8-163 来る日と奇跡の日と執行の日の前夜 -アリス・サラ・テレーズ・サンドラ- plus
創造神様の御意向は、あくまでも日常の風景だ。御希望のあぁフォルティーナポート野生の丘店、ルトロヴァイユ宮殿、中空の離宮創神殿が日常的かと問われると絶対に違うが、下界の風景であることに間違いはない。
当初は王都スカーレットの十三星ホテル【パラスdeフォルティーナ】の最上階=十三階ワンフロアを贅沢に使ったゴッドスイートルームに宿泊していただく予定だった。
だがしかし、あのフォルティーナが難色を示した。
「何を言ってるね、紛うことなき最高神主祭神が自分の神殿で寝泊まりしないなど絶対にあってはいけないね」
釈放されコルト下界に帰界したその日の内にキビキビと豪快に動き回り完成させた運の女神プロデュースdeセルフビルドde勝手にランキング付けホテルには何かと秘密が多い。
創造神様に足を踏み入れて欲しくないだけだということは丸分かりだったが、面倒な説得交渉をしてまで面倒ごとに巻き込まれる謂れはない、ただこのまま聞き流してしまうのも何となく癪な気がする。一言三言くらい囁いてから同意しても許されるはずだ。
何故ならば。
「ホテルパラスってフォルティーナは一NLも出資してないですよね。百%俺の金で断りもなく建てましたよね」
「何度言ったら理解してくれるね。十三星ホテル、パラスdeフォルティーナだね。ロイク、仮に君がオーナーだったとするね」
「仮にじゃなくて事実ですけどね」
「このアタシがオーナーだと思っていようが思われていなかろうが些事でしかないね。つまりだね、アタシ的には誰がパラスdeフォルティーナのオーナーであっても気にしていないということになるね。ホテルの名前を耳にした誰もが、そうだね例えばその存在が底抜けの間抜けで抜け作な輩だとしてもだね。簡単に理解できてしまえるように命名した甲斐があったというものだね」
「まぁーフォルティーナってデカデカと謳ってますからね・・・それで、市からまたフォルティーナ様が無許可で運営しています何とかしていただけませんでしょうかって苦情と言うか嘆願書が山のように届いてるんですが、地下一階から三階にこれまた勝手に作ったCASINOの反響はどんな感じですか?」
「アタシの真の大神殿と比べてしまうと微妙ではあるね。思うに三分も離れていないことが絶妙に影響してると言ってしまっても過言ではないね」
過言ではないのに思うレベルな訳か・・・。まっそれは良いとしてホント凄よな全く皮肉が通じてないや。
「これまた無許可で地下四階に作った【美しい人間種族'sbar】と地下五階に作った【Salon de Miyabi-Elegance】も盛況らしいじゃないですか。借金してまで朝まで居座って楽しんでる人が急増してるらしいですね」
「良くぞ聞いてくれましただね。バーの方はまぁーまぁーと言ってしまえばそれまででしかないね。スタンディングカウンターバースタイルでOKTを禁止したのが失敗だったかもしれないね」
「オーケーティー?」
「お触り、個人情報の交換、詰まらない話のことだね。下界の民には常に煩悩が付いて回るね。だがしかしだねアタシはそれこそが生きている証ではないかと否定することも肯定することもしない日和見を貫く女神だね。だからこそ微妙な線を攻め禁止にしてみたね」
「あ、はい・・・その辺りは法律に違反しない範囲であれば限りなくグレーでも許可書を発行するんでちゃんと申請してください」
「分かったね、後でパフパフに言っておくね」
パフさん申し訳ないです、ガンバっ。
「サロンミヤビエレガンスのテーマはズバリ優雅。内面の美しさを見つめ直し、ボロ切れを纏っているにも関わらず伝わってしまう溢れ出てしまう品育ちの良さ、上品克洗練された所作。それら全てを忘れ去り獣が如く騒ぎ立てろ、さぁ~今夜はオールdeナイトなバッカス祭がコンセプトの小粋な少しばかり小洒落た倶楽部だね」
分からん。荒稼ぎできるだけの魅力が何処にあるのかサッパリ分かんないんですけど。
「・・・まぁー何にしてもこっちもちゃんと申請して貰えれば許可書くらい発行するんで、忘れずにお願いします」
「分かったね」
・
「パラスdeフォルティーナよりも創神殿の方が確かに創造神様にはあってますね」
「その通りだね。分かって貰えたようで嬉しいね。・・・そもそもたかだか世界創造神が宿泊するからという理由一つだけで地下を封鎖するとか言い出したのはいったい何処のどいつだね、アタシが直々にその腐った根性を叩き直してやるね」
「俺ですけど。・・・許可書を発行しても良いって言ってる俺に」
「忘れるところだったね、腐った根性は随分と前に清めたばかりで今更叩き直したところでもう遅かったね。それはそうと悔い改めた結果世界創造神を創神殿に宿泊させなくてはならないことに気が付いた。ということで間違いないかね?」
・・・反省する気は当然無しっと。
「それで良いんで、色々と忘れてることとか勝手にやってることとかちゃんと報告と申告だけはするようにしてください。次は警告なしで創造神様にメールしますからね」
「脅しかね、思考するだけでそれくらい朝飯前のアタシにくだらない雑務をやれとは偉くなりましたねロイク。・・・今日はもう遅いから明日で良いかね」
「えぇ」
・
「...... ~ ......ってことがあたんで、最新の設備を整えた最上階の部屋に宿泊していただくって訳にはいかなくなったんですよ」
「あそこだけ世界が違い過ぎてヤバいものね。一日でも泊まってしまったら同じ物を自分にもってもう絶対に後には戻れないわ」
「そうね、あの髪を乾かす温風の魔道具は本当に奇跡よね。キューティクル? マイナスイオンとナノモイスチュライザーがアンチエイジングブラッシングを効果的に仕上げますって。本当に素晴らしい魔道具の数々でした。ですが確かアレ等は工房ロイスピーの探究型非売魔道具シリーズでしたよね? ロイクさんまさかとは思いますがアリスに」
あっ! テレーズさんに渡すの忘れてたわ。
「え、何言ってるの。私だけな訳ないじゃない、流石にそれだったら私も考えるわよ。ちゃんと皆に配ってあぁぁぁっテレーズあの日「今日はちょっとスケジュールが立て込んでるのよ。八時半から十四時半までぶっ通しで領軍のおもてなし演習訓練を熟した後少しだけ休憩を挟んだら、竜王陛下が指揮する飛竜精鋭部隊と夜通しの野営戦略共同演習訓練に挑むことになってるの、そういうことだから今日は朝食だけでごめんね、chefアランギー様とロイク様には伝えてあるからもう行くわね」って次の日の夕食まで居なかったから・・・」
タブレットの収納からテレーズさんに渡す予定だった温風の魔道具正式には半神具【女神様の吐息・絹髪】と録った音を好きな時に再生して聞くことができる魔道具同じく半神具【響奏の魔晶石・調和】をテーブルの上に取り出してから。
「忘れてました、ごめんなさい、どうぞお受け取りくださいませっ!!」
貴重な時間をありがとうございました。