2-37 フィーラを視察しよう③~臨時自警隊と、ルール~
宜しくお願いします。
俺とメリアは、フィーラ領内の北の森の居住地区。闇樹人族達の森の長老の家へ移動した。
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「バジリアさん」
「これは、ロイク殿にメリア殿。いきなりどうされました」
「バジリア長老。目の目の前に突然現れましたが、こちらの2人はいったい」
バジリアさんの側近?綺麗な人だなぁ~・・・
≪バサッ
入口に掛けられた布を力強く払い、男の闇樹人族が1人、長老の家に入って来た。
「バジリア様。斥候からの報告です・・・おい誰だ。人間族と樹人族の女を入れたのはぁっ!」
「私の客人だ」
「バジリア様。ここは我等闇樹人族の聖域です。他族の者を入れるのは感心しません」
「ちょど良いか。お前達に紹介しておく。こちらは、昨日建国した森林都市国家フィーラ王国の国王ロイク・ルーリン・シャレット陛下とメリア・R・ルーリン・シャレット王妃様です。私も戸籍上はフィーラ王国の王妃の1人という事になるが、今迄通り闇樹人族の長老として一族を率いるつもりです」
「こちらの方が、私達風の樹人族を救い出してくださった大樹の英雄様なのですか!」
「この男が、・・・創造神様が啓示された人間族なのですか?」
「この男とは何だ。ロイク殿に対して失礼であろう」
「私は認めません。例え創造神様からの啓示であっても絶対に認めません。一族の未来は我等闇樹人族、自らの手で切り開くべきです」
「ミュース隊長。バジリア長老に対し何という口のきき方です」
「パロス。私の事はどうでも良い。創造神様とロイク殿を軽視する態度を改めさせよ」
「私も左様に考えます。警備の者をここへ!」
「ふん。何をとち狂った事を・・・相談役も長老も帝国に隔離管理され身体だけでは無く思考まで鈍ったかっ!お前達っ!」
≪はっ!
長老の家に、武装した男の闇樹人族が10人。雪崩れ込んで来た。
「お前達、ここは公の地です。断りも無く武器を携帯し踏み入るとは何のつもりです」
「パロス・キクラデア相談役。バジリア・マンジュリカ長老。御二人には引退していただきます。孕魔せ猿に強襲され攫われた事にしましょうかね。こんなに早く好機に恵まれるとは思いもしませんでしたよ。ブワッハッハッハッハ」
これって、クーデター?
「警備の者はどうしたのですかぁっ!臨時自警隊のミュース以下数名の裏切りです」
パロスは、外に向かって大声で人を呼ぶ。
「皆、北の森の警戒に出払ったよ。気付かなかったのか!」
「そんまさるの襲撃は貴方達の仕業なのですか?」
「孕魔せ猿を使う程悪趣味では無い」
誘拐された事にするんじゃなかったのか?落としどころとしては利用するし、好機としての利用もするけど、違う訳か・・・
「バジリアさん。これって、クーデターですよね?」
「ロイク殿。お恥ずかしい所を申し訳ございません。これは、集落内の内輪揉めです」
「それなら、それで構いません。えっと、ミュースさんでしたっけ?」
「何だ。命乞いか!」
「貴方の言うそんまさる。孕魔せ猿の襲撃は今日はもうありませんよ」
「なんだとぉ~。何を根拠に・・・そんなに助かりたいか!」
「ここへは、北の大樹の森から南下していたそんまさるの群れを、新市街地だった場所に移動させ、領軍の訓練相手にしたから、警戒態勢は解除して良いと言いに来たので・・・」
「嘘を付くな。人間族如きが、孕魔せ猿の大群を・・・あり得ん」
「隊長。報告です」
「何だ」
「孕魔せ猿の大群が南下していると報告があり警戒態勢を取っていたところ、突如大群がその姿を消したと報告が来ております」
「な、なんだと・・・まさか・・・」
ミュースは俺を睨み付ける。
「大樹の森に復帰したワワイの森に異変が起きているのではないかと現在調査中です。高位樹人族の集落にも連絡をしましたので、長老の皆様がお見えになる可能性があります」
「なっ・・・誰だ要らぬ報告をしたのは!」
「分かりません」
「ミュース。お前の計画は終わった様だが、ここからどの様に続けるつもりですか?」
「くっ・・・長老・・・かくなる上は、長老と相談役、人間族と樹人族の女を拘束しろ」
≪ハッ!
男達が武器を構える。
「バジリアさん。捕まえた方が良いですよね?」
「はい。出来れば殺さずに捕まえ憲兵に引き渡したいと思います」
「分かりました。今日、俺はここに来てい無い事にしましょう。その方が良さそうですね」
「ロイク殿感謝します」
「ロイク様ありがとうございます。ありがとうございます。この御恩は・・・」
パロスさんは、俺の手を取りお礼を何度も言い続けた。
「バジリアさん。こちらの方、ロイク様に近過ぎませんか?」
「感謝の心を伝えているだけだろう。別に良いではないか」
「そ、そうなのですか・・・」
「おい、お前達。状況が分かってるのか、こっちは武装した11人の闇樹人族の兵士だぞ。お前達は非武装の女3人と人間族と女文官2人。命乞いでもしたらどうだ。ブワッハッハッハッハ」
「人間相手なので、加減はしますが、暫くは身体の痺れが取れないと思います。ですが、自業自得なので我慢してください」
闇属性中級魔法【パァラァラァシィス】☆1☆1 ≫
「闇属性中級魔術【パァラァラァシィス】≫・・・バジリアさん。パロスさん。終わりましたよ」
「ロイク様。今のは闇属性の魔術なのですよね?」
「そうです。で、そろそろ手を離して貰えませんか?」
「あぁ~・・・これは失礼致しました。興奮してつい・・・」
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俺は、ミュース隊長以下10名を拘束する為の建物を、創造神様からいただいた家シリーズから取り出し設置した。建物の名前は『小〇拘置所』。
11人を拘置所へ移動した後、俺達は長老の家で一休みしていた。
「ロイク様は。バジリアさんやパロスさんの様にスタイルの良い女性がお好みですか?」
「メリア殿、急にどうされたのですか?」
メリアは、バジリア、パロスを見ては自身を確認する。何かを見比べているようだ。
「ロイク様・・・わ、私は・・・いえ。何でもありません」
「メリア様はまだ24歳だと聞きました。御安心ください」
「パロスさん?」
「樹人族の成熟期はまだまだこれからです」
「それでは遅いんです!」
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「バジリアさん。そんまさるって昔からこんな感じだったんですか?」
「私の知ってる限りでは、ずっとこんな感じです」
「なるほど」
≪バジリア長老。高位樹人族の大長老ハイペリカム様他長老老院の方々がお見えになられました。
「入りますよ。・・・あらっ!ロイク様ぁ~」
「マリレナさん。こんにちは」
≪大長老様ぁ~
闇樹人族達は、膝を付きマリレナに対し礼の姿勢をとる。俺とバジリアとメリアは礼が終わるのを見守った。闇樹人族達の礼が終わると、マリレナはバジリアに語り掛けた。
「森に異変があるかもしれないと長老達に報告が届きました。気になりましたので、私も参りました」
「それが・・・異変は、ロイク殿がそんまさるの大群を麻痺させ捕獲し、召喚魔術で新市街地跡地へ移動させた事で、大群の消息を私達が見失っただけの様でして・・・。騒ぎ立て、高位樹人族の皆様へご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした」
「相談役の私がバジリア長老に、高位樹人族の長老様老院の皆様へ報告した方が良いと進言したのです。申し訳ございませんでした」
自警隊の連中が勝手に動いた事の尻ぬぐいか。まさか、クーデターがあったとは言えないし、そうなるよな・・・
「そうでしたか。ロイク様が既に解決してくださったのですね。何事も起こらず幸いでした。ロイク様。風の樹人族を代表する者として感謝致します」
「感謝されても困るかな。一応、フィーラ王国の王様って事になってるし、国民を守るのは王様の仕事ですから・・・」
「マリレア様。高位樹人族はただ存在している訳ではありません。事ある毎に呼び出されていては権威が揺らぎます。闇樹人族達には正式に警告をお出しください」
「そうですぞ。マリレナ様。それに、そこの樹人族。お前は、私達風の一族の者であろう。高位樹人族マリレナ大長老様に対し何故礼をせぬ」
「闇樹人族の長老お前もだバジリア。何故、マリレナ様に敬意の礼をせぬのか!」
「アンガス長老。・・・この娘は、ワワイバーンの者ではないのか?」
「トロンヘイム長老殿よ。例え、王家の者であっても、我等高位の存在に対し敬意は必要ですぞ」
樹人族達にも色々と事情があるのは分かるけど、付き合っていられないや。
「マリレナさん。高位樹人族の皆さんをルーリン・シャレット領では、家臣士爵位と同位の身分にしましたが、フィーラ王国では種族による身分は存在しません。俺の前で、長老達が樹人族達や闇樹人族達。他の種族に対して礼を強要する時は先日話し合った通り厳罰に処してください」
「心得ております」
「先日、話し合った・・・マリレナ様。どういう事でしょうか?」
「敬意を率先して示す者を拒む必要はありません。ですが、敬意を示せと強制する事は高位樹人族としてどうなのでしょうね。セイランド元老。敬意は強制して得る物ですか?」
「いえ、決してその様な事はございません」
「それにですね。バジリアとメリアと私は、闇樹人族、樹人族、高位樹人族。風の樹人族の中での系譜こそ異なりますが、妻としロイク様を支える身。立場を同じくする身です。バジリアやメリアが私に対し敬意を感じていたとしても礼の姿勢を取られては私が困ります。ロイク様のお考えは、夫婦は対等。妻に優劣順位は無い。ですから、私達は対等なのです」
「マリレナ様は、標準樹人族と高位樹人族が対等だと・・・」
「マリレナ様は、そこの新王国の国王・・・人間族に本気で嫁がれるおつもりなのですか?」
「何と・・・人間族に本気で嫁がれるおつもりなのですか?」
「何を言っているのです。既に私はロイク様に身も心も捧げた身です。そう何度も同じ殿方に嫁げると思いますか?それにですよ。樹人族と高位樹人族が対等だとは一言も言っていません。バジリアとメリアと私が対等だと言ったのです」
「ロイク様。マリレナ様と何かあったのですか?」
「何かって何がですか?」
「マリレナ様が、身も心も捧げたと・・・」
「メリア。私達は、ロイク様の妻なのですよ。身も心も捧げ支えるのが道理です。そうでしょう?」
「マリレナ様・・・ロイク様・・・」
メリアは、顔を真っ赤にしながら、落ち着き無くマリレナと俺の表情を確認する。
「メリア殿。急にどうされたのです。落ち着いてください」
「ば、バジリアさんは、知っていたのですか?」
「何をでしょうか?」
「ロイク様とマリレナ様が・・・大人の大人の・・・」
「メリア殿以外は、皆大人です。まぁ~樹人族の集落から離れて暮らす樹人族は他の種族と同じ年齢の感覚になり、200歳になる前に結婚し出産する者もいると聞いた事があります」
「そうなのですか?」
「聞いた事があるだけで、実際に見た事がある訳ではありません」
「それでは、メリアも近い将来、母親になるかもしれませんね」
「わ、私がですか・・・」
こんな流れだもんなぁ~・・・勘違いして当然か・・・マリレナさんもバジリアさんも悪気は無いんだろうけど。発言が、誤解しか生んでないよ・・・
「メリアさん。誤解しないでください。先日。第1回の家族会議をしましたよね?」
「はい」
「マリレナさんもバジリアさんも、他の皆さんもルールを守ってます」
「そ、そうですか・・・」
ルールとは夫婦のルールだ。あくまでも家のルール・・・
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ありがとうございました。