8-160 来る日と奇跡の日と執行の日の前夜 -アリス・サラ・テレーズ・サンドラ- ②
「でも以外です。ジャマル殿下とクレマン神代が嫌がるサラさんに押し付けるとか全くイメージできません」
「兄達は、そうですね。押し付けると言うよりもそうなるように仕向けると言った感じでしたから」
それなら分かるかも。クレマン神代はなかなかに強かでそれなりに口が上手いからな。ジャマル殿下は・・・気が付くと居なくなってて、あれ? って時が確かに多いもんな。
「陛下より家の話が出ましたので、序と言うのもおかしな話ですが兄上の件で一つ確認したことがあります」
サンドラさんが態々改まって話始める時は大抵何かと比べて納得がいかない時だ。
ここは諦めて聞くしかないか。
「バルタザール殿がどうかしたんですか?」
「本日一七三五、ゼンスタードの兵舎に立ち寄ったのですが、そこで挙動のおかしな兄上とばったり会い少し話をしました。・・・何故陛下は兄上の志願を御認めになられたのですかっ!?」
バルタザール殿が志願? 何処に? サンドラさん、その人本当にバルタザール殿でした?
「ちょっと言ってる意味が分からないです」
「白を切るおつもりですね。ですがそれは無理な話です、残念ですが全て聞き出しました」
凄まれても怖くはないんだけど、目の前で美女に仁王立ちされながらプー何たら茶を飲む趣味はないんですよねぇ~って、マジで・・・白を切るも何も。
「えっと、本当に何の話をしてるのか全く分からないんですけど」
「フッ、兄上が上から勝ち誇った顔で「サンドラではないか、このような場所で会うとは珍しいなっ、お前も明日に備えプレートアーマーを回収しに来たのか?」と話し掛けられた私は「兄上、軍籍を離れたとはいえ私達には責任が伴います。明日のスケジュールくらいはきちんと確認しておくべきですよ」と、すると「皆で備えよと神授をいただき一丸となって備えて来たが、来る日に関してはフォルティーナ様が全責任をもって当たる事となった。しかも嫌がらせが如く来る日真っ只中に執行されることが決定した理法律院による査察の対応まで担当していただけるのだ。我々はこれで良いのか? 私はロイク殿の義父でありお前は一応は妻だ。その私達が何もせずにいて良いはずがない、お前もそう思うだろう。フォルティーナ様だけに任せてしまって恥ずかしくないのかっ!!」徐々に熱を上げ暑苦しく語る兄上に「ですが、世界創造神様と陛下がお決めになったことです。異を唱えるなど私にはできません。フォルティーナ様に一任されたのは私達が邪魔になってしまうからではないかと考えます。歪み歪来る日に起こるであろう何かは私達が今までに経験して来た災害とは次元が異なりこの世界そのものを破壊し消滅させてしまう可能性すらあると神々様方は仰っていました。始まりはジャスパットの空、横断海峡の上空だと言うことも分かっています。この時点で私達に出来ることはフォルティーナ様を信じることのみ」と、すると「甘いぞサンドラ。我々にはまだ出来ることがあるではないか。フォルティーナ様は我々に奇跡の日に集中しろ、来る日と執行の日のことなど気にせずおもてなしに集中しろ。と態度で御示しになられたのだ」「誓約までとは思わなかったね。これは世界創造神の横暴だね、ありえないね、アタシはロイクと世界創造神の陰謀に巻き込まれた哀れな美しい女神だね。と、顔を合わせる度に愚痴を零される身にもなって欲しい」と、即座に反論したところ「見せかけだけの愚行も見抜けぬとはな。若さを取り戻すと共に経験と知識を積み重ねる前に戻ってしまったようで残念だ」と、私の言葉など全く届きませんでした。そしてここからが陛下に確認したいことになります。兄上は「奇跡の日に限ったことではありませんが、世界創造神様の歩を妨げる有象無象を払う大役をこのバルタザールに任せください」と陛下に直談判したところ、「ちょうど良かったです。それじゃバルタザール殿に露払いをお願いしちゃいますねと、二つ返事で任命していただいた」と偉そうに・・・」
あぁーそういやぁー任せたわ。
「・・・その件でしたか。それ創造神様からメールで、【当日の警護とか要らないから皆で楽しもう、いつもの感じで宜しくね】って・・・ただ形だけでも警備はしておいた方が良いかなって考えてた時にタイミング良く名乗り出てくれたんで任せただけというか・・・ハッキリ言ってそこまで重要じゃないんですよね。居ても居なくてもって変わらない訳ですから・・・因みに、先頭しか決まってないんで後ろとか好きなところ選び放題ですが、サンドラさんも」
「・・・わ、私は日頃のショッピングの風景を御覧いただけるようおもてなしに全力を注ぎます。ですので、世界創造神様が御光臨なされる奇跡の日の自称近衛は適任の兄上だけでも宜しいかと」
貴重な時間をありがとうございました。