8-148 来る日もそうだけど、それよりも御光臨まであと二日 ④
想像していた以上の妙な盛り上がりを見せたビンゴ大会も終わり静寂を取り戻した旧中規模多目的多機能室から隣の管理責任者室へと移動し寛いでいる時だった。
「主殿、私がいただきましたコレなのですがどう考えても私には全く以て必要のない物と言いますか、それこそ女神様方や奥方様方にこそ相応しいかと・・・」
エリウスはとってもとっても貴重で高価な神界産の透神木で創造された組木の秘密箱を右手に少し照れながら目を合わせて来た。
聖馬から神様になっちゃった系の貴方が何故に人間種の女性用の下着の一つや二つでそんなに顔を真っ赤に・・・。
エリウスから中身が透けて見えている透神木の組木の秘密箱へと視線を移す。
中身は兎も角創神具の秘密箱・・・気付いてないみたいだから面白くなりそうだし口にはしないけど、その箱が本日一番の目玉なんですよねぇー。まさかの展開、まさかビンゴカードを配って回った本人が一番最初にビンゴしちゃうとか一番やっちゃいけないパターンからの、まさかまさかの最も最悪な一番良い商品を迷わずゲットだぜっ!! ですからねぇー。
中身をビンゴ大会が終わるまで確認できない仕様にしておいたのは英断だったな。うん。
「それ開けるのに凄い苦労したんですよ」
「・・・ほう、主殿はこの秘密箱の中に女性物の下着が入っていることを知っていた訳ですか」
「そりゃそうですよ。何せ一応俺がいただいた物なんですから失礼がないように確認くらいはしますよ」
「知っていて、男神である私に女神様方が貰って喜びそうな下着の上下を手に取るように仕向けた訳ですか」
こいつ「私は主殿の盾です」とか「筆頭眷属として何処まで御供させていただきます」とか「聖馬から昇華し神となった身だからこそなのです。揺るがぬ忠誠を誠実であることこそが私の心そのものなのです」とか結構頻繁に口にする割には、マルアスピーに「行くわよ、エリウス」って声を掛けられただけで「はっ、畏まりました」ってホイホイ付いて行っちゃうし。ホント意味が分からない面倒臭い系だよ、君は。
「なんだろうな。そんなに女神様方に履いて貰いたいなら、いっそのことエリウスの良い人にプレゼントしちゃえば良いじゃないですか。女神様方が貰って喜ぶくらいなんですから聖邪獣様方だって喜びますよね。それ」
「エヴァにですかっ!?」
ほう、やっぱりと言うかエヴァの方でしたか。なるほどなるほどうんうん。
「悩んだんですよね彼女も九級にって、でもパフさんが神様が愛玩とか有り得ないですって珍しく物凄く力強く反対してきたんで保留にしたんですよ」
「・・・御会いした頃とは本当に良い意味で変わったと思います。ただ、パフ殿もやはりと言いますかそうなのですよね。漏れなく主殿寄りの存在なのですよね」
「俺寄り?」
「はい。エヴァは天翔馬聖邪獣です。神々云々の前にそうやすやすとペットには・・・」
そういう意味か、なるほど、確かに普通は聖邪獣様方を愛玩にとか、しないというか考えないわな。
「眷属とか隷属の契約は、やっぱり未だに」
「はい。あれから何度も試してはいるそうなのですが、全て稼働初期段階で弾かれてしまい自然魔素ごと魔力陣まで飛散してしまう状況のようです」
来る日が終わって時間に余裕ができたら、考えてみるか面白そうだし。
「まっ、その件はおいおいって感じですかね。さてと、それでその下着なんですがプレゼントするんですか、しないんですか? それともエリウス」
「プレゼントしたところで・・・・・・なんですかその目は」
「自分で履きます? 俺としては人の趣味に」
トントトン♪ トトン♪
「ロイク様、アル様ロザリークロード様フラン様悪狼神あっセーラ様遊狐様がお見えでございます」
理外の民と天使族と聖邪獣様方を中心に組織されたスタシオンエスティバルクリュ警邏隊の中空の離宮本殿の管理責任者室のドアの前に配置された二人の内の何方かがドアをリズミカルにノックし、二人の内の何方かがアルさん達の来訪を告げた。
ドアからエリウス、エリウスから下着、少しだけ間を置いてからエリウスに視線を戻し聞こえるように態とらしい舌打ちを披露する。
チェッ、ここからが面白いところだったのになぁ~。
「エリウス残念ですが面白可笑しい時間はここまでです」
「まるで聞かせんが為に大きな音を立てて実に態とらしい舌打ちですね。大変に御行儀が御悪いことで・・・。ハァ~、今に始まったことではありませんでしたね。・・・・・・御通しする前に先に一言だけ申し上げさせていただきます。御忘れではないようでしたので安堵しておりますエヴァはそうなのです馬型なのです。それと私は人型ではありますが女性物の下着を今までもこれからも着用することはございませんのであしからずっ!!!!」
だから昇華って思ったんだけどなぁ―――。
「ふぅーん、この先何がどういう風に変わるか何て世の中分からないことだらけなんで、今はそういうことにしておきましょう、というわけで、通してください」
「「はっ」」
貴重な時間をありがとうございました。




