに革命。これなら、確かに普段の買い物や取引の風景が一変するでしょう」


 ロメインさんの瞳にはNLマークが・・・


「MGカードとアシュランスカードとは住み訳が可能ということか・・・悲劇に見舞われるのはバンクギルド(銀行協会)か。実に愉快だ!」


「彼等が金融を牛耳る時代は終わるでしょうな。ふん、同じ庶民でありながら偉そうに上から私達を見ていられるのも今の内ですな。確実にアフェールギルド(商人商家協会)や国に泣き付くでしょうな」


「見ものですぞ」


「そうですな!」


 ロメインさんとドックさん2人は至近距離で見つめ合いほくそ笑んでいた。



「ロイのアフェールギルド(商人商家協会)は、登録している店舗持ちの商人商家に対し、アシュランスカード対応清算魔導具と付帯カードとアシュランスカードを推奨します。バトン商会は採用を決定します。このカードのメリットはちょっと考えただけでも途轍もない利益に繋がる。・・・計算の不自由な者も金額を思うだけで買い物が出来る。清算時のトラブルを回避するばかりか清算時間の短縮にも繋がる」


「コルトでも推奨します。問題は、住民達に何処までアシュランスカードが浸透するかですな」


「直ぐですよ。紛失しない無料の即時発行のカードですから。そうそう。通常のカードは無料で【MP】2100ですが、【アシュランスシルバーカード】は発行手数料5000NLで【MP】4100。【アシュランスゴールドカード】は発行手数料2万ネールで【MP】10100。【アシュランスプラチナカード】は発行手数料5万NLで【MP】30100。自然に回復する【MP】量は1日約3000です」


 そして、新魔導具アシュランスカードは、瞬く間に世界規模で普及する事になる。王侯貴族や余裕のある者達の間では、アシュランスプラチナカードを所持する事は大人の嗜みとして常識化し、神授の日にアシュランスシルバーカードかアシュランスゴールドカードに切り替える事も一般常識として定着する事になる。

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