1-5 旅立つ?その前に・・・
作成2018年2月11日
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【タイトル】このKissは、嵐の予感。
【第1章】(仮)このKissは、真実の中。
1-5 旅立つ?その前に・・・
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――― アンカー邸の執務室
「襲撃の経緯については、良く分かりました。曾祖父様の武具が聖獣様の加護によって魔導具としてヒグマの丘の邪気を浄化していたのですね」
俺達は、精霊達が嘆きの痕と呼ぶ風の断層の邪気の洞窟と大地竜については伏せて報告した。
「でよぉー。知らなかったとはいえー・・・マルボーは村に魔獣達を呼び込んだぁ挙句にぃー。リトルの武具に群がっただけの魔獣達にぃかんけぇーねぇー住民を巻き込んだ挙句。死者を出したってぇー訳だぁっ!」
「シャレット士爵殿は、この武具が魔導具だとどうやって知ったのですか?」
「シンさぁーん。俺の息子がなぁっ!ちょっとばかしぃー人間離れしたスキルを神授されててなぁっ!それでだぁっ」
「・・・なるほど。ロイク君、この武具だが、魔獣達を引き寄せる効果がある事は、次期男爵達への魔獣の行動と、襲撃箇所の状況からも納得がいく。浄化の効果もあるとして、丘に戻す必要は無いのかね?」
シン士爵は、俺が聖属性魔法でヒグマの丘の東半分を浄化し、邪気の洞窟の中の邪属性の濃度を最低レベルまで下げた事を知らない。そして、彼女マルアスピー様が言う、洞窟内の自然の流れ自然魔素・邪属性の供給量程度なら100年以上は放置していても問題ないレベルだという事を知る訳も無い。
「魔獣達を殲滅した夜に見たと思いますが、私達人間種よりも神に近い上位種聖獣と並ぶ邪獣で邪狼獣セリューさんとロージャンさん兄弟には、他に7人の兄弟姉妹がいるそうです。彼等はもともと丘を住処にしていたそうで、以前の様にこの村が落ち着くまでは見守ってくれるそうです。村としてやるべき事は、魔導具に頼らず解決する方法を早急に施す事だと思います。マルフォイ・アンカー次期男爵の様にいつ誰が魔導具を動かすか分かりませんし、魔導具の魔力が悠久とも限りませんから」
邪狼獣の皆さんは俺の影の中に居るけど、この位の嘘なら許される範囲だよね?
「確かに、今回の様に次期男爵達と同じ様な行動を取る者が現れ無いという保証は何処にも無い。この111年の間に何も起こら無かった事の方が奇跡と考えるべきだろう」
「はい、シン士爵様。私もその様に考えます。今回の貴族領軍の行動は、ヒグマの丘に落ちていた武具を、演習中に発見し、その武具には彼等が仕えますアンカー家の初代男爵様の名前が彫られていた事から、彼等は領内に運び込んだにすぎません。行商人の【Évaluation】では本物かどうかを判定しただけです。そして、初代男爵様の武具が魔導具だったと知ったのは、シン士爵様に【Évaluation】で、詳しく見ていただいた後になります。リトル・アンカー様の武具が魔導具で、ヒグマの丘の邪属性を浄化していた物であり、邪属性の魔獣達を引き寄せる効果があると誰が気付けたでしょうか?」
「従者だったな、主へのその忠誠心は見上げた物だが、一連の魔獣襲撃事件を語るのであれば、知らずに意図せず持ち込んだ魔導具の影響で魔獣が村を襲った。マルフォイ・アンカー次期男爵は父親であるドムトン・アンカー男爵の領主としての権利を代行し行使した。村を襲った魔獣の目的は魔導具の近くに集まる事で村を襲う為では無かった。現に次期男爵の行動範囲つまり魔導具があった場所に魔獣は現れ周囲に被害を与えています。そして、その魔導具の1部を所持し持ち歩いて次期男爵は魔導具の効果によって魔獣達の標的になっていた事になります。標的が敵前逃亡し魔獣達は次期男爵が所持する魔導具に吸い寄せられる様に村の中心に向かって移動した。私達はそうとは知らず居住区への魔獣の侵入を阻止すべく壁になって戦った」
「シン士爵様。王国軍、貴族領軍、領民の奇襲先制攻撃は、元々無謀な計画でしたが、この魔導具を次期男爵様が戦闘時に所持していたのであれば、無謀どころか我々は魔獣が集結する中に突入しただけになってしまいます。守衛の死もそうですが、召集命令で戦った領民の死がこれではあまりにも・・・」
「あぁーなんだ、あれだ、あれ。隊長さんよぉー。戦う必要がねぇー襲撃事件だったってぇー事は確かなんだがぁー。・・・彼等がぁー村を襲撃した魔獣の群れと戦ったってぇーのは嘘じゃねぇー訳だろう」
「襲撃事件の前に襲撃を受けていた事。それを隠していた事。自分自身の行動によって狙われていたにも関わらず、無謀な計画を命令し強行した事。自身は指揮官でありながら2度の敵前逃亡という大罪を犯した事。挙句に召集命令で戦闘に参加した者を盾にし多数の死傷者を出した事。武具が魔導具であろうがなかろうが・・・彼等の死が何だったのか考えると・・・」
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納得のいかない結末だ。
仮に、最期がどの様な物であったとしても、それを納得し、受け入れる事は難しいだろう。
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そして、連絡鳩によって4075年5月29日。一連の魔獣襲撃事件に対する、中央の判断が村に届けられた。内容は、マルフォイ・アンカーを罪には問わ無い。理由は、次期男爵が非戦闘型JOBであり軍籍を所持してい無い。ただし、一連の魔獣襲撃事件によって命を落とした者の遺族への補償をアンカー男爵家は責任を持って果たす。負傷した者への補償を責任を持って果たす。と、いう物だった。
連絡鳩は、もう1通手紙を運んで来ていた。それは、王都モルングレーの王宮に俺を招集する内容だった。数百の魔獣を一瞬で殲滅した魔術と、聖獣と同位である邪獣の存在の確認が目的だろう。表向きは国王陛下に謁見し報酬を直々に受け取る事になっている。
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――― シャレット家の居間
父と彼女精霊のマルアスピー様と俺は、ヒグマの丘の調査報告を済ませた後、リトル・アンカーの魔導具を確認した。マルフォイ・アンカーと兵士達が回収した魔導具は5個。魔獣を引き寄せる付加は彼女マルアスピー様が無効化処理を施してくれる事になり、俺は魔法で丘に戻り、残りの魔導具3つの内の2つを回収し、結局7個の魔導具を無効化した。残りの1つは迷宮内にあるので時間がある時に、セリューさん達に案内して貰い回収する予定だ。
自宅に帰宅した。俺は、改めて母と生きて再会できた事を喜び合い、家族で今日までの事を語り合った。そして、話題が・・・
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「ロイク。貴方、本当にレベルが274なの?」
「今朝、出かける前は、31だったんだけどね・・・」
「疑っている訳じゃないのよ。精霊様のアスピーちゃんが目の前にいる訳だし。ただ、ついこの間までは、レベルが1だったでしょう。襲撃の夜にお父さんと戦いに出て半月以上も音信不通になって、帰って来たと思ったら精霊様がお嫁さんだったり、王都の宮廷魔術師や学芸院の教授学者の先生みたいな事ができたり、マルアスピー村の危機を1人で救ってしまったり」
「母さん、村は皆が力を合わせて戦って守り続けたから無事なだけで、俺は精霊樹の中にある精霊様達が普段生活している精域ってところで、21日間も眠り続け、目覚めた時は、村の事まで気が回らない状態で夕方過ぎまで大樹の聖域の内側で、手に入れた能力の確認をしてたんだ。村がどうなっているのか気になって確認したのだって、自分が負傷して瀕死になった状況を思い出して、村の被害が気になったからだった訳で」
「んー。まぁーなんだぁ!結果オーライだぁっ!あの状況でお前が来なかったらぁーマルボーの阿呆のせいで。俺達はぁー知らずに魔獣達の進路を妨害しながら、皮肉にもあいつの盾になって全滅してただろうからなぁっ!それにぃーあれ見せられたらぁー・・・何処を見ても魔獣だらけのあの状況を一瞬で終わらせちまう魔術だぜぇー。お前が救ったってぇー事を否定する奴はいねぇーよぉっ!」
「聖域で魔法の確認をしておいて正解だったでしょう?助けに行って魔獣も住民も村もまとめてボンなんて本末転倒意味ないものね・・・フフフッ」
「そうそう、すげんだぜぇー!大樹の森ででっけぇー亀を倒す為に竜巻を出したんだけどよぉ!4Kmから5Km四方の大木根こそぎ吹き飛ばしちまってよぉっ!森の中に5NLハゲだ。ワッハッハッハ」
「昨日も帰って来た時に言ったけど、心配かけてごめん。無事に帰って来たし、これからも死なない様に慎重に動くよ。今の俺は親父が1000人居てもダメージ1つ与えられないだろうけどね」
「おっ!言うじゃねぇーかぁー」
≪ゴォッ
「イテェッ・・・」
「何だ効くじゃねぇーかよぉ!安心したぜぇっ。お前は一応人間だぁっ。ワッハッハッハ」
「それで、そのレベルの話だけど、俺は神様からBIRTHDAY・SKILLに【修練の心得】って有難迷惑なスキルを神授されていたみたいで、その効果の影響でずっと個体レベルが1だったみたいなんだよ」
「レベルUPの為に必要な経験値が100分の1しか手にはいらねぇーんだよなぁっ!」
「でも、それが分かった時には、精霊様か」
「マルアスピーでしょう・・・もう~↑」
彼女は、頬を膨らませ、胸の前で腕を組む。
凝視・・・
+
!熟視!・・・
「貴方!」
「あ?何だぁー・・・」
「フフフッ」
「・・・えっと、その、マルアスピー・・・さ、まから、加護を授かった後で、レベルUPに必要な経験値が1万分の1になる【プロモーション】ってスキルを神様から新たに神授されたんだ。成長の時に、補正と強化と補助の効果もあるらしいけど、これは今のところどんな物なのか分からないけどね」
「あら、取得する経験値が100分の1で、上がる為に必要になる経験値が1万分の1になるスキルを神授されていたのね」
「そこに、昨日の段階でいただいてたみたいなんだけど、今日確認したら、神様から弓と靴を神授されていて、その靴に取得する経験値が1万倍になる効果があるみたいで・・・」
「凄い靴を神様からいただいたのね。大切にするのよ!」
「勿論、大切にするよ。【タブレット】に収納すると、新品みたいになって戻って来るからびっくりするけど・・・・砂埃で汚れてたはずなのに、さっき確認したら綺麗に真っ白になってた」
「お前さぁー、それ普通に100倍で経験値が手に入って、レベルUPに必要な経験値が1万分の1になってる状態だよなぁっ!」
「個体レベルが1のまま上がらないからって悩んでた事とか、仕留めた数を記録してた事が何だったのかって感じだよ・・・」
「さっきも聞いたと思うけどよぉー!兎耳狼、大地牙狼、闇牙狼、闇炎牙狼から手に入る経験値って幾つだぁー?」
「ちょっと待って、『神授スキル【タブレット】発動』≫」
≪トン (【苺】を軽く押す)
≪WELCOME ≪可愛い女の子の声≫
*******≫版≪*26:03*******
【 【音声入力開始】】
≪ 管理 ≫
【 道具 】 【 武具 】 【 素材 】
【 音声 】 【 画像 】 【 映像 】
【 記憶 】 【 通信 】 【 情報 】
【 予約 】 【 施設 】 【 通貨 】
【 レシピ&成分 】 【 優待券 】
【 娯楽 】 【 プレゼントBOX 】
【 地図 】 【 各種詳細 】
【 【視認入力開始】】
【 地図検索 】 【 名称検索 】
【 万物検索 】 【 取扱説明書 】
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視認入力?・・・えっと『 ま→魔獣 の 経験値・・・ 』これで良いのかな?開始っと。
「何やってかぁっ分かんねぇーからよぉ!声出してくんねぇーかぁ?」
「今、魔獣の経験値は?って検索したところ。俺が全部読上げるのも何だし、音声で読上げてくれる機能があるみたいだから切り替えるよ」
どうすれば切り替わるんだっけ?・・・音声はっと・・・
≪コミュニケーション機能を開始します。(可愛い女の子の声)
「おっ!誰の声だこれ?」
「誰の声かは分からないけど、最初からこの声だったよ」
≪表示します。
「あん?ロイクで、経験値は?」
「・・・これ、慣れるまでに時間かかりそうだよ。えっと、兎耳狼の経験値は、」
≪兎耳狼から取得可能な経験値は、成獣で4。幼獣で1。です。パーティー人数が1人から9人の場合は、人数で除法してください。
「お・・・すげぇー・・・声が板から聞こえて来んぞぉっ!」
「ロイク。その透明な板が【タブレット】っていう神様からいただいた物なのね?」
「これは、神授された、スキルだけど、そんな感じかな」
「なぁっ!闇炎牙狼の経験値はどうなんだぁっ」
・
・
・
「・・・俺にしか扱え無いのかも。闇炎牙狼、大地牙狼、闇牙狼、の経験値は?」
≪闇炎牙狼から取得可能な経験値は、成獣で16。幼獣で5。です。大地牙狼から取得可能な経験値は、成獣で5。幼獣で1。です。闇牙狼から取得可能な経験値は、成獣で8。幼獣で2。です。パーティー人数が1人から9人の場合は、人数で除法してください。
「取得経験値がぁー100分の1だとしてもよぉ!昨日のあの数を1人でって考えたら一気に31とかってぇー分かるわぁー!で、UPに必要な経験値って決まってんだろう・・・って、ロイク頼むはぁ!」
「見た方が早そうだから、浮かび上がったのを見て、えっと、音声入力のままでも良いのか?」
≪はい
「良いのか・・・」
会話しているみたいで、ちょっと驚いたよ・・・
「人間種の個体レベルを上げる為に必要な経験値の固定値があったら教えて」
≪はい・・・・・・・・・表示します。
*******≫版≪*26:09*******
人間種の個体レベル上昇に必要な経験値の設定表
―――――――――――――――――――――――
| 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
―――――――――――――――――――――――
| 36 | 56 | 78 | 102 | 128 |
―――――――――――――――――――――――
・・・・・・
―――――――――――――――――――――――
| 32 | 33 | 34 | 35 |
―――――――――――――――――――――――
| 4600 | 4900 | 5200 |5500|
―――――――――――――――――――――――
*****************【↓Go↓】*
「親父、こんな感じみたい」
「どれぇー・・・俺は確かぁーあと4992で34に上がんだよなぁっ!」
俺は、親父のステータスを【神眼・万物】で確認する。
「今、累積で45912の経験値を取得していて、次のUPまでは4992ってなってる」
「・・・」
父は、真剣な表情で何かを考えている様だ。
「どうしたんだ?」
「あぁー。いや、ちょっと計算してたんだよぉっ!闇炎牙狼は、俺1人で仕留めるとかぁー無理だからよぉっ。闇牙狼なら何匹だってなぁっ!」
「8で除法すれば良いだけだろう?」
「んな事は分かってんだよ。624匹だってなぁっ!問題はなぁっ、都合良く闇牙狼だけが1匹ずつ出て来てくれねぇーって事だぁ・・・でな、さっき亀に矢射って、石投げて、空高くぶっ飛んで地面に落っこちるのを見てただけで、28から33に上がっただろう・・・」
「大樹髭大陸亀の聖属性亜種1匹と、大地竜・狂暴2匹だけで俺も凄い事になったから驚いてるけど」
「それで、ふと思った訳よぉー・・・良いかぁー。俺の知ってるぅー高レベルの奴でもレベルは52やそこらだったんだよぉ!16から58まで騎士団に居た奴でなぁー。反乱とかぁー盗賊討伐とかぁー魔獣撃退討伐とか数え切れねぇ―くれぇーやって52だぜぇ!」
「軍は部隊で動くのが普通なんだろう?経験値を除法された状態で取得してたなら、上がらなくてもおかしいとは思わないけど・・・ちょっと確認してみよっと、経験値取得の条件。1人と9人パーティー1つと、9人パーティー3つで共闘した場合は?」
≪はい・・・・・・・・・対象の魔獣は何ですか?
「えっと・・・それなりに強くて、討伐が可能そうな魔獣って何だぁ~?」
「【闇炎雄土豚】とかはどうよぉ!あれなら、討伐隊を組織して倒しに行くから条件に良いんじゃねぇーの?」
「それなら、対象、闇炎雄土豚」
≪はい・・・・・・・・・闇炎雄土豚から取得可能な経験値は、25。です。9人パーティーで除法した場合、1人が取得可能な経験値は、2.777。です。9人パーティー3つで除法した場合、均等分配すると仮定し1人が取得可能な経験値は、0.925。です。
「んなもんだよなぁー・・・人間種のレベルってぇー上限は無さそうだけどよぅー。50前後が限界なんじゃぁねぇかなかーって思う訳よっ!」
「はいはい、レベルとかもう1じゃない訳だし、そんなに悩む事でも無いでしょう。えっと・・・もう26時間30ラフン過ぎたみたいだし、また、明日話しましょう。って、使い方あってるのかしら?」
「たぶん・・・」
「アスピーちゃん。この数字をカウントしているのは時間を数字で表している物なのよね?」
「のようです」
帰宅して直ぐ、彼女は自分の家に服を取りに戻り、このカウントする道具を持って来たのだ。
「6時間って所で陽が昇るのか確認したいから、ほら、皆寝なさいっ」
正直、昨日の夜から、戦闘の事後処理や生還の再会とか、忙しくしていて睡眠が足りていない。母の好奇心は、今の俺には有難い限りだ。
「何か疲れてるし、それじゃ俺はもう寝るよ。おやすみなさい」
「ちょっと待てっロイクッ!俺に渡すもんがあんだろうぅー・・・あれだ、あれ!」
「?」
「亀を何の為に狩ったと思ってるんだ・・・」
「あら、義理の御父様・・・ウフフ」
「・・・レベル上げだろっ!」
「確かに、それもあるっ!・・・だがぁーそれには浪漫がぁー足りねぇ!・・・血1つください。お願いしますぅ!ロイク様ぁー↑」
「浪漫ねぇ~・・・良く分からないや。様は止めろよ気持ち悪いなぁ~・・・渡すからさ。えっと、【大樹髭大陸亀の生血】小瓶2本。それと、神様からお祝いで貰った赤マムシドリンク1本」
≪はい・・・・・・・・・頑張ってくださいボソボソ
俺の手に小瓶3本が出現する。
「親父、神様が夫婦でとかってプレゼントしてくれたこっちのドリンクも1本やるよ。夫婦でって言うなら親父達が使っても問題ないだろうからな」
「良く分かんねぇーけど、神様がくれたもんなら、何でも貰うぜぇっ!ありがとよ」
「で、この血だけ、そのまま飲んで良い物なのか?」
「知らねぇー」
≪はい・・・【大樹髭大陸亀の生血】の摂取方法。加工せず摂取する際は、目安として1回の摂取量を10cc以下にしてください。また、連続した摂取は控え、最低でも15時間の休憩を挟んでください。
「・・・だそうだ」
≪トコトコ トコトコ
「その【タブレット】。すげぇ―便利だなぁっ!ありがとよぉっ」
父は階段に向かって歩き出した。母も父の後に続き階段へ向かう。
「あなた、ロイクが神様からいただいた物を私達が貰ってしまって良いのかしら?」
「良いんじゃねぇーの・・・ロイクの弓みてぇーに限定とかって道具じゃねぇーみてぇーだしよぉっ。それに、今日はこっちがあれば。イッシッシッシ」
「顔が、スケベよ・・・」
≪トントン トコトコ トントコ コツ
「フッ!俺は生まれた時からぁーずっとこの顔だぜぃっ! それじゃ、おやすみさん!」
「ロイク。アスピーちゃんも、また明日ね。おやすみさない」
父は階段を上りながら振り返らずに手を振り、俺と彼女に就寝の挨拶をし2階の寝室へ移動した。母も後に続く。
「おやすみなさい」
「義理の御父様も、義理のお母様も、おやすみなさい」
≪バタン
「さてと、俺も寝よ。マルアスピー・・・さ、まはどうしますか?家に戻りますか?」
「はい~↑・・・?私達夫婦なのよぉ~結婚して早々妻が1人で実家っておわかしいと思わないの?おかしいわよね?」
「はぁ~」
「もう~焦れったいわねぇ~。ホラ、ベッドはロイクの部屋にしか無いのだから行くわよ」
「・・・俺、居間のソファーで寝るから、ベッド1人で使っていいよ」
「・・・あのねぇ~ロイクが居ないベッドで私が1人で寝てどうするのよ」
「狭いベッドだから、1人の方がゆっくり眠れると思うけど」
「あなた、24歳よね?」
「そうですけど・・・」
「もう大人よね?」
「はぁ~レベルは274になりました」
「ご両親を見習ったらどうかしら」
「親父はあぁ~だけど尊敬はしてるよ」
「そういう意味じゃないわよ・・・もうっ!あなたレベル1」
「昨日までは1だったけど、もう274だから・・・」
「そういう意味じゃないわよっ!もう~」
彼女は、胸の前で腕を組み、夢と希望を強調する。
凝視・・・(あっ・・・)
「フフフッ」
・
・
・
*******地図の距離の説明********
【マルアスピー村】と【王都モルングレー】は、
約226.8Km離れている。
【王都モルングレー】へ行く為には、
【マルアスピー村】から【コルトの町】を
経由し、そこから【鉱山都市ロイ】を
経由し、【東モルングレー山脈】と
【サス湖】との間に広がる【サスの森】を
通り抜ける必要がある。
【王国中央街道】が整備されている為、
全行程を輓獣車で移動可能だ。
【馬車の場合】
休憩を挟みながらゆっくり移動したとして、
【コルトの町】か【鉱山都市ロイ】で1泊し、
約9時間。【鉱山都市ロイ】から、
【王都モルングレー】までは、整備された
街道だが森を抜ける為、約7~8時間。
【徒歩の場合】※多くの人は徒歩※
休憩を挟みながらゆっくり移動したとして、
片道 約3日。
【コルトの町】で1泊
【鉱山都市ロイ】で1泊
******地図の距離の説明おわり******
――― シャレット家の居間明け23日6時少し前
午前06:00:00。2つの陽が地平線から姿を表し、世界は闇属性から光属性の時間に切り替わった。数字をカウントする道具が05:30:00になる頃には、俺達家族は示し合わせていた訳でも無いのに皆居間にある食事用のテーブルの席に腰掛けていた。そして、05:58:00。徐に外に出ると、06:00:00。を待った。
行動と感覚だけで漠然と認識していた時間を、数字で細分化し認識する新しい時間の概念。新しい価値観の中で初めての朝日を眺めた。
「疑ってたぁ訳じゃねぇーけどよぉ!6時間って時に、横陽と縦陽が出たなぁっ!これで、15時間って時にぃー陽が重なって1つになってぇっ!24時間って時に、陽が消えれば陽の有る時間と無い時間を正確に把握して動ける訳だからぁー・・・感覚に頼ってたぁー今迄が様変わりすんなっ!天気がわりぃー時もこれなら行動の制限を受けねぇ―からすげぇーぜ」
「この道具があれば時間を見て料理をしたり、家の事ができるわよねぇ~。曖昧だった調理時間や加工時間を正確に計れる訳だから、レパートリーも増えるし、成功率は飛躍的に上がりそうね」
「あぁ~そうか、なるほどねぇ。この時間のカウントは加工だけじゃない、魔術や魔法とか魔獣を攻撃する時のタイミングや長さを共有する事で、体内カウントが鈍い人とでも上手く連携出来るって事か・・・」
他にも色々な事に・・・気付いた。目覚めた。そんな朝だった。
・
・
・
魔獣の危機が去った事がアンカー領マルアスピー村に、レオナ・アンカーの名前で告知されたのは、その日の陽が重なり合う時間だった。概念を得た俺達にとっては、15:00:00だ。
神授スキル【時計】は、彼女マルアスピー様の下界に対する興味を後押しした。人間種は結婚すると、夫婦で10日から30日新婚旅行という見聞見識を広げる旅に出る事や、夫婦で家を持ち1つの世帯として行政に登録する事や、世界創造神創生教会の最寄りの教会に登録する事や、ショッピングやショッピングやショッピングだ・・・
俺はというと、魔法が発動する時間や発動している時間の長さを研究したり、父と一緒に大樹の森へ狩りに出かけ、時間という概念でカウントする共通の体感速度で弓矢のタイミングの連携の研究をしたり、徒歩や馬や輓獣車で進める1時間での距離を調べたり、回復水等の繊細な加工を安定して行える様にカウントを記録したりしていた。後は、村の復興復旧を時間が許す限り手伝っていた。彼女マルアスピー様は、俺と一緒に復旧復興を手伝い、俺の研究や実験に文句1つ言わず付き合ってくれた。彼女曰く『夫婦は一緒に居るのが当然の事なのよ。それに、妻が夫を支えないで誰が夫を支えるのよ』だそうだ。結果的に彼女のショッピングに振り回される時間も多かった。
***研究と実験の結果の説明***
≪魔法の【待機時間】の設定≫
自然魔素・各属性の【集積量】
待機時間(カウン)×魔法レベル×100
※1カウンだけ魔法を発動させる場合※
≪例1≫【MP】310958の俺では無理
・30ラフン=1800カウン
・火属性下位魔法【アグニ】3
魔力の集積量
【1800】×【3】×【100】
=【540000】=【MP】540000
≪例2≫【MP】310958の俺でも可能
・3109カウン=51ラフン49カウン
・聖属性下位魔法【ベネディクシヨン】1
魔力の集積量
【3109】×【1】×【100】
=【310900】=【MP】310900
≪魔法の【持続時間】の設定≫
自然魔素・各属性の【集積量】
持続時間(カウン)×魔法レベル×300
※無詠唱だが発動と効果が同時の場合※
魔術は体内の魔力を消費しながら【スキル】を
扱う為、魔力を放出し続ける事が出来る限り、
効果を維持持続可能。
だが、魔法は自然の流れ自然魔素から各属性を
集積し扱う為、集積した魔力の分しか、
効果を維持持続出来ない。
≪例1≫【MP】310958の俺では無理
・30ラフン=1800カウン
・風属性最上位魔法【アニマ】30
魔力の集積量
【1800】×【30】×【300】
=16200000=【MP】16200000
≪例2≫【MP】310958の俺でも可能
・300カウン=5ラフン
・水属性下位魔法【アクア】1
魔力の集積量
【300】×【1】×【300】
=90000=【MP】90000
≪【待機時間】と【持続時間】を合わせて≫
【MP】310958の俺の場合
≪例1≫発動可能なケース
【精霊魔法】レベル1なら
・【待機時間】1800カウン
・【持続時間】180カウン
魔力の集積量
【1800】×【1】×【100】+
【300】×【1】×【300】
=【180000】+【90000】
=【270000】=【MP】270000
30ラフン後に、5ラフン間の【魔法】を
予約発動出来るという事だ。
≪1時間で移動可能な距離≫
徒歩(散策)約2Km
徒歩(通常)約4Km
徒歩(急用)約6Km
馬(常歩)約7Km
馬(駈歩)約29Km
輓獣車(常歩)約14Km
輓獣車(駈歩)約23Km
※聖馬獣さんが引く※
輓獣車(常歩)約14Km
輓獣車(駈歩)最大約200Km
輓獣車(飛行)約600Km
※エリウスさんが引く=飛行可能***
≪加工≫
【成功】:1倍(通常) 【大成功】:3倍
【超成功】:4倍 【神成功】:5倍
俺自身の【加工・全】のレベルも影響する
様だが、カウントを記録し俺自身が認識した
状態で【タブレット】で自動加工すると、
加工後の完成品の個数が多くなる【大成功】
【超成功】【神成功】の確立が高くなる事が
分かった。
***研究と実験の結果の説明おわり***
4075年5月29日17:00:00頃
***連絡鳩が王都から来た後***
――― シャレット家の居間
王都モルングレーの王宮へ俺を招集する勅令が届いた。4075年6月10日の日の陽が重なって直ぐの時間に国王陛下との謁見だそうだ。
俺は、当日の13:00頃に、神授スキル【フリーパス】か、彼女マルアスピー様の魔法【限定転位】で、王都から少し離れた場所に移動し、三重の防壁で守られた外壁の東門で王都の入出通行管理手続きを済ませようと考えたのだが、彼女マルアスピー様は、
「ゼルフォーラ大陸のゼルフォーラ王国の古の都モルングレーに、王国が新婚の私達2人を招待したのよ」
と、言い出し・・・
「見聞を広げるチャンスだとは思わない?」
「国王陛下からの招集命令で謁見するだけだから・・・」
「ロイク。人間種達の集落は土地の風土と、人口の構成によって多種多様だと聞いた事があります」
「はぁ~・・・ゼルフォーラ王国は人間種の中でも人間族や小人族が多い国だから、そんなに大きな違いは無いと思いますよ」
「まずは、海を見に行きましょう。私、大樹の森の聖域やコルトの泉や精霊樹の周辺。それに精霊界の精霊王様の宮殿位で、海を見た事が無いのよ。見聞の為にも行くべきよね」
「あらっ!アスピーちゃん。新婚旅行が海の見える街なんて良いわねぇ~」
「そうですよね。メアリーママさん」
「それならぁー。王都の南のサーフィスとかありだろうぉー!」
サーフィスは、ゼルフォーラ王国の海の玄関口であり経済の中心地だ。港湾貿易都市として栄えるサーフィスを治めるのは、王国の有力者で、中央議会の議長であり、内務大臣の【アラン・トゥージュー公爵】様だ。トゥージュー公爵家は王家の外戚家でもあり、権威は国王をも凌ぐと言われる程だ。
「懐かしいわぁ~お母さん達も新婚旅行はサーフィスだったのよ」
「メアリーママさんと義理の御父様のおすすめよ。ロイク!」
「は、はぁ~」
「新婚旅行がサーフィスなら必要な物は現地調達で大丈夫ね。そうだわ・・・新婚旅行なら序でに調度いいわね。お母さんの従姉妹がサーフィスの【カプリス・ビーチ】の近くに住んでるから挨拶して来てくれるかしら。お母さんが子供の頃に大切にしていた物が入った箱があるから受け取って来て貰えると嬉しいわ」
「メアリーママさんは、サーフィスに住んでいたの?」
「それがねぇ~。王都生まれの王都育ちなんだけど、【火焔の夏】の季節になると2カ月程バカンスでサーフィスに滞在してたのよ」
「へぇ~、初耳だよ。母さんと海のイメージが結びつかないや」
「おっ!おめぇーよぉ。人を見かけで判断しちゃーなんねぇー。母さんは【カプリスの巨・・・人魚姫】って、すげぇー評判だったんだぜぇっ!」
「へぇ~」
「ロイク。決まりましたね」
「何がですか?」
「発表します。デデデデデデデデデデデデ。ジャン!私達の新婚旅行は、人間種らしく風情溢れる情緒豊かな旅。風土の文化と心に触れ愛を育む旅になります」
「良いわねぇ~」
「母さん、俺達も2度目の新婚旅行すぅっかぁー↑?ワッハッハッハッハ」
「人間種らしくをテーマにしますので、移動に【転位】は使いません。先日から歩いたり乗り物を検証していましたが、徒歩と輓獣車で移動します。念の為、聖馬獣に同行して貰いますが、あくまでも馬役です」
「何か話が面倒臭くなって来てるけど・・・途中で飽きたりしませんよね?」
「それも考えました。同じ事を繰り返したり、同じ場所に目的も無く居続けたりする事は、私は苦手です。ですので、この村を出発し最初に向かうのは【コルトの町】です。コルトの町はこの大陸で最も古い人間種達の集落です。次は【ロイ】です。ロイは鉱山都市として有名ですが、希少石しかも極めて嗜好価値の高い宝石と呼ばれる煌石類が特産だそうです。メアリーママさんと私の為に幾つか手に入れたいと考えています。次は【モルングレー】です。モルングレーは謁見を済ませたら直ぐに【サーフィス】まで移動します。メアリーママさんの思い出の品を受け取り親戚に結婚の報告をし、海と砂浜で愛のバカンスです」
「とっても忙しくなりそうな予感・・・」
「そうですわね。とても有意義な旅になりそうですね」
「おめぇーら準備の時間あんのかぁっ?明日は30日だぞぉ!・・・輓獣は2時間から3時間おきに休憩させる必要があんだぜぇ」
「そうですわねぇ~。聖馬獣は聖獣なので休憩の必要無いと思いますが、キャビンに座り続けるのも何ですから・・・休憩は3時間おきに取りましょう・・・新婚旅行の計画を時間単位で練り直してきます。ロイク。私は部屋にいます。何かありましたら呼んでください」
彼女マルアスピー様は、俺の部屋に移動した。俺の部屋に・・・!(気持ち浮いているので足音は鳴らない体でお願いします)
「すげぇー楽しそうだなぁっ!」
「ロイク。泣かせちゃダメよ」
「は、はぁ~」
「それで、お母さんの従姉妹だけど、普通に玄関まで行っても会えないと思うから、メアリー・シャレットの息子のロイクだと名乗ってから、このブレスレットを見せると良いわ」
「これって、母さんがいつも付けてるブレスレットだな」
「これは、お父さんと結婚した時に、お母さんのお母さん、貴方の祖母様からいただいた物なのよ」
俺は、母から、山羊、海豚、獅子、栗鼠、梟、竜が彫られた白金のブレスレットを受け取った。
「ん?・・・母さん、このブレスレットって・・・」
「精霊様の加護を授かるロイクには分かる様ね。そのブレスレットは、精霊様が魔術で2つの付加を施してくれた物らしいのよ。1つは、【SCAPEGOAT】彫られた動物の数だけ身代わりになってくれるって言われているわ。でも、女性が利き手に装備した時だけ加護を受けるそうよ。もう1つは、【BLESSING】装備した人の【HP】と【MP】の回復を補助。でも、男性が利き手に装備した時だけ加護を受けるらしくて、以前お父さんが装備した時は、良く分からなかったそうよ」
「そうなんだ・・・でも、母さんこれ腕に装備して無くて大丈夫?」
「あれ?お母さんいつも左の腕にしていたでしょう?」
「そういえば・・・」
「だから、有っても無くても大丈夫よ」
「それじゃ預かっておくよ。で、サーフィスの親戚の名前は何て言うの?名前が分からないと探しようもないからね」
「あらぁ?ロイクは会った事があるわよ・・・【リラリス・ルーリン】って覚えてない?」
「・・・うーん・・・記憶に無いや」
「会えば思い出すかもしれないわね。それと、村を出る前に手紙を渡すから従姉妹に、渡してくれるかしら」
「了解。それで、親父!」
「おぅ、何だぁっ!」
「王様に謁見するって事は、貴族達にも会う事になるだろう。お土産とか渡した方が良いのかな?」
「何かやんならぁー【タブレット】に入ってる闇炎牙狼の毛皮とかやったらどうだぁ-。群れてる上に普通につえー魔獣だからぁっ意外と希少なんだぜぇ!」
「そっか。それなら沢山持ってるし改めて準備する必要無いか・・・」
「毛皮のままよりも、毛皮のコートに加工して渡したらどうかしら」
「なるほど。スキル【加工】の練習にもなるし、【タブレット】の練習にもなるか」
「ロイクゥ!旅のお供に忘れちゃー何ねぇーもんがあんぞぉっ!新婚旅行も旅っちゃー旅だからなぁ!」
「だから、王様の招集命令で謁見しに行くのが目的・・・」
「まっ、何でもいいやぁー。水、野菜、肉、果物、穀物、医療用品、着替え、武具、金、餌、集落間を移動する訳だからよぉ!特産品もコーチやキャビンに余裕があんなら積むのが基本だなぁ!」
「・・・」
「あぁん、どうしたんだよぉ!」
「詳しいから意外でさぁ~」
「お前なぁー、俺はよぉっ!彷徨いの冒険野郎って自称してた事があんだよぉ」
「・・・そっか。良かったな・・・」
「信じてねぇーだろうっ!」
「いや、信じてる信じてる・・・凄い凄い・・・」
「まっ!自称なんだけどなぁっ!」
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旅立ちに必要な物は、覚悟だけの様です・・・