8-093 五百一号室
冗談を口にした覚えはないが、楽し気に豪快に笑う天使メルケールの日々のジレンマやコンフリクトを思うと、自然と愛想笑いで切り抜けることができた。
・
「意外です天使メルケール貴方も笑うことがあるのですね。常に煩悶と不機嫌で苛立ちを隠そうともしないそれが貴方の個性なのだとばかり思っていました」
フラン様それって、個性とは言わないような・・・。
「コルト・・・工房ロイスピーならではの風景やとばっかり思てましたけど神界の天使も笑うのんどすなぁ。笑みが少しばかりやらしゅう見えるけどええ変化ではありますなぁ」
いやらしいって・・・あぁーまぁー確かにちょっと口元とか目元とかいやらしい感じはしますが・・・良い変化だって言うならそれ口にしちゃ駄目なところではないでしょうか悪狼神様。
「アハッハッハッハッハッハ慈しみに満ちた峻厳の御言葉をいただき心より感謝申し上げます。・・・あの御幸神様を引き取りに御家族の方が御越しになると有難くも畏れ多い御神授をいただきましたが、あの御幸神様に御家族が? あの御幸神様に? と皆半信半疑で本当に来るのか賭けが始る程の騒ぎになってしまいまして・・・御主神様の御言葉を信じ切れずに来ない方に賭けてしまう愚か者が続出する中、必ず御越しいただけると信じ署の顔受付担当の者と数人の幹部そして私だけが来る方に賭けました。因みにですが私は創造神金貨を三枚も掛けました。何せ御主神様の御言葉もそうですが今回はあの御幸神様が絡んだ賭けです。寄らずして勝利などある筈がない。・・・おっと嬉しさの余りつい力が入ってしまいました見苦しいろころを御見せしてしまい恥ずかしい限りです。さて、ここで立ち話をしていても先に進みません、そろそろ面会と引き取りの手続きをお願いしたく存じます」
あぁーなるほど臨時収入が入るからそんなに楽しそうだったんですね。
しっかしぃー良いのか、天使が賭け事って。
あっ! 喋らなければつい二度見しちゃいそうになる女神様がいる訳だし、神界とか下界とか関係ないのかもな。
ん、あれ? 受付のロビーに居た天使達のあの笑顔はいったい・・・賭けに負けたのにあの笑顔は、何か気味が悪いな・・・・・・まっいっかっ。
・・・
・・
・
鍵のない豪華な金細工が施された真っ白な扉を開け五百一号室に入ると謁見の間とまではいかないが想像通りの絢爛豪華な空間が広がっていた。
「神様が使うからってここまで豪華にする必要ってあるんですかね。・・・ここって高級ホテルじゃないんですよあくまでも留置場内の広目のって何か滅茶苦茶広くないですか、ここっ!?」
「五百一号室と六百一号室は大神位大上神位の御柱様専用となっておりまして時と金と天使を総動員した署内で最も力の入った場所でございます」
なんだ無駄って何処にでもあるんだな。神界もコルトと同じじゃん。
「迷われては困りますので簡単にではありますが先ずは説明を御聞きください」
迷う?
「ここ五百一号室は、今私達が居ります約二百㎡の解放感溢れる明るく華やかなロビーが密かな人気となっているようでして、あまりの人気の高さから巷では全く予約の取れない留置部屋とも揶揄されているそうです」
留置場なのに解放感? 予約? は?
「あちらに見えます金フレームのガラス張りのドアのみがリビングルームへと繋がっております。それでは移動するとしましょう」
・
「憩いと集いがテーマとなっておりますこのリビングルームですが御賢察いただけると存じますが約六百六十㎡ありまして小規模な体育館程の広さがあります。ここを基点にあちらが重厚感と和みをテーマとするダイニングルーム、ダイニングルームは約三十三㎡とあえてコンパクトに収めてみました。ダイニングルームの奥に百㎡程のキッチンがあり突然のパーティーもなんのその御柱様に恥はかかせまんをテーマに、なんと、最新鋭の大きなオーブンを三つも設置してしまうという暴挙、電解水硬水軟水超軟水海洋深層水炭酸水超純水等々その他の水まで出る理解が追い付かない蛇口の数々もまた暴挙、料理をサポートする天使が二十人も常駐するという徹底ぶりもまず間違いなく暴挙、暴挙のオンパレード、これもまたテーマの一つとなっております」
貴重な時間をありがとうございました。




