8-110 来る日まであと三日・教会跡地の神気溜まり ①
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昨日のウェンディーネ様との会話を思い出しながら神気を吸収していると。
「ロイク様お忙しい中昨日の今日でありがとうございます」
「いえいえ眷属がやっちゃったことは俺にも責任がありますから。それにウェンディーネ様昨日も言いましたが、これは俺の家族を護って無事に家まで送り届けてくれた結果でもあるんで、お礼の言葉とかは逆に辛いんでホント無しでお願いします」
「ロイク様、本当に宜しいのですか?」
「えぇ、オスカー殿もマクドナルド卿もバルタザール殿も神としてはまだまだ学ぶ側です」
「人間種だったのですからそれは当然のことだと思います。ですがこの件は伝えずにいて良いものなのでしょうか?」
「今はまだ早いってだけの話です、彼等は未熟な段階で力を行使し過ぎて亜神から半神に存在を退行させちゃった訳です。これって考えようによっては、これ以上ないくらいの罰を既に与えられているってことになると思うんですよね。それに力と存在が安定したら戒めとして伝えるつもりでいるんで・・・まぁそんな感じですかね、その時は同席してくださいねタルヒーネ様」
雪代から姿を現したウェンディーネ様とタルヒーネ様は「ねっ言った通りでしょう、今年は雪が少ないのよ」「少ないと言いますか、これではほぼ無いに等しいですね」「夏の水不足が心配よね」「ですね」等と北大陸あるあるのような世間話をしながら近付いて来た。
「ウェンディーネ様、タルヒーネ様、昨日は申し訳ございませんでした。予定では陛下に同行するはずだったのですが別件が立て込んでしまい急遽単身で・・・御迷惑をお掛けしていなければ良いのですが...... ~ ......本人に悪気は全く...... ~ ......何かありましたら言っていただければ...... ~ ......」
パフさんや。俺ってそんなに・・・、そこまで失礼な奴ではないです・・・よ。
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不用意に三人の会話に入るのは止めておこう。
触ったらダメなパターンの奴だと察し神気を吸収することに集中することにした。
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しっかしぃー結構大変だなこれ【GMP:1】くらいだか楽勝とかって簡単に考えてたんだが・・・。
―――約三十分後。
「う~ん。終わる気がしない。正直ちょっと舐めてたのかもしれません」
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心を半分無にして作業を続けていると。
「陛下。マルアスピー様達が森の奥からお戻りになられたようです」
「そのようですね。ところでパフ殿はこの森の奥に樹精霊様がお隠れになられているとは」
「居ないでしょうね。この辺りの歴史書や文献には一通り目を通しましたが植物が急激に成長した等の記述は何処にもありませんでしたから。何よりも、マルアスピー様とはほぼ一ヶ月ぶりの再会です。状況的に見ても判断材料が不足しています」
ずっと無言だったパフさんとエリウスが、ガルネス市街地とは反対側の雑木林から戻って来るマルアスピー達を見つめながら、ドリアードというかディアナ嬢というかそれに近い話題を堰を切ったかのように話し始めた。
ふーむ・・・・・・この辺りというか北大陸に冥の深淵を起源とする存在はモデル嬢だけみたいだな。
二人の会話が気になって周囲の気配を探索してみたが教会跡地が物凄い状況になってることくらいしか分からなかった。
「お帰りなさいませ、マルアスピー様。それに皆様もご無事なようで安心しました」
「えぇただいまパフちゃん」
神気吸収はいったん中断だな。
「あれれぇっ!? 貴女精霊ウェンディーネよね? 間違いないわウェンディーネでしょっ!!」
「その声、御声はままさか・・・姫、春樹の姫様!?」
クラーラ様とウェンディーネ様は知り合いなのか。
慌てふためく妙齢なウェンディーネ様といつもニコニコ笑顔がとっても可愛らしい幼さの残るクラーラ様、二精霊様を見遣りつつ探索の範囲を広げる。
・・・うーむ、三百Km圏内もヒットなしか。
「ハァ~、クラーラで良いと何度言ったら分かって貰えるのですか。あら・・・そうですか・・・大精霊に成れたのですね、えっ? ・・・・・・ウェンディーネ貴女精霊の隣に居る娘は・・・水公が代替わりした話は聞いて・・・はえっ?? 貴女はいったい・・・貴女様からは水の他に複合の氷と雷の属性それも神のそれに非常に近い力を感じます」
最大出力の精霊眼でタルヒーネ様を凝視し続けるクラーラ様。
「・・・わ、私は」
「春樹の姫様そんなことよりもです。どどどうしてこんなところに春樹の姫様が居られるのですかあぁぁぁぁっ!!」
貴重な時間をありがとうございました。




