8-097 フォルティーナの寝室に入るその前に
あのフォルティーナが宿泊料の端数は切り上げで良いとか言う訳がない。思うに、この一連に関して最初から銀行側にまとめて吹っ掛けるつもりでいたんだ、タブンだけど。
正規の料金で支払いたいところではあるが、署に迷惑を掛けた、掛け続けているのもまた事実。免税の手続きをした上で迷惑料として最初に請求された金額を支払った。
確実に返ってこないであろう摩訶不思議な立て替え。この状況、どうやって納得すれば良いんですかね、ホント理解に苦しむんですけど。
それに迷惑を掛けたって言うなら、神道一号線下り警邏詰所内始原警察署通称神界中央警察署内の天使達もそうだが、隠蔽の楽園銀行の天使達の方が圧倒的に被害者だ。
近い内にまた顔を出すことになってるから、お土産でも持って行こっと。
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清算を済ませた後は、アレが要求している金額を隠蔽の楽園銀行から借りたロゴの入ったカルトンに積み、最後の打ち合わせを行った。
お金の受け皿、カッコ付けてキャッシュトレーって名前なんだとばかり思ってたんだが、まさかのカルトンだったとは・・・。
「二十九兆枚もカルトン?に積める訳ないんで百枚だけ積んで、残りは適当な大きさの樽をファルダガパオにでもしてそれに収納しちゃいましょう」
「一目で分かるようにしといた方がええのとちがうでっしゃろか?」
「これでもか、これでどうですか、こんなに? と分かり易く、誠意と覚悟数十倍の気持ちで向き合ってギリギリ及第点をいただけるのが御幸神様です」
「そうですね、フォルティーナ様ですからね」
俺も同じ意見です悪狼神様。それにしても分かり易くですか・・・さり気無く入れてくるところが天使らしいな。
頷き合う三人の顔をチラ見してから話を続ける。
「なんで、金貨の上に見易く大きく書いた明細書を置きます。でもって下の方に、残りの金貨はファルダガパオに全て入ってます神眼で御確かめくださいって誘導する文章でも適当に書きます」
「匂いに敏感なフォルティーナ様のことですし、誘導する必要はないと思いますが・・・そうですね、一言添え誠意を演出するのは良い考えだと思います。ちょっとした気遣いが蟠りを和らげると聞いたことがあります」
「フランはんやロザリークロードはん等は力で解決することが多いさかい、ロイクはんの提案に反対する思てました」
「相手が同じ竜種、眷属達であればそうでしょうが、今回は相手が相手です触らぬ体が健康で長生きの秘訣ですから・・・」
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そして俺達はフォルティーナが駄々を捏ね繰り回し立て籠る寝室へと満を持て足を踏み入れた。
隠蔽の楽園銀行からカルトンと一緒に借り受けた行員の制服を着せた警察署の天使を二人、行員になりすました天使を二人引き連れて。
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「本当に安全、大丈夫なのですよね? バレた瞬間初めから存在しなかったことになんてことは絶対に絶対にございませんよね? 例えばでございますが、アタシは知らないね。見たことも聞いたこともないね、そもそもその天使が本当に居たとするね、だから何だね。という恐ろしいことにはならないですよね?」
天使タブン男性が有り得ないくらいそっくりに声までフォルティーナに寄せ、何となく微妙に有り得そうなことを口にした。
何この天使、神界の警察署ってモノマネ専門の捜査官まで居るのか。イヤ待てよ、これって、普通に天使クオリティーか。
「つぅかぁー署長、 危険手当で黄金ゴッド一枚貰えるってマジで信じて良いみたいなぁー・・・でっさぁーもし嘘だったら喋っちゃうかもだしぃー、奥様の実家ってぇーあぁーしの実家の隣ってマジうけるぅ~♪」
「安心した前、件の賭けで潤い過ぎて羽ばたくのに苦労しそうな勢いだ。君達二人に創造神金貨一枚ずつ渡したところで羽ばたくのに苦労することに変わりはない」
「ふぅ~ん、なら良いんですけどみたいな」
個性が全力で振り切れちゃってるこのギャル天使はいったい・・・これこそザ天使って感じではあるけど、ここ警察だよな。
「ロイク様。あぁーし、こう見えて署長より階位上だし、このくらいのポジションでまっいっかなってやりたい奴にやらせとけば良いかなって感じに考えちゃってるのがあぁーしって感じみたいな」
・・・えっと、ギャル天使が突然詠唱を始めたが、これはどう反応するのが正解なんだろうか。
「でぇー、シリュー様もアッオイ様もマジ御久ぁ~♪でございますぅ~♪みたいな」
「それまだ続けていたのですね」
「二百年。三百年ぶりどすかね。何言うたらええのかややこしいところどすけどえらい息災なようで何よりどす」
「常識ってぇの、あぁーしの中ではぁーそれって三食二おやつ昼寝夕寝付きみたいなぁー。天使って不眠不休の馬鹿ばっかで見かけるだけで弄ってぇーかぁーマジ萎えるつぅーかみたいな」
ギャル天使はフラン様と悪狼神様と知り合いのようだ。普通に会話してるようだし、無難に大人対応で問題はなさそうだ。・・・しっかしぃー何故だ。一瞬、親父の顔が頭に浮かんだんだが。
貴重な時間をありがとうございました。




