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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーアシュランス王国建国編ー
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2-38 フィーラを視察しよう④~一族の系譜と、聖属性の結界~

宜しくお願いします。

 帝国の兵士達に囲まれるよりも適地に居る。そんな空気の中で、俺達は最終予定地へ移動した。


 高位樹人族(ハイエルフ)達の居住地区は、老院の森と呼ばれる。老院の森という森が存在している訳では無く。高位樹人族(ハイエルフ)達の街がある森をフィーラでは老院の森と呼ぶんだそうだ。


「皆さんの意見を聞きたいのですが、フィーラに城壁は必要ですか?」


「人間族の国王よ。樹人族(エルフ)の集落に壁は不要」


「さよう、巫女達が力を取り戻せば、風の結界で許可無き者の侵入は無くなる」


「以前の様に我等の国は森の中の幻となるのです」


 王国が結界のせいで視認され難い。幻感(まぼろしかん)全快は困るんだけどなぁ~・・・


「その結界っていつ頃になりますか?」


「巫女達が力を取り戻すまでには、3ヶ月~3年。結界は、3年以内には張れるでしょう」


「その通り。仮に標準樹人族(ノーマルエルフ)達の巫女が回復するまでに時間がかかったとしても、5年や10年はかかるまい」


 また、随分とアバウトな・・・


「マリレナさん。バジリアさん。俺から提案があります」


「提案ですか?」


「ロイク殿どの様な提案でしょうか?」


「巫女達が結界を張るまで3ヶ月~10年も定期で魔獣に襲われるのは問題です。その都度に、復旧復興の手を止めるのは無駄だし、その度に被害を出していては愚かです。時間や労力の無駄です」


「巫女が力を取り戻すまでは、多少の犠牲は仕方あるまい」


「その考えが問題です。犠牲はやむを得無いの考えは、ここフィーラ王国から根絶します。誰かが犠牲になる前に対策する。犠牲の上に何かを積み上げるのは、ここフィーラでは終わりにしましょう」


「ただの綺麗ごと、詭弁ではないか。いつの世も犠牲を伴う。歴史はそうやって積み重ねられて来たのじゃ。24年しか生きておらぬ人間族が偉そうな事を・・・」


「エスレンジ長老は、創造神様より認められたロイク様を愚弄するのですね。その喧嘩私が買いましょう」


「マリレナ様。私はその様なつもりはありません」


 喧嘩を買うって・・・マリレナさん・・・


「えっと、マリレナさん。喧嘩を売られた覚えも無いので、売られていない物は買わ無い、買え無いって事でお願いします」


「ですが・・・」


「気持ちだけ受け取っておきます」


「そ、そうですか・・・エスレンジ。ロイク様に免じて許しましょう。命拾いしましたね」



「結界を張る巫女が力を取り戻すまで、俺が結界を張っておきます」


「国王陛下がですか?」


 どうやら、高位樹人族(ハイエルフ)の長老や老院の人達は、俺の呼称を国王陛下で統一した様だ。


「壁を作るのも結界を張るのも、自然魔素(まりょく)の展開の方法は同じなので直ぐ終わります」


「直ぐ?・・・直ぐとは、今直ぐの直ぐと言う事でしょうか?」


「マリレナ様。10日間の祈祷を経て、マリレナ様が発動させる風の結界を一瞬で張ると国王陛下が申しておりますが、まさか、許可を与えるおつもりですか?」


「何を言ってるのかしら。この国は、ロイク様の国です」


「俺は何となく王様なだけで、この国は、フィーラに住む人皆の国ですよ」


「それは、どちらでも構いません」


 いやいや。どちらでも良いって、全く違いますから・・・


「仮に皆の国だとした場合。この場合は、私が許可を与える事はおかしな話です。ロイク様が国王だとして、事実国王な訳ですが、国王陛下に私が許可を与えるのもおかしな話です」


「マリレナ様。いったいどうしてしまわれたのですか?マリレナ様は、風の樹人族(ヴァンのエルフ)(おさ)。大長老なのですよ」


「どうもしていません。私はいたって普通です。貴方達は、私の初めての結婚。新婚生活を邪魔する気ですか?」


「人間族と結婚し悲しむのは長寿種のマリレナ様なのですぞ」


「結婚と結界は関係無い話です」


 いやいや。マリレナさん貴方が結婚の話に脱線させました。


「分かりました。賭けをしましょう」


 はぁ?


「賭けですか。どの様なかけでしょうか?」


「ロイク様がフィーラに結界を、1人で直ぐに張った場合は私の勝。もし、ロイク様が失敗した場合は貴方達の勝です」


「何をかけるおつもりですか?」


「私が勝ったら、高位樹人族(ハイエルフ)はロイク様を認める。貴方達が勝ったら私は大長老を引退してこの里を去ります」


「そ、その様な条件飲める訳がありません。私達にメリットがありません」


 俺も、そう思います。というか、何が始まったんですか。これ・・・


「仕方ありませんね。ロイク様。結界を張ってしまってください。論より証拠をこの者達に見せてやってください」


 いや、元々そのつもりだったんですが・・・


「・・・マリレナさん?」


 胸が腕に当たってとても気持ち良いのですが・・・嬉しいのですが、何を?


「ロイク様どうぞ」


「あ、あの・・・マリレナさん。どうしての俺の腕に抱き着いてるのでしょうか?」


「特に意味はありません」


 意味無いのか・・・


「マリレナ様は、どうしてロイク様に抱き着いておられるのですか?」


「いや、メリアさん。ちゃんと見てください。俺の腕に抱き着いてるんです。俺にじゃありません」


「同じ事です」


「マリレナ様。不謹慎ですよ。人前ですよ!」


「私は気にしません。お気遣い無くお願いします」


「そういう訳にはいきません」


「メリア。風の樹人族(ヴァンのエルフ)を代表する私のせめてもの気持ちです。お気になさらずに・・・」


「マリレナ様の仰ってる意味が分かりません」



 くだらない、問答を繰り返し、緊張感の無い状態が続いた。


 あれれ?


 俺は、マリレナさんとメリアさんを見比べる。そして、他の人達を見ては、視線をマリレナさんやメリアさんに戻す。何度かそれを繰り返し、1つの結論に至った。


 ・・・マリレナさんとメリアさん。2人は何となく似てる。・・・同じ樹人族だからかな?



「ですから、ロイク様が結界を張ります。それで良いですね」


「勝っても負けても損をする。そんな賭けに乗れと仰るのですか?」


「結界を張る事に失敗したとして、貴方達に何か損があるのですか?」


「損はありません。問題なのは私達高位樹人族(ハイエルフ)の権威です」


「権威?・・・ロイク様が結界を張る事で、私達の権威が失墜するのですか?」


「ですから、何度も申しておりますが」


 もう良いや。無駄な会話にかなりの時間付き合ったし・・・もう良いでしょう。時間切れです。


「さてと、メリアさん、マリレナさん、バジリアさん。俺は、結界を張っちゃいます。高位樹人族(ハイエルフ)の長老様や老院の皆さんの権威の為に、樹人族(エルフ)の皆さんの生命を危険に晒す必要はありません。これは、決定事項です。脅すつもりはありませんが、邪魔する場合は拘束します。分かりましたね」


「私達を拘束すると!」


「えぇ。邪魔する場合は仕方ないですよね。だって邪魔な訳ですから・・・それと、フィーラ領から出て行って貰います。権威を妨げる結界の外なので文句はありませんよね?」


「何だと。我等にフィーラの地から出て行けと言うのですか?」


「マリレナ様。人間族の横暴です。見過ごして宜しいのですか?」


「邪魔しなきゃ良いだけでしょう。嫌なら邪魔しなければ良いのよ」


「ロイク様。フィーラ領の外は大樹の森です。追放しても、ロイク様が管理される土地に追放する事になってしまいますよ」


「あら・・・そうですね。メリアさんどうしましょう・・・」


「それでしたら、こうしましょう。長老達がロイク様の邪魔をするようでしたら、拘束後にヴァルオリティア帝国に強制転位で送ってしまいましょう」


「マリレナさん。意外に鬼ですね!」


「はい。私は、家族と身内と仲間と一族第一ですから。邪魔者は徹底排除で構いません。それに、ロイク様との新婚を邪魔する無粋な者は、高位樹人族(ハイエルフ)に非ずです」


 一番、人懐っこい顔をしてるし、雰囲気なのに、一番怖いかもしれないな。女性って分から無いや。


「マリレナ様は私達をお見捨てになられるのですか・・・」


「見捨てられたく無かったら、権威等気にしないで、素直に結果を受けれ入れなさい。さぁ~ロイク様やってしまってください」


「先に断っておきますが、俺は風属性の結界の張り方を知らないので、聖属性の結界を張る事になります。巫女達が結界を張り直す時は、事前に連絡をください。俺の結界を破壊して風の属性の結界を張る何て神様でも簡単には出来ないので、俺が結界を解除します」


「国王陛下。おっ!お、お待ちくだされ」


「はぁ~、まだ何かあるんですか?」


「反対意見ではありません」


「えっと、セイランド元老でしたっけ?」


「はい、元老院委員のマリウス・セイランドと言います。国王陛下にお尋ね致します。聖属性の結界を張ると仰いましたか?」


「そうです。俺は聖属性の結界しか張れません」


「そうでしたか・・・風の結界よりも優れた聖属性の結界をフィーラに張っていただけるのですね」


「俺の国でもありますからね。それに俺が管理する大樹の森から魔獣が襲って来る可能性もある訳で、そうなると必然的に壁か結界。それだけの話です」


「分かりました。結界をお願い致します」


「セイランド殿。人間族に頭を下げる等・・・何をされておられるのですか!」


「皆も聞いたであろう。聖属性の結界を展開してくださるのだ。何の不満がある。何より、国王陛下は、我等が大長老マリレナ様の夫なのです」


「創造神様からいただいた啓示に、マリレナ様が人間族へ嫁ぐとは無かったぞ」


「その通りです。確りしてくだされ」


「エスレンジ長老やバレンツ元老に、私がロイク様に嫁ぐという啓示を創造神様が与えると思いますか。それこそ無意味ではありませんか。夫婦の事は当事者に啓示があってこその神授です」


 俺、神授されてません・・・当事者なのに・・・


「マリレナ様は、創造神様が啓示した事には何にでも従うおつもりなのですか?」


「そんな事はありません。イヤな事はイヤと断る位はします。ですが、創造神様が不幸や嫌がらせを押し付けて来るとは思えません。その考えは無意味です」


「私も、マリレナ様と同じ考えです」


「おぉ~メリア。貴方は良く出来た子です」


 見た感じ大差無いマリレナに頭を撫でられるメリア。何か面白い光景だ。俺って脱線しすぎだろう・・・流石に進めないとな。


「それでは結界を張ってしまいます」


「ロイク様お願いします」


 マリレナさんは、俺の腕に抱き着いたまま離れる気は無い様だ。



 俺は、フィーラ王国の領土を囲む大きな聖属性の結界を張った。海は沖合10Kmまで結界の内側に設定した。


「今、結界の外に出ると、フィーラ領内に戻れません気を付けてください。追って結界を改良します」



 俺は、メリア、マリレナ、バジリア、バルサを連れ、聖都スカーレットの、エルドラドブランシュ(領主館であり俺の家)に帰宅した。


 そして、夕食までの時間を、ファミリーエリア(北地区)の3階にあるリビングで潰していた。



「マリレナさんとメリアさんを見ていて思った事なんですが・・・」


「私達をですか・・・」


「どんな事ですか?」


高位樹人族(ハイエルフ)のマリレナさんと、樹人族(エルフ)のメリアさんを見ていたら、何となくですよ。似てるなって思ったんです」


「ロイク様。それは、私も風の樹人族(ヴァンのエルフ)だからではないでしょうか?」


「俺も、2人が同じ風の樹人族(ヴァンのエルフ)だから、似ていても変じゃ無いのかなとも思ったんですが・・・」


 俺は、マリレナに視線を動かす。マリレナは俺と視線が合うと、柔らかな微笑みを浮かべ似ている理由を教えてくれた。


「それは、私達2人は血族の系譜が同じ流れにあるからですよ」


「血族ですか・・・でも、メリアさんは混血種ではないですよね」


「厳密には混血ですよ。メリアは」


「私がですか?」


「混血種とは、高位樹人族(ハイエルフ)の血を血統として、優性を保っている5世代以内の樹人族(エルフ)闇樹人族(テネブル)の事なんです。ですから、それ以上離れてしまった混血は血統の優性を失っているので混血として認識されていないだけなんです」


「私は、マリレナ様の子孫なのですか?」


「なっ!・・・違います。私は子供を産んだ事はありません。ロイク様との子供が最初の子供です。メリア。貴方は私の妹の血統系統です。ただ、私に限り無く近い双子の妹の系統なだけです」


「だから、何となく似てたんですね」


「ロイク様。私はマリレナ様に似ていますか?」


「似てますよ。瞳や髪の色は違いますが、顔立ちやオーラって言うのかな雰囲気がまず似てると思います。美人って言うよりは綺麗というか可愛らしいというか。ちょっと幼い感じと、柔らかい感じまで似てます」


「そうなんですね・・・」


「私に、幼さを感じるとは、ロイク様は、大人な精神をお持ちなのですね」


「マリレナ様。私は妹様の何世代目の子孫かお分かりになりますか?」


「そうですねぇ~・・・40世代~46世代位は子孫だと思いますが、グレースが居れば系統の魔術で直ぐに分かるのですが、残念です・・・」


「妹さんはお亡くなりになったんですね」


「いえ、生きていますよ。余生をのんびり過ごしたいと、1万年位前に第1世代の両親と共に息吹の谷へ戻りました」


「生きてるんですね」


「はい」


「今、思った事なんですが、高位樹人族(ハイエルフ)って双子が多いんですか?」


「そうですね。双子じゃない方が珍しいかもしれません」


 双子の方が普通だったのか・・・そうなると、俺が思っていた以上に数の少ない種族って事になる。他の大陸の樹人族(エルフ)の状況とかも踏まえて、知っておく必要がありそうだな。


ありがとうございました。

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