2-42 天球の為の魔導具バルブと、焼き印。
宜しくお願いします。
「サビィ―の並行空間の能力を使って、この高密度の自然の力の塊を固定保管したいのねぇ~♪」
「私の見立てでは、これは、この世界のミニチュア版の様ですが・・・」
「俺達は、天球って呼んで管理しています」
「えぇ」
「今のこの状態を安定した状態で管理出来る空間よねぇ~。サビィ―出来るかしらぁ~!?」
「厳密には、この状態では無いんです。半径66mの球体がこれの他に4つあるんですが、それを1つの球体にして管理するつもりです」
「ふ~ん♪アスピーちゃんは優良物件を見つけたわねぇ~♪」
「・・・そうね」
母親に会うのが嫌なら付いて来なきゃ良いのに・・・何で付いて来たんだろう・・・?
「ロイクさぁ~ん。何度出戻ったか忘れちゃったけどぉ~私も貰ってくれないかしらぁ~♪」
「断るわ」
「あらぁ~アスピーちゃんには聞いて無いわよぉ~。ねぇ~ロイクさぁ~ん♪」
「ミト様。冗談はその辺りにして、ロイク殿の話を・・・」
「えぇぇ~半分本気だったのにぃ~残念ねぇ~♪」
「そうね」
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「それで、5つの天球を1つにすると球体の半径は約112.8584mで、体積は約6021297㎥で、円周は約709mです。天球自身の循環力が1つずつだった時よりも10倍は上がる計算なので、ちょっとやそっとの事では崩壊したりしないと思うのですが、万が一を考えて隔離した空間で管理したいと考えました」
「界そのものを創造しちゃったのかぁ~♪・・・流石ゼルーダの子孫ねぇ~」
「ゼルーダって、大ゼルフォーラ最後の国王で、現在のゼルフォーラ王国の初代国王のゼルーダ・ルーリンの事ですか?」
「私が付き合った事のある男は、最近だとそのゼルーダしかいないわよぉ~」
最近ですか・・・約4000年前の恋人・・・
「ねぇロイク。母の話は要ら無いは、話を進めて貰えるかしら」
相変わらず冷たいなぁ~・・・
「そ、そうですね。それで、サビィ―さんの並行空間なら何かあった時、空間諸共消滅させてしまえば良いので、今回の管理に最も適した能力だと結論に至った訳です」
「はぁ~い♪質問がありまぁ~す!」
「ど、・・・どうぞ」
この異様に高いテンションは何だ?
「このミニチュア版の世界には住めますかっ!?」
「それ一番最初に考えたんですよ。結論から言います。無理です」
「あらぁ~残念」
「ですが、創造の能力と神気が上がれば、何処かのタイミングで可能になると思います。理論上では、今の天球の体積を約18782.87倍で維持出来る様になれば可能です」
「ふ~ん・・・サビィ―最終目標は、体積約6021297㎥の、約18783倍。それを、収納しても安定して循環出来る空間よ」
「ミト様。つまりどの位の大きさですか?」
「・・・広ければ問題無いわよ」
「・・・そ、そうですよね。ミト様。流石はミト様です」
「サビィ―任せたわよ」
「はい・・・・・・縦横高さ。其々30Kmの立方体の並行空間を・・・」
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「私の中に、並行空間を作りましたが、この世界へは力をどうやって?」
「それは簡単に出来るんですよ。サビィ―さんの空間には転位移動出来ませんが、俺が創造した物へは転位移動出来るし、物は強い力に干渉され無い限り召喚移動出来るんです。秘策はこれです」
「「「 バルブ!? 」」」
「ただのバルブじゃ無いですよぉ~。これを8つ用意しました。まわして開閉するだけで設置した容器や管に、無地水火風光闇の自然魔素水が出て来ます。間違え無い様に文字だけじゃ無く色も付けておきました。この透明なバルブは、超純魔水が出て来ます。先日、風の迷宮で見た転位召喚の魔法陣を応用して、バルブの開閉だけで召喚の量を調整してみたんです」
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天球の設置を終え、バルブの確認を済ませ、時間を確認すると、調度この世界での正午だった。
「ミト様も、サビィ―さんも家でランチ食べて行きますよね?」
「あ~らぁ~嬉しいわねぇ~♪料理の神様の料理楽しみだわぁ~」
「私は、新鮮な肉と少量の蜜と水があれば良いが」
食に関しては梟とほぼ一緒なのかぁ~・・・なるほどぉ~。
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――― R4075年7月23日(水)17:40
森林都市国家フィーラ王国の総督府跡地に移動した。
加減したのに建屋部分が火の魔法で消滅ってやり過ぎだよなぁ~・・・
そんな事を考えながら、地下への階段を確認する。
「ロイク様。こちらの階段は途中で埋まってしまっているみたいです」
「埋まってる?・・・どういう事ですかぁ~」
「土に埋まっているって意味です」
マリレナさんが不思議な事を言う。
「消滅したのは地上部分だけで地面から下は魔法の影響範囲外のはずなんですが・・・」
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俺は、階段を20段下りた。
「土の中に階段が埋もれてるというよりも、これだとここから無くなってるって感じですね」
「確かにそうですね」
階段は、土の壁の少し手前で途切れ21段目が無い状態だった。
「これ、どうなってるんだ?・・・この先にあった施設は何処に行ったんだろう・・・?」
「さぁ~私にもサッパリ分かりません」
マリレナさんと、壁を触りながら意見交換していると、地上からバジリアさんが俺達を呼ぶ。
「ロイク殿。マリレナ様。森の中に非常用で造られた通路ですが、入り口を入って階段を少し下りたところで道が無くなっていました」
「どんな感じで無くなっていましたかぁ~?」
「2~3m程掘ってみましたが、土や石等大地を掘っているのと変わらない感じです」
「地面に道は残っていましたかぁ~?」
「道その物が無くなっていました」
道その物が消えていたのか・・・そうなると、ここと同じって事だ・・・。
「マリレナさん。一旦地上に戻りましょう」
「はい」
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「総督府の地下への階段は3つとも地下へは行けない。森からの非常通路も地下へは行けない。地下の研究施設は土に埋もれてしまったのでしょうか?」
バジリアは、総督府の図面を広げ、記しを付けていく。
「埋まった。・・・寧ろ大地と施設が入れ替わった感じだと思うのですが、マリレナさんはどう思いますか?」
「そうですねぇ~。階段も通路も途中で綺麗に無くなっていて、地下への道は土に塞がれている。壁を掘り進めたとしても、階段も通路も存在しない可能性が高いのですよねぇ~・・・」
「マリレナ様。風の樹人族に伝わる転位の魔力陣は、魔力陣の内側の物を入れ替える事が出来るのですよね?」
「総督府の地下研究施設と土が入れ替わったと?」
「はい」
「そんな規模の大きな相互転位は聞いた事がありません」
「ですが、自然魔素さえあれば可能ですよね?」
「確かに大量の自然魔素を瞬間的に魔力陣に流す事が出来れば可能です。ですが、それはロイク様や限られた一部の方にしか出来ないと思いますよ」
「今のマリレナ様やメリア殿やパフ殿やサラ殿は、どうなのですか?」
「・・・今の私ですか・・・可能だと思います・・・ですが、それはロイク様の家族として修練の優遇を受けた結果で、私達以外では現実問題可能な人は存在し無いと思いますよ」
「なるほど。ですが、居ないと断言出来る訳では無いのですね」
「確かにそうですがぁ~・・・」
「・・・ロイク殿。これは帝国へ解放した兵士達や総督府で働いていた者達の仕業だと考えるべきです」
「もしくは、ここの地下施設で働いていた人達って言いたいんですよね?」
「はい。高位樹人族様方から集めた自然魔素は200年以上分です。備蓄が0というのは考え難い。緊急時の脱出や施設放棄のマニュアルがあっても良いと考えます」
流石は、戦闘や諜報に長けた闇樹人族の長。
「そうかもしれませんが、供給が途絶えて魔獣や獣達が暴れ出し共食いを始めたのも事実なんですよね・・・分からない事が多過ぎます」
高位樹人族の救出と同時に研究員達を拘束しておくべきだった。拘束の為に再突入した時にはかなりの人数が脱出した後だったのかもしれないな。上の立場にあった者は拘束している者達の中にはいないのかもしれない・・・
フォルティーナ立ち合いで、研究員達の記憶を確認するか・・・神様立会なら人間相手でも・・・人間種8種族や来たる日の為だ許される。
「古代魔術のツンゲレバリーレンを使えるのですよね?それで、復元出来ませんか?」
「マリレナさん。残念ですが無理なんです。レベル10最大の状態でも、3日以内って制約があるんですよ」
「そうなのですね・・・」
マリレナさんは、悲し気な表情で俺を見る。
「マリレナさんが悪いんじゃないんでそんな顔しないでください。・・・俺があの時に施設内にいる者を全員拘束しておけば良かったんです。迂闊でした。まさか帝国旗の印の魔獣の研究がここまで問題になると思っていなかったので・・・」
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「あっ! ロイク様ぁ~。マリレナさぁ~ん。バジリアさぁ~ん」
「アルさん。フィーラの案内は終わったんですか?」
「市街地を見て周りましたので、次は丘からフィーラを一望する予定です」
「3人の様子はどうですか?」
「そうですねぇ~市街地を少し歩いただけで疲れてしまうようです。年齢的に筋力や体力が不足しているようです」
「ハハハ。お手柔らかにお願いしますね。人間族にとっては、森の中の移動って運動以上に体力や筋力を使うんで、王族じゃ無くても3人みたいな感じになると思います。もっと酷い人もいるかもしれませんよ」
「そうかもしれませんね・・・」
「おっ。3人がやっと階段を上り切ったみたいですよ」
総督府と総督邸は丘の上にあった。市街地は森の中に造られた街だが、総督府跡地や総督邸跡地は整備された緑地と花壇と街路樹の丘の上にある。緑地と花壇と街路樹を整備したのは独立宣言後の事だ。
総督府跡地は海抜81mの丘。総督邸跡地、元王宮跡地は海抜111mの丘。
現時点での森林都市国家フィーラ王国で最も標高の高い場所は元王宮の丘緑地で、領土内を一望する事が出来る。俺は、ここに王宮では無く展望台や大神殿を建立したいと考えている。
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「ルーシーさん、エルネスティーネさん、イザークさん。フィーラはどうですか?」
「ロイク様っ!」
イザークは、膝を地面に付け、腕を胸の前に構え、最上級の臣下の礼をとる。
「トミーランも緑の多い所ですが、フィーラは森その物で驚きました」
「正しく管理する事で、森の中もあんなに明るく清らかな感じになるのですね」
姉2人の反応と弟の反応が違い過ぎる。
「イザークさん。そんな事は止めてください」
「ですが・・・」
ファルティーナとイザーク(16)だけに啓示されたらしいのだが、彼は俺の腹心の1人として、この世界を正しく導く存在に成る。その啓示は、船を陸地で包囲した日の5日前の夜に夢形式で見たそうだ。その夢は、余りに現実感がありリアルだった。彼は、母親に相談した。そして、夢が啓示だと理解した。
彼は夢で見た啓示を達成する為に行動を起こした。帝国への亡命船団に王子の自分だけでは無く母や姉2人も一緒に乗船出来るようジィーヤン・ワーロン国王に嘆願し、王都に残った場合の母や姉達の身に起こる悲惨な結末を回避した。そして船が草原の海に浮かぶ時を静かに待った。
創造神様からの啓示の内容は、母親と共に、2人の姉に伝えていたそうだ。王都に残ると主張した長女ルーシー(21)には悲惨な結末を隠さず話した。ワーロン王家を慕う国民は1人も存在しない。王国に自分を助け出してくれる存在は1人もいない。母の境遇もあり国王や王家を嫌いながらも王女として何不自由無く過ごして来てた自分。多くを考えず生きて来た。ルーシーは母と弟から結末を聞き生まれ変われる機会があるならと決意し自刃用の短刀を懐に忍ばせ乗船していた。
エルネスティーネ(19)への啓示は次の機会に話たいと思う。
最終的には、彼の夢、創造神様からの啓示はリアル過ぎる物からリアルになった。幽閉、監禁されていた有力者達やその一族。この場合は主にヴァルダー侯爵家やリウス伯爵家の一族の解放と保護。
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「ロイク様。母が王妃様の部屋に招かれた際に、気になった事があったと話していました」
「気になる事ですか?」
「はい」
こんな状況だし聞いてみて、怪しかったら確認しに行ってみるか。
「ルーシーさん。その話、詳しく聞かせて貰えませんか?」
「あぁ~済みません。私は詳しくは聞いていません。母に確認した方が良いかと・・・」
「確かに本人から聞いた方が良いですね」
「第3夫人のミトラ様も、その場におられたそうなので、母以外の証言も確認した方が良いと思います」
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その後、3人とアルさんは、現在の元王宮跡地の丘。元総督邸で王宮があった場所へ向かった。
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押収した資料と、研究員達の記憶を回収し、拘束した魔獣や人間だった者達の分析。夫人達の情報。総督府の地下研究施設の行方・・・
魔力陣や魔法陣の1部でも残っていたらなぁ~。・・・・・・遊の樹人族は何処で魔力陣を覚えたんだ?・・・悪狐神様のあれは魔力陣だった。・・・同じ地下・・・悪狐神様にも確認した方が良いかもしれないな。
「マリレナさん。バジリアさん。このまま跡地にいても進展しなそうなんで、戻って研究員達や研究に関わった貴族や商人達から情報を収集しようと思います。一緒に行きますか?」
「そうですね。私は自分達の自然魔素が悪用されていた事実を知る義務があります。未来の樹人族達へ伝える義務があります」
「魔獣や獣や人間を狂暴化する研究。人道に反した研究をこの世界から根絶やしにし未来を次の手に委ねる事が今を生きる私達の責務です。闇樹人族の長老として是非同席させてください」
「記憶を引き出して、視認するだけなので、想像よりずっと静かな作業になると思います
「その様に温い尋問でゲロするとは思えませんが・・・」
「俺って手荒な事が苦手なタイプ何で、神様に同席して貰って、個人情報を直接引き出すんです」
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ありがとうございました。