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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーアシュランス王国建国編ー
125/1227

2-43 元王妃デリアの寝室と、服従の錠。

――― R4075年7月24日(火)10:40


 連合国家フィリー加盟各国の元首や重臣達を集め緊急会議を開き、昨日収集したヴァルオリティア帝国の帝国旗を模った印を焼き付けられた魔獣や獣や人間だった者達の情報を提供し、意見を求めた。


 森林都市フィーラの総督府行政庁舎地下研究施設で拘束した研究員や、トミーサス王国で拘束した帝国の研究に協力し携わった者達から強制的に回収した記憶。


 トミーサス王国から押収した資料。


 解かない限り目覚め無い眠りに落とし確保した、狂暴狂人強靭化した魔獣や獣や人間から採取したサンプル情報や精密検査の結果。


 どの様に入手したのか。「それは、神授スキルを使いました」と、曖昧な受け答えにも関わらず最も信憑性の高い返答をし提出した情報の山。その中でも、研究員達の記憶を複数人分重ねた事で辿り着いた事実(情報)は、内戦状態のヴァルオリティア帝国に対し連合国家フィリーが内政干渉する事を即決させた。


 奴隷を服従させ支配する為に考案された魔道具『服従の錠(くさり)』。この魔導具は、長い年月をかけ改良され奴隷の舌に直接魔法陣を施し誓約させ身分カードの魔導具と関連付ける仕組みへと進化した。ただ、帝国だけは服従の錠(くさり)に改良を続け、無属性魔術【エスクラリエーヴ】を国策として採用しなかった。


 エスクラリエーヴでは、奴隷に死を与える事が出来ない。厳密には可能だが、ライフスキルで所持する者が多くレベル1~3の付与では死の罰則を契約に付加する事が出来ない。違反した者に死を与える付加を誓約に施す事が出来るのはレベル10からだ。


 その為、帝国の様に奴隷が国民の半分以上を占める国では、死を簡単に与える事が出来る服従の錠(くさり)の存在が国家存続の為にも必要不可欠だった。所有者の死と共に、奴隷達に死を与える服従の錠(くさり)まで帝国には存在していた。


 帝国は、この服従の錠が持つ効果1つ1つを強化したり入れ替えた。そして、解ける事の無い魔法陣。焼き印という形で現段階まで研究を進めていた。


 研究の状況は帝国が期待する結果に繋がっていなかった。服従させる事が目的で生み出された服従の錠の効果を強化し生み出された焼き印は、焼き印による支配を受けた魔獣や獣や人間の理性を奪い狂暴狂人化させ肉体を強靭な物へ強化させた。だが、思わぬ事態へと発展した。それは、強化の効果を強めた焼き印による支配を受けた存在の制御が不能になってしまう事だった。


 制御する為には高い自然魔素(まりょく)が必要だった。帝国が目を付けたのは、高位樹人族(ハイエルフ)や妖精族や獣人族の中の猩猩族や狐族。そして竜種。約200年程前に起きた悲劇は、ここから始まった。


 そして、25年~30年前。(シュヴァルツ)と呼ばれる、(ジュー)に関係すると思われる組織が接触した。ゼルフォーラ王国トニナス侯爵領・領都リリスや、ララコバイア王国・王都ラワルトンクが、2000匹~5000匹以上の魔獣の襲撃を受けたトミーサス大行進。この魔獣襲撃事件の背景に焼き印の研究が絡んでいた。トミーサス王国ではジィーヤン・ワーロンが国王に即位し、ヴァルオリティア帝国の皇女でトミーサス王国の王妃となったデリア・ワーロンが政治の実権を握り1年後の事だった。



 記憶を重ねた情報の中には、幸いな事に魔力陣に関係する情報があった。記憶力や知識の面で優れた研究者達の記憶力は凄まじく、鮮明な上に当時の会話まで記憶されている物まで存在した。


 この件に関しては王妃の寝室とゼルフォーラ砂漠の調査を進め、証拠を掴んでから報告する事にした。


「それでは、ゼルフォーラ王国。ドラゴラルシム王国。ララコバイア王国。フィーラ王国。スタシオンエスティバルクリュ。最後に旧トミーサス王国、現在の連合国家フィリー暫定統治トミーサス。5ヵ国の代表と管理者の全会一致により、連合国家フィリーはヴァルオリティア帝国に対し軍事力による行使を含む強制的介入。多岐に渡る様々な問題を解決する為、内政に干渉する事を採択します」


 採択から1時間後、文章が完成し、ヴァルオリティア帝国や世界各国に連絡鳩が放たれた。



――― R4075年7月24日(火)12:00


「ロイク。君はこれで良かったのかね?」


「そうですね。最悪、帝国が無くなってしまうかもしれません。ですが、人間種8種族が協力する国家を大陸規模で成立させる事がそれで出来るなら、最悪では無く最高の結果だと受け入れべきだと考えてます」


「あたしは、ロイクが決断し進める事には最後まで協力するね」


「ありがとうございます。フォルティーナ!」


「何だね」


「フォルティーナが俺の妻で良かったです」


「こんな感じでだね。あたしに愛を囁き、優しく抱きしめる位するシーンだね!今の場面はそういう事が求められる時だったね」


「何、1人でやってるんですか?」


「良き妻をやり遂げた女神に良き夫が愛を囁く感動のシーンをイメージトレーニングしてたね」


「そ、そうですか・・・」


 イメージトレーニングって、普通は声に出したらダメだろう・・・


「でだね。このまま進むとだね。大ゼルフォーラ王国時代に近い状態が出来上がるね」


「そうですね」


「ロイクが直接関わる事の無い戦いでは死者が出るね」


「帝国が大人しく奴隷を解放し、皇位継承争いを止めるとも思えませんからね」


「どうするね」


「皇帝不在による争いなので、誰か数人だけを拘束しても意味がありません。だからといって全員を拘束するのは無理です。皇帝一族を全員拘束したところで血縁関係にある者や、皇族に連なる一族や力を持った有力者達が我先にと名乗りを上げ争い出すのが目に見えてます。まずは、奴隷階級民達を解放し弱い立場にある者達の安全や命の確保を優先したいと思います」


「喋らなくてもだね。・・・伝わるのに話したのは決意の為かね?」


「決意なのかもしれませんが、先に懺悔しておこうって思ったのかもしれませんよ」


「あたしは神だね。懺悔されても困るね」


「神様ならそれ位聞いてくださいよ」


「事後を愚痴られたり懺悔されても困るね。終わってしまった事だね。自己満足の為の行為を神と共有しようと思うのは都合が良過ぎるね。悔い改めるのは神に対してでは無いはずだね」


「・・・そうですが、人間は神や仏や自分を守ってくれる存在に縋り付きたい時もあるんですよ」


「・・・フッ。なるほどだね」


 フォルティーナは、とっても厭らしいドヤ顔を披露する。


「何がです?」


「妻のあたしが慰めてあげるね。さぁ~ロイク。今だね。今2人は愛を確かめるしか道が残されていないね。いまだね」


「その顔で、愛って言われてもドン引き何ですが・・・」


「失礼な。この顔は物心ついた時からずっと変わって無いね」


「普通にしてるだけで、絶世の美の類に含まれるのに残念ですよね」


「何とでも言うね。あたしには切り札があるね」


「切り札ですか・・・ゴク」


「あたしの言う事を聞いて貰いましょうかぁ~だね!」


「直ぐ後でも良いかと聞いて来ましたよね?」


「聞いたね」


「でも、何も言って来ませんでしたよね。神様らしく見返りを求めず終わったのかと思っていましたが・・・」


「何を言ってるね。何処の世界に神が見返りを要求し無い何て有り得ない世界が存在するね。神は嫉妬深く強欲で自尊心の塊だね。約束した事の99.999%は破っても、約束させた事99.999%は意地でも要求し果すね」


「最悪ですね」


「当然だね。それは褒め言葉として受け取っておくね」


「・・・何を言っても無駄そうですね」


「フッ。誰に頼み事をしたのか思い出すね」


 ここは慎重に返答した方が・・・どうせ心の内も思考も読まれてる訳だし・・・考えるだけ無駄だな。創造神様。フォルティーナを公認のお嫁さんに出来たのは嬉しいのですが、夫婦として長く円滑に存在する為、私に御力を・・・


「創造神がそんなくだらない願いを叶える訳が無いね」


「願うのは自由ですから」


「そんなに思考を読まれるのが嫌かね?」


「フォルティーナは全部分かってしまってどうなんですか?」


「あたしにとっては、これは当たり前だね。創造神や大神以上の神やオクルメンシー(感情や心を閉ざす)のスキルを所持する存在以外なら、認識するのが普通の事だね」


「オクルメンシーというスキルがあるんですか?」


「神々のスキルだね。神授でもされない限り存在しないね」


「それ、フォルティーナは神授出来無いんですか?」


「創造神の許可が無い限り出来ない修練の心得と同じ位管理レベルの高いスキルだね」


「あれ、そんなに重要なスキルなんですか?」


「当然だね」


 当然なんだ・・・


「あたしの言う事を聞いてくれたらだね。創造神に相談してやるね」


「本当ですか?」


「あたしは嘘は言わないね」


「でも、約束した事の99.999%破るんですよね?」


「良い方で考えるね・0.0001%も厳守されるね」


 隕石が頭に落ちて来るより確率が低いんじゃ・・・というか減ってるし・・・。ニヤニヤしてるし・・・


「・・・それで、フォルティーナが望む事はなんですか?」


「それはだね。ロイク、強くて逞しくて気持ち良い事だね。君にとってもあたしにとっても未来に繋がる事だね」


「・・・その未来、明るい物ですよね?」





――― R4075年7月24日(火)14:50


 俺は、旧トミーサス王国の王宮内にある王妃の部屋を調査する為、神授スキル【フリーパス】で移動した。ゆっくり調査したり考え事をしたかった。久しぶりに単独行動をしている。


 部屋は荒らされた後ではあったが、壁や天井や窓や扉が破壊されている訳では無い。城を守る兵士達が城を捨て逃げるにあたり略奪した後だ。


 貴重な物や高価な物は事前に船や他の場所に移していた王家や重臣達。兵士達も略奪する物品が無い状況に逃げる以上の不安や焦りを感じたに違い無い。料理の神chef(シェフ)アランギー様の判断によりルーリン・シャレット天爵副王領の貴族領軍私兵隊は治安回復と警備防衛に専念し、城から略奪されたであろうカーテンや絨毯や雑貨類。略奪された物品だと判断出来る物が市場に出回っても取り締まりは行わなかった。


 何故、アランギー様がそんな指示を出したかというと、アランギー様がスタシオンエスティバルクリュやルーリン・シャレット天爵副王領やフィーラ王国や暫定統治国家トミーサスの経済財政担当の責任者で、尚且つトミーサス暫定代表の俺の代理を務めているからだ。現在のトミーサスは神が統治する国。料理の神様だが・・・



≪スゥ―――


「おんや。やはりパトロン殿でしたか。はい」



「び、吃驚(ビックリ)させないでくださいよ」


 俺の真後ろに突如出現したアランギー様。


「物凄い神気を感じましたのものでつい何となくですよ。はい。気は創造神様のそれにとても似ていましたので、直ぐにパトロン殿だと気付いたのですが・・・何があったのでしょうか?・・・気になりますねぇ~はい」


「それよりも、どうして、顔がそんなに近いんですか?・・・俺達泥棒とか悪い事してる訳じゃないですよ!」


「聞かれたく無い話なのではないとか気を利かせたつもりでしたが・・・野暮でしたかな。はい」


「一先ず、この広い部屋で0距離に近い感じは止めませんか・・・」


「おんや。恥ずかしいですかね。はい」


「恥ずかしいとかじゃなくて、男同士これは無いんじゃないかと思いまして・・・」


「おんや。なるほど。女神であれば無くは無いと言う暴露ですかな。はい。微笑ましい事ですねぇ~夫婦は常にそうあるべきですぞぉ~はい」


「・・・アランギー様は結婚されてるのですか?」


「おんや。知りませんでしたか?」


「えっと・・・聞いた事が無いと思いますが・・・」


「私の恋人は料理です。言うなればWife()は料理。子供達は食材1つ1つから紡ぎ出される世界。空間を極め状況に応じて奏でる物。それは家族」


「料理が恋人だと以前言ってましたね」


「その通りです。はい」


 神様は会話が長くて脱線する。話に目的や主題が無い事が非常に多い。フォルティーナのおかげで耐性が付いた。その事には感謝している。スッキリしないが・・・


「で、この部屋の王妃専用のベッドの横に隠し通路があるらしいのですが、どのベッドも無残な状態で・・・それと、王妃は就寝する時、こんなに沢山の者達と一緒だったのでしょうか」


「おんや。確かに凄いベッドの数ですね。はい。まるで集団部屋の病室です。はい」


 立派なベッドが4個。それなりに立派なベッドが20個。計24個のベッドが王妃の部屋には置かれていた。


「フガフガクンクン。クンクン・・・はい。ベッドの大きさからしてですが。あちらのベッドが王妃の物だと思いますぞ。はい」


「あのベッドですか?」


「そうです」


「大きさですか?4つとも同じ様に見えますが」


「あのベッドだけ男女の・・・男の残り香がします。はい」


 凄い嗅覚だなぁ~・・・


「僅かな香りや臭いの変化。温度の変化。私は料理と浮世を流す神ですぞ。はい」


 な、なるほどぉ~。何か流し方を間違ってると思うけど、追求しないでおこう。


ありがとうございました。

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