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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーアシュランス王国建国編ー
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2-36 フィーラを視察しよう②~湾岸防衛隊と、孫魔猿~

宜しくお願いします。

 故郷アンカー男爵領マルアスピー村の生家にある信仰の迷宮の出入通行管理事務所。少し前まで、『大樹の英雄生誕の家屋』詰所。現在は、『ニアムール』詰所と呼ばれている。俺は、あの時と同じ事を自らが派兵した貴族領軍私兵隊にやってしまい。配慮の無さを反省した。


 今後は、立場を考えて行動する事にしよう。お忍びは出来るだけ控える事にしよう。そう心に誓った。


 ルーリン・シャレット天爵副王領から派遣した部隊は、湾岸防衛隊400名。今し方、迷惑を掛けてしまったのは、フェオドール・ルマーニ士爵。ゼルフォーラ王国の勅令士爵位を持つ隊長が率いる51名の中隊だった。


 士爵は、身分を隠し領軍に所属していた。


 俺達の身分を確認する為、士爵は自身の『階級カード・判定』を俺達の身分カードと重ねる必要に迫られた。


 この階級カード・判定は、ルーリン・シャレット領オリジナルの武具に近いカードで、領軍の小隊の隊長クラス以上の者。階級では、軍曹以上の者に配った領軍での軍籍を証明するカードだ。


 軍曹以下の者には、通常の階級カードを配っている。


 大きな違いは、無属性魔術【ジャッジメント】が付与されているかいないかだ。簡易の身分カード判定魔術だが、ゼルフォーラ王国で採用されている通行判定魔導具よりは遥かに便利な一品だ。


 フィーラ王国の身分カードは昨日建国したばかりで存在し無い。俺の身分カードは、ゼルフォーラ王国の貴族カードを兼ねる物のみ。メリアの身分カードは、俺の身分に準じる状態平たく言えば婚約中(許嫁)のはずなのだが、夫人扱い。バルサの身分カードも同様の状況だ。賢者ガリバーの弟さんは、高位樹人族で、ゼルフォーラに居を構えてい無い。身分カードを所持していなくても不振に思われない。


 俺のカードは王族と同じ反応を示す。メリアもバルサもである。士爵は部下の副隊長にジャッジメントの付与がおかしいか隊長の魔術の修練が足りないのではないかと詰め寄られ、自身の身分カードと副隊長の身分カードをジャッジメントする事になった。


 士爵の身分カードは、貴族階級を示し。部下達が驚く。副隊長のカードは、サーフィス出身の商家の四男だと正しく情報を開示する。


 士爵と俺達は、身分が露見する事となった。


 ゼルフォーラ王国の爵位を持った者が、領軍の下士官を務める事に何ら問題は無い。だが、領軍の中では問題だと告げられた。それは、湾岸防衛隊400名を統率する隊長が爵位無しの中尉であるという事だ。


 ゼルフォーラ王国では、軍籍や王民籍よりも貴族爵位が優先される。至極当然の意見だった。


 俺は緊急措置として、湾岸防衛隊を宿舎に集め、中尉以下兵士達が見守る中、フェオドール・ルマーニ士爵に、昇格と親衛隊への異動を命じた。階級は勅令貴族爵位の最下級少佐。そして、迷惑を掛けた中隊の副隊長を軍曹に昇格させ空席となった中隊の隊長職に任命した。


 士爵を親衛隊に異動させたが、親衛隊に勅令爵位を持つ者が他に存在しない為、当面は俺達に同行し警護する任務を命じた。親衛隊の中の親衛隊だ。



 フェオドール・ルマーニを視察中の警護担当に迎えた俺達は、港湾地区の視察を再開した。


「士爵は、甲冑の方が似合っていましたね」


「ロイク様。士爵は爵位であって名前ではありません。どうか、フェオドールと呼び捨てでお願い致します」


「年上の方を呼び捨てするのはどうも慣れていなくて・・・ハハハ」


「ゼルフォーラ王国の副王陛下であり、ルーリン・シャレット天爵副王領の領主様であり、神々の楽園の守護聖人であり管理者様。そして、連合国家フィリーの代表であり、ここ森林都市国家フィーラ王国の国王陛下です」


 肩書きだけが増えていく・・・なんだかなぁ~・・・


「年齢ではありません。ロイク様」


「分かりました。それでは、フェオドールさんと呼びます」


「さんも不要でありますが・・・」


「状況に応じて何となく呼びます。ハハハ」


「人間族の英雄殿は、私達樹人族と相性が良い様ですよ」


「そうなんですか?」


 賢者ガリバーの弟さんの言う相性って、まさかな・・・


「アバウトなのは長寿の種族。樹人族の本質」


 俺も結構適当な方だ。だが、俺よりも適合者が2人存在する。1人は俺の父バイル。もう1人は人では無いがフォルティーナ。俺なんかじゃ足元にも及ばない適当さで生きている。究極の自由人だ。


「私は、このまま皆さんを私服姿で警護すれば宜しいのでしょうか?」


「俺達に警護は不要なので、視察の一員として、気付いた点を報告して貰えるなら、そっちの方が助かります」


「畏まりました」



 5本ある埠頭の海側の先端で沖を確認している時だった。


≪ビィ――― ビィ――― ビィ―――


「ロイク様。警報の様ですが、これは?」


「ヨーダの孫娘よ。これは標準樹人族(ノーマル)達が使う。魔獣警戒サイレンの1つ(・・)ですよ」


「おかしいな。昨日建国する時に、周囲の魔獣を念の為って仕留めておいたんだけどなぁ~・・・【タブレット】『表示』フィーラ王国の中心から半径20Km・魔獣を赤色 ≫」


 北からか・・・昨日殲滅した範囲より外にこんなに大量に居たのか。


 俺は、赤い点を1つ触り詳細情報を確認する。


 そんまさる(孫魔猿)・・・あの時の魔獣と同じか。


「メリアさん。バルサさん。そんまさる(孫魔猿)が大樹の森に復帰した北の森から大量に押し寄せて来たようです」


「今のサイレンは婦女子に警戒を促す物なのです」


「サイレンの1つって言ってましたね。今ので、そんまさる(孫魔猿)だと皆さん分かるんですか?」


「ワワイの森に暮らす樹人族、妖精族、小人族なら誰もが今ので理解します。そんまさる(孫魔猿)は別名、孕魔せ猿(はらませさる)。樹人族や妖精族や小人族。時には獣人族や人間族をも襲う魔獣です」


 へぇ~賢者ガリバーの弟さんに近い生態を持った(サル)・・・魔獣なんだぁ~。


「魔獣が人間を強姦するんですか?」


「獣人族の娘よ。強姦ではありません。獣や魔獣にとってはただの繁殖行動。力で無理矢理が基本。愛の有無は関係無いのです」


「ロイク様。以前、祖父から聞いた事があります。ワワイの森のそんまさる(孫魔猿)。トミーサスの森のらまおうし(裸魔雄牛)。魔獣オーク種の最上位だと言われているそうです。この2匹は、人間種の女性に子を産ませる為、人間種を襲うらしいのです」


 種の壁を無視する存在がこの世界に存在してるなんて。世界はまだまだ知らない事ばかりだ。


「そんな魔獣がいるんですね。知りませんでした」


「はい。どちらも(おす)がとても少ない種なんだそうです」


「かなり危険な魔獣だったんですね。フィーラを霧で覆った時に、一歩間違っていたら大変な事になっていました。魔獣に手加減は不要・・・肝に銘じておきます」


「人間族の英雄殿よ。魔獣に限らず、金銭欲、権力欲に溺れる者には注意が必要ですぞ」


「そ、そうですね。肝に銘じておきます」


 性欲や物欲や他沢山気を付けた方が良い事ってありそうだな・・・


「ロイク様。北の防衛は、フィーラ王国の樹人族による自主的な防衛圏から独立しています。領軍を出動させた方が宜しいのではないでしょうか?」


「フェオドールさんそれには及びません。俺達が直接行って片付けます。それに、森の中での戦闘に慣れていない海やビーチ専門の兵士達だと邪魔なだけです」


「人間族の貴族の青年よ。北の森はテネブル(闇樹人族)が住まう地。森に長けたノーマルエルフ(標準樹人族)達ですら邪魔になる。人間族の英雄殿は君達を否定した訳ではないのだよ」


 えっ?この人、実は良い人なんじゃ。


「群れの前方400mに転位移動します。賢者ガリバーの弟さんはどうしますか?」


「私は、あれに呼び出され、やり残した事が旧市街地にあります。それをやりに戻ります」


「そうですか。それじゃ俺達は北の森の居住区へ移動します。皆さんの、復旧復興作業の邪魔はしないでくださいよ」


「そんな事はしませんよ。愛を求め合う時、現実は暫しの眠りにつくもの。私は愛を続けに戻るのです。先程の話考えておいてくださいよ。人間族の英雄殿よ。それでは、アディオスっ!」


 賢者ガリバーの弟ラケル・カサノヴァは、転位で移動した。


「ロイク様。あの人・・・転位魔術が使えたのですね」


「高位樹人族の恥晒種馬のカサノヴァ・・・世界的に有名な人です。ロイク様はあの者とはどの様なお知り合いなのでしょうか?」


「フェオドールさん。今の人は、大賢者マクドナルド・ガリバー様の双子の弟さんです。ステータス値やスキルを見る限り、大賢者様よりも魔術の才能を持ってる様です・・・」


「大賢者様よりですか・・・」


「ロイク様。それ本当ですか?」


「はい。バルサさん。俺もステータス値を視認()て驚きました」



 俺達は北の森の居住地区より更に北、大樹の森へ復帰を果たした森へと移動した。


「ロイク様。来ます」


「メリアさん。私が前衛で、魔獣を引き付けます。魔術で広範囲殲滅を」


「私もバルサ様と共に前衛で、魔獣を迎え打ちます」


「分かりました。回復役が居ませんので、フェオドールさんは気を付けてください」


 3人は、手際良く段取りを決め戦闘態勢に入る。


 でも、今はごめんなさい。


「やる気のところ申し訳無いのですが、数が多過ぎてどうやってもフィーラ領内に通してしまいます。広範囲の火属性魔術や風属性魔術を使ったら大樹の森を破壊してしまう可能性があるので控える必要があります。ですので、今回は俺が終わらせます」


「「は、はい」」


「終わらせる?」


 フェオドールさんは知らないから仕方ないか。


「後で、説明します。対象【タブレット】に表示中の魔獣......


 闇属性中級魔法【パァラァラァシィス】(威力)(範囲)5 ≫


......全部で604匹か。今、魔術で麻痺させたので、新市街地の跡地に移動させてから順次仕留めましょう」


「ロイク様。麻痺?もう終わったのですか?」


「いえ、まだ終わってません。仕留める作業はこれからです」


「は、はい・・・畏まりました」


「ロイク様は、視認外の対象にまで魔術を行使出来るのですか?」


「バルサさんは、何度も見てるじゃないですか。転位召喚の召喚は視認外の対象に行使する魔術ですよ」


「確かにそうですよね・・・凄いです・・・」


「ロイク様ぁ~」


「どうしました。メリアさん」


「あ、いえ」


 メリアさんの様子が少しおかしいが、メリアさんは極稀にこうなる樹人族特有の何かなんだろう。



「【転位召喚・極】『召喚』対象タブレットに表示中の魔獣 ≫」


 新市街地の跡地にそんまさる(孫魔猿)が召喚移動して来た。


「これ全部、麻痺状態なのですか?」


「そうです」


≪カーン カーン


 フェオドールさんは、剣でそんまさる(孫魔猿)を突く。


「かなり強力な麻痺の魔術なのですね。立ったま筋肉を硬直させ身動き一つ取れ無いとは・・・拘束の魔術以上に恐ろしいです。しかし、この魔獣の筋肉は堅いですねぇ~まるで鋼の様です」


「フェオドールさん。湾岸防衛隊をここに集めます。古巣の兵士達と一緒に、そんまさる(孫魔猿)を仕留めてください」


「ロイク様やメリア様、バルサ様は仕留め無くても宜しいのですか?」


「俺は個体レベルがカンストしてしまってもう成長しないんです。メリアさんとバルサさんは個体レベル477で、そんまさる(孫魔猿)を倒しても修練の足しにもなりません」


「477・・・個人レベルはそこまで上がる物だったのですね」


「先日、人間種全種族の上限を解放したんです。前までは人間族だけだったのですが、今は全種族の最高値は999です」


「すると、ロイク様は999という事ですか?」


「えぇ。知らない内に999になっていました」


「強さの秘密の1つは高レベル・・・最高値999という事もありそうですね」


「俺の場合は、創造神様や神々様からいただいたスキルがあるので、インチキみたいな物です」


「神授でいただいた能力はインチキなどではありません」


「そうですね。さてと、領軍を連れて来ます。【フリーパス】」



「デヤァ―――」


≪カァ―ン


「痛てぇ―――何て固い皮膚何だ」


≪カーン


≪カキン


≪カンカン


「フェオドールさん。中尉」


「はい。ロイク様」


「はぁっ!」


そんまさる(孫魔猿)ですが、10日間は麻痺状態が続きます。ですが、流石に新市街地跡地に10日間も麻痺状態で放置しておく訳にはいきません。湾岸防衛隊の訓練と切り取り自由は今日の夕方。俺がスカーレットに戻るまでにします」


「畏まりまた・・・で、ですが・・・御覧の有様でして・・・」


 中尉は、兵士達とそんまさる(孫魔猿)の状況を見て落胆していた。


「1人1匹は無理があるのか・・・パーティーを編成して複数人で同時に攻撃するしか方法はないかな?」


「ロイク様。お恥ずかしい話なのですが、隊長の私ですらスキルを発動させ何とか1匹倒せるかどうか。そんな感じです・・・一斉攻撃したとしても難しいかもしれません」


「おかしいなぁ~・・・バルサさん。俺の目の前のそれスキル無しで仕留めて貰えますか?」


「はい。ウリャァ~~~」


≪ボゴォッ メキメキ・・・ ドォ―――――ン


 バルサは、そんまさる(孫魔猿)の下腹部へパンチを1撃入れた。下腹部から異様な音が聞こえ、少し間をおきそんまさる(孫魔猿)は後方100mへ吹っ飛んだ。そして、俺のスキルで自動回収され消えた。


≪え!?えええぇぇぇ―――


 中尉や兵士達は、何が起こったのか自分達の目を疑い。思考が付いて来ない様だ。


≪・・・


 動きが止まる。


「そ、その細い腕で信じられない威力のパンチを繰り出すのですね・・・レベル477のそれという事でしょうか・・・」


 個体レベル477だから倒せただけかもしれないのか。【タブレット】『検索』【VIT】を下げる魔法・魔術 ≫


≪・・・該当は、4件です。


 なるほど・・・認識したから、スキルに反映されたな。


「中尉。今からそんまさる(孫魔猿)に防御力を下げる魔術をかけます。兵士を一度下げてください」


「はぁっ! 各隊に告ぐ。攻撃止めぇ――― 全軍、御領主様の前に整れぇ―――つ」


≪はっ!


 えっと、下級魔法【ブレイク】・・・中級魔法【キャッセ】・・・上級魔法【デストリュクシオン】・・・極魔法【ペルセ】。(きわみ)で良いか。加減無しだったな。


 わざとらしく腕を前から上へ大きく動かし伸ばす。


 無属性極魔法【ベルセ(突破)(威力)10(範囲)10 ≫


「無属性極魔術【ベルセ】 ≫」


 そんまさる(孫魔猿)のステータス値を神眼で確認する。【VIT】【AGI】【MND】が1に下がっていた。


「ロイク様。何も起こりませんでしたが・・・」


「フェオドールさん。中尉。そんまさる(孫魔猿)の防御力、魔法防御力、麻痺して動く事はありませんが速度を1にしました。バルサさんの様に拳で倒す事も可能になったはずです」


「はぁっ!・・・1人1匹の戦闘が可能になったという事で間違いありませんでしょうか?」


「その通りです。一気に個人レベルが上がると思います。殲滅を開始する前に、9人パーティーを編成させ経験値を無駄にしない様にしてください」


「畏まりました」


「フェオドールさん。ここで殲滅に参加してください。バルサさんは、念の為待機しそんまさる(孫魔猿)が間違って動き出した際は、仕留めてください」


「分かりました」


「畏まりました」


「俺とメリアさんは、バジリアさんの所に行って来ます。あとは、任せます」


≪ハッ!


ありがとうございました。

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