8-111 来る日まであと三日・教会跡地の神気溜まり ②
若干困惑気味のタルヒーネ様と状況を把握しきれていないミューさん。この二人というか二精霊様の共通点は半分神様だということ。
クラーラ様がタルヒーネ様から神気を感じるのは当然のことなんだが・・・。
それにしても、クラーラ様ってプリフェスト下界に住んでいた頃は、花木の幼姫様って呼ばれていたんですね。いったいどういう流れで春樹の姫様って呼ばれるようになってしまったのやら・・・。
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久方振りの再会を果たしたクラーラ様とウェンディーネ様を中心に会話は盛り上り、小一時間程経過した今もまだ続いている。
クラーラ様の衝撃発言に狼狽するウェンディーネ様の姿は貴重かもしれない。
ふくれっ面であたふたしながら口をふさぎにかかったり、真顔だったり無表情だったり仏頂面だったり涙目だったりと百面相を披露したり、悲鳴交じりの相槌を打たされたりする姿は、本人には非常に申し訳ないけど新鮮で挙動不審で滅茶苦茶面白い、としか言いようが・・・。
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「...... ~ ......困ったものよね、管理者としての自覚をもう少し持ってあっ、そうでした管理者で思い出しました。ディアナBKと言う名の管理者がこちらの世界・・・」
「コルト、この世界の名前はコルトよ。そろそろ覚えても良い頃だと思うのだけれど。それとクラーラ、眷属の名前くらいきちんと呼んであげなくてはいけないわ。ディアナの名前は正式にはディアナBKではなくディアナ・ブルンシェルフ・ケルーナのはずよね」
マルアスピーは本日も絶好調のようだ。
どんな時でもブレることのないその姿は久しぶりなのに見ているとどういう訳か安心します。
「そ・・・そうこちらの世界コルトに...... ~ ......そんなこんなで彼女は樹精霊の容姿に良く似たドリアードに強い憧れをもってしまったの。正確な年月は誰も覚えてはいないのだけれどそんな数億年程前のある日コルトへの小道を見つけ渡ってしまった可能性が高く、...... ~ ......。私達は彼女の親友モデル嬢の嘆願を受け...... ~ ......ここへと至ったのです」
眷属の名前の件をスルーしたクラーラ様に何故だか妙な親近感を覚えてしまい眷属の一覧を視界に展開した。
「春樹の姫様の眷属でディアナ・ブルンシェルフ・ケルーナという名の精霊が数億年も前に入界し未だに潜伏しているらしいですか。・・・たったそれだけの理由でコルトまでお越しになってしまったのですか。・・・あの非常に申し上げ難く、御気分を害してしまうと思われますが言わせていただきます。春樹の姫様は裏界の宗、冥下界の御神木に宿り、帰界の是非を問わず次代の精霊王となるべく日々研鑽を重ねることが使命のはずです。精霊王様、今回のケースですと裏界の宗冥下界の管理神様になると思われますが出界の御許しは」
「ウフフッ、ウェンディーネは変わりませんね。緩いのやら固いのやら水属の精霊だというのに本当にウフフフッ・・・許可も何も目の前にその管理神が居て、ことの顛末を把握しているのだから、もう許しとかそんな次元の話ではなくなってしまっていると私は思うのだけれど違うのかしら」
クラーラ様はマルアスピーから見てかなり上の方の尊属って話だったけど間違いないな、ミト様やマルアスピーと近い何かをヒシヒシと感じる。
「そうね。この場にロイクが居るからには循環の根幹を任された精霊が定例の報告をしに来た。と、解釈することは出来るわね」
よう分からんがマルアスピーが言うんだし、そうなんだろう。タブン、だけど・・・。
「え? マルアスピー様・・・あのロイク様」
「何かしら?」
「あ、はいはい」
「ロイク様はここコルト下界の管理神様でしたよね?」
「一応そんな感じですね」
「そうね」
「生と死の冥府。・・・冥下界の管理神は生と死を司る御柱様だと幼少の頃に学んだのですが」
「あぁーそれなんですが、先日神授をいただいて代替わりしたというかずっと代行していた女神様から正式に引き継いじゃったんで、冥下界の方も一応俺が管理者、みたいな」
「ウェンディーネには話が大き過ぎて難しいとは思うのだけれど聞いて貰えるかしら、来る日を切り抜けた暁には冥下界の管理神代行を託されていたフレアリースも私と同じように助手として支えることになっているのだけれど...... ~ ......」
「なるほどです。・・・流石はロイク様です♪」
貴重な時間をありがとうございました。




