8-155 来る日と奇跡の日と執行の日の前夜 -フォルティーナ- ①
chefアランギー様ではなくsous-chefクリザンテム様と妖精のおしごとが織りなした雅趣で上品を極めつつある夕食を楽しんだ後は、我が家の恒例行事食後のお茶の時間だ。
今日の夕食はいつもより人が多かった。
この流れで行くとお茶の時間にはもっと多くなっていそうだなとは思っていた。
・・・思ってはいたんだが、これ、多過ぎでしょう。
初見ではないが片手で数えるくらいにしか口にしたことのないプーなんたら茶という紅茶の一種を飲みながら騒がしい本日の夕食の間を眺めていると明日はきっとタブン女神様のフォルティーナと視線が重なった。
≪「何だね」
・・・目が合っただけで【共鳴】ですかっ!?
≪「今日は随分と人が多いなと・・・皆を見てたらフォルティーナに絡まれた・・・が正解でしょうか」
フォルティーナはタブンだけどプーなんたら茶を優雅に口に運ぶと少しだけ口に含み目を閉じた。
・・・あれって偽者ってことはないよな。
あのフォルティーナが香りや味を静かに楽しんでいる姿が余りにも珍し過ぎて、言葉を失いつい見入ってしまう。
えっ!? まだ続く・・・嘘だろっ。
フォルティーナは目を閉じたまま徐にケーキフォークを手に取ると正面に置かれたドライフルーツたっぷりのパウンドケーキを小さく切り分け・・・そして静かにケーキフォークを置いた。
食べないのかよっ!! ・・・ってその残念な顔だけでも止めて貰えませんかね。
見透かしたかのようにニヤニヤと残念極まりないドヤ顔を向け。
≪「食べると思ったかね。アタシくらいの女神ともなると人前でそうそう飲食する姿を晒したりはしないと相場が決まりかけているね」
ふーん、ガッツリ恥を晒しまくってるせいでタブン感覚が麻痺しちゃってるんだろうなフォルティーナは・・・可哀そうに。
≪「はいはい凄いですね。昼も朝も昨日も一昨日もその前も貴重なタイミングに遭遇できちゃってたみたいで感謝感激でもう胸がいっぱいです」
≪「何だね情けない遠足前のアレかね。ロイク、君はもう子供ではないね。少しくらいは堂々として貰わないと困る人が少しくらいは居ると思うね。因みにアタシは、ロイクが何をしようがこれっぽっちも心が動くことはないから安心して好きなように生きると良いね」
この感じにも慣れてしまったと言うか慣らされてしまったと言うか。相変わらず何を言いたいのか良く分からん。取り合えず。
≪「お喋りするのかニヤニヤするのかどっちかにして貰えませんか。ついうっかり見てしまった時に結構きついんですよ、その顔」
≪「・・・一人前なのが失礼な物言いだけとは実に嘆かわしいね。まぁーそれはそうと羽虫の羽音を一々気にしていては話が進まないとロザリークロードが言っていたように・・・アタシもそう思うね。つまりだね」
≪「で、【共鳴】して来るくらいだし、話しがあるんですよね?」
・・・
・・
・
≪「明日の来る日が来ているうちじゃないと動かせなくなるから今のうちにある程度場所を決めておくね。って何が?」
≪「ハァ~・・・聞いていたのかね」
寧ろ聞いてたから聞いてるんですけど!!
貴重な時間をありがとうございました。




