8-164 来る日と奇跡の日と執行の日の前夜 -+ユーコ・セーラ・フレアリース・メリア・バルサ & フラン・ロザリークロード-
「楽しそうどすなぁ」
「混ぜろ混ぜろぉ~キューンキューン」
「ここは楽しいところですね。明日が若くして末世と対峙する日とは思えない程に清らかで落ち着いています」
悪狼神様改めセーラ様、遊狐様、フレアリース様がシャンパングラス片手に近付いて来て俺を挟むように一人掛け用のダイニングチェアに腰掛けた。遊狐様はサンドラさんの背中に抱き着いている。
「今更慌てたところでどうしようもないですからね。家はだいたいいつもこんな感じで、フォルティーナとかトゥーシェとかロザリークロード様とか、・・・またフォルティーナが何か始めない限りはホント落ち着いてるんですけどね」
「ブフッ、運のアレの名前を二回も口にするところが良いなっ!! 私もアレには振り回され続けているからその気持ち大いに分かるぞキューンキューン」
「「ロイクのところがが賑やかで楽しそうだから移動するぞっ!! キューンコンコーン」って席を立ったかと思えばロイクさん達の前に移動しちゃってるとか反則ですユーコ様」
「メリア達も神の一柱になったんだ、数メートルくらいの縮地は便利だから覚えておいた方が良いぞっ!!」
メリアさんとバルサさんもシャンパングラス片手にこっちに移動して来たようだ。
「神気は想像力さえあればだいたい全てのことを可能とすると先程仰って居りましたが。・・・立ち上がった瞬間ロイク様さんを囲んでおりましたので、先程のアレはてっきり転位移動に近い何かなのだとばかり、縮地ですら頂ともなると先程の次元なのですね。勉強になります」
「バルサはんユーコはんのを見習うてはあきまへんえ。ユーコはんのは百二十点満点中おまけしても四十点くらいのまだまだ雑さが目立つ代物どす」
「先程のアレでですかっ!?」
「アッオイうん? ・・・あっセーラになったんだった。えっと・・・あっ思い出したセーラは細かくて煩くてまるで家の鬼婆みたいで一緒にいるとたまにあの顔を思い出してしまうから止めて貰いたいって言おうと思っていたことを思い出したぞっ!!」
メリアさんとバルサさんはティータイムを利用して遊狐様とセーラ様とフレアリース様から神気の使い方を教えて貰っていたようだ。
五人で話をしてた俺達に混ざって来たのはいいけど、場所を変えただけで自分達だけで話をしているようにしか・・・まっ楽しければそれでいっか、うん。
「あ、あの遊狐様、首に抱き着きぶら下がるのは構わないのですが、耳の近くで叫ぶのだけは控えていただけませんでしょうか、どうにもくすぐったくてたまりません」
「善処に善処を重ねることを約束するとだけ言っておこう・・・」
「止める気はないということですね」
「その可能性も否めないぞキューンキューン」
「ユーコはんの日頃の言動を見たら分かる思う。さっきのアレは日頃とは異なる言動を切欠として発動してましたやんな。見る者が見たら分かってまう。こらえらい危険なことやとは思わしまへんか」
「そ・・・そうですね」
セーラ様の余りにも次元が違い過ぎる話にバルサさんは言葉もでないって感じだな。
「セーラ、バルサは神格を得たばかりのまだ神眼すら視えていない嬰児です。続きは、遊んでばかりいて精進の足らないユーコにこそ必要ではないかと私は考えています」
「それもそうどすなぁ」
遊狐様へと視線を移したセーラ様に呼応するかのように皆の視線が遊狐様に集まる。
「そんなに見つめられても・・・人気者も辛いなっ!! ってなるかぁ~っ!! 分かってる分かってるから何度も聞かされてるからもう覚えてるから、なっ!!」
「ですからお願いですから耳の近くで叫ばないでください」
「ホラッあれだろう「日頃は狐みたいに鳴かない癖にどうしてコンコーンと鳴いてしまうのですか。いつものようにふざけている訳ではないのですよね。でしたら動作を挟むのであれば日頃と同じ仕草でやるべきです」ってでも今日は言わせてもらうからなっ訂正してやろう狐はコーンコーンとかコンコンとかコンコーンとかって本当は鳴かないからなっ!! 覚えておくんだなっキューンキューン」
「み、っみ、耳がぁー・・・」
サンドラさんは耳を抑えてフラフラしながらも倒れることなく立ち続けている。うん天晴、流石です。
「フレアリース様、まだ早いとは私も思います。ですが、形跡を一つも残さない縮地は乙女心を擽ると言いますかとても魅力的でどんなに時間がかかったとしても絶対に戦技のレパートリーの中に入れたいとも思っています」
アリスさん? 乙女心が擽られるって縮地の話してるんですよね?
「遊狐様っ!! 暫しお時間をいただきたくっ!!」
「う、煩いぞっちゃんと聞こえてるから叫ぶなっ!!」
「是非私にも御教示をっ!! ですから耳の近くで大声を出すのはお止めくださいっ!!」
「大声を出してるのはサンドラの方だキューンキューン」
あぁーだよなぁ~そうなるよなぁー。
遊狐様と楽しそうにじゃれ合っていたどちらかというと戦闘狂でポジションに拘りがあるサンドラさんが遊狐様と二人大声を上げながらセーラ様とフレアリース様とアリスさんの会話に加わろうとしている。
「先程のアレは転位移動ではなく縮地、未完でありながら縮地の頂にあるのですよねっ!! ・・・遊狐様に師事イヤ違うな未完の者から学んだところでそれは未完でしかないからなブツブツブツ」
「お、おいこらっ!! サンドラそれは神に対する不敬だからなっ不敬あ・・・サンドラも神になちゃったからこれって不敬じゃ・・・ない? あれブツブツブツブツ」
ハハハッ差し詰め今は嵐本番前の静けさってところだな。
遊狐様を首にぶら下げたまま長考タイムに陥っているサンドラさんと、シャンパングラス片手にセーラ様とフレアリース様と語らうアリスさんとサラさんとテレーズさんメリアさんバルサさん。
対照的で何となくおかしなこの空気も家らしいっちゃぁー家らしんだろうな。・・・何かヤル気が出て来た。よしっ明日は、明日も適宜に程良く頑張らず無難に行くとしますかっ!!
「何だと貴様我のBBQのドコが邪道だと言うのだ」
「ですからロザリークロード、何度も言っているではありませんか。本来のBBQでは殻や貝殻丸焼きにしたお肉を頭から丸ごと食べることはないそうなのです」
「フッ軟弱な我であれば迷うことなく残さず喰い真のBBQとは何ぞやその深淵に導いてやることも吝かではないというのに、実に情けない限りだ。そのチマチマしたBBQを推奨する愚か者共にはどのような罰を与えたのだ?」
「はぁ~っ!? いったい何を言ってるのです。命や食、調理してくれた者に対し感謝の心を欠いているのであればそれもやむを得ませんが、食べ方一つでそんなことをする訳がないでしょう」
「は? フラン貴様こそ狂ったかっ!! 我がBBQを否定する愚か者共の心のいったい何処に神への畏怖信仰があるというのだ」
「BBQに畏怖も信仰も必要ありません。BBQに限らず食すという行為そのものに感謝の気持ちを忘れず楽しく美味しくあろうとする心こそが大切なのではないですか」
あっちはあっちで今日もやってるなぁ~。
全体的に騒がしい本日の夕食の間の俺の席からは少しだけ離れた海と砂浜を見下ろせる窓際の席で今日もいつものようにじゃれ合うフラン様とロザリークロード様、聖邪の神竜様を横目に。
これも、・・・一応は、・・・タブンだけど幸せって言うんだろうな。・・・・・・うん。
「お待たせ致しましたですぞぉ~、はい。こちらが目の前の海で今朝死んだばかりの新鮮なXXXXLサイズの泥酔魔ロブスターの炭火焼きBBQ丸焼きスタイルでぇー、こちらがローヤルゼリー、アーンドゥッ、プロポリス、アーンドゥッ、マヌカハァーニィーたっぷりのスタシオンエスティバルクリュ産ハニースタンダードカップゼリーです」
「うむ今日も良い香りだ。酔っておったせいであろうな色も鮮やかで申し分なしだっガッハッハッハッハッ」
「これはこれはアランギー様自らありがとうございます」
あれだけ食べたのにまだ食べるのかロザリークロード様は。chefアランギー様も今日は話があるって言ってたのに姿が見えないから何処行ったんだろうって料理してたんですね。お疲れ様です。
ガリガリボリボリと聞き慣れた音が響く中、透明なガラスのカップからちょっと白濁した黄金色のゼリーをスプーンですくい口へと運ぶフラン様。
隣の芝生は青いってか・・・フラン様のゼリー美味そうだな。
貴重な時間をありがとうございました。