8-120 甘くないひと時・マルアスピー編 ②
オスカー殿とかマクドナルド卿とか各国の王様達とか神々様方とか、本当に居たのかどうかは定かではないが昔の偉い人とかが良く口にする沈黙は肯定。
嘘じゃん。都合良く解釈しただけですよね、それって・・・。じゃないとこの状況説明がつきませんよ・・・。
正面、置いたばかりの一人掛け用のソファーに腰掛け点てたばかりの神茶を口に運ぶマルアスピーをさり気無く観察する。
ゾクゾクするくらい冷たい視線。呆れを通り越し怒ってますとかし読み取ることのできない表情。湯呑茶碗を置き浪漫の前で腕を組むという暴挙の姿勢。
冥の深淵でいったい何があったんだ・・・ピンポイントで擽ってくるこれはいったい。・・・このゾクゾクのオンパレード搦め手の多さは見事としか言いようがない。
親父みたいにSでもMでもない寧ろニュートラルを自負していたというのに・・・改める時が遂に来てしまったとでも・・・。
絶対零度な憤怒大が幾つも付きそうなくらい何故だか激怒し無言で視線を合わせてくるマルアスピーから視線を逸らし急ピッチで原因を模索する。
・・・これってもしかしてゼルフォーラあるあるモルングレー伝説の例のアレなんじゃ。きっとそうだ、賢いふりをした愚者を揶揄う正解なき問答愚者と賢者はドーナツの穴を隠すイヤ違うなこれにゾクゾクするような要素はなかったはずだ。
・・・
・・
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無駄だと思えることにこそ可能性がある。真実は無駄の中に隠れていることが多い。・・・タブン。
だが、今日のところはもうこのあたりで良いと思う。何について悩んでいるのか分からなくなってきた、流石にこの無駄の中に真実が隠れていることはないだろう。
って、ことで、ゾクゾクする中開き直って伝えておいた方が良さそうな件の説明を再開した。
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「...... ~ ......。それでフォルティーナの身柄を神界まで引き取りに行くことになった訳です。で、…... ~ ......結局絶対に返ってこないって分かってるのに立て替える羽目になったり、天使達に慰安旅行でも良いし家族旅行でも良いんで来てくれたらサービスしちゃいますって約束させられたり。で、...... ~ ......やっとの思いで帰宅したらしたでゴネルわゴネルわもう頭に来て創造神様にメールしてやったんです」
「・・・」
「そしたら、創造神様の御名の下フォルティーナと誓約することになっちゃったって感じですかね。でですね、誓約の内容なんですがこっからがマルアスピーが一番気になってることだと思うんですよ。で、...... ~ ......端的にまとめるとようは、フォルティーナは来る日とその前後半日間無条件で俺に協力する義務を負う、フォルティーナは来る日とその前後半日間無条件で俺の指示に従う義務を負う。で、俺は、フォルティーナが義務を遂行する限り神権の尊厳と私有財産権を保障する義務を負う。でもって、創造神様は、フォルティーナの誓約違反或いは不履行が発覚した際はその都度速やかに神罰をもってこれを処す」
「・・・」
「ただ、フォルティーナに有効的な罰ってちょっとピンとくるものがなくて、ホラッ、神気とか制限されても全く気にしてなかったじゃないですか、寧ろ困った挙句の果てアクセク必死こいて動き回ったのって俺達の方だったじゃないですか。で、...... ~ ......そうだっ!! だったらいっそのこと!! あるじゃんってなった訳です」
「・・・」
「本当に信じられないね」
シュッ。
最早俺の寝室ではなくなった本の少ない俺の書斎にフォルティーナが姿を現した。
「全くもって有り得ないね。良いかね、そもそも神とは自由でなくてならないね。上手く行こうが失敗しようが好きなことを好きなだけやれる自由、気分に任せて偉そうに教誨し適当に行動する自由、財欲に食欲に睡眠欲に色欲にそれと・・・あぁー金銭欲は自由で然るべきだとアタシは考えるね。そもそも神は貪欲で煩悩の塊でなくてはならないね。反面教師で在りながらも崇め讃えられてこそ神だね。神だね。それなのに、それなのに誓約を破ったら貨幣と金銀希少金属宝飾美術品骨董品だけで赦してやるから没収だとぬかして・・・ボ没収、没収って没収だなんて世界創造神からそんな汚い言葉をアタシは聞きたくなかったね。アスピー、考えてもみるねたかだかこの辺りで一番偉いだけの神・・・世界創造神はエライから逆らうことができないね。悔しくてつい禿げろとか萎めとか念を飛ばした・・・くもなったそんな時もえぇえぇ確かにありましたとも何だねロイク、君のその瞳はいったい何だね。同情するならホラッ・・・サッサとよこすね・・・何をやってるね、アタシが右手の掌を差し出したら迷わずお金を置く左手の掌を差し出しても迷わずお金を置くそんなことも分からなくなってしまったのかね、嘆かわしい・・・そうだね、いいことを思いついてしまったね、アスピーロイク」
「・・・」
「・・・」
「アスピーロイク聞こえているのは分かっているね、このアタシが呼んでるね光栄に思いながらも恭しく頭を下げ次のアタシの言葉を待つのが常識ではないのかね?」
フォルティーナ・・・貴女神様ってホントどうしようもなく滅茶苦茶だよな。ずっと前から気付いてたけどホントバカというかアホウというか底抜けですよね。
「誓約という名の鎖に縛られた美しき女神フォルティーナが願うは自由。そう、つまりだね。来る日の義務は誓約でしかないね。アタシだけが身体を張ることになるということはだね、アタシにはアタシだけが報酬を受け取る権利を持っているということになってしまう訳だね。分かるかね、つまりだね...... ~ ......」
貴重な時間をありがとうございました。




